世田谷散策記

 ~せたがや百景~

せたがや百景 No.90

谷沢川桜と柳の堤

せたがや地域風景資産 No.1-13

谷沢川の桜並木

川沿いの桜が途切れると柳が続く。悲劇の伝説をもった「姫の滝」もあり、下流は等々力渓谷へと達する。地元の人たちのいき届いた手入れが光る。まちなかのコミュニティ景観だ。(せたがや百景公式紹介文の引用)

・場所 :用賀1丁目~中町5丁目
・関連団体:不明
・備考 :柳は今はないようです。
世田谷百景のロゴ

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* 谷沢川と桜並木(用賀1丁目) *

谷沢川 水源の一つ区立桜丘宇山緑地の写真
水源の一つ区立桜丘宇山緑地

桜がきれいな公園です。

谷沢川(やざわがわ)は、多摩川水系の一級河川に指定されている都市河川です。

全長は約3.8km。世田谷通り近くの桜丘五丁目付近の湧水を源流とし、用賀地域の幾つかの湧水を合流させながら用賀、中町、上野毛、等々力と流れていき、野毛付近で多摩川に合流しています。

谷沢川の特徴はなんと言っても下流にある等々力渓谷です。都内では珍しく美しい自然を残している渓谷で、中でも不動滝を中心とした一帯は東京百景にも数えられています(No.95等々力渓谷を参照)。

首都高下を流れる谷沢川の写真
首都高下を流れる谷沢川

無機質な水路という感じですが、川べりに少し工夫が見られます。

谷沢川の上、中流域の大部分は昭和初期に行われた玉川全円耕地整理事業の区間を流れています。地図を見ればわかると思いますが用賀、中町地域はきれいな碁盤目をした住宅地となっています。

この耕地整理の際に谷沢川はほぼ全ての流路が変えられているので、かつて自然に流れていた頃の面影は全くありません。

谷沢川の水の流れを一番最初に確認できるのは用賀プロムナードにあるせせらぎだったりしますが、この水は仙川から送ってきているものです。

このせせらぎと他から集まった水は首都高の高架下に流れていきます。

用賀駅前の通り、旧大山道は首都高の下が橋となっていて田中橋と名付けられています。谷沢川に架けられた橋で田んぼの中にあったから田中橋となったそうです。

駅周辺の首都高の下は自転車置き場などになっていますが、国道246号の少し手前付近から流れを見ることができます。

谷沢川 しだれ桜とソメイヨシノの写真
しだれ桜とソメイヨシノ

この付近は真っ直ぐな川の縁で、川底が小川っぽくなっています。

谷沢川の桜並木は国道246号より南側の下流部で見る事ができます。この付近の谷沢川は両岸を高いコンクリートの壁で固められた水路っぽい川となっています。

コンクリートといっても無味乾燥の壁ではなく、ちょっとお洒落な造りをしていて、こういうのをなんていうのかわかりませんが、木の柵のような感じで造られています。

国道246号から一つ目の橋、宇佐前橋までは直線的な流路の脇にソメイヨシノや枝垂れ桜などが植えられていて、彩鮮やかなので華やかに感じられる区間です。おまけに川底の部分がさりげなく小川の流れのような感じになっています。

谷沢川と桜並木の写真
谷沢川と桜並木

お洒落な感じの川べりです

宇佐前橋から下流、上の橋までの区間はちょっと面白い趣向になっていて、真っ直ぐな水路の縁が波線で縁取られています。

視覚的に真っ直ぐだと水路といった印象を受けるのですが、こういった工夫で川っぽく見えたり、風景的におしゃれに見えたり、親近感がわいたりするものです。そういった特徴的な風景からもこの部分はせたがや地域風景資産にも選ばれています。

