世田谷散策記

 ~せたがや地域風景資産~

せたがや地域風景資産 No.1-12

清明亭

都立深沢高校には元わかもと製薬社長長尾鉄弥氏の広壮な京風の邸宅好田荘の名残である清明亭が現存します。崖地を利用した木造懸造りの茶室は都選定歴史的建造物に指定されています。

・場所 :深沢7丁目3-14 (都立深沢高校内)
・関連団体:特定非営利活動法人せたがや街並保存再生の会
・備考 :都選定歴史的建造物。高校の敷地内にあるので普段は見学不可。

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* 都立深沢高校と清明亭 *

呑川親水公園の伊勢橋の写真
呑川親水公園の伊勢橋

とてもおしゃれな橋です。左側が深沢高校の敷地になります。

深沢地域を流れる呑川は桜並木ときれいに整備されたせせらぎが象徴的な呑川親水公園となっています。

それだけでも雰囲気がいいのですが、せせらぎ沿いにはおしゃれな橋が架けられていて、その雰囲気を更に良くしているように思えます。

特に美しいのがレンガ造りの伊勢橋で、桜の開花時期には多くの人がこの橋の上で写真を撮っています。

この伊勢橋と一つ上流に掛かる御嶽橋の西側は都立深沢高校の敷地となっています。

成田太鼓祭の写真
成田太鼓祭

深沢高校の太鼓部は服装が濃紺一色です。

深沢高校といえば、やはり和太鼓部でしょうか。たまがわ花火大会で演奏していたり、桜新町の桜祭りやねぶた、その他区内のイベントで演奏しているので見かけたことのある人も多いかと思います。

さらには全国大会へ東京と代表として出場したり、各地のイベントで演奏したり、関東で最大の太鼓のイベント成田太鼓祭にも招待されていたりと、知る人ぞ知るといった感じかもしれませんが、全国的にも名が知れていたりします。

和太鼓で盛り上げてしまいましたが、今回のテーマとは全く関係なく、この深沢高校には都選定歴史的建造物に指定されている清明亭という茶室があり、それが地域風景資産に選ばれています。

深沢高校 敷地の横の路地から見る清明亭の写真
敷地横の路地から見る清明亭

茶室というより古民家的な佇まいです。

深沢高校の開校は昭和38年(1963年)で、それまでこの場所には元わかもと製薬社長、長尾鉄弥氏の広壮な京風の邸宅、好田荘がありました。

高校が建てられる際に好田荘は解体されましたが、離れの茶室だけがそのまま残され、好田荘の唯一の遺構となっています。

この茶室は昭和6年に建築されたもので、設計は大江新太郎氏によるものです。大江氏は日光東照宮の修復を行ったり、重要文化財に指定されている明治神宮宝物殿を手がけたことで知られ、この茶室も東京都選定歴史的建造物に指定されています。

深沢高校 清明亭の文字の写真
入り口に置かれている清明亭の文字

古そうですが、命名時のものでしょうか。

茶室は昭和41年に和室部分の修理が行われ、その際に清明(せいめい)亭と命名されました。

名前の由来は分かりませんが、深沢高校の校訓が「清純」「明朗」「強健」となっているので、これと関係あるのでしょうか。

深沢高校清明亭 懸造りの写真
懸造り

複雑な高床式といった感じでしょうか。

清明亭の特徴はなんといっても崖地を利用して、地上階の約半分が列柱により支えられた懸造りの木造住宅であることです。

寺院などで見かけることはあっても個人的な建物や茶室で懸造りを使用しているものはほとんどないはずです。

崖地以外で懸造りをする必要はなく、崖地でも建物をわざわざせり出させて建てようとする人も少ないし、近年では懸造りにせずとも普通に鉄筋で建物が建てられてしまいます。

この場合も呑川へ向けての起伏の深い地形を利用して、武蔵野の趣のある眺望をより得ることや、より雰囲気を楽しむといった目的と、あとは個人の趣向でここに建物を建てたと推測できます。

古い写真を見ると、呑川とこの建物の間にわざわざ池も造り、水の風景にもこだわっていたようなので、元わかもと製薬社長、長尾鉄弥氏はとても風流を好んだ方だったのではないでしょうか。

