世田谷散策記 ~せたがや地域風景資産~

せたがや地域風景資産 No.2-23

喜多見ふれあい広場から見た「野川と国分寺崖線の纏まとまった緑」

小田急線の車両基地でもある「喜多見ふれあい広場」に立つと、足下を流れる野川のすぐ向こうに国分寺崖線のパノラマが広がります。野鳥が羽根を休め、広場や川辺で人が集う、地域の憩いの場です。(公式紹介文の引用)

・場所 :喜多見9丁目25(きたみふれあい広場)
・関連団体:崖線みどりの絆・せたがや
・備考 :きたみふれあい広場は6時半~17時半

***  このページの内容  ***

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* きたみふれあい広場について *

崖線から見た富士山ときたみふれあい広場の写真
崖線から見た富士山ときたみふれあい広場

4丁目の崖線の上から見た図です。

さてこの「喜多見ふれあい広場から見た「野川と国分寺崖線の纏まとまった緑」」ですが・・・、やっぱり長いので個別に見ていくことにします・・・。

まず喜多見ふれあい広場(正式にはきたみふれあい広場)ですが、この公園は世田谷区立の公園で、小田急線の北側、野川の左岸に位置しています。驚くべきはなんと小田急電鉄の喜多見電車基地の上部というか、屋上部に立地しているのです。初めて知ったときはビックリしてしまいました。

こういうのは土地の有効活用のモデルケースみたいな感じになっているのでしょうか。土地の少ない都会ならではの公園かもしれません。でも眺めのいい崖線の上から見ると、公園部にカモフラージュされている地下工場みたいな感じです。これなら空襲を受ける心配が・・・、大戦時の教訓を・・・ってな事はないのですが、戦時中の遺構を見て回った後にこの車両基地を見ると、色んな想像をかき立てられます。

喜多見ふれあい広場の案内板の写真
きたみふれあい広場の案内板

細長い公園で、入場時間が決まっています。また園内は禁煙です。

喜多見ふれあい広場の入り口付近の写真
きたみふれあい広場の入り口付近

野川からだと階段を登らないといけません。

実際に公園として使用されているのは小田急電鉄喜多見電車基地の車庫部分(電車を置いておく場所)で、園内は約27,000平方mの広さがあります。この広場から小田急線までの間には工場のような建物があるのですが、こちらは整備工場となっています。車庫部分なら薄暗くたって、換気が少々悪くたって問題ないといったところなのでしょうか。内部がどうなっているのか興味がありますが、残念ながら見学はできないので想像するしかありません。

古い地図を見るとこの部分にはかつて砧西公園があったようです。そしてこの付近はかつてとてものんびりとした風景の見られるような場所だったようで、せたがや百景には「野川と小田急ロマンスカー」という項目が選定されています。車両基地が造られる前は世田谷通りなどから小田急線を見たときに、野川を渡る赤いロマンスカーと周辺の緑の風景がマッチして印象的な光景だったようです。

しかしながら小田急線の複線化と車両基地の建設でそのような光景を見ることができなくなってしまいました。きたみふれあい広場はどのような経緯でこういう形の広場や車両基地の建設にいたったのか知りませんが、相反するインフラと緑地化をうまく共存させてしまったのは凄い事かと思います。でも車両基地の上に公園ができてしまうとは・・・、やっぱりすごい世の中だなと思ってしまいます。

喜多見ふれあい広場 桜のある広場の写真
桜のある広場

屋上なので日当たりがよく、桜が植えられているので花見をするのにもいいです。

喜多見ふれあい広場 花見の様子の写真
花見の様子

時々地面から地響きがする以外は快適なはずです。

公園自体は車両基地の上にあるという以外はごく平凡な公園となるでしょうか。近年ではタバコの分煙に対して厳しい世の中となり、指定し以外では禁煙といった公園も珍しくありませんが、ここでは車両基地の上ということで以前から禁煙となっていたのが、ちょっと物珍しく感じていました。

園内は樹木も植えられていて、芝生も敷かれている広場や小さな山もあります。桜が多く植えられているので、花見にもよさそうな感じです。日当たりがいいので晴れていてもあまり暑くない日はとても気持ちがいい花見になるのではないでしょうか。ただ時々ゴォーと地面から列車が動いている音がしてきます。

喜多見ふれあい広場 きたみふれあい広場からの富士山の写真
きたみふれあい広場からの富士山

冬の晴れた日には富士山を眺めることができます。

また、地上から10メートルの屋上に作られているので、東に野川や成城4丁目付近の国分寺崖線のみどりが望め、西には晴れた冬の日などに富士山や丹沢の山々を見ることが出来ます。まるで小さな丘の上にある公園といった感じでしょうか。空が広く感じます。

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* 野川緑道について *

喜多見野川緑道 桜の時期の野川緑道の写真
桜の時期の野川緑道

野川沿いは桜並木の遊歩道になっています。

喜多見野川緑道 喜多見車両基地と野川緑道の写真
喜多見車両基地と野川緑道

きたみふれあい広場よりも線路寄りは整備工場となっています。

次に野川ですが、小田急線よりも上流は遊歩道が整備されています。桜が多く植えられているので桜の時期には美しい桜並木となります。野川がそこまで人工的な護岸となっていないし、周囲に緑や空間が多いので、とても素敵な桜並木です。

