世田谷散策記 タイトル
せたがや百景 No.66-1

砧ファミリーパーク(都立砧公園)

砧公園1−1

日比谷公園の約2倍の園内には一面緑の芝生が敷きつめられている。ゆるやかな起伏と木々が公園の景観にほどよい変化を与えている。家族連れやグループでのんびり一日楽しむには絶好の場所で、遠近各地から訪れる人々が多い。園内にオープンした区立世田谷美術館も人気を呼んでいる。(せたがや百景公式紹介文の引用)世田谷美術館はNo.66-2で紹介しています。

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1、都立砧公園の歴史

都立砧公園 環八側の入り口
環八側の入り口

用賀駅方面のメインゲートです。

環八にある東名高速入り口付近に都立砧公園があります。世田谷区内には他にも駒沢オリンピック公園、芦花公園(蘆花恒春園)、祖師谷公園といった都立公園があり、23区の中でも都立公園が多い区になります。

園内の敷地面積は約391,262㎡(39.1ha)と広大で、どれくらい広いかというと、百景の文章では日比谷公園(161,636㎡)の2倍という表現をしていますが、今時の表現に直すなら東京ドーム(46,755㎡)の約8倍ということになるのでしょうか。

と言っても、日比谷公園にしても東京ドームにしても訪れたことがなければ比較できないだろうし、仮に訪れていてもその何倍と言われても単に大きいんだなといったぐらいしか想像できないような気がします。

一番簡潔に書くなら、一辺が625mの正方形の大きさというのが分かりやすいような気がしますが、どうでしょう。想像が付きましたか。

ちなみに、上には上がいて、砧公園は都立公園の中では9番目の広さです。区内にある駒沢オリンピック公園は砧公園よりもほんの少し大きい41.3haで、8位。上野恩賜公園や代々木公園は砧公園の1.4倍のおよそ54haあり、5位と6位。一番大きいのは、葛飾区にある水元公園で砧公園の2.4倍の93.7haあります。

1940年代後半 砧公園付近の航空写真(国土地理院)
1940年代後半(戦後間もなく)

国土地理院地図を書き込んで使用

どのような経緯で広大な砧公園ができたのでしょう。歴史を紐解いてみると、昭和14~15年(1940年)に東京府(都)が計画した緑地化計画まで遡ります。

関東大震災の復興が終わった昭和初期、悪化する都市環境の改善と、災害や戦災時の防災拠点の整備、都民のレクリエーションを望む声が大きくなりました。それを改善するため、東京都市圏に6カ所の緑地を造る計画が練られました。

この年は、神武天皇が即位した紀元元年から2600年後にあたるとされていて、東京府では「紀元二千六百年記念事業」と位置付けるなど、とても気合の入った(強引な)ものでした。

その一つに選ばれたのが砧大緑地でした。ついでなので残りも書いておくと、神代緑地(現・都立神代植物公園、調布市)、小金井大緑地(現・都立小金井公園、小金井市)、舎人防災緑地(現・都立舎人公園、足立区)、水元緑地(現・都立水元公園、葛飾区)、篠崎緑地(現・都立篠崎公園、江戸川区)で、現在、いずれも大きな都立公園になっています。

しかし、その後太平洋戦争が始まり、計画は一時中断。国家防衛が優先され、戦時下は防空緑地として整備され、軍事訓練場、滑空訓練場、戦技術訓練場などが造られました。

戦争が長期化すると、食糧不足に対処するために、芋などの野菜栽培や、空襲に備えて防空壕が掘られたりしたそうです。記録によると、実際に空爆を受けたようです。

このように書くと、現在の砧公園の大きさからして、三宿にあった陸軍基地のようなとても大きくて、立派な施設があったように思ってしまいがちですが、そんなことはなく、空き地を利用した簡易的な施設だったようです。

1960年代 砧公園付近の航空写真(国土地理院)
1960年代

国土地理院地図を書き込んで使用

戦後になると、再び緑地として整備が始まり、昭和24年には野球場とキャンプ場が新設されました。

戦後の復興が進み、世の中が落ち着いてくると、レクリエーションへの欲求が高まります。昭和30年には都営のゴルフ場が建設されました。公営なので使用料も安く、好評だったようです。

