世田谷散策記 せたがや百景のバーナー
せたがや百景の案内板の写真

せたがや百景 No.89

桜並木の呑川と緑道

せたがや地域風景資産 No.1-10

呑川親水公園

せたがや地域風景資産 No.2-11

四季の移ろいに心ときめく安らぎの道 ~櫻並木と呑川緑道公園~

呑川の下水道化のために川の上をふさぎ緑道化したが、駒沢通りから上流はまだ川の流れが見える。川の流れに沿って桜並木があり、玉川通りまで続いている。遊歩道になった神明橋から下山橋にも桜並木が見られるが、これは川の土手の両側に植えられた桜がそのまま残ったもの。川の土手沿いの桜はかつて世田谷の春の風物詩だったが、今は区内各所で緑道沿いの桜と変わって世田谷に春の訪れを告げる。(せたがや百景公式紹介文の引用)

・場所 :深沢1~8丁目
・地域風景資産の関連団体 : 深沢・桜新町さくらフォーラム(親水公園部分)、櫻並木と呑川緑道を守る会(緑道公園部分)
・備考 : ーーー

*** 呑川親水公園と呑川緑道公園の写真 ***

呑川親水公園

呑川親水公園の写真
親水の始まり部分(246沿い)

246の地下を通って水がやってきます。

呑川親水公園の写真
同じ場所にある犬の銅像

見つめる先には鶏の像があるのですが、これは一体・・・?

呑川親水公園の写真
呑川の碑

 

呑川親水公園の写真
手づくり郷土賞のプレート

駒沢通り沿いの終点部分に設置されています。

呑川親水公園の写真
新緑時の水辺1

新緑時もいい風景です。

呑川親水公園の写真
新緑時の水辺2

水辺の花がきれいに咲いていました。

呑川親水公園の写真
鴨の姿も多く見られます

 

呑川親水公園の写真
伊勢橋と桜

この橋が一番絵になっているでしょうか。

呑川親水公園の写真
桜の時期の水辺1

まだ川辺に降りて花見を楽しむのも良さそうですね

呑川親水公園の写真
桜の時期の水辺2

張り出したテラスからの眺めは格別です

* 水源の深沢八丁目無原罪特別保護区 *

深沢八丁目無原罪特別保護区の写真
呑川の源泉が見れる唯一の場所

年に何回か特別公開を行っています。

深沢八丁目無原罪特別保護区の写真
秋の無原罪特別保護区

カルガモが遊びに来ていました。

緑道公園部分

呑川緑道公園の写真
駒沢通りから始まる緑道(呑川橋)

この付近は若木が多いです。

呑川緑道公園の写真
三島公園付近

緑道にベンチが置かれ、花壇の手入れも行き届いています

呑川緑道公園の写真
公園通りの深沢橋

この付近はちょっと坂になっています。

呑川緑道公園の写真
東深沢中学校前の中村橋

近くに中村八幡もあります。

呑川緑道公園の写真
境橋

花に埋まっていました。

呑川緑道公園の写真
緩やかに曲がる緑道

川の流れっぽくていいですね。

呑川緑道公園の写真
滑り台などの遊具もあります
呑川緑道公園の写真
桜の時期の通学は楽しそうですね
呑川緑道公園の写真
晩秋の緑道

秋も紅葉時も雰囲気があります。

呑川緑道公園の写真
地域風景資産の案内板

管理団体によるもので、俳句などが載せられています。

* 東深沢桜祭り *

東深沢桜祭りの写真
東深沢桜祭りの様子

緑道を使って行われます。

東深沢桜祭りの写真
太鼓の演奏

演奏などが行われます。

* 呑川親水公園と呑川緑道公園について *

呑川(のみがわ)とは、田園都市線の桜新町駅付近を水源とし、東京湾に流れ込む全長14.4km、二級河川に指定されている都市河川です。元々は「大川」と土地の人は言っていましたが、水が清らかで呑める事から何時からか呑川と言われるようになり、それが正式名称となったとか言われています。

川筋を簡単に辿ると、桜新町の駅付近から暗渠を確認する事ができ、国道246号を横切って深沢地区に入るとせせらぎとしての川を楽しむ事ができます。深沢とは名前の通り深い沢がある土地ということで、呑川によって深く台地が削られた土地です。そしてこの付近はかつて多くの湧水が湧き出ていて、その溜り場と川筋でとても深い沢を形成していたようです。

