世田谷美術館
砧公園1−2(都立砧公園内)日比谷公園の約2倍の園内には一面緑の芝生が敷きつめられている。ゆるやかな起伏と木々が公園の景観にほどよい変化を与えている。家族連れやグループでのんびり一日楽しむには絶好の場所で、遠近各地から訪れる人々が多い。園内にオープンした区立世田谷美術館も人気を呼んでいる。(せたがや百景公式紹介文の引用)砧公園はNo.66-1で紹介しています。
1、区立世田谷美術館について

*国土地理院地図を書き込んで使用
都立砧公園の北側、清掃工場や世田谷市場がある通りに面して世田谷美術館とレストランがあります。砧公園は都立の公園ですが、世田谷美術館は世田谷区立の美術館になります。
現在、美術館を管理しているのは公益財団法人せたがや文化財団で、世田谷パブリックシアター、世田谷文学館などといった区内にある文化、芸術に関する施設も一括して管理しています。
昔の美術館といえば、作品の観賞の他には、絵画教室みたいなことしか行っていませんでしたが、財団が管理するようになってからは、美術館でコンサートというような芸術の垣根を取り払ったことも行われるようになりました。

周囲は美術館に合わせて芸術っぽい雰囲気に造られています。

美術館周辺はとても雰囲気がいいです。
用賀駅方面から砧公園に向かう人は、用賀プロムナード(いらか道)を通り、環八の横断歩道を渡って信号の真ん前にある入り口から砧公園に入るのが普通だと思います。
それよりも北側、杉並の方へ環八沿いを歩くと、立派過ぎる歩道橋、パークブリッジがあり、さらにその先に石造りの入り口がひっそりとあります。
地元の人以外は使うことがない入り口ですが、ここが美術館の正面玄関といった感じで、美術館の建設とともに整備されました。ゲートから右手に駐車場を眺めながら真っすぐ進んでいくと、途中には円形の柱が設置された出会いの広場があり、美術館の前の並木道に至ります。

屋根のアーチと建物の直線が美しい建物です。
世田谷美術館は、昭和61年(1986年)に開館しました。砧ファミリーパークとして開園したのが、昭和41年。ちょうど20年後に加わったことになります。
収蔵品コレクションは・・・、一応一覧を見てみたものの、美術には疎く、何がどういった価値があるのかわからないので、案内通りにそのまま書くと、H・ルソー、F・ボテロ、Aボージャンなどの素朴派と呼ばれる画家たちや、世田谷区ゆかりの作家のものなど3200点収蔵されているそうです。
この建物以外にも、区内に暮らしていた画家の住宅を美術館とした別館、「向井潤吉アトリエ館 (弦巻)」「清川泰次記念ギャラリー (成城)」、老朽化したアトリエを解体、新築した「宮本三郎記念美術館 (奥沢)」があります。

壁には四角い凹にこだわった装飾がなされています。
美術館が市役所や学校の校舎ような建物では味がありません。公園を訪れたついでに、ふらっと入ってみようかといった気持も湧いてきません。当然、建物にもこだわって造られました。
設計を行ったのは建築家の内井昭蔵氏。この建物の設計で、毎日芸術賞、日本芸術院賞を受賞しています。
建物は、地下1階、地上2階の鉄筋コンクリート製。遠くから見ると、屋根の曲線と建物の直線の対比が特徴的で、緑の中に褐色色の屋根がよく映えているように感じます。
間近で見ると、壁が普通のタイル張りではなく、穴の開いた・・・なんでしょう、セラミック製の装飾でしょうか。詳しくないのでよくわかりませんが、なんだかラーメンのどんぶり的というか、防音効果のありそうな感じの装飾が施されています。


地下部分はとてもオシャレな空間となっています。
設計にあたっては、公園内にある美術館ということを意識したとのことです。ただ、後年、背後に世田谷市場の大きな建物ができてしまったし、清掃工場の煙突も聳えているので、美術館から少し離れた場所から見ると、設計者も少しがっかりといった感じかもしれません。
地下部分は地下の中庭、サンクンガーデンとなっていて、噴水があり、ゆっくりとくつろげるオープンカフェがありと、とてもおしゃれな空間となっています。
近年では土地の有効活用として地下を利用する建物が増え、こういったサンクンガーデンをよく目にします。特に地下鉄の駅やビルなどに多いでしょうか。用賀駅にもあります。
ここのサンクンガーデン部分はかなり綿密に、そしてこだわって造られています。美術館とあって、曲線、直線を大胆に使い、また壁や階段、床などの模様をうまく配置し、美術館にふさわしいセンス溢れる空間になっています。

美術館の周囲はとても雰囲気の良い空間となっています。
美術館の周囲には、モダンアートや銅像のようなモニュメントが置かれています。木々が多いので、季節ごとに背景の色合いが変わるのが素敵です。