1970年代後半 砧公園付近の航空写真(国土地理院)
1970年代後半

国土地理院地図を書き込んで使用

昭和39年に東京オリンピックが行われました。その後の昭和41年、「より多くの都民の、レクリエーションの欲求にこたえるのが緑地本来の姿である」という事で、ゴルフ場を廃止して、広い芝生の砧ファミリーパークとして整備されました。

同じ年には、東京オリンピックの熱戦により区民の運動への機運が高まったということで、砧公園の西側に陸上競技場やピラミッド型の体育館を有した大蔵運動公園が建設されました。

周辺もオリンピックを機に賑やかになり、東名高速や環八、世田谷通りが整備され、北側には清掃工場や世田谷市場が建てられました。

当時の日本は高度成長期の真っ直中。特に東京はオリンピックを機に凄まじい勢いで開発が進みました。それはどんどんと空いた土地に建物が建てられていくことで、開発と引き換えに自由にくつろげる空間を失うということでもありました。

ゴルフ場跡を利用した広い芝生を擁する砧ファミリーパークは、たちまち人気となり、週末にもなると都民がどっと押しかけたそうです。

1985年頃 砧公園付近の航空写真(国土地理院)
1985年頃

国土地理院地図を書き込んで使用

砧ファミリーパークび開園から20年後、1986年に世田谷美術館が開館します。その前年の写真を見ると、公園予定地の立ち退きがほぼ終わり、ようやく現在と同じほどの敷地になっています。ただ、まだ環八付近に建物が残っているのが確認できます。

写真を見て驚いたのが、公園の西側部分に池のある野鳥の保護エリアがあるのですが、自然豊かな場所なので、公園ができる以前から池があって、木が生い茂っていたんだろうと思っていたのですが、元々は畑や宅地だった場所だったのですね。

都立砧公園 ファミリーパークでの花見
ファミリーパークでの花見

朝の様子ですが、昼頃には人であふれかえります。

都立砧公園 入り口付近のケヤキ並木と野球場
入り口付近のケヤキ並木と野球場

秋には色とりどりです。環八、東名高速に隣接しているとは思えない環境です。

その後も細かい整備が行われ、現在では約25ヘクタールもある芝生広場を中心に、子供の遊び場、野球やサッカー場、美術館などのある総合公園となっています。

広々とした園内には立派な木が多く、特に数多く植えられている桜の木の枝ぶりは立派で、くつろげる広大な芝生エリアもあることから、花見スポットとして広く世間にその名が知られています。

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2、公園内の紹介1(ねむの木広場周辺)

都立砧公園の案内図
都立砧公園の案内図

左側はゴルフ場だった面影の残るレイアウトになっています。

砧公園の広い園内には、色々な施設や特徴のあるエリアがあります。私なりに解釈すると、園内は大まかに分けて5つの顔があると感じます。ということで、勝手に5つに分けて砧公園を解説していきます。

都立砧公園 ねむの木広場
ねむの木広場

広い芝生のエリアで、奥に清掃工場の煙突がそびえています。

まず一つ目は、環八側から入ってすぐのエリア。砧公園で一番最後に追加され、整備された部分です。

ねむの木広場を中心としたこのエリアには、芝生が敷き詰められていて、子供の遊具施設があるアスレチック広場(現・みんなの広場)があり、売店があって、梅林やバラ園もあったりと、普通の公園といった感じにまとまっています。

奥のファミリーパーク内は犬の連れ込みは禁止ですが、ここの芝生は犬を連れて入ってもいいので、朝、夕に犬の散歩に訪れる人が多く、時々愛犬家の集団などを見かけます。

都立砧公園 ねむの木
開花時のねむの木

6~7月ころに開花します。少し甘い香りがします。

ねむの木広場の真ん中には、その名前となっている巨大なねむの木があります。ねむの木は豆科の植物で、初夏、6月から7月ころに開花します。筆の刷毛のようなピンク色の花を咲かせ、開花時期には少し甘い香りが周囲に漂います。

なぜ、ねむの木というのか。それは、夜になると葉を閉じる習性があることに由来していて、まるで木が眠っているようにみえることから、この名が付いたようです。

都立砧公園 アスレチック広場
アスレチック広場(現・みんなの広場)