駒沢通りを横切ると再び暗渠となり、川筋は遊歩道として整備された緑道となります。緑道はそのまま深沢地区を突き抜けていき、目黒区の八雲に入り、東横線都立大学駅のすぐ横を通り、大井町線の緑が丘駅の南まで続き、ここからは暗渠ではないちゃんとした川の流れとなります。といっても治水対策のため三面をコンクリートに囲まれた川ですが。そして大田区をひたすら流れていき、池上本門寺の前、JR蒲田駅の北側を横切り、羽田空港の脇で東京湾に注いでいます。

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* 親水公園 *

どちらも桜並木が続く美しい緑道ですが、やはりなんといっても呑川の目玉は親水公園として整備されている部分となるでしょうか。流れの中にはアヤメなどの水辺の植物が植えられ、ザリガニなどの水生生物を観察することができます。

桜並木とせせらぎというと代田や代沢を流れる北沢川緑道のせせらぎも知らせていますが、北沢川緑道の方は石でせせらぎが固められているのに対して、こちらは完全に土の中を流れていいます。その分水が泥っぽい感じというか、ザリガニが生息できるような自然の小川といった感じがしていいような気がします。ただし、その分、雑草や虫などといった自然のものの処理も大変でしょうが・・・。ってなんか変な表現ですね。

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でもいつ訪れても手入れが行き届いているので、そんな心配は無用でしょうか。また流れている水も北沢川緑道は下水処理水が処理場から送られてくるのに対して、ここの水は川底から湧いてくる水や周囲から流れ込む水などを貯水槽にたくわえ浄化し、ポンプを使って循環させているものです。ってちょっとましなだけかも・・・。

そう考えると見た目は自然っぽさが残る小川でも、その実態はとんでもなく大掛かりなビオトープとか、人工の小川という事になるようです。でもこうでもしないと川の流れが再現できないというのが都市部での小さな河川の現状です。地面がアスファルトやコンクリートで固められている事で地中へ水がしみこみにくく、そのことで湧き水の水量が減り、また下水道の普及によって雨を含めた排水のほぼ全てが下水道の方へ流れていき、川へ流れ込む水がほとんどないのが都市の実情です。

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川の両岸には桜が植えられていて、桜の時期になると川を覆うように桜の花が咲きます。なかなか年季を感じさせる立派な桜ですが、これらはかつて川の土手に植えられていた約300本の桜の名残でもあります。人工のせせらぎとなる前から春になると咲いていた桜なので、住民にとっては春の風物詩としてかかせない存在であるに違いありません。こういった部分も北沢川緑道のせせらぎによく似ていて、歩いていると時々イメージがダブります。

また、小川沿いには川に降りられる階段や小川に張り出したテラスがあるといった工夫も、この親水公園と桜に対する住民の愛情かなと思えます。少し川に身を乗り出して桜のトンネルを楽しめるといった配慮がいいですね。きっと昔は普通に石を置いた橋などがあり、そういったところから桜のトンネルを眺めたり、土手の斜面に腰をかけてお弁当でもといったことが普通の光景だったに違いありません。

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その他では所々で緑道を横切る道にかけられている橋が結構お洒落なのも歩いていて楽しめる部分です。特に深沢高校横の伊勢橋は美しい形をしていて、桜の時期にはここで写真を撮っている人が多いです。また、日体大付近ではちょっとした噴水があったり、さりげなく鳥(カルガモ)が休めるマットが置いてあったりするのも付近の住民の要望などからでしょうか。

全体的に見ると、川筋がほぼ真っ直ぐな部分を除けば、自然っぽさが多く残っているし、きちんと手入れも行き届いているし、歩いていても花や橋を楽しめるしと、色々と配慮が行き届いた小川といった感想でした。こういった地域と行政とが協力して風景をつくり、また維持している部分が評価され、せたがや百景だけではなく、せたがや地域風景資産にも選ばれていたり、国土交通省の手作り郷土賞の受賞もしています。

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なお、深沢8丁目にある無原罪聖母宣教女会の敷地内には呑川の源泉の一つである池が残っています。ここは正式に深沢八丁目無原罪特別保護区として指定されていて、普段は一般に公開されていません。毎年春、夏7月と秋11月の決められた週末に(財)世田谷トラストまちづくりによって一般に公開されていてその時は誰でも見学する事ができます。

