東名高速の橋
砧公園と大蔵総合運動公園の間の通り大蔵総合運動場と砧公園の脇を東名高速が走っている。高速道路を跨ぐ公園橋から見た疾走する自動車群は圧巻だ。夕闇が訪れればヘッドライトの光の奔流が走る。日夜鼓動する日本の大動脈の一端を見る思いがする。(せたがや百景公式紹介文の引用)
1、東名高速の橋、公園橋

交通量の多い交差点です。取り締まりの白バイが待機していることも多いです。
環状八号線、通称、環八の砧公園付近に環八東名入口の交差点があり、東名高速道路と首都高速3号線の出入り口があります。当然、交通が集中する要所となっていて、交差点ではひっきりなしに車やトラックが通過しています。
この東名入り口交差点では、高速道路はかなり高い位置にある高架を通っていますが、砧公園を進んでいくと、段々低くなっていき、砧公園のファミリーパークの辺りで地面と同じ高さ、そして大蔵総合運動場では、いつの間にか地面よりも低い位置に道路があるといった不思議な事になっています。

橋のかかっている場所は切り通しとなっています。
これは国分寺崖線を擁するこの地特有の現象となります。生活道路ならまだしも、高速で車が走行する高速道路では、勾配のきつい坂は厳禁。急な坂にならないようにするには、地面を削って切り通しを造り、人工的に長く緩やかな坂道に整えてやる必要がありました。
同じことは勾配に弱い鉄道でもいえ、少し北を通っている小田急線も、南の大井町線でも切り通しが設置されています。田園都市線の場合は、崖地内では地下鉄になっていて、崖下の二子玉川では高架橋になっているので、逆に勾配が抑えられていたりします。

*国土地理院地図を書き込んで使用
切り通しを造ったことで、高速道路をうまく通すことが出来ましたが、切り通しができたことでの弊害も生じます。それは大きな川ができたのと同じで、土地が分断されること。それを解消するために東名高速道路上に2つの橋がかけられました。
厳密に言うなら、国分寺崖線を下った大蔵の殿山にも切り通しが造られ、そこにも橋が架けられているので、世田谷には3つの橋が東名高速上に架けられていることになります。

バス通りにもなっている2車線の橋です。
崖線の上の一つ目の橋は、砧公園と大蔵総合運動場を隔てている大蔵通りにかかっている公園橋です。バス通りにもなっている二車線道路なので、それなりに交通量が多い橋です。
あまりこの橋を歩いて渡る人は多くありませんが、車道が一杯に広がっているし、渡った先の交差点での横断歩道を待つ場所がないしと、歩行者には歩きにくい橋となっています。

用賀のビルの下が首都高の料金所です。雪の日は下り線のみ大渋滞していました。
公園橋からは都内方面に展望が開けていて、東名の東京出口や用賀ビジネススクエアビルがよく見えます。そして東名高速が国分寺崖線を通過するために、緩やかで長い坂になっているのがよく分かります。
もうかなり月日が経ちましたが、1999年の11月、酔っ払ったトラックが用賀料金所手前で減速した乗用車に突っ込み、乗用車が炎上。後部座席に乗っていた子供2人が焼死してしまうといった、悲惨で衝撃的な事件が起きました。この事件は、連日テレビで取り上げられたので覚えている人も多いかと思います。ちょうどこの辺りで起こった事故です。
今でもその時のことを覚えている地元の人も多いのではないでしょうか。普段静かな用賀の町にけたたましくサイレンが鳴り響き、空一面黒い煙が立ち昇り、町中にタイヤなどが燃える嫌な匂いが漂っていました。
後年、福岡で同じように酔っぱらった車に追突された車が海に転落し、三人の子供がなくなるという事件が起き、この一連の悲惨な事件を受け、道路交通法の飲酒運転の罰則強化の改正が急激に進んだ事を考えれば、少しは亡くなった子供たちも報われるのでしょうか・・・・合掌。
2、グラウンド橋と富士山

崖線の上に架かる橋です。橋のすぐそばには野球グランドがあります。
もう一つの橋はグランド橋といい、地元の人しか通らないような一方通行の橋です。公園橋とそんなに距離が離れていなく、なくてもよさそうな橋ですが、意外と歩いて渡る人が多い事を考えれば、やっぱり地元の人の為にはあったほうがいいかもしれません。
というより、公園橋は車道がめいいっぱい幅を使っているので、通行人が歩くスペースがなく、散歩や子供連れで公園を訪れる人が積極的にこちらの橋を利用している感じです。

かなり細く急な坂道で、登り一方通行になっています。大黒様らしき像が何気に不気味です。
大蔵側からグラウンド橋を渡った正面にあるのは、野球のグラウンド。もの凄く安直な印象を受けますが、おそらくこのことからグラウンド橋が名付いたのではないかと想像できます。
このグラウンド橋から運動公園を沿うように下っていく坂は、座頭ころがし坂と呼ばれる狭く急な坂道です。いかだ道の裏街道的な道として使われ、多摩川が増水したときには、この道が利用されていたそうです。坂を下ったところには庚申塔などの石像群があり、古くからの道といった感じがします。
高速道路が造られたときに切通が造られ、この坂にも少し手が加えられたので、昔よりも緩やかになっているとか。以前は坂の名前の通り、座頭(=目の見えない人)が通れないほど急な坂道だったそうです。