いつも賑やかな子供の声がきこえてきます。

ねむの木広場の北東側には、アスレチック広場(現・みんなの広場)があります。ここには小学生ぐらいの子供が遊べる遊具が置いてあり、休日は一日中、平日でも夕方前になると、子供を連れたお母さんや学校が終わって遊びにきた子供の姿を多く見ます。

楽しそうな遊具が幾つも置いてあり、なかには凝った仕掛けのものもあります。地面は転んでも大けがをしないようにウッドチップ(現・ゴムチップ)が敷かれているので、安心して遊ぶことができます。

腕白に遊ぶ子供たちには盛況のようで、我先にと遊具で遊ぶ姿が印象的です。子供の遊べる時間帯には混んでいることが多いです。

現在では、みんなの広場と名を変え、障がいのある子もない子も、みんなで一緒に楽しく遊ぼう!をテーマに、エリアは柵で囲まれ、遊具も更新され、更に安心して遊ばせられるようになっているようです。

都立砧公園 梅林
梅林

まとまった数の梅の木があります。

ねむの木広場の北側には売店があり、遊び道具やお菓子などが売られています。売店はここともう一か所、美術館の前にあり、美術館前ではカレーなどの軽食も販売しています。

売店の奥には梅林が広がっています。結構な本数がまとまって植えられているので、春の開花時期にはなかなかの風景になります。梅林はファミリーパーク内にもあり、さりげなく梅の多い公園となっています。

公園のできる前に梅林があったのでしょうか。昔は税金対策として、手のかからない梅を植えて、農地にする人も多かったようですから。

ちなみに用賀駅から砧公園まではいらか道でつながっていますが、その途中にもかつては梅林が多くありました。今では少なくなりましたが、まだ梅林を維持している方がいて、青梅の季節には販売もしています。せたがや育ちの用賀産梅酒なんていうのを作って話のネタにしてみるのもいいのでは。

都立砧公園 八季の坂道
八季の坂道

環八沿いにある坂道で、様々な植物が植えられています。

環八沿いは少し盛り上がっていて丘のようになっています。その丘の環八沿いに造られているのが、八季の坂道です。

八季とは春夏秋冬の四季を倍にしたもの。実際、坂道沿いの植物は多様で、いつ訪れても何かしらの花が咲いているといった感じです。ぜひ歩いてみてください。

都立砧公園 バラ園
バラ園

アスレチック広場の横にあります。

八季の坂道ある丘の斜面には、なかなか立派なバラ園が設置されていて、春と秋の見ごろの時には、とても華やかな雰囲気になります。

管理や手入れを行っているのは、ボランティア団体KPA。春と秋のバラの開花時には秋のバラを観る会が開かれ、バラ園が解放されます。

都立砧公園 バラと母子像
バラと母子像

サッカー場の前に古くからあります。

園内にはバラ園が他にもあります。サッカー場の前にある母子像の周りにもバラが植えられています。開花時期、バラに囲まれている母子像はとても穏やかに見えます。

こちらの方が元祖となり、後に広々としたアスレチック広場により大きなバラ園が設置されました。

砧公園周辺では、高速道路の南側の住宅地の中にある瀬田フラワーランド、すぐお隣の大蔵総合運動公園にも立派なバラ園があるので、バラの時期はセットで訪れてみるといいでしょう。

都立砧公園 夕方のねむの木広場周辺
夕方のねむの木広場周辺

夕方遅くまで子供たちの遊び声が響いています。

ねむの木広場周辺は用賀駅から一番近い入り口付近で、気軽に子供が遊べ、犬も散歩できるエリアなので、明るい時間帯は常に賑わっているといった感じがします。

また、東日本大震災以降は、災害拠点としての整備が行われ、非常時に竈になるベンチなどが設置されました。万が一の際には周辺住民などの心強い避難場所になるはずです。

3、公園内の紹介2(運動関連の施設)

都立砧公園 野球場
野球場

2面仕様のナイター施設完備です。

都立砧公園 少年サッカー場
サッカー場

サッカー人気からか多くの子供が練習に励んでいます。

次は運動公園としての一面です。環八側の入り口付近、東名高速側に長方形をした2面の野球場があり、ねむの木広場の西側には少年サッカー場があります。

どちらの設備もナイター完備なので、平日の夕方などに少年サッカー教室や野球教室が開かれ、休日には試合が行われています。

昔は野球が子供たちの間では人気スポーツでしたが、今ではサッカーの方が人気があるようで、サッカー場はいつも大勢のちびっ子サッカー少年や保護者の人がグラウンドを取り囲んでいます。