認知度の高い企画展が行われると、美術館が混雑します。
毎年数回、期間を決めて行われる企画展は、私のような美術にはあまり興味のない人間でも、「おっ!行ってみようかな~」と思うような展示を行っている事があります。
変わったものとしてはヨルダン展とか大英博物館展、メソポタミア文明展、秦の始皇帝展、日本ものでは東寺国宝展、熊野古道や平泉をテーマにした展示も行われていました。美術館が博物館みたいになってしまうのも地域の美術館らしいところでしょうか。
海外へ行かなくとも貴重なものが見られる海外の企画展は、多くの人にとって魅力的に感じるようで、どの企画展も大盛況のようです。興味のある文化や地域のものが行われるときには、ぜひ足を運んでください。

ちなみに、景気のいい時代には世界的に名が知られている画家の展示も行われていて、1989年にはシャガール展、1992年にはゴッホ展、1997年にはムンク展が開催されました。(他にも有名な画家がいるかもしれません。私の知る範囲で・・・)
シャガールとゴッホの時は知りませんが、ムンク展は開始が桜の時期と重なったのもあって、凄まじいほど人が訪れていたように記憶しています。私もあの有名な「叫び」を見たくて訪れましたが、その時が世田谷美術館に入った最初で最後の時となっています・・・。
あの当時は有名な芸術家の絵画が流行った時期であり、景気も良かったので区立の美術館でも大胆な企画が行われたのでしょうが、今では大きな企画は東京都美術館で行われ、なかなか世田谷美術館まで回ってこない感じです。

美術館と木々に囲まれた素晴らしい環境にあります。

レストランは披露宴にも使われます。
美術館に付随するようにあるレストランは、フランス料理の「ル・ジャルダン」です。そこそこ有名で、グルメサイトなどの評判はいいようですが、お値段の方もそれなりにといった感じです。
美術館に付随し、しかも緑豊かな砧公園にあるということで、店内、店外ともにとても雰囲気がよく、時々貸切で結婚披露宴が行われています。砧公園を散策していると披露宴前に記念写真を撮っている新郎新婦の姿を見かけることもあるかもしれません。
2、世田谷美術館さくら祭

ワークショップや物産展、フリーマーケットが中心です。
桜の花見スポットとして有名な砧公園ですが、桜の時期に大きなイベントが行われているわけではありません。日本各地の桜の名所で見かけるぼんぼりの点灯すらなく、ただひたすら花見客が多いだけです。
せっかく万単位の人が訪れるので、それに合わせて羽根木公園の世田谷梅まつりのような桜まつりを行えばいいんじゃない・・・と、単純に思ってしまいますが、ただでさえ大混雑している週末がこれ以上混雑しても問題が起きそうだし、準備等も大変だし、予算などといった問題もあるかもしれません。
そもそも、砧公園自体、ほとんどイベントは行われない公園で、そこそこ名が知れているのは秋に行われる世田谷区動物フェスティバルぐらいです。
砧公園では桜まつりが行われていませんが、実は世田谷美術館前広場では小規模な「世田谷美術館さくら祭」がボランティアなどによって行われています。

美術館前にステージが設置され、芝生が観客席になります。

美術館の桜まつりらしい演出です。
世田谷美術館さくら祭は、世田谷美術館の前で週末の2日間にわたって行われるイベントで、屋外コンサートや美術アートの作品の展示があったり、交流地域である群馬県川場村の物産展、レストラン「ル・ジャルダン」の模擬店、フリーマーケットなどの店が並びます。
小さなイベントですが、ボランティアによっての手作り感のあるほのぼのとしたイベントで、大勢でワイワイと花見に来た人たちにはあまり興味が湧かないかもしれませんが、一人や少人数で花見に来た方には気軽に立ち寄れ、楽しい時間を過ごせるイベントになっています。
3、感想など

美術館らしく様々なモニュメントが置かれています。
世田谷美術館は木々の多い砧公園内にあり、建物や周囲に置いてある像などを見るだけでも芸術的な気分に浸れます。
美術館といえば、なんだか足が向きにくい場所のように感じたり、高い入場料を払ってまでは・・・という人が多いかと思います。国内外のそれなりの展示品を集めて行われる企画展は、それなりの料金がかかりますが、常設展は一般でも200円と料金が安く、砧公園を散歩に訪れたついでに、たまには絵の観賞をしてみようかな・・・といった軽い気持ちで入ることができます。
時には気分を変えるためにも、絵画などの芸術を観賞をしてみるのはどうでしょう。ゴッホやシャガールだけが美術ではありません。思いがけない出会いがあり、何か自分に足りないピースが見つかるかもしれませんよ。
せたがや百景 No.66-2世田谷美術館 2025年5月改訂 - 風の旅人
・地図・アクセス等
・住所 | 池尻1-5-27 |
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・アクセス | 最寄り駅は田園都市線池尻大橋駅、あるいは三軒茶屋駅。駅から少し離れています。 |
・関連リンク | 世田谷美術館(公式) |
・備考 | 美術館の開館時間は10-18時(月曜定休日)。施設の利用案内や営業時間などは公式サイトを参照。 |