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せたがや地域風景資産 No.3-13

大蔵の四季が溢れ出す妙法寺の境内

「寺は寺を取り巻く地域社会と共に生きる」を信念に、地域の参加で管理されている梅・桜・桃・どうだんつつじ、花菖蒲・さぎ草・紅葉など、四季を感じ憩いの時が持てる庭があり、樹齢70年のしだれ桜のライトアップや、二の午祭での児童との交流など、地域に開かれた風景をつくっている。(紹介文の引用)

・場所 : 大蔵5-12ー3
・登録団体など : 妙法寺の風景を守る会
・備考 : イベントや四季の花の開花状況は公式サイトを参照

*** 大蔵の四季が溢れ出す妙法寺の境内の写真 ***

法華門

元々は法華寺にあった門です。

本堂

昭和13年に建立されたものです。

本堂前の様子

 感應法閣の扁額がかかっていました。

本堂横の竹林

 立派な竹林があり、ここを通って墓地へ行きます。

庫裏(久遠庵)

趣のある建物です。

庫裏前の庭園

掘り下げられているといった立派なものです。

おおくら大仏と久遠大佛殿

仙川沿いにも入り口があります。

石井戸稲荷神社

二月に二の午祭が行われます。

石像など

周辺から移動してきたものでしょうか。

砧っ子地蔵

砧小学校前に置かれています。

大蔵動物霊園

入り口は違いますが、付随しています。

墓地から見たおおくら大仏

高さ8mのブロンズ製で、なんと回転します。

桜と大仏様

時間外で世田谷通りの方を向いています。

ライトアップの様子

闇夜に浮かび上がっていました。

* 桜の時期の境内 *

妙法寺の枝垂桜

樹齢70年ちょいの立派な木です。

駐車場への入り口付近の枝垂桜

小ぶりな枝垂桜もいくつか植えられています。

桜の開花時期の境内

毎年桜葉もちの出店がでます。

法華門とライトアップされた桜

開花時期にはライトアップされます。

ラライトアップされた枝垂桜

近くで見るととても迫力があります。

枝垂桜と大島桜

同じ時期に満開になると感動的です。

* 夏の境内 *

鷺草が並んだ様子

夏には鷺草の鉢植えが境内に並べられます。

鷺草

世田谷区の花で鷺の形をした花が美しいです。

夏の境内

緑が濃く感じます。

ゆりの花

色々な花が咲いているので楽しいです。

はすの鉢

ずらっと並んでいました。

はすの花

池でなくてもきれいに咲いていました。

* 秋の境内 *

盆栽展

ご自慢の盆栽が並んでいました。

お会式が行われる境内

この日は境内に提灯が沢山灯されて明るいです。

お会式の様子1

団扇太鼓や鉦を鳴らし、派手に纏を振って練り歩きます。

お会式の様子2

最後に本堂にお参りします。

* 大蔵の四季が溢れ出す妙法寺の境内について *

世田谷通りの大蔵団地付近は切り通しを利用した長い緩やかな坂道になっています。その切り通しの斜面や道の脇には桜が植えられていて、春にはダイナミックな桜のトンネルができ、その素晴らしい風景はせたがや百景にも選ばれています。この坂を下りきった所で仙川が道路を横切り、その川沿いに大きな大仏がそびえているのが見えます。ちょうど視界が開けた場所なので世田谷通りを下ってくるとよく目に入るのではないでしょうか。

この大仏は妙法寺のおおくら大仏で、妙法寺へはこのまま世田谷通りの坂を登って成城への分岐点ともなっている砧小交差点を左に入り、砧小学校の少し先に山門があります。

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妙法寺は日蓮宗のお寺で、正式名は東光山妙法寺といいます。通称では、先ほど出てきた世田谷通りを眺める大仏様にかけて「おおくら大仏」と呼んでいる人もいます。創建は約350年ほど前と言われ、その当時、大蔵本村の名主安藤家が発起人となり、お隣の宇奈根村にあった常光寺から寺分けしてもらったとか。

開山は本乗院日詮上人(寛文4年1664年寂)と言われています。現在ではこの付近は全て大蔵町となっていますが、かつては大蔵5丁目付近は石井戸村と呼ばれる地域で、南側に位置する大蔵6丁目が大蔵本村で大蔵村の中心部でした。ここには永安寺という大きなお寺があり、石井戸にも地域のお寺をといった思いや、当時は一村、一社、一寺が推奨されていた理由などで妙法寺が建てられたようです。