野球場の方は少年野球や大学などのソフトボール部の練習を時々見かけますが、草野球チームのおじさんたちが多いように思います。

砧公園のお隣は大蔵運動場で、向こうには立派な野球場があるので、そっちの方で子供達の野球教室とかをやっているのかもしれません。

都立砧公園 芝生広場
芝生広場

隣は子供の森となっていて、木々に囲まれた広い芝生広場です。

サッカー場の裏手には広い芝生の芝生広場があります。不自然に平らで、方形をしているこの場所は、昭和24年の開園時には野球場がありました。その後、長方形の二面の野球場になり、入り口付近に野球場ができたことから、芝生の広場になりました。

この芝生広場の西側は子供の森という遊具の置かれている林があります。ねむの木広場ほど遊具は置かれていないものの、こちらも子供の姿が多いです。

健康器具なども置いてあるので、朝夕には散歩の途中に立ち寄り、身体などを伸ばしている年配の方の姿を見かけます。

都立砧公園 ファミリーパーク内を走るランナー
ファミリーパーク内を走るランナー

緑の多い中を走っている様子は気持ちよさそうです。

これだけ広く、緑の多い公園なので、ジョギングやランニングにも最適な環境です。部活で走っている高校生や大学生、サッカーチームや野球チームの子供達が集団で走っている光景もよく目にします。

専用のジョギングコースというのはないのですが、他の利用者の迷惑にならないように、ファミリーパークの外周に設置されているサイクリングコースを利用する人が多いです。そこそこアップダウンがあるので、意外と走りがいがあります。

また、足への負担を減らすためなのか、ファミリーパーク内の外周を走る人もいて、ケモノ道ならずランナー道が出来上がっていたりします。

都立砧公園 サイクリングコース
サイクリングコース

ファミリーパークの外周を一周するように設置されています。

ファミリーパーク外周にはサイクリングコースが設置されています。と言っても、ちょっと微妙な感じのコースで、上で書いたようにジョギングコースになっている感じです。

このサイクリングコースは、管理センターの裏側にちゃんとした入り口があります。ゲートがあって、管理の建物があってといった立派なものですが、現在では使われていません。

恐らく、昔は駒沢公園のように貸自転車があり、レジャーとして一周サイクリングを楽しむようになっていたのではないでしょうか。それが廃れて、一般に開放され、現在のようなサイクリングコースなのか、単なる自転車の通り道なのか、ジョギングコースなのかよくわからない中途半端な状態になってしまったように感じます。

4、公園内の紹介3(ファミリーパークと桜)

砧公園ファミリーパーク 立派な桜が並ぶ様子
立派な桜が並ぶ様子

広い芝生と桜が特徴のエリアです。

三つ目は、昭和41年に開園したときのオリジナル部分、いわゆる砧ファミリーパークです。広い芝生を中心としたエリアで、ここが一番砧公園らしいと言うか、百景のタイトルになっているように砧公園の特徴となっています。

砧公園ファミリーパーク 奥の方のエリア
奥の方のエリア

木の上を通してとか、ゴルフコースを連想してしまう風景です。

一番最初の歴史に書いたように、ファミリーパーク部分にはかつてゴルフ場がありました。そのゴルフ場のコースだった部分をうまく整備して緑地化したのが、ファミリーパークになります。

美術館のところからファミリーパークに入場すると、とても広い空間となっていて、ここではあまりゴルフ場だった名残を感じることができませんが、奥のほうへ行くと、ゴルフ場のコースだった雰囲気を髄所で感じられます。場所によっては、ゴルフ場の中を歩いているような感覚になることもあります。

