世田谷散策記 せたがや風景資産のバーナー

せたがや地域風景資産 No.0 - イントロダクション

せたがや地域風景資産とは?

せたがや百景の項目が埋まったので、次なる地元の散策テーマに選んだのがこの「せたがや地域風景資産」なのですが、ご存じでしょうか。「せたがや百景」は知っているぞ!といった人でも「せたがや地域風景資産」までも知っている人は・・・かなり少ないと思います。私も「せたがや百景」の事を世田谷区のサイトで調べている時に「せたがや地域風景資産」の存在を知りました。そしてちょっとビックリしました。こんな事をやっていたんだと・・・。

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私もそうでしたが、これと似たような「世田谷界隈賞」を知っている人は多いのではないでしょうか。九品仏の参道や成城学園前、ユリノキ公園などに案内板が設置されているので、散歩中や百景を巡っていて見かけた人も多いかと思います。厳密に言うと趣旨や性質が違いますが、単なる散歩人から見れば「世田谷界隈賞」が「せたがや地域風景資産」の前身といったようなイメージです。

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ただ、梅ヶ丘駅北口広場、更には近年桜上水団地の事もあるので、今となっては区としてはあまり公にできないもの(したくないもの)となってしまいました。本来なら世田谷区のホームページなどにも「世田谷界隈賞」についての紹介記事が載っていてもいいはずなのですが、一切記載がない状態です。

こういった苦い経験からか再開発などで風景が壊れても区が責任を負わないような身近で小さな風景が選定されたのかなというのが、この「せたがや地域風景資産」を知って一番最初に感じてしまった事です。

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この「せたがや地域風景資産」は、その性質上地域限定の小さな風景だったり、その選定に関して目に見えない地元の人の愛情や努力によって維持されている部分が考慮されているので、見た目には地味な風景だったり、あまり感動のない施設や建物だったりと、せたがや百景の様に全て訪れる事が楽しいかといわれると微妙かもしれません。

でも項目の中には百景にはなかった種類の事案や近年できた新しい事案などもあり、地域風景資産を知らなければ知りうることのなかったことも多々ありました。私自身、また一段と深く世田谷を理解することができたので、地域風景資産に出会えてよかったと思っています。

小さな風景でも意外と侮れないので、ぜひ時間があれば興味ある場所だけでも訪れてみるといいと思います。ただ、せたがや百景や界隈賞のような案内板が出ていないので、訪れた時の達成感がないというのは少々不満を感じる部分です。

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このページを作るにあたって説明に困りそうな小さな風景や百景と重なっているものも多く、どういった形でページにしようかと迷いました。とりあえず作ってみよう。ぜひ紹介したい項目もあるし・・・といくつか項目を作ってみたものの、なんかうまくまとまらず開店休業状態のまま1年以上放置していました。

いつ更新するんじゃ!と首を長くして待っていた方がいたのかどうか分かりませんが、せたがや百景と混合のページにしてしまえばいいではないかとふと閃いて、その後なんとか更新を行い、項目を埋めることができました。

書くことがない項目もあれば、どこから説明すればいいんだろうといった複雑なものまで多種多様の項目があり、百景以上にしんどかったです。とりあえず「せたがや地域風景資産」というくくりでページを作っている人がいないのが、途切れそうなモチベーションを何とかつなぎとめた要因でした。(笑)

2015年5月 風の旅人管理人 たわらまさみ

* せたがや地域風景資産とは? *

世田谷地域風景資産のシンボルマーク
世田谷地域風景資産のロゴ

「せたがや地域風景資産」とは、平成11年に施行された世田谷区風景づくり条例に基づくもので、公募による区民と区担当者がその制度や選定の仕組みについて2年間に渡って検討し、設立されたものです。そして平成14年に第1回目の選定が行われ、36項目が登録されました。

その後、平成20年に第2回目の選定が行われ、そして平成26年に第3回目の選定が行われ、現在では86箇所の地域風景資産が選ばれています。おそらく次回は6年後の平成32年になるでしょうか。回を重ねるごとに選定される資産が減っているのがちょっと気になるところです。

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「せたがや地域風景資産」はせたがや風景資産ではなく、わざわざ「地域」という文字が入れられていることから分かると思いますが、世田谷区全体ではなく、それぞれの地域で大切にしたい身近な風景を資産として、地域活動を通して守り育てていくことを目的としています。

ですからこの風景が一番いいといった優越をつけるようなものではなく、風景を守りたいという人を応援するためのものです。そしてそういった小さな風景が集まっていくことで、大きな全体の風景、世田谷全体がよりよい風景となっていくことが期待されています。風景作りはまずは個から。そして全体に。それが「せたがや地域風景資産」の役割となります。

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「せたがや地域風景資産」の一つの特徴は、活動の継続性です。世田谷には「せたがや百景」といった名所などを選んだ百選があります。これは良い景観や歴史的建造物や神社、或いは世田谷的特徴をもった行事などを区民の投票で選んで後世に残そうといった趣旨ものです。

