世田谷散策記 せたがや百景のバーナー
せたがや百景の案内板の写真

せたがや百景 No.57

成城3・4丁目の崖線

せたがや地域風景資産 No.2-25

成城3丁目の国分寺崖線の樹林

崖線に沿って緑が豊かに残されている。低地に下る坂は両側の深い緑で隈取られ大地との間に陰影をかたちづくる。まちに変化に富んだ散歩道があることは素晴らしいことだ。(せたがや百景公式紹介文の引用)

・場所 : 成城3、4丁目辺りの崖
・地域風景資産の関連団体 : 崖線みどりの絆・せたがや
・備考 : ーーー

*** 成城3・4丁目の崖線の写真 ***

神明の森みつ池特別保護区の写真
神明の森みつ池特別保護区

4丁目にある自然保護区です。

神明の森みつ池特別保護区の写真
外から見えるみつ池の一部

中に入れないので外から

成城三丁目緑地の写真
成城三丁目緑地

成城の崖線の中で一番大きな緑地です。

成城三丁目緑地の写真
成城三丁目緑地の湧水

自然豊かな環境が残っています。

成城三丁目なかんだの坂市民緑地の写真
成城三丁目なかんだの坂市民緑地

不動橋近く、なかんだの坂にあります。

成城三丁目なかんだの坂市民緑地の写真
成城三丁目なかんだの坂市民緑地内

狭い斜面の敷地に階段が設置されています。

成城三丁目崖の林市民緑地の写真
成城三丁目崖の林市民緑地入り口

なかんだの坂の途中にあります。

崖の林市民緑地の写真
崖の林市民緑地内

ありふれた林といった感じの緑地です。

なかんだの坂の写真
なかんだの坂

緑地があり、緑と住居が混在した坂です。

お茶屋坂の写真
お茶屋坂

急な坂で明正小学校の通学路になっています。

病院坂の写真
世田谷通りから見た病院坂

狭い割に車通りの多い坂です。

小さな坂の写真
小さな坂

捜せば雰囲気の良い坂が幾つもあります。

喜多見不動尊の写真
喜多見不動尊

曲がりくねった不動坂の下にあります。

開発中の土地の写真
開発中の土地

分譲中の土地を幾つか見かけました。

崖の斜面を利用した花壇の写真
崖の斜面を利用した花壇

坂という土地柄の工夫が随所にあります。

急な斜面を利用した庭を持つお宅の写真
急な斜面を利用した庭を持つお宅

段々畑のようなお庭でした。

* 成城3・4丁目の崖線について *

世田谷区の南西を流れる多摩川沿いには「国分寺崖線」と呼ばれる崖地が続いています。国分寺崖線というのは立川市から始まり、国立市、国分寺市、府中市・・・、狛江市、世田谷区を通り大田区まで続く総延長が約25km、高さが10~20mほどの崖や斜面の連なりです。国分寺付近に特徴的な目立った崖の連なりがあることから、この名が付けられました。

崖線を全体的に見ると野川と並行して連なっている感じですが、太古の多摩川が武蔵野の台地の南側を削ってできた河岸段丘です。河岸段丘・・・、というより崖というのは文明人にはあまり住みよい環境とはいえませんが、太古の人々、縄文人などには絶好の定住場所となります。

遠くの獲物の発見、天候の変化の早期発見や水害から身を守るため、敵からの奇襲を防ぐためなどといった好条件となり、また崖下には湧水が出る事も多いので、生活をするにはもってこいといったわけです。実際に崖線上には多くの縄文遺跡が、崖には横穴式墳墓が見つかっていて、豊かな自然を育む国分寺崖線は太古から人々の生活の場となっていました。

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世田谷区内では約7kmに渡って崖線が続いています。近代化によって宅地化が進んだ世田谷ですが、崖線は斜面という開発しにくい独特の地形により、比較的開発から免れる事ができ、現在でも緑地公園や自然保護区を中心に多くの自然環境が残されています。そういったわけでせたがや百景、そして後年選定されたせたがや地域風景資産の中でも国分寺崖線は多くの項目が登録されています。

大雑把に見ていくと下流付近では等々力渓谷、上野毛自然公園、五島美術館など、中流付近では行善寺、岡本三丁目の坂道、小坂邸と崖線庭園、静嘉堂緑地、東名高速の橋など、そして上流の成城ではこの項目の他にも富士見橋や喜多見ふれあい広場から見た「野川と国分寺崖線の纏まとまった緑」、成城三丁目緑地などがあります。その中でも個人的にはこの「成城3・4丁目の崖線」の項目というか、この辺りの崖線の様子はもっとも崖線の特徴が色濃く表れているかなと思います。

それは古くからこの地域の崖線に携わってきた世田谷トラストによる活動が大きく、今では多くの市民緑地が公開される事となり、地域全体で緑の保全が進められていることにあります。そういった活動による崖線の緑、そして崖や斜面という土地柄を利用した住宅とが合わさった独特の景観はとても魅力的な風景だと感じます。

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崖線の続く成城3、4丁目はもともと喜多見村東之原でした。具体的にどれだけの広さがあったのか定かではありませんが、江戸時代は徳川幕府、明治になっては宮内省の直轄地として特別に保護されてきた地域です。なんでも喜多見家が断絶になったときに幕府が召し上げたからで、喜多見御料林と呼ばれていたそうです。

明治以降は長らく皇室ゆかりの苗畑があり、それを守るため林野庁の管轄下にあり、御料林でなくなった後もそのまま林野庁の敷地となったりして、開発を免れてきた経緯もあるようです。といったわけで古くは世田谷通り(旧登戸道)近辺を除けば崖の中腹に喜多見不動があるぐらいで特に何もない丘だったようです。