きっとゴルフをしている人なら、あの木の横を通して・・・とか、あの位置にグリーンがあれば面白いコースだな・・・などと、歩きながら想像できるのではないでしょうか。

砧公園ファミリーパーク ファミリーパークの桜
ファミリーパークの桜

奥のネットは第二運動場のゴルフ練習場です。

ファミリーパーク内は芝生でくつろげるようにということで、自転車の乗り入れや犬などのペットの持ち込みが禁止なので、だだっ広い芝生で自由にくつろぐことが出来ます。

これだけ広い芝生のある公園というのは、なかなかないのではないでしょうか。というより、ゴルフ場をそのまま公園にしたというのが、レアケースかと思います。

芝生ばかりで、手を抜いて造った公園とか、維持するのが簡単そうなどと思う人もいるでしょうか。まあ確かに公園にするのは手がかからなかったとは思いますが、芝生は芝刈りなどの手入れが必要となり、何気に維持するのに手間がかかっています。

砧公園ファミリーパーク 花見時のファミリーパーク
花見時のファミリーパーク

朝の様子ですが、昼には人で一杯になります。

砧公園全体となりますが、ソメイヨシノやヤマザクラなど約930本が植えられています。とても桜の多い公園です。桜の多くはファミリーパーク内に植えられているので、広々とした芝生の中で花見を楽しむことができます。おかげで都内でも有名な桜の名所、そして花見スポットととして名が知られています。

ファミリーパークの芝生を囲むように咲く様子はとても美しく、そして広々としているので、壮観とか、壮大な気分になります。東京にあってこれほど開放感を感じられる桜の名所は他にないのではないでしょうか。実際に訪れると、人気となっていることに納得するでしょう。そして、また来年も来たいと思うでしょう。

砧公園ファミリーパーク 桜のナイアガラ
桜のナイアガラ

巨大な桜なので目の前に立つと圧巻の眺めとなります。

開花時期の週末には、どっと花見客が押し寄せ、だだっ広い芝生が花見客のビニールシートで埋まってしまうほどです。まるで夏に湘南の海水浴場が海水浴客で埋め尽くされているかのようです。

日曜日の朝の場所取りは激しく、早朝に写真を撮りに出かけると、もう既に場所取りが始まっていて、ビックリすることもあります。基本的には、桜の木の周りから埋まっていくといった感じです。

また、花見の時期の月曜日の朝に訪れると、公園全体がビール臭いです。この時期は月曜日に雨が降るとほっとする周辺住民も多いのではないでしょうか。

砧公園ファミリーパーク ファミリーパークの桜群
ファミリーパークの桜群

複数の木で大きな桜を形成しています。

ファミリーパーク内の桜はちょっと面白い配置をしています。多分、これはゴルフコースだった名残だと思うのですが、芝生と木々のエリアが明確に分かれています。

桜も芝生エリアの中に固まって植えてあり、何本もの木で大きな一つの桜群を形成しているといった感じです。その姿はとても巨大な桜の木が植えられているような感じなので、遠くから見ても圧巻です。

桜群の中に入ってみてください。木の懐に入ったような気分になり、とても心地いいです。また太陽に透かして見る桜も幻想的に感じるでしょう。

5、公園内の紹介4(野鳥の保護区)

都立砧公園 バードサンクチュアリ内の池
バードサンクチュアリ内の池

公園内にこんな池があるとはビックリです。

四つ目は、芸術的な一面です。公園の北側には駐車場があり、その西側の一角に世田谷区立の世田谷美術館とレストランがあります。これは次のページ(No66-2)で紹介しているので、省略します。

五つ目は野鳥の森としての一面です。これは知らない人も多いというか、広すぎて気がつかないというか、恐らくは興味がなくて気がつかないだけだと思いますが、ファミリーパークの西側、大蔵総合運動場側の一部はバードサンクチュアリという野鳥の保護区となっています。

結構広い区画が保護区となっていて、内部には池もあり、鳥たちの巣や憩いの場所となっています。

都立砧公園 バードサンクチュアリの観察台
バードサンクチュアリの観察台

のぞき穴から見学ができるようになっています。

保護区なので内部には入ることはできませんが、中の様子は観察台から見ることができます。この観察台には鳥たちに警戒されないように観察用の窓のある衝立が設置されています。

とはいえ、池や木々までちょっと遠いし、ハクチョウなどの大きな鳥ならともかく、小さな鳥が多いので、肉眼ではちょっと遠くて厳しそうです。

鳥については詳しくないのでわかりませんが、秋から冬にかけて観察会などが開かれているようなので、季節的にはその時期が一番いいのでしょうか。

展望台に設置されている案内板によると、シジュウカラ、ヒヨドリ、キジバト、カワラヒワ、ハシプトガラス、オナガドリ、ムクドリ、コジュケイ、カルガモ、ハクセキレイなどを見ることができるようです。