喜多見野川緑道 神明橋の南側の写真
神明橋の南側

左の成城側はピンクのソメイヨシノで、右の喜多見側は白い大島桜が中心となっています。

喜多見野川緑道 神明橋の北側の写真
神明橋の北側

きたみふれあい広場の入り口付近です。
上流は成城側の方が桜が沢山あります。

ここの面白いのは、車両基地やふれあい広場のある側には白っぽい大島桜が中心に植えられていて、対岸の成城側にはピンクのソメイヨシノが植えられています。左右の河岸で桜の種類が違うというのも珍しいです。きっと初めて訪れたなら欲張ってどっちの桜並木も歩きたいといった気持ちになってしまうことでしょう。途中にある神明橋で渡ることができるので、ゆっくりと散策を楽しむといいかと思います。

また川辺に下りることもできます。桜の開花時期には水辺の気持ちよさと桜を楽しむために川辺にシートを敷いて花見をしている人も多くいます。

喜多見野川緑道 菜の花と桜並木の写真
菜の花と桜並木

川に降りると場所によっては菜の花もきれいに咲いていました。

川に降りると桜並木を見上げるようになり、視界から人工物が目立たなくなります。青空と野川の流れと緑、そして桜と自然豊かな環境の中にいるような感覚になれます。

野川自体は国分寺崖線沿いの湧水が集まって流れているような川なので、水が自然のものに近く、生命豊かな川として知られています。川を覗くとフナなどといった魚が泳いでいるのを見ることができ、そして小魚や昆虫などを餌にしている鳥たちも目にします。さらにはそれを狙うごついカメラを持った鳥好きの集団も見かけます・・・笑。

ただ現在下流の方から治水工事が進められていて、全体的に河床を掘り下げるような工事が行われています。この付近がどのような工事が行われるのか、それとも工事されないのかわかりませんが、今後も今のようなのんびりとした風景が保たれてくれることを願っています。

* 地域風景資産について *

喜多見ふれあい広場から見た野川の桜並木と国分寺崖線の写真
野川の桜並木と国分寺崖線1

小田急線やみつ池方面です。

最後に地域風景資産と国分寺崖線ですが、このきたみふれあい広場、といっても広場に入る階段のテラス部分から野川や崖線が良く見えます。特に春は手前の大島桜、対岸のソメイヨシノ、崖線の緑ととても美しい風景を見ることができます。

ここから見える崖線は小田急線よりも北側の成城4丁目の崖線となります。成城4丁目の崖線には線路から喜多見不動尊、成城みつ池(自然保護区)や成城4丁目十一山市民緑地、成城4丁目緑地、ビール坂緑地とまとまって緑のある公園などが多いのが特徴です。そのため崖線全体で見るなら比較的緑がつながっていて、大袈裟に言うなら崖線本来のまとまった緑を眺めることができるといえます。

喜多見ふれあい広場から見た野川の桜並木と国分寺崖線の写真
野川の桜並木と崖線2

調布方面の様子です。川沿いに桜並木が続いています。

成城付近の崖線は緑豊かな場所、崖線を利用した町並み、そして坂のある風景と自然だけではなく、様々な角度から魅力ある風景となっています。それはせたがや百景にも地域風景資産にも崖線関連の項目が多く登録されている事からも分かります。

地域風景資産で言うなら4つの項目が選定されていて、その中の「成城3丁目の国分寺崖線の樹林」「成城3丁目桜と紅葉の並木」そしてこの項目は、「崖線みどりの絆・せたがや」という団体の推薦によるものです。この団体は、近年崖線が代替わりなどをきっかけに開発され、樹木が伐採され、年々緑が少なくなっていくことに心を痛めていた人達が集まり、会の発足につなげたのです。

そして当時の熊本世田谷区長宛に「国分寺崖線の纏まったみどりを守る緊急提言」を行っています。そういった経緯があるからタイトルに「国分寺崖線の纏まったみどり」という文字が入っています。そういった事情を知った後で長いタイトルを見ると、ただ長いだけではなく、緑の多い崖線を守りたいといった気持ちが強く表れているから長くなってしまったんだなと感じました。

* 感想など *

春の野川緑道の写真
春の野川緑道

野川の川べりで桜や崖線を眺めながらのんびりと過ごしてみてはどうでしょう。

この項目は丘のような喜多見ふれあい広場に、桜並木が続く野川緑道、そして河川敷でのんびりとできる野川、さらには目の前には比較的緑の多い成城の国分寺崖線がありと、いい風景の合わせ技となっています。とても素晴らしい場所で、ぜひ一番美しい桜の時期に訪れてほしいです。

色んな項目が合わさった弊害としてタイトルがちょっと長くなっています。風景資産が百景と一番違うところは、それぞれの風景に携わっている人がタイトルの草案を出しているので、タイトルの長さや構成の統一性がないところでしょうか。素人だとあれも入れたい、これも入れたいと長くなりがちなものです。それに比べるとプロのコピーライターなどはズバッと要点をまとめたカッコいいタイトルや商品のキャッチコピーを鮮やかに作ってしまいます。

でも逆を言えば、自分たちが携わっているからこそ思い入れも強く、大切にしたい部分も多く、傍から見るとだらだらと長くなって見えるのはしょうがない事かもしれません。そして選定の背景などの事情を知ると、このような長いタイトルには営利的な関係では切れない、人と人の絆のような推薦者の思いが詰まっているんだなと改めて思ってしまいました。

ー 風の旅人 ー

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* 地図、アクセス *

・住所喜多見9丁目25(きたみふれあい広場)
・アクセス最寄り駅は小田急線喜多見駅、成城学園前駅
・関連リンクきたみふれあい広場(世田谷区) 野川緑道(世田谷区)

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