といっても、池自体はとりわけ特筆する事のないような池であり、溜まった水もよどんだ感じがして湧水量が少ないのが一目でわかりました。もっとも水量が豊かな源泉池なら呑川の水もポンプで巡回する事もないのでしょうが。大したことのない保護区かなと夏訪れた時は思ったのですが、秋に訪れてみると紅葉が見事でビックリしました。秋に訪れるのが断然お勧めです。こういった自然が残されているのは驚きであり、いい事だと思います。

その他、地図を見る限りでは同じく風景資産に選定されている秋山の森の秋山邸にも池が見られるので、これも生きていれば水源の一つとなるはずです。こういった水源と、呑川による斜面を利用してかつてはこの付近はタケノコの生産が盛んだったのはあまり知られていない話でしょうか。市場では深沢産のタケノコの評判は良く、高値で取引されていたとか。高級住宅街にそんな昔話があったとは、今聞くと意外に感じてしまいます。

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* 緑道公園部分 *

駒沢通りを越えると小川の流れはなくなり、遊歩道が整備された呑川緑道となります。親水公園から来ると、やはりちょっと物足りなさを感じてしまいますが、遊歩道はきれいに整備されていて、道幅が広くて歩きやすく、とてもいい散歩道だと気がつきます。

進んでいくと、すぐに右手に三島公園があり、その奥はかつては三嶋神社だった深沢神社があります。この公園付近にはかつて湧水による三島池があり、その水は呑川に注いでいました。大きな池で、池の中に三つの島があったから三島池で、川のほうに向かって神社の参道もあり、池が目の前にある立派な神社だったようです。

後に神社は合祀令で深沢の神様が集められ、深沢神社と名が変わりました。そして昭和39年には三島池が埋め立てられ、呑川も埋め立てられ、緑道となります。その際に神社も売った三島池の土地で改修工事が行われ、入り口が社殿が南向きになったり、幼稚園ができたりと、現在の状態になりました。

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この三島公園のところで緑道は緩やかにカーブを描き、その先で駒沢公園通りを横切ります。一本手前は旧道に当たる道で、この道と駒沢公園通りの間は緑道としては珍しいことにちょっとした坂になっています。かつての川がどのような形態だったのかは分かりませんが、普通の川にこれだけの傾斜があったら大変です。

駒沢公園通りを過ぎると東深沢中学校、そしてちょっと先には東深沢小学校があり、登下校時には子供たちが緑道を歩く姿を目にします。その様子からこの緑道が通学路といった生活道路としても使われているのが分かります。緑道なら車が通らないから安心ですね。

東深沢小学校から駒八通りまでの間では桜の時期に東深沢桜祭りが行われます。その際には緑道に地域の団体の出店が並び、ちょっとしたステージも設置され、地域の団体による演奏などが行われます。この場所で桜祭りが行われるのは、おそらくこのすぐそばにさりげなくエーダンモールというちょっと懐かしい感じのする商店街があり、スポンサーとなっているからでしょうか。この後、駒八通りを過ぎると緑道は大きくカーブを描き目黒区に入っていきます。

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この呑川の緑道部分について考えるとき、どうしても駒沢通りで分けられているせせらぎ部分のことが頭をよぎってしまいます。やはりせせらぎ部分は仕掛けが大掛かりで、お金がかかっているだけあって、風景効果というか、人に与える印象が大きく、一言で言うなら華やかな感じがします。

その一方、緑道部分はありきたりな印象がして、ちょっと地味な印象となってしまいます。それを差と感じるか、個性と感じるかは人それぞれでしょうが、せせらぎではない分、遊歩道としてどう活用するか、どのような雰囲気にするかは地元の人の考え方や努力次第になります。

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そういったことは地元の町内会とかで話し合われていることなので、私が知る由もありませんが、せせらぎがない分、いやそういったことにお金をかけなくても、利用しだいではせせらぎにも負けない効果が得られる緑道になるんだといった意識、あるいはちょっとした対抗意識を感じることがあります。