都立砧公園 水たまりで水遊びをする雀
水たまりで水遊びをする雀

楽しそうで、ほっこりする光景でした。

本格的な野鳥の森が併設されている公園というのは・・・、調べてみるとやはり区内ではここだけのようです。そう考えるとかなり特徴のある施設ということになるのですが、やはり都会の野鳥の森では根本的に中途半端すぎるような気もします。

実際、砧公園ではカラスを一番よく見るような気もします。とりわけ花見時期の夕方は食べ残しをあさりに来たカラスだらけです。縄張り意識が高いようで、散策しているとしょっちゅう羽をむしりあうような激しい喧嘩をしています。

また、時々雨上がりなどにはカルガモやら都会では減少しているスズメが水たまりで遊んでいることもあります。田舎では人間と猫の距離が近いなと思うのですが、都会では鳥と人間の距離が近いなと感じてしまいます。

都立砧公園 菜の花とスイセン
菜の花とスイセン

バードサンクチュアリの前に咲いています。

観察台のある丘には大きな花壇が設置されていて、鳥以外にも季節の花を楽しむことができます。

春先の花が少ない時期に咲く、菜の花とスイレンはなかなか見事で、少し足を延ばして訪れたくなります。

6、公園内の紹介5(その他いろいろ)

都立砧公園 砧大塚
砧大塚

祭礼用の祭壇だったとか。

砧公園内には幾つか変わったものがあります。まず、砧大塚という古墳みたいな山(塚)。野球場の東側、母子像の近くにあります。子供にとってはいい目標物のようで、見つけ次第まっしぐらに登っていく子もいます。

案内板によると、これは古墳ではなく、修法の壇(仏教の呪術を行った祭壇)として造られたものだとか。いわゆる祭事用の塚だったようです。元々は東名高速道路部分にあったものを工事の際に移動したとのこと。

って、わざわざ移動してくるほどだったのだろうか、と思ってしまいますが、地元では古くから大切に扱われてきたもののようです。

1940年代後半 砧公園付近の航空写真(国土地理院)
1940年代後半(戦後間もなく)

国土地理院地図を書き込んで使用

ちょっと気になって調べてみると、まず戦後の写真。塚がはっきりと写っていて、しかも、大切に残されている感が伝わってきます。(高射砲などが設置されていた可能性もありますが・・・)

ただ、実際にあった場所は東名高速の下ではなく、ちょうど公園の入り口付近になります。少し削らなければならないなら、邪魔にならない場所まで移動してしまおうといった感じだったのでしょう。

この塚と関係あるのか分かりませんが、この塚の少し西に、かつて魔王と呼ばれた第六天(大六天)を祀った「第六天の森」がありました。

なんでも「江戸時代にその森を開発しようとしたところ、事故が多発して工事が中止になったとか。」それ以降は祟りを恐れ、近づかないようにしたとか。

都立砧公園 東名高速の南側の御神木
東名高速の南側の御神木

御神木を迂回するように道が造られています。

その名残として、現在でもご神木の切り株が残っています。なんで切り株になってしまったのかわかりませんが、腰掛けるのにちょうどいい感じの切り株が置かれ・・・、いや、祀られています。

触れると祟りがあるという話なので、腰掛けでもすると、とんでもない厄災が降りかかってくるかもしれません。なにせ区画整理の際でも祟りを恐れ、この場所を避けるように道路が設置されているほどですから。