深沢高校清明亭 渡り廊下の下からの写真
渡り廊下の下から

渡り廊下を通って建物に入るようになっています。

深沢高校清明亭 校舎側から見た写真
校舎側から見る清明亭

横から見ると古い料亭といった感じです。

建物内部へは岩に掛けられた渡り廊下から入るようになっています。

建物の一階部分は玄関を入ると茶室として10畳半の広間と水屋、広間の東と南に面した広縁があり、想像以上に広い空間があります。

深沢高校清明亭 釣殿からの眺めの写真
釣殿からの眺め

ちょっと微妙な感じです。

そしてこの清明亭の一番の見所であり、特徴の一つとなっている東面に大きく張り出した一間半四方の釣殿が一番奥にあります。

ここからの眺めは・・・、今では校舎などがあるのでいまいちですが、そこそこの高さから呑川への風景を楽しめたことは想像できます。

ただ建物の老朽化が進んでいるようで、淵のテラス部分などは木が腐っていて、外には出ると危険な状態となっていました。

深沢高校清明亭 下から見上げる屋根の写真
下から見上げる屋根

屋根の構造が複雑そうです。

二階部分は茶室というよりはモダンな感じの洋館風になっていて、印象の差にちょっと戸惑う事でしょう。ただ二階部分というか、屋根の老朽化も進んでいるようで、建物の傷みがあちこちで目に付きました。

そしてビックリしたのが地下があることです。

地下といっても崖の部分に造られた建物なので、掘り下げられた地下ではなく、茶室の下の部屋、建物の土台部分の部屋といった感じで、正式にはRC造りというものらしいです。

地下は蔵として造られたものらしく、壁や窓などの造りが頑丈で、渡り廊下の下にある入り口と呑川方面につながる狭い通路と二つの入り口があるのが特徴です。特に狭い通路の方は秘密の入り口っぽくて面白いです。

深沢高校 学園祭の時の正門の写真
学園祭の時の正門

多くの人が訪れていました。

茶室ということで普段は茶道部の活動場所として利用されていたようです。(*東日本大震災以降は耐震工事が終わるまで使用されていないとか)

これだけ立派な茶室で活動できれば茶道もメキメキ上達する・・・のかな?と思ったら、2011年の1月には茶道部高等学校文化連盟文化祭(茶道部門)で優秀賞を受賞したようです。

高校の敷地内にあるので普段は敷地外からしか眺めることができませんが、学園祭のほか、地域開放日にお茶会が茶道部によって開催され、その時には一般の人も見学できるようです。

学園祭などの正式な見学日や見学会にはNPO法人のせたがや街並保存再生の会の方々が待機していて、内部を説明しながら案内してくれますので、興味のある方はそういった機会を利用されるといいかと思います。

見学に際してですが、内部の写真は撮ってもいいけど公開しないで欲しいと学校の方から要請されているとの事です。

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* 感想など *

深沢高校清明亭の写真
4月の清明亭

桜の時期の清明亭です。呑川の桜散策とともに訪れてみてください。

深沢高校にある清明亭。大正期から昭和初期にかけて世田谷には著名人の別荘(別邸)が多くありました。現在でもいくつかそういった建物が残っていて、公開されています。

長尾氏のように本邸として使っていた人もいましたが、本邸を古いまま使い続ける人は少数ですし、残っていたとしても自分の生活の場だった場所を好んで他人に公開する人が多いはずもなく、茶室とはいえ清明亭はなかなか貴重な建造物となっているのは確かです。

高校の敷地にあるので内部の見学は限られた機会になってしまいますが、外の路地から建物を見ることができます。

釣殿の懸造りは何とか見えるといった感じですが、それよりも目を引くのが屋根の構造が複雑なことです。

まるで積み木細工というか、工芸品というか、楽しそうというか、ワクワク感を感じる面白い建物です。興味がわいたならぜひ見学会などの機会を利用してみてください。

ー 風の旅人 ー

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* 地図、アクセス *

・住所深沢7丁目3-14 (都立深沢高校内)
・アクセス最寄り駅は田園都市線桜新町駅。駅から離れています。

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