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妙法寺といえばおおくら大仏・・・と、どれだけ世間に認知されているのか知りませんが、一応妙法寺の名物で、珍しい物好きだったり、旅ネタが好きな人には知られている存在です。この大仏様は平成6年の秋彼岸に完成したもので、高さ8m、ブロンズ製で重さ8トンあります。大仏様は法華経の一番有り難い佛さまである久遠実成の本佛お釈迦様を現していて、光背に四菩薩を配しています。大きさ的には世田谷で一番かと思いますが、世間一般的にはそこまで珍しい大きさではありません。それなのに有名なのはこの大仏が別名「回転大仏」と言わる回る大仏様だからです。

大仏様が回るって何それ!ってな話になるのですが、面白いことに台座部分が回転して大仏様の向きが360度一回転できるようになっていたりします。なぜ回転する必要があるのか。単なる話題作り?いやいやこれにはちゃんと理由があるのです。

朝9時から夕方5時までは墓地や本堂のある南側を向いて参拝者や墓地に眠る人々を見守り、夕方5時から翌朝9時までは世田谷通りのある北側を向いて交通安全や世界平和を祈念していらっしゃるのです。だいたい通勤や通学の時間帯は世田谷通りの方を向いているので、大仏様に見守られながら通勤通学をしている人も多いはずです。

とまぁ、まさに24時間、360度フル回転の回転大仏なのです。更には交通安全週間には交通安全のたすきを掛けていて微笑ましい姿になっている事もあります。

ちなみに時間よっては墓地へ行っても後ろ向きの大仏様にしか会えない・・・という事はなく、センターだったか、ボタンだったか忘れましたが、目の前に立つとわざわざこっちの方を向いてくれるといった至れり尽くせりの大仏様なのです。でもまあ・・・、回転する必要があったのかと冷静に考えると微妙なところで、特に地域の人からは不評のようです。

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おおくら大仏の下は久遠大佛殿となっていて、地下1階、地下2階は納骨堂になっています。将来の墓地不足と後継者のいない無縁仏の対策として作られたようです。実際に大仏殿の中に入ったことはありませんが、写真を見ると中央部分は回転装置のスペースになっていて、ちょっと面白い造りとなっています。

この大仏殿の隣には大蔵動物霊園があります。入り口は世田谷通りの方にしかなく、このへんはちゃんとしたお寺らしく人間とペットとの境界を区別しているようです。ここではペットの葬式を行う事ができ、評判もいい事から砧公園周辺のペット愛好家の中ではおおくら大仏や妙法寺という寺の名前よりもおおくら動物霊園の方が知られていたりします。ちなみに我が家の犬もお世話になりました・・・。

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お寺の方へ話を戻すと、山門は黒塗りのどっしりとした感じの門で、高さ6m、間口3m、木造・銅板茸の屋根を備え、法華門と呼ばれています。これは江戸初期に目黒の碑文谷にあった法華寺の庫裏にあった門に因んで名付けられているもので、昭和30年代に堀之内妙法寺へ奉納され、昭和61年に縁あってこちらの寺へ移築される事になったようです。その際に痛みが激しかったため、復元再建されました。

ちなみに碑文谷の法華寺というのは、江戸初期には日蓮宗総本山身延山久遠寺のふれ頭として江戸10指に数えられる大寺だったようですが、元禄12年に行われた不受不施派弾圧により、幕府の命で日蓮宗から天台宗に改宗させられ、寺の規模なども衰退していったという歴史があります。現在でも寺自体は存在していますが、寺名は円融寺になっています。

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山門を入ってすぐ左手には石井戸稲荷の祠があります。この稲荷社は昔妙法寺の寺領だった大蔵団地28号館横に鎮座していたのを移したもので、現在でも跡地には塚が残されていますが、確か石井戸神社という石碑が建っていたように思います。

この石井戸稲荷では2月の二の午の日に石井戸稲荷二の午祭運営有志の会によって二の午祭が行われています。一般的には大きな稲荷神社では2月の初午、或いは2の午に赤い幟や行灯を奉納して商売繁盛や家内安全などを祈願し、自宅の敷地に勧請した小さな稲荷社でもその日には油揚げなどを備えてお祀りします。ここではお寺なので、昔の地域で行われていった風習を再現するような形での祭礼が行われています。