砧大塚といい、第六天の神木といい、岡本の町民はとても迷信深い土地になるようです。ちなみにこの場所にあった第六天を祀った祠は、岡本八幡神社に遷されています。

とまあ、砧公園はなかなか迷信深い場所になるようです。園内の木を折ったりすると、第六天様の祟りに遭うかもしれませんよ。

都立砧公園 吊り橋
吊り橋

谷戸川に架かる橋です。

次に、砧公園内にはさりげなく谷戸川が流れています。川沿いは特に緑が豊かで、プチ等々力渓谷といった雰囲気があります。

世田谷市場付近にはつり橋もかけられています。特に立派というわけではありませんが、少し冒険気分を感じられることでしょう。

また、実際に目にすることはできませんが、谷戸川の水を利用した地下貯水池というものも地中に設置されていたりします。

都立砧公園 夜のパークブリッジ
夜のパークブリッジ

環八に架かる橋です。

橋つながりでもう一つ紹介すると、砧公園には世間に知られる橋があります。環八にかかる歩行者専用のパークブリッジです。

とても立派で、なかなかおしゃれな橋です。だから有名・・・ではなく、通行人がほとんどいないのに立派すぎる橋としてテレビに紹介されました。税金の無駄といった番組ですが・・・。

いらか道(用賀プロムナード)
いらか道(用賀プロムナード)

地面にいらか(瓦)を敷いた道で、百人一首の歌が彫られています。

用賀駅から砧公園までは、用賀プロムナード、通称・いらか道でつながっています。この道沿いには百人一首の句が彫られていたり、鬼瓦やチェスの駒などの変わったオブジェが設置されていたりと、遊び心満点の仕掛けがしてあり、歩くのが楽しい道となっています。詳しくは風景資産1-14のページで紹介しています。

7、世田谷区動物フェスティバル

世田谷区動物フェスティバル オープニングパレード
オープニングパレード

子供の鼓笛隊や盲導犬などがケヤキ広場をパレードします。

世田谷区動物フェスティバル ステージイベント
ステージイベント

ケヤキ広場にステージが組まれます。

砧公園で一番大きなイベントは、秋に行われる世田谷区動物フェスティバルです。世田谷区と世田谷区獣医師会が共同開催しているイベントです。

イベントは年によって異なりますが、芸人などによるステージイベントを始め、子供の鼓笛隊や動物によるオープニングパレード、そして獣医師会が開催しているのと、愛犬家が多い場所柄なので、獣医さんのブースや犬の訓練師などによるしつけ講習など、犬関係の事が多くなっています。

世田谷区動物フェスティバル 動物ふれあいコーナー
動物ふれあいコーナー

山羊から兎まで様々な動物がいて、多くの子供たちでにぎわいます。

このイベントでは変わった動物に触れあったり、見ることができます。年によって違いますが、鷹だったり、ヒマラヤのラマだったり、変わった爬虫類とか様々です。

また、動物ふれあいコーナーなどでは多くの動物にふれあう事ができたり、牛の搾乳体験ができたりと貴重な体験をできたりします。(先着順のものもあります)

この他にも園芸高校のブースでは、生徒さんお手伝いで木の実の工作体験ができ、小さな子供たちに大盛況でした。

8、四季のスケッチ

* ねむの木広場の四季 *

都立砧公園 ねむの木広場 桜の季節
桜の季節
都立砧公園 ねむの木広場 新緑の季節
新緑の季節
都立砧公園 ねむの木広場 紅葉の季節
紅葉の季節
都立砧公園 ねむの木広場 雪の季節
雪の季節

同じ場所から撮ったねむの木広場の様子です。同じ景色でも明確に四季で色が変わるところが面白く感じます。

好きな風景なので犬の散歩に訪れたときなどいつも同じ場所から撮っていました。このように好きな景色をさりげなく四季でスケッチしてみるのも面白いものです。

* 季節のスケッチ 春 *

都立砧公園 桜のトンネル
桜のトンネル

幹が太くとても立派な桜の木です。

都立砧公園 チューリップの花壇
チューリップの花壇

桜の少し後に咲きます。

春の砧公園は本当に春爛漫です。ロウバイから始まって、梅に水仙や菜の花、早咲き桜から里桜、そしてチューリップ、バラと季節の流れとともに次から次へと春の花がバトンをつないでいきます。

また小さな花壇を含めると園内には多くの花壇があり、ボランティアの方を中心に季節の花を植えてくれているので、園内のいたるところで花を楽しむことができます。

* 季節のスケッチ 新緑 *

都立砧公園 湿地帯のような風景
湿地帯のような風景

水はけが悪いのか、雨が降ると巨大な水たまりができます。

都立砧公園 七夕の季節
七夕の季節

七夕の短冊が飾られます。

夏は昆虫の季節。虫網をもって蝉を追いかけている子供たちの姿を目にすることもあります。

夜ジョギングをしていると蝉が幼虫から成虫へなる様子を観察したり、写真を撮っている人がいたり、採れるのかどうかわかりませんが、木に樹液やはちみつを塗ってカブトムシ用の罠を作っている親子の姿を見かけることもあります。