谷沢川 桜のデザインが施されている栄橋の写真
桜のデザインが施されている栄橋

橋もデザインを合わせているようです。

桜並木となっている区間の真ん中には栄橋があります。この橋では上流、下流とも桜並木を見ることができ、橋の欄干などには桜をあしらったデザインが施されています。

ここで写真を撮っている人も多く、谷沢川の絶好の桜スポットとなっています。

桜が散るころの谷沢川桜並木の写真
桜が散るころの谷沢川桜並木

少し流れが停滞し、花弁が溜まっていました。

また桜の花びらが散るころ。桜の花びらがちょっとおしゃれな水路を流れていきます。訪れたときは流れが停滞しているようで、花弁がたくさんたまっていました。

でもそういった様子も周囲のデザインがいいのでなかなか良かったです。

谷沢川 支えで補強されている桜の木の写真
支えで補強されている桜の木

ほとんどの木が補強されていました。

とてもデザインのいい桜並木なのですが、冷静になってよくよく観察すると、水路が出っ張っている部分はただ単純に桜の木の部分がせり出させているだけなので、これって桜の木の根は大丈夫なの?と心配になってしまいます。

桜はとても根が大きく張る植物です。花壇に植えるような植物ではありません。わざわざ波型にして根っこが伸びるスペースを少なくする必要もなかったのでは・・・と思えてきます。

実際桜の木が倒れないようにかなり強固な支えが各所に取り付けられていたりしていることから、若木のときはよかったものの、大きく育ってみると失敗だった・・・といった感じではないでしょうか。

谷沢川 紅葉する桜並木と用賀のビルの写真
紅葉する桜並木と用賀のビル

紅葉の時期もいいものです。

現在では昔からあるソメイヨシノの大木はだいぶん減ってしまいました。そろそろ寿命が近い老木なので、木に痛みが出て伐採されてしまうのはしょうがありません。

代わりに同じ桜でも根や枝が大きくならない品種を中心に植え替えが進んでいます。見映えという点ではまだまだ不揃いで違和感がありますが、成長とともにそのうち馴染んでくるのではないでしょうか。

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* ハナミズキ並木(中町5丁目) *

谷沢川の花水木並木の写真
谷沢川の花水木並木

スーパーがある辺りですが、この辺りは緑豊かなハナミズキ並木となっています。

さてもう一つの主題である柳なのですが、現在ではなくなってしまったようです。色々と調べてみるもののいつ消滅したのか、どこにあったのかよくわかりません。

現在では桜並木の後は花水木の並木になっています。護岸工事の際に植え替えられたのでしょうか。位置的には上の橋から駒沢通りまでの間で、ちょうどヨークマートの裏辺りになります。

谷沢川 花水木とツツジの写真
花水木とツツジ

並木の足元、川べりにツツジ(サツキかも)も植えられています。

上の橋から駒沢通りまでの間はハナミズキ並木となっていて美しいのですが、ハナミズキの足元、川にせり出すような形でツツジが植えられています。

いや、なんていうか生い茂っているといった感じです。もしこれが全部花を付けたら凄い光景になりそうですが、そういった話を聞かないので、あまり花を付けない品種なのでしょうか。

谷沢川 中町5丁目付近の川沿いの写真
中町5丁目付近の川沿い

この付近では少し下町っぽさを感じます。

谷沢川 中町 朝市通りの道標の写真
朝市通りの道標

かつては朝市が行われるほど活気のある通りだったのでしょうか。

駒沢通りの手前付近で川の流れが少しカーブしていますが、この付近はなんとなく下町っぽい雰囲気を感じます。

川沿いに古くからの商店や飲食店があったりとかつてはこの川沿いの道が中心的な道だったのでしょうか。川沿いの道には朽ちかけていましたが、朝市通りの文字が書かれた道標もありました。

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* 姫の滝(駒沢通り以南) *

谷沢川 駒沢通りに架かる富士見橋と下流の写真
駒沢通りに架かる富士見橋と下流

富士山がデザインされた橋です。ここからは単なる水路といった感じになります。

駒沢通りにかかる橋はなんと富士山の形がデザインされています。橋の名前も富士見橋で、昔はここから富士山が見えたようです。現在ではどうでしょう。ちょっと厳しそうな感じです。

この富士見橋から下流部は並木の木は疎らにしか植えられていなく、急に緑が少なくなります。川の側面も上流と同じように丸木状のものを使用していますが、色が塗られていないので、むき出しのコンクリートで固められているといった感じです。

この付近は壁の高さが低いようで、平成25年7月の大雨の時には増水しました。現在はその対策として、大雨の時にこの付近を通過する水をバイパス化するための谷沢川分水路工事が行われています。