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本堂は木造の寄棟造銅版葺きで昭和13年に建立されたものです。近年修復されたようで比較的いい状態です。本尊は三宝祖師像(日蓮上人の約90cmの木坐像)のです。本堂の横には立派な庫裏(客殿)があります。これがビックリするというか、なんでこんな贅沢な造りをしているんだろうと思ってしまう建物で、なんと大きく掘り抜かれた地下部分に庭園があり、橋を渡って建物に入るようになっています。まるでホテルや料亭並みですね。何でこんな小さなお寺に・・・などと思う人もいるのではないでしょうか。

建物の地下部分がどうなっているのか知りませんが、一階部分の窓際は座敷になっていて桜の開花時期などには開放されています。このほか、稲荷社の後ろ側の道沿いには砧っ子地蔵があります。砧小学校のすぐ目の前とあって多くの子供達がこのお地蔵様に見守られて通学している事でしょう。

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妙法寺の名物といえば本来は回転大仏となるのですが、その知名度はう~ん・・・といった感じです。それよりも広く一般に知られているのが境内にある枝垂桜です。樹齢70年ちょっとの枝振りのいい木で、開花時にライトアップも行われます。満開時の素晴らしさは感動的で、口コミなどで広がり、今では情報サイトでも取り上げられていたりします。そういったわけで枝垂桜の開花時は多くの参拝客があり、一年で一番妙法寺の境内がにぎわう期間であります。

毎年桜の時期には境内特設ブースで「桜葉もち」が販売されます。伊豆松崎町特産の桜の葉や道明寺粉を使った本格的なもので、毎年花見と一緒に桜餅を楽しみにしている人も多いとか。持ち帰りもできますが、境内でお茶をすすりながら食べるのもいいものです。

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春を象徴する桜が妙法寺の一大イベントになるのでしょうが、四季を通じて妙法寺は色々なイベントや仏事、四季折々の花で楽しむことができます。まず新年の初詣から一年が始まります。このお寺では鏡餅をお供えするのが習慣になっているようで、檀家さんが奉納した鏡餅が正月には本堂に並びます。また石井戸に古くから伝わるお囃子が獅子舞を演じたりといった正月らしい風景にも出会えます。

二月になると境内に移動した石井戸稲荷神社の二の午祭が行われます。三月になると桜の時期で開花状態に合わせてライトアップが行われたり、一度有料でコンサートが行われた事もあったようです。桜が終わるとサツキ展が行われます。これは境内に咲いているものではなく、鉢植えにされた盆栽のサツキ展になります。主催は世田谷さつき愛好会で庫裏(妙法寺客殿)の地下1階の部屋にずらっと並べられるようです。

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夏前には花菖蒲、夏には蓮が見ごろになります。といっても大きな池があるわけではなく、どちらも水を張ったプランターやバケツなどで育てられています。これがなかなか立派な花を咲かせていて、プランターなどでもこんなに大きく、きれいに育つものなんだなと感心してしまいます。きっときちんと管理しているのでしょう。

夏には鷺草展も行われます。鷺草は世田谷区の花で、育て方の講習などもよく行われていますが、湿地帯に育つ植物なので水遣りを含めて育てるのが困難です。しかしながらここではうまく鉢植えで育てていて、その鉢が本堂の前にずらっと並びます。その様子は圧巻です。夏に鷺草市が代官屋敷の前で行われますが、鷺草をじっくりと見たいというなら妙法寺に来るべきです。

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晩秋の11月3日にはお会式が行われます。お会式は簡単に書くなら日蓮の命日(10月13日)にあわせて行われる大法会、いわゆる日蓮宗のお祭りです。一般的は寺ごとなどに信徒が集まって講中を組み、同宗派や親交のある寺に出向いて万灯や提灯を掲げ練り歩くといったものです。にぎやかに団扇太鼓や鉦を叩き、交代で纏を派手に振り、節目節目で題目を唱えながら行列で進む様子は独特な感じがします。そんなに大きくないお寺ですが、多くの講中が訪れていてちょっとびっくりしました。

この付近では堀の内妙法寺でも行われていて、その様子を見学するとやはり寺の規模の違いを感じてしまいます。ちなみに総本山の池上本門寺は参拝客も合わせて数十万という規模となります。このほかにも春と秋のお彼岸、お釈迦様の誕生を祝う4月8日の花祭りなどといった仏事もきちんと行われています。

<せたがや地域風景資産 No.3-13、大蔵の四季が溢れ出す妙法寺の境内 2015年5月初稿 - 2015年10月改訂>