世田谷散策記 ~せたがや百景~

せたがや百景 No.92

上野毛自然公園

崖線の斜面を利用した公園で、木々の間を縫うように階段が上へ伸びている。斜面をおおう深い緑は野趣に富んでおり、大地から多摩川沿いの低地にかけてできた崖の植物相を観察できる。階段を登りきると桜の林が広がっている。(せたがや百景公式紹介文の引用)

・場所 :上野毛2-17
・備考 :ーーー

***  このページの内容  ***

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* 上野毛自然公園について *

稲荷坂下から見た上野毛自然公園の写真
稲荷坂下から見た上野毛自然公園

自然公園というだけあって木々が豪快に生い茂っています。

国分寺崖線には多くの坂道がありますが、上野毛駅前から下っていく上野毛通りの稲荷坂は二車線道路としてはなかなかの急坂です。この坂沿いの北側に坂の名にもなっている上野毛稲荷神社、そして南側に上野毛自然公園があります。

この稲荷坂のある上野毛通りは、中町、深沢と抜けていく道で、古くから大山街道の裏街道として使われていた道になります。

稲荷坂も古くからの坂で、大山道の行善寺坂には下り坂で停まりきらなかったり、バランスを崩して転倒する荷馬車の話が残っているのですが、この急な坂にもそういった話が幾つか残っています。

上野毛自然公園 稲荷坂下の入口付近の写真
稲荷坂下の入口付近

庭園だった名残でしょうか。石が多く使われています。

現在の上野毛駅の北側や西側付近はかつて上野毛の名主田中家の土地でした。田中家は吉良家家臣の末裔で、「一本氏名主」という一段高い格式を与えられていた家柄だったそうです。

崖線付近の土地も田中家の土地で、上野毛稲荷神社は六所神社が野毛(下野毛)に移された後、田中家の稲荷社を上野毛の氏神様として祀ったものになります。

この上野毛自然公園も田中家の土地でした。しかもただの敷地ではなく、桜や楓が多く植えられた桜楓園と呼ばれる庭園だったそうです。

何でも先祖の一人が道楽の全てをかけて粋を凝らした庭園にしたとかで、付近の住民からは旦那の森とも呼ばれていたそうです。

特に桜の花見の頃は美しく、都心より大勢の人が見物にやってきて、中には楽隊を引き連れてきて賑やかに踊ったりと、普段何もないような上野毛の地が賑わったそうです。

上野毛自然公園 公園の入り口(坂の上)の写真
公園の入り口(坂の上)

石畳の通路は庭園だった名残でしょうか。

この自然公園へ上野毛駅方面から訪れるなら上野毛通りを多摩川方面に進み、五島美術館の通りを美術館と反対側の左に曲がります。

するとすぐに覚願寺の幼稚園があり、その横に自然公園の入り口があります。ここから入ると、いきなり敷石が敷かれていて、自然公園なのに・・・と少し違和感を感じることでしょう。

恐らくこれは庭園だった頃の名残りで、その石材を使用したものではないかと思います。

上野毛自然公園 里桜が並ぶ広場の写真
里桜が並ぶ広場

散ったソメイヨシノと咲きかけの里桜が見事でした。

そして敷石が敷かれた通路を進むと広場があり、ここには多くの桜が植えられています。

これもかつて植えられていた桜なのだと思いますが、昔の記述では芝生が敷かれた広場で、大きな木もなく、富士山の眺望が素晴らしかったということなので、自然公園となったときにこの広場にまとめて植え替えられたのかもしれません。

あまり詳しい記述とかがないのでその辺は想像するしかありません。

この広場にはベンチも置かれていて、四季を問わず上野毛駅前のあたりで働いている人が昼食休みなどに静かな環境を求めて訪れています。

上野毛自然公園の写真
里桜が咲く様子

結構密集した感じに植えられています。

ここの桜はソメイヨシノと里桜の二種類が植えられているので、二度桜が楽しめます。

ソメイヨシノが散った後で訪れると、あたり一面ピンクの絨毯状態で、頭上には里桜が満開といったきれいな状態となっていることもあります。

あまり他の地域の人は知らないので、地元の人にとっては花見のいい穴場なのかもしれません。

ただ、木が密集しているし、日の当たりがあまりよくないので、写真を撮ったりするのは難しいかと思います。

上野毛自然公園 崖下に続く階段の写真
崖下に続く階段

再び登ってくることを考えると降りるのに結構勇気がいります。

この桜の広場からはひたすら崖線の斜面で、階段ばかりです。まっすぐ伸びた階段やら曲がりくねった階段やら、階段のオンパレードです。

崖上から眺めると、これ降りるの・・・と思う人が多いはずです。そして再び上に戻ってこなければならないことを考えて、やめておこう・・・となった人も多いはずです。

一応自然公園となっているので崖伝いに植物相を観察できるようにといった配慮なのでしょうが、山道を散策するような趣があるわけではなく、これはちょっと・・・といった感じです。

上野毛自然公園 木々と階段の写真
木々と階段

ここでの風景は階段と草木ばかりです。

同じく崖線上にある成城三丁目緑地や岡本静嘉堂緑地付近の崖などのように、緑の中を散策(トレッキング)するような小道だったり、逆にすぐ近くの五島美術館のように庭園としてなら感想も別だったのでしょうが・・・、こういった自然の中で階段だと気分的に疲れます。体的には階段のほうが楽なのですが・・・。って、もの凄く個人的な意見ですが。

上野毛自然公園 丸子川沿いの広場の写真
丸子川沿いの広場

丸子川沿いには少し平坦になっていて、菖蒲の花壇があります。

階段を下ると丸子川があり、この自然公園も丸子川で終わりです。

岡本民家園や静嘉堂文庫の辺りでは親水公園としてせせらぎのような流れだったのが、この辺りではむき出しのコンクリートに囲まれた水路といった感じになっています。

せっかくの自然公園なのだから、ここも岡本公園のような水辺の風景を・・・などと期待したいところです。

上野毛自然公園 ビオトープで咲く菖蒲の花の写真
ビオトープで咲く菖蒲の花

小さなビオトープも作られています。

丸子川の辺りでは少し広場になっていて水生植物が植えられています。

菖蒲が植えられているという事なので咲いている時期に訪れてみたものの、そんなに数は多くありませんでした。

小さなビオトープも作られていて、ビオトプに咲いているほうが地植えよりも色鮮やかに咲いていました。

* 感想など *

上野毛自然公園 崖と林と階段の写真
崖と林と階段

見方によっては面白い光景かも。

かつてこの坂の下にあった東急自動車学校に通っていたので、何度となくこの坂道を通っていたのですが、神社や自然公園があるとは今までちっとも気がつきませんでした。車やバイク、自転車で急坂を通行する場合はあまり余裕がないものですね。

こんなところに自然公園があったんだと楽しみに訪れたのですが、庭園や里山のような美しさがあるわけでもなく、桜の時期以外はただの雑木林といった感じでした。

でもせっかく来たので何か面白さを探さなければ・・・と周囲を見渡すと、階段と崖と雑木林いう光景ってちょっと面白いかも・・・。階段を上り下りして額からこぼれでた汗をぬぐいながら思ったのでした。

せたがや百景No.92 上野毛自然公園
ー 風の旅人 ー
2018年4月改訂

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* 地図、アクセス *

・住所上野毛2-17
・アクセス最寄り駅は大井町線上野毛駅、あるいは田園都市線二子玉川駅。
・関連リンク上野毛自然公園(世田谷区)

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