この場合は風景や建造物を選んだらそれで終わりです。普遍的な風景や建造物は残っていくかもしれませんが、小さな風景は消えていくかもしれません。いや現実的に町は生きているので、大きな風景ですら消えてしまったものがあります。都会では町の風景というのは、とても儚い存在です。特に小さな風景は時代の波、周辺環境の変化、相続等の土地所有者の代替わりなどによってあっという間に消滅してしまう場合があります。

それを乗り越えるには人の手で守るなり、手を加えなければなりません。とは言うものの、その風景が素晴らしいと思っても区や他人の土地に口出したりできるわけもなく、自分ひとりの力ではどうにかなる問題ではない場合が多いのが実際です。

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でも「せたがや地域風景資産」といった舞台に上げることで、同じように守りたいという人が現れるかもしれません。そしてそういった仲間が集まって活動を行うことで、地域の注目が集まり、地域全体の活動になるかもしれません。そして区が物凄く重い腰を上げて風景を壊すような建造物の建設予定地を買い取ってくれたり、土地所有者が市民緑地制度などを利用して土地を提供してくれるかも・・・しれません。

地域風景資産はこのように風景を守り育てていくことに重しが置かれ、その景観を維持するために活動している人や団体といったサポーターの存在が重要となっています。そこが百景との一番の違いとなっています。

* せたがや地域風景資産の選定や選定後について *

「せたがや地域風景資産」の選定は区民の投票といった形式ではなく、ちょっと独特な選定方法をしています。選定は「推薦人」が風景を推薦し、「選定人」が実地調査をし、「審査人」によって選定が決まります。更にはその風景に携わって活動している「サポーター」がいて、推薦人や選定人に協力して選定に加わります。選定に当たっては基本的な4つの条件を満たしているかどうかの判断で決まります。

(1)風景としての資産の価値があること。(2)地域の共感・共有があること。(3)風景づくりにつながるアイディアがあること。(4)コミュニティづくりにつながる可能性があること。これはあくまでもそうあって欲しいという条件であって、全て満たしていなければならないといった絶対条件ではないようです。

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このようなプロセスで選定されるわけなのですが、驚くべきは推薦から選定が決まるまでは約1年もかかることでしょうか。これはきちんと現場で活動を確認したり、風景についての可能性などの話し合いが行われるからであって、単なる作業的な選定ではなく、「みんなで創る」といったような選定が行われています。

当事者にとっても選定のプロセス段階から参加することで、多くの意見を聞くことができ、みんなで選定した地域風景資産といった意識も芽生えることでしょう。その結果、選定後の活動の方向性もはっきりとし、良い活動、良い風景が維持されていくことにつながります。

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実際に「せたがや地域風景資産」に選定されるとどのような影響があるのでしょう。まず一つに、これは地域風景資産に選定されていようがいまいが、地域のボランティア活動全般に言えることですが、地域で風景への想いを持っている人や町を住み良くしたい人達が出会い、共に活動ができるキッカケができることで、地域のコミュニティーが生まれたり、活性化することがあげられます。地域住民の共同作業が生まれることで、地域が団結し、コミュニティの絆がはぐくまれていくことは地域としては大きな財産となります。

また、その地域の風景に対する価値観を高め、選定された地域風景資産を核に、例えば、建築協定や地区計画などの地域のルールづくりや、界わい宣言などにつながっていくことも期待できます。そして風景づくり条例に基づき、新たに建築物を建てたりする際に「地域風景資産」への配慮を世田谷区のほうからお願いといった形で行われる場合もあります。

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といった感じで、要は区の「風景づくり条例」という後ろ盾ができるのが、活動を行うにしても、風景を守るにしても大きいということでしょうか。町のボランティアというのは意外ともろい存在です。善意で行っていても、あなた方が勝手にやっているだけでしょ・・・と言われればそれまでです。大きなお世話、勝手に巻き込まないでと冷たい目で見られることも多々あり、なかなか地域全体といった大きな協力や理解が得られないものです。そういう頑張っている人たちの後押しになるというのはいいことです。

*「せたがや地域風景資産」を良く知るには *

せたがや地域風景資産の冊子の写真
せたがや地域風景資産の冊子

「せたがや地域風景資産」は地味な存在です。せたがや百景のようにその項目に看板が設置されていないので、散歩していてその存在を知るということは少ないかと思います。またその風景が名所や名勝ではなく、ありきたりな風景の場合もあり、訪れてみたものの何を見ればいいのか分からないような場合もあります。そもそも「せたがや地域風景資産」をついて情報が少ないというのが実際のところです。

一応公式ガイドブック的というか、場所と簡単な説明が載っている冊子が世田谷区から出版されています。「せたがや地域風景資産マップ(第1回/第2回)」がそれで、一冊200円で売っています。また図書館にも置いてあります。それから「風景づくり通信」といった簡単な情報誌も発行されていて、地域風景資産に登録した経緯などが書かれていたり、イベントの案内が載っていたりします。

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また「地域風景資産」をめぐるウォーキングを行っている団体もあるので、それに参加して直に携わった人などから話を聞くということもできますし、イベントなどにはPRブースが設置されることもあります。町づくりに関心のある方は風景づくりフォーラムといった交流の場もあります。

