世田谷散策記 せたがや風景資産のバーナー

せたがや地域風景資産 No.1-27

成城三丁目緑地

成城の住宅街の中にある成城三丁目緑地には、斜面林とともに2箇所の湧水地があります。多くの自然が残され、サワガニやカブトムシなどを観察することができます。現代の生活にあった「まちの里山」をテーマに、地域住民が中心となって、住民参加による公園づくりを行っています。

・場所 : 成城3丁目16-38
・登録団体など : 里山づくりコア会議
・備考 : ーーー

*** 成城三丁目緑地の写真 ***

成城三丁目緑地の写真
案内板が並ぶ様子

詳しく解説されています。

成城三丁目緑地の写真
緑地内の階段

崖線を登るので結構きついです。

成城三丁目緑地の写真
湧き水が流れる小川

成城ではなく山の中といった感じです。

成城三丁目緑地の写真
橋と池

橋や池まであり雰囲気がいいです。

成城三丁目緑地の写真
きよみず橋がかかる谷

もはやトレッキング気分です。
但し、画面の左側はマンションです。

成城三丁目緑地の写真
新しくなったきよみず橋

明正小学校の生徒が考えた名前だそうです。

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水源のある谷

 

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水源

 

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落ち葉溜め

カブトムシのためのものでしょうか。

成城三丁目緑地の写真
バイオトイレ

微生物分解によるエコなトイレです。

* 成城三丁目緑地について *

成城三丁目の国分寺崖線上に成城三丁目緑地があります。情報収集のために幾つかのサイトを閲覧したのですが、まず多くのサイトが検索に引っかかるのに驚き、そして閲覧しているとその訪れ方によって印象が違うのに興味深く感じました。私の場合だと、この緑地を紹介するなら多摩堤通りの終点から成城に登る病院坂沿いにあるといった表現を使い、崖の下から見上げるイメージなのですが、成城で暮らす人や電車で訪れる人は成城から喜多見へ下るといった崖の上から見るイメージになってしまいます。

同じ公園でも入る入り口が違うと少し違和感を感じてしまうのと同じで、崖の上から訪れた人の感想を読んだりするとあっそうなんだと新鮮な感覚を感じました。とりわけ川や崖のように地域を分断するような対象を逆から見ると結構自分の持っているイメージと違うものですね。

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さて、この成城三丁目緑地ですが、国分寺崖線の斜面をうまく利用した緑地です。国分寺崖線は立川から大田区まで続いている壮大な崖線となるわけですが、とりわけ世田谷区内でいうなら成城三丁目、四丁目付近は崖をうまく利用した住宅地と崖の自然が残る地域とが適度に合わさり、崖線の風景が特徴的、或いは興味深く感じられる地域と言う事ができます。

この成城三丁目緑地は崖線の自然的特徴がよく表れていて、崖線から湧き出る2箇所の湧水地を中心に、約20mの高低差がある崖の斜面を利用したヒノキ、サワラの常緑樹、コナラ、クヌギの落葉広葉樹が混在する里山的雑木林が広がっています。

湧水は一年中涸れることがない安定した水量があり、付近はセキショウなどの湿生植物群落が形成されています。また緑地内は通路が設置されていて、崖線の散策を行うこともでき、片方の湧水はすぐそばまで行くこともできます。

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また、区内の公園では現時点ではたぶんここだけにある代物だと思いますが、近年のエコ志向からかバイオトイレなんていうものが設置されています。簡単に書くなら汲み取り式のトイレの汲み取り部におがくずを入れ、出した物を微生物の力で分解してしまうというものです。水を使わないので環境を汚さず、更には肥料として再利用もできてしまうといった優れものです。

下水管がいらないし、環境に優しいしと近年山や自然保護地域でシェアを伸ばしていますが、正直言って下水処理がうまくいているここにあるメリットはあまりないように思います。でもここにあることに意味があるのかもしれませんね。個人的には崖線の林の中を歩いた後にバイオトイレを見ると、トレッキングをしている気分というか、自然の中にいるといった気分に少し浸れるのでこれはこれでありかなと思ったりも・・・。それに普通のトイレと違うので、トイレだけを借りに来る人が少ないかもしれません。