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それが昭和2年に小田急線が開通してからというものの急激に宅地化が進んでいきました。とりわけ崖上の成城住宅街が人気となり、それまでなかった成城の町が新たにできたのは周知の事だと思います。切り開いて開発すればするほどお金になる成城の町にあって、崖線上は昔の土木技術では防災上の不安があり、開発が進みませんでした。

土木技術が進歩したり、土地不足となると開発の手が崖線まで及んできましたが、今度は市民の努力などによって緑の保全が進められたようです。そういったわけで比較的自然がよく残っています。その象徴的なのが、「成城三丁目緑地」、「神明の森みつ池特別保護区」、「成城三丁目なかんだの坂市民緑地」「成城三丁目崖の林市民緑地」などです。

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成城三丁目緑地はこの付近の崖線上の緑地として一番広い面積を持っています。せたがや地域風景資産の方に「成城三丁目緑地(風1-27)」という項目があるのでここでは簡単に紹介すると、世田谷通りからすぐの場所にあります。みどりの保全を目的に世田谷区が農林水産省から買取った緑地で、約2haの広さがあります。緑地内には、斜面林とともに2箇所の湧水地があるのが特徴です。よく手入れが行き届いていて、現代の生活にあった「まちの里山」をテーマに、地域住民が中心となって、住民参加による公園づくりを行っています。

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神明の森みつ池特別保護区は小田急線の線路よりも北側の4丁目にあります。面積は約22haで、こちらは公園のような緑地と違って本格的な保護区となっていて、一部しか入る事ができません。ここの特徴は案内板によると、「東京23区内には2カ所しか自生していないゲンジボタルや、絶滅危惧種に指定されている動植物が数多く残る貴重なサンクチュアリです。」との事です。

実際に中に入った事がなく、外からしか見た事がないので詳しくはわかりませんが、保護区内には4カ所の湧水があり、緑豊かな森にはハンノキやクマシデなどの落葉樹と、武蔵野の林を代表するクヌギやコナラなどの林とが混じりあっているようです。いちおう崖の下のフェンス越しに湧水の溜まった池を見る事ができます。

この保護区の管理、運営は「(財)世田谷トラストまちづくり」が行っていて、現在「成城みつ池を育てる会」のボランティアによる保全活動が行われています。貴重な動植物が生息しているため、実際に中に入れるのは年数回の観察会実施時に限られているようです。興味があれば「(財)世田谷トラストまちづくり」のHPから観察会の日を調べて参加してみるといいでしょう。

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成城三丁目なかんだの坂市民緑地は、百景に選ばれている「不動橋」と「成城3丁目桜ともみじの並木」の間にあります。ここは少し変わっていて実際に土地の所有者がいて、市民緑地制度を利用して一般に公開しています。市民緑地制度とは、簡単に書くと300平方メートル以上の広さを持つ民有地を緑地として市民の憩いの場として一般に公開する代わりに、色々と税制面などで優遇措置が受けられる制度です。

とはいえ、ここは制度を利用する前から地域の人たちに親しまれるような林を目指して、所有者の方を中心に近隣の方々が維持管理を進めていたそうです。ここの特徴は、個人がもともとの林を活かしながら道をつくり、その趣向によって木を植え、そして守り育ててきた事にあります。

ですから他の緑地ではかつての武蔵野の林を目指してといった方針とかで植林されるのですが、ここでは町の街路樹でよく見かけるユリノキやクスノキといった木々が植わっていたりとちょっと本来の崖線の林と趣が異なっています。また、さりげなく地面に植わっている野草などにこだわっているのも特徴でしょうか。

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その他、すぐ近くに同じような市民緑地として「成城三丁目崖の林市民緑地」があります。こちらは名前の通り崖の林といった感じで、公開されているもののあまり人気がないような感じです。成城4丁目の方にも「成城四丁目緑地」「成城四丁目十一山市民緑地」があります。

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もう一つ、崖といえば坂のある町並みにも興味が湧いてきます。坂のある町並みは奥行きがあるというか、とても美しいと感じる人も多いようで、坂マニアな人たちも多く存在します。とりわけ東京には名前の付いた坂が多いので、東京(江戸)の坂を解説したような本も多くあったりします。

この成城3、4丁目にも古くから名前の付いている坂があります。病院坂、お茶屋坂、不動坂といった坂で、それぞれ坂の途中や上に病院(伝染病患者の隔離施設)や茶屋(茶室)、喜多見不動尊があった事からその名前が付いたようです。どれも道は細く、昔からの面影が残る感じです。その他にもなかんだの坂は途中になかんだの坂市民緑地と成城三丁目崖の林市民緑地があるような坂で、緑とこじゃれた住宅が調和して雰囲気のいい坂となっています。

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それ以外にも名前の付いていないような坂や小道が多く、高級住宅地らしく塀や家にもお金がかかっているので、坂自体がお洒落に感じたりします。こういった坂道の散策ができるのも成城の隠れた魅力なのではないでしょうか。中には世田谷トラストのオープンガーデンに登録して、休日に庭を開放してくれているお宅もあります。

実際に訪れて見ると、庭が崖線上に段々畑のようになっていて驚きました。こういった利用方法もあるんですね。とまあ個人的には成城の住宅地にはあまり魅力は感じませんでしたが、この辺りの崖線付近の町並みや緑地には大いに惹かれた次第です。

<せたがや百景 No.57 成城3・4丁目の崖線 2009年10月初稿 - 2015年10月改訂>
( せたがや地域風景資産 No.2-25、成城3丁目の国分寺崖線の樹林 )