世田谷の好きな景色の一つです。
グランド橋の特筆すべきところは、橋から富士山方面の素晴らしい眺めです。ここからの眺めは本当に素晴らしく、東名高速を走る車の流れと、晴れた朝などには富士山を見ることができます。
世田谷では、成城や上野毛にある富士見橋と、この近くにある岡本三丁目の坂の三カ所が、国土交通省が選定した「関東の富士見100景」になっているのですが、個人的にはそれらよりもここの方が目の前の開放感があって好きです。

百景の文章をイメージしてみました。
線路の近くで電車を子供に見せ、子供をあやしている親子連れを時々見かけます。同じように高速道路を走っていると、たまに頭上の橋で車の流れを眺めている親子を見かけます。
飛行機や船などもそうですが、乗り物が動いている様子は子供心をつかみます。それは大人でも一緒で、交通手段が織りなす情景から旅心やロマンを感じる人も多いです。喜んでいる子供の多くが男の子ということから、男のロマンをくすぐる・・・、のかもしれません。

家路に急ぐ人々が多くなります。
一番のお勧めは、冬の朝。朝の早い時間帯は順光になるし、早朝は空気が澄んでいて、富士山がくっきりと見えることが多いし、気温の低い冬の方が空気のゆらぎが少ないし、富士山の山頂に雪が被っていて、見映えがいいからです。
もちろん、それ以外の時間帯や季節によっても様々な車の流れや富士山の様子を見ることができます。空の様子、車の流れ、そういった要素がうまくかち合うと、思いがけず素敵な情景になったりします。
あとは、意外と秋から冬にかけての夕日の時間帯もきれいで、夕方訪れ、夕日が沈むまでなんとなく眺めてしまうこともあります。

ちょっとずれてしまったのが残念。
夕日といえば、富士山と太陽が沈むのが重なるダイヤモンド富士といった現象も見ることができます。近くの岡本三丁目の坂道でダイヤモンド富士が見ることができるのが、国土交通省のサイトによると2月9~10日、11月1~2日なので、ここでは少しずれて2月8~9日と11月2~3日ころに見られるはずです。
詳しくないのでよくわかりませんが、年によって重なったり重ならなかったり、あるいはここではぴったりと真ん中に重ならないのかもしれません。
3、第三の橋、大六天橋

崖線の下にある橋です。
崖線を下った先にある橋は、大六天橋といいます。橋のすぐそばに大六天社の祠があることから名付けられたようです。
大六天社と聞いても、何の神様を祀っているのかわからない人が多いと思います。とても珍しい系統の神社になり、祀られているのは第六天魔王(他化自在天)です。織田信長が篤く信仰していた神様として知られています。
この神様は欲望の世界に生きる魔王です。仏教の修行を妨げ、人々を苦しめると同時に、強力な神として、疫病除けや災難除け、五穀豊穣など様々な願いを叶えてくれる神として信仰されてきました。

巨大な松の木がそびえていました。
変わった神様が祀られていますが、この神社自体は小さな祠がある地域の社といった感じで、これといった特徴はなかったのですが、敷地に生えている松の立派なこと。とても印象的でした。
残念ながら、橋の目の前にできる外環道のジャンクションの建設で、神社の敷地が道路用地となってしまったので、現在では大蔵氷川神社の北側に移転しています。

鉄塔が富士山にかかってしまいます。
ここからの富士山の眺めも素晴らしいには素晴らしいのですが、崖線上にあるグランド橋よりも高さが低いため、高圧電線の電線が富士山にかかってしまうのが残念なポイントです。
いずれこの橋の真ん前に外環道の分岐となるインターチェンジができる予定なので、そうなったら別な意味で壮大な眺めになるかもしれません。
ちなみに、この橋のすぐ近くに昔は東宝ビルドという特撮に強い撮影所がありました。世田谷が誇るという言い方は変かもしれませんが、世田谷区内で多くのロケが行われたウルトラマンシリーズの撮影にもよく使われていました。
この大六天橋での撮影もあり、その登場場面では昭和40年代の東名高速が背景に描かれていて、古くさい車が走っている様子はなんとも時代を感じさせられ面白かったです。
それよりも興味深かったのが、安全基準が今と違うので、橋に付けられている手すりの高さが低いこと。大人の腰の高さしかありませんでした。落ちたらどうするんだろ・・・・。とても驚きました。
4、感想など

夕方は西日が強いので走りにくいです。
世田谷には多くの富士山を眺められるスポットがあります。ただ、世田谷は富士山から遠いので、どうしても周りの風景を含めた景色の良さがいいスポットの条件となります。私なりには崖線の中ではここの風景が一番のお気に入りです。
不思議なもので、車の流れも川の流れのように様々な変化を感じます。朝の澄んだ富士山に通勤ラッシュ、夕方の逆光を浴びながら走る車、夜の光の閃光、そして季節ごとの雰囲気に休日や連休の混雑、車の流れに関してもトラックが多いとか、乗用車が多いとか、実に様々な表情があります。
そういった車の流れを見ながら富士山を眺めるのはなかなか楽しいものです。おすすめは朝と夕方ですが、ぜひいろいろな時期、いろいろな時間帯に訪れて、お気に入りの表情を探してみてください。
それから、手を伸ばしてフェンスの上から写真を撮るのはいいのですが、くれぐれもカメラなどを落下させないようにしてください。大事故の引き金になりかねません。
せたがや百景 No.67東名高速の橋 2025年5月改訂 - 風の旅人
・地図・アクセス等
・住所 | 大蔵総合運動場付近の東名高速道路にかかる橋 |
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・アクセス | 最寄り駅は田園都市線用賀駅。駅から少し離れています。 |
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