谷沢川 上野毛通りの下流付近の写真
上野毛通りの下流付近

この辺りから流れが川らしくなります。タチアオイがきれいでした。

駒沢通りから真っすぐ流れてきた谷沢川は上野毛駅前を通る上野毛通りと交差します。

この上野毛通りから下流は、間もなく等々力渓谷といった感じで、カーブあり、段差ありと少し流れが激しくなります。

谷沢川 姫の橋と姫の滝の碑の写真
姫の橋と姫の滝の碑

道ばたにさりげなくあります。

百景の文章に出てくる悲劇の伝説をもった「姫の滝」ですが、かつて上野毛通りから少し下流付近にあった滝で、この付近の地名(中町の旧名)を取って野良田の滝とも言われていたようです。

残念ながら1938年(昭和13年7月)の水害で滝は崩壊してしまい、現在では姫の橋とその脇にある石柱がその名残となっています。

悲劇の伝説に関してですが、よくある話なので簡単に書くと、都から来た王子様が領主の館に泊り、そこのお姫様と恋仲となり、夫婦となる事を約束して王子が都に戻るものの、再びこの地を訪れる事はなく、お姫様は悲観して滝に身を投げたといったような類の話です。

こういった出来事はありそうで、実際にはなさそうな気もしますが、さて真偽の程はどうなのでしょうか。

谷沢川 姫の橋の上流部の写真
姫の橋の上流部

姫の滝の名残りっぽく段差が付けられています。

姫の橋から上流を眺めると1mぐらいの小さな段差が見えますが、残念ながらこれは当時の姫の滝の成れの果てではありません。

後年(昭和25年)の玉川全円耕地整備事業の際、この場所に川の流路が変えられ、その時に意図して段差が付けられたものです。

当時の谷沢川は50mほど西側を流れていたので、その場所は現在ではごく普通の住宅街となっています。

もしかしたら住んでいる人も自分の家が建っている場所が滝だったことを知らないかもしれませんね。当時の写真も出てこないようで、まさに影も形も・・・といった感じです。

付近の住民などの話によると、滝の高さは3m程で、滝壺が広く、水はきれいで普通に泳いだりする事ができ、子供達のいい遊び場になっていたようです。

谷沢川 姫の橋の下流の浄化装置跡の写真
姫の橋の下流

あまりの水の汚さに浄化装置を設置していた跡です。

姫の橋から下流の方へ目をやると何やら水門のようなものが取り付けられています。川も段差付近から真ん中で仕切られ、また合流しているといった不思議な構造をしています。

これは水質浄化装置の遺構となります。かつてあまりにも谷沢川が汚く、少しでも水質改善を期待して浄化装置が取り付けられたそうですが、その効果はほとんどなかったようです。

ということは、少し下流にある等々力渓谷は昔はとても汚い水が流れていたということになりますね。そのころは悪臭で散策どころではなかったかもしれません。

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* 感想など *

谷沢川 秋の光景の写真
秋の光景

紅葉の時期の川沿いの風景も味があって好きです。

谷沢川といえば等々力渓谷が有名ですが、用賀や中町の桜並木やハナミズキ並木の景観も特徴的で、面白い景色です。

特に川の淵を大胆にデザインした桜並木部分は根が大きく張るソメイヨシノという品種でなければもっといい景観になっていたのかもしれません。

都会の河川は安全性、治水、景観と様々なことを考慮しなければなりません。それに周辺環境も目まぐるしく変化します。

この谷沢川も耕地整理で流路が変更されたり、水質浄化装置が設置されたり、桜並木のため大胆に河岸がデザインされたり、洪水対策で分水路が設置されたりと変化の多い川です。

最初っからうまくいくことは少なく、試行錯誤の繰り返し。それは人生と一緒です。だからなのかこの谷沢川を知れば知るほど親近感がわいてきます。

ー 風の旅人 ー

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* 地図、アクセス *

・住所用賀1丁目~中町5丁目
・アクセス最寄り駅は東急田園都市線用賀駅、あるいは大井町線上野毛駅。

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<せたがや百景 No.90 谷沢川桜と柳の堤 2009年6月初稿 - 2018年4月改訂>
( せたがや地域風景資産 No.1-13、谷沢川の桜並木 )

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