風景として興味を持つか、町づくりとして興味を持つか、ボランティア的なことで興味を持つかは人それぞれなので、なんともいえませんが、興味をもたれたら積極的に参加してみると、様々な意見を聞くことができたり、同じ考え方や境遇の人たちと交流できるかと思います。そういう意味では様々な人が絡んでいるこの「せたがや地域風景資産」は人との交流のきっかけにするには最適かもしれません。

* 一通り回ってみて *

どれだけの人がこの地域風景資産に興味を持って回ってみたのか、どういう興味で回ったのか分かりませんが、恐らく回った人の多くの感想は、世田谷区は素晴らしいとか、感動したといった類の感想ではないはずです。こういう風景もあるのか、同じ公園や緑道でもこういった利用方法もあるんだといった感想が多かったと思います。

そういったアイデアは地域の必然から生まれたものだったりするので、合わせて地域の歴史を紐解いてみるとなるほどと思うことも多々ありました。結局、町の風景というのはその土地に暮らす人々の生活などからにじみ出てくるものだと思っています。

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たとえば沖縄などでは屋根の低い建物が多かったり、風の強い地域では防風林のある町並みだったりといった感じです。それがその土地の個性であり、特徴であったりして訪れる楽しみであったり、散策する高揚感になります。では世田谷を含めた都会ではどうでしょう。

町並み云々よりも狭い土地を個々が有効利用する事を考え、建物を建てているので煩雑な風景となっています。その中でも個々が意識していることといえば防犯や外観の良さなので、新しい家が立ち並ぶ地域、特に高級住宅街といわれる地域ではそういう不思議な調和が取れていて、見た目がきれいで防犯に特化した町並み・・・てな印象を感じます。

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また、近年では無機質なコンクリートとアスファルトに囲まれた空間では息苦しいとばかりに、スペースを見つけて花壇などを設置して彩りや安らぎを求めている光景をよく目にします。これが今の世田谷の象徴的な町の風景かなと思います。

ただ、他がやっているからとか、見た目がいいからといった必然性がない町づくりはどうかと思います。臭いものには蓋をしろとまではいかないにしても、そこには見せかけで薄っぺらい価値観しか見いだせないものです。一時的にはそういった風景は造ることができても長い期間維持するには地域で同じ価値観を共有しなければならないなど必然性のない風景造りは難しいものです。

例えごちゃごちゃした町並みでも、誰にも強制されない街づくり、誰も強制しない街づくりから生まれた自然体の町並みが歩いていて一番ほっとしてしまうのは根が旅人だからかもしれません。

* このページを閲覧するに当たっての注意事項 *

このサイトは、世田谷区の公式的なものでもなければ、「せたがや地域風景資産」の公式サイトでもありません。あくまでも私個人が旅人として、「せたがや地域風景資産」を見て周って感じた事や持ち合わせている知識、図書館にある資料などを見て書いたものです。

一つの物を見ても百人それぞれ感想が違うように、ここに書いてある感想がその全てを表している訳ではありません。また、その項目に関わった人などに直接取材などをしているわけではないので、考え違いをしている部分も多々あるかと思います。もし間違っている部分があれば、ご指摘していただけると助かります。

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それからとても重要なことですが、先に書いたようにこの「せたがや地域風景資産」は地元の人の愛情や努力などによって維持されている部分が選考基準になっています。だからその本当の良さは目に見えない部分にある場合がありますので、実際に活動に関わっている方がご覧になって「部外者が偉そうに」とか、「何も知らないくせに無責任なサイトだ」と腹立たしく感じるかもしれません。一生懸命風景を作っている人に対して何もしない人間が意見などを言うのはおこがましいことだと重々承知していますが、あくまでもこのサイトの趣旨は「旅」や「散策」であって、町つくりやボランティアの研究サイトではありません。

ということで、風景がそこにいたるまでの過程よりも現在あるものを見たままに感じたこと=結果の方を重視しています。旅人目線なので・・・、というか、旅人目線でしか語ることができないし、公に公開されている事柄なので、旅人、或いは散策人の視点で見て感じたこと、要は「せたがや地域風景資産」を散策の題目として書くことも許されるのかなと思って製作しています。このように実際に項目に携わっている人がいるというのが百景と違って作りにくい部分でしょうか。

* 著作権や使用画像など *

最後にこのページに関してですが、載せている文章、画像等は特に断りがない限り、風の旅人に起因します。但し、「せたがや地域風景資産」「せたがや百景」についての事柄、「せたがや地域風景資産」そのもの、題名、説明文章に関しては世田谷区や関係団体に拠るものです。私の撮った写真に関しては、「著作権に関して」の項に書かれている事に触れない限り、勝手に使ってもらって構いませんが、世田谷区に起因するもの、背景に関してはご遠慮ください。背景に使用している4つ葉のクローバーの図柄の壁紙は「篆刻素材AOI」様のを使わせていただいています。風景資産ということで緑色っぽいイメージの壁紙を探していて、この画像に出会いました。

<せたがや地域風景資産 No.0 せたがや地域風景資産とは? 2011年5月初稿 - 2015年10月改訂>