それはきれいに手入れをしてある花壇であったり、ごみが落ちていないようなこぎれいな緑道であったり、通学路にもなっていることもあって木が茂り過ぎない明るい感じのする緑道であったり、緑道にベンチが設置されていて散歩の休憩場所になったり、小さい子供の遊具があり、緑道で子供を遊ばせることができたり、緑道を使って地域で桜祭りを行ったりといったことでしょうか。

ここの緑道は特に歩いていて安心感があるというか、雰囲気がいいと感じるのは私だけではないかと思います。比較的幅が広いといった好条件もありますが、ごちゃごちゃし過ぎていないのがそう感じる原因かもしれません。それに小規模ながら行われている東深沢桜まつりや、そのすぐ近くの深沢公園で夏に行われる盆踊り大会などを見ると、地域としてよくまとまっているなと感じます。そう考えるとこの緑道の雰囲気のよさは地域の心の表れなのかなと思ったりもしました。

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* その他 *

こうしてみると、なかなかきれいな流れと美しい桜並木や遊歩道といったイメージばかりを持ってしまうのですが、呑川全体からしてみると他の一面もあります。下流の大田区の話ですが、呑川はドブ川としての過去と、現在でも悪臭を放つ川としての側面を持っていたりします。

それは下水処理の問題によるもので、下水には雨水と汚水を一緒の管で流す合流式と、雨水と汚水を別々の管で流す分流式の二通りがあります。現在の下水道法では原則として分流式で下水道を作ることになっているのですが、呑川流域では古い合流式の下水道のままです。

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そのため晴天時は問題ないのですが、降雨量が一定の量を超えるとトイレや台所排水などの汚水が雨水とともに川に流れ込みます。そうなると下流域では川から下水臭が漂ってきます。更に潮が高いときなどは、河口付近で海水が河口から入り込み、下水が混じった川の流れを停滞され、強烈な匂いを発散させているようです。

もちろんかつて生活用水が垂れ流しになっていた時代には上流の世田谷や目黒から汚水がやってきて、今とは比べ物にならないくらいドブ川状態だっので、それに比べたらましになったと言えますが、せっかく下水処理を行ったり、遠くから水を引いてきているのにこういう状態ではたまりません。

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そして一つ呑川について付け加えると、平常時は世田谷や目黒を流れている呑川の水は大田区を流れる呑川には一滴も流れていません。小川となっている親水公園の水もそうです。ですから厳密に言うなら呑川の源流は桜新町というのは間違いです。但し雨が降った場合は先に挙げたように下水が川に流れ込むので、源流は桜新町付近の下水や湧き水の余りが緑道の下を流れる下水管を通り呑川に流れるという事になるのでしょうか。あまり詳しくは分かりませんが・・・。

では平常時に流れている水は一体どこからという事になりますが、それは新宿の落合下水処理場の高度処理水をはるばるパイプで引いて流しています。その理由は上流部の親水部分と一緒で河川流域の下水道が普及してしまい、川の流れが維持できなくなってしまったからです。

また落合下水処理場の高度処理水は北沢川緑道のせせらぎに流れている水と同じです。パイプによって渋谷川、北沢緑道(目黒川)と順番に送水し、そして最後に呑川に残りの水を流しているようです。見た目以上に都会の川は複雑で、お金がかかり、不自然なものですね。

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この他にも呑川で面白い話、いや余り笑えない話があります。なんと少し前にこの川で世界最大級の肉食淡水魚アリゲーター・ガーが生息していて、捕獲されるといった騒動が起きました。って、もちろんこの川に生息している魚ではないし、名前が横文字になっていることから分かるように輸入魚です。なんでもアメリカ、ミシシッピー川に生息している魚で、なんとワニのような顔をしていて、体長は最大で3mにもなるとか。心もとない人が捨てたと思われますが、普通に生息できてしまうことが驚きです。

これは下水処理された水が比較的温かいので、冬でも川の水温が比較的温かく、また餌となる鮒や鯉が生息していたことに拠るようです。でも水深のない近所の川にワニのような魚がいたら・・・、嫌ですよね。ホラー映画の世界です。絶対にそういう魚は放流しないでもらいたいものです。

<せたがや百景 No.89 桜並木の呑川と緑道 2009年6月初稿 - 2015年10月改訂>
( せたがや地域風景資産 No.1-10 呑川親水公園 / No.2-11、四季の移ろいに心ときめく安らぎの道 )