* 季節のスケッチ 紅葉 *

都立砧公園 サルスベリ(百日紅)の紅葉
サルスベリ(百日紅)の紅葉

園内には立派なサルスベリの木が多く、紅葉する様子は見事です。

都立砧公園 落葉遊び
落葉遊び

晩秋は園内のあちこちが落葉の絨毯になります。

都立砧公園 紅葉模様
紅葉模様

桜の一種の紅葉。面白い様子で紅葉していました。

秋には園内が紅葉で色とりどりになります。桜のピンク一色と違って多くの種類の樹木が植えられているので、その様子はとてもカラフルです。

砧公園の紅葉でお勧めといえば、サルスベリでしょうか。園内にはとても立派なサルスベリの木が何本もあり、その紅葉している様子は見事です。サルスベリってこんなに紅葉がきれいなんだなとビックリすることでしょう。

その他にもモミジやイチョウなど紅葉の代表選手もそろっていて、秋の園内はどこかで何かしらの木が紅葉している感じです。園内を散策しながら面白い紅葉の様子を探してみるのも楽しいです。

晩秋になると、落ち葉の絨毯が至る所でできます。その落ち葉で楽しそうに子供たちが遊んでいる様子も、砧公園の秋の歳時記の一コマです。

* 季節のスケッチ 雪の日 *

都立砧公園 銀世界
銀世界

雪の日の朝は幻想的な風景となります。

都立砧公園 雪のサワラ並木
雪のサワラ(椹)並木

美術館前のサワラ並木に雪が積もる様子は北欧のようです。

都立砧公園 雪の夜
雪の夜

深々といった感じですが、都会らしい赤っぽい空の色になってしまいました。

都立砧公園 雪合戦
雪合戦

雪の積もった日は園内雪の像だらけになります。そして定番の雪合戦を楽しむ子供たちもいます。

年に一回ぐらいの割合でまとまった雪が降り、園内が一面銀世界になります。雪の日の砧公園の景色はとても幻想的です。特にファミリーパーク内は広々とした空間なので、銀世界といった雰囲気を味わえます。

もしきれいな雪景色を見たいのでしたらあまり足跡がついていない時間帯に訪れるのは当然ですが、雪が木の枝から落ちる前に訪れることをお勧めします。この差は結構大きいと思います。

昔だと雪が降った次の日は雪だるまがあちこちにあるなといった感じでしたが、最近ではここは雪まつりの会場かというほど様々な石像が至る所に造られています。しかも巨大になっている感じです。これは若者の間で石像を造って、写真を撮ってSNSに載せるというのが流行っているようです。

9、感想など

都立砧公園 紅葉する園内
紅葉する園内

桜の季節よりも秋の紅葉する様子の方が好きです。

世田谷に住んでいる人なら、百景の中でこれは他の地域に住んでいる人よりもよく知っているぞ・・・といった項目があると思います。

それは単純に家が近かったり、学校や職場が近かったり、その行事に毎年参加していたり、よく散歩するコースだったりといった感じで、その場所や建物などに何かしらの愛着を感じているのではないでしょうか。

私にとっての一番身近な項目は、この砧公園になります。と言っても何かをしているわけではなく、ボランティアの人が掃除をしているのを傍目に犬の散歩をしたり、時々運動不足だとジョギングしたり、手持ちぶさたな休日を過ごしているときにカメラを持って散歩するといった感じです。

一応私にとってホームグラウンドという事になります。気合いを入れて制作したので他よりも写真が多くなってしまいました・・・。でもその分、砧公園の魅力を十分に写真で表せたと思っています。

せたがや百景 No.66
砧ファミリーパーク(都立砧公園)
2025年5月改訂 - 風の旅人
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・地図・アクセス等

・住所砧公園1−1
・アクセス最寄り駅は田園都市線用賀駅。駅からバスも出ています。
・関連リンク砧公園(都立公園協会)
・備考都立公園。施設の利用案内や営業時間などは公式サイトを参照。
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