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住所が成城三丁目なのによくもこれだけの緑がまとまって残っていたなと思うのですが、この緑地は緑や自然の保全を目的に世田谷区が農林水産省から土地を買取り整備したものです。緑地ができる前は、農水省の敷地内の雑木林となっていて、崖線の下、現在マンションがある辺りに林野庁の宿舎があったために、湧き水も林野庁宿舎裏の湧き水という名称で呼ばれていました。

以前は崖の上、明正小学校の横に林野庁の社宅もあり、この付近は林野庁の影響が強い土地でした。これには色々と訳があるようで、調べてみるとこの地域は面白い歴史を持っているようです。

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この成城三丁目緑地を含めた崖線、具体的にこの緑地がどれだけ含まれていたのかは定かではありませんが、江戸時代は徳川幕府、明治になっては宮内省の直轄地として特別に保護されてきた地域です。なんでも喜多見家が断絶になったときに幕府が召し上げたからだそうで、喜多見御料林と呼ばれていたそうです。

明治以降は長らく皇室ゆかりの苗畑があり、それを守るため林野庁の管轄下にあり、御料林でなくなった後もそのまま林野庁の敷地となり、開発を免れてきたようです。といっても開発を免れたものの、整備も免れたようで、世田谷区の緑地になる前は結構荒れた感じの雑木林となっていたようです。戦時中には明正小学校の辺りに学習院が移転する計画もあったという話も興味深いですね。こうしてみると皇室にゆかりがある地ともいえます。

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また見晴らしのいい台地とすぐそばに川、そして湧水とくれば古代人にとっての絶好の住居地となります。実際、崖線上には多くの遺跡が残っていて、特に有名なのは野毛の野毛町公園にある都指定史跡の野毛大塚古墳ですが、この緑地と道を挟んだ砧中学校の敷地にある砧中学校古墳群は一つの大きさでは大した事はないものの、古墳が8号墳まであるちょっとした群墳となっています。それに旧跡時代から古墳時代までの住居跡も見つかっているのも特筆すべきことではないでしょうか。

緑地のほうは下神明遺跡に含まれていて、旧石器時代から平安時代までの遺構が見つかっています。とりわけ崖の斜面は古代人にとって横穴墓を作るのに適していて、崖線には等々力渓谷にある都史跡の等々力渓谷三号横穴のような遺構が多くあると思われます。

この付近では不動橋横穴墓群、中神明横穴墓群、上神明横穴墓群など4丁目にかけて多くの横穴墓が見つかっています。とりわけ切り通しを造るために大規模に掘った不動橋付近から多くの遺構が見つかっていることから、緑地を含めたこの付近には多くの小さな遺構がまだ多く眠っている事が考えられます。

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最後に、この成城三丁目緑地では地域の住民の努力によって崖線の自然、いわゆる里山としての自然環境が守られています。この緑地を守っているのは成城三丁目緑地里山づくりコア会議で、2000年に地元住民の有志によって設立されました。

具体的な活動としては、月に一回第一木曜日に地域住民、小学校、世田谷区等と「成城3丁目緑地コア会議」を開き、緑地の保全や活用法などについて話し合っています。そして第三・五木曜日には実際に里山づくり活動を行い、下草刈りや落葉かき、剪定、植樹などを行うことで里山保全に取り組んでいます。

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また湧水周辺や里山に暮らす植生調査や生物調査も行っていて、この緑地にはクヌギやコナラを中心にシラカシ、アカマツ、ヒノキ、サワラ、竹林、サクラ等の植栽林が混在し、カワセミ、サワガニ、カブトムシなどといった生物が生息しています。その他、緑地の魅力や活動を未来に引き継ぐためのイベントを実施したり、小学校などのへの授業協力を行う事で、子供たちが里山の管理を体験する場を提供していたりしています。

特に里山と隣接している明正小学校では、総合学習の授業で、成城3丁目緑地での里山活動を取り入れています。身近な自然への興味や大切にする心を育むために、コア会議 のメンバーも児童たちの指導にあたっています。この活動は、都会における里山での環境学習のモデルケースとして全国でも注目される活動となっています。

<せたがや地域風景資産 No.1-27、成城三丁目緑地 2011年6月初稿 - 2015年8月改訂>