世田谷散策記 せたがや風景資産のバーナー
桜の花の形をした地域風景資産の案内板の写真

せたがや地域風景資産 No.2-27

仙川・川面に映る桜並木道

東宝大工センター脇の桜並木は、並木自体の美しさだけでなく、仙川の川面に映り込んだ景色も見所です。いこいの遊歩道として地域にも愛されている桜並木の風景は、四季折々の魅力にあふれています。(紹介文の引用)

・場所 : 砧7丁目 (打越橋~石井戸橋)
・登録団体など : 仙川・緑と水の会
・備考 : 桜の開花時期にライトアップされます。東宝大工センターは一般のホームセンターに変りました。

*** 仙川・川面に映る桜並木道の写真 ***

仙川と桜並木の写真
仙川と桜並木

川自体はいかにもコンクリートといった感じです。

仙川と桜並木の写真
桜並木と遊歩道

川の東側に遊歩道が設置されています。

仙川と桜並木の写真
撮影所の建物と桜並木

近年建物が立て替えられたので新しいです。

仙川と桜並木の写真
ゴジラの絵が入ったフェンス

東宝の撮影所の脇らしい絵柄です。

仙川と桜並木の写真
桜の時期の遊歩道1
仙川と桜並木の写真
桜の時期の遊歩道2
桜並木のライトアップの写真
ライトアップの告知

日付が決まると入り口に案内板が設置されます。

桜並木のライトアップの写真
ライトアップの様子1

水面に映る様子も素晴らしいです。

桜並木のライトアップの写真
ライトアップの様子2

適度に混み合う感じです。

桜並木のライトアップの写真
ライトアップの様子3

場所によってはとても美しいです。

東宝撮影所の写真
東宝スタジオの壁

東宝、そして黒澤明監督の代表作、7人の侍です。

東宝撮影所の写真
ゴジラの像

撮影スポットになっています。

* 仙川・川面に映る桜並木道について *

世田谷通り方面から成城の駅に向かう途中の仙川沿いに東宝の撮影所があります。いわゆる高台にある成城からみると崖下の土地、成城の外れということになるのでしょうか。ここに撮影所が建てられたのは昭和6年のことで、最初は映画録音会社のP.C.L(写真科学研究所)でした。昭和11年になると関連の三社が合併して東宝となり、この撮影所も東洋一を誇る規模に発展していきます。

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一方、成城の町は昭和2年に小田急線成城駅が開通し、本格的に町の形成が始まっていくことになります。そして周知の通り高級住宅地として発展していきます。成城が人気のある高級住宅地になった要因は幾つかあげられますが、その一つにこの東宝の撮影所の存在があげられます。

それは映画俳優が撮影所に近いという事もあって成城に暮らすようになり、また撮影所から近いので成城を含めたこの地域がロケ地として使われる事も度々あったからで、映画俳優が暮らす町、映画のロケ地の町といった憧れから人気となり、人気のある町=地価高騰という事で高級住宅地となったという一面もあるようです。それ故に古くからの高級住宅街に住む人からすると成城はミーハーな町、一緒にしてくれるなといった印象を持っていたりするようです。

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少し古い話をすると、この付近の成城一丁目は戦前までは皇室の御料林が中心だった地域で、戦時中には駐屯地が設けられたりと、本当に何もなかった地域のようです。例えば東宝といえば昭和29年に公開された七人の侍が有名ですが、その一部は少し仙川沿いの下流にある大蔵団地内にある公園でロケが行われたそうです。もちろん本セットは別のところに設置されたようですが、少々の場面では問題なく山村の雰囲気が出せてしまうぐらい何もない自然豊かな地域だったようです。その後仙川沿いの開発が行われていくのは大蔵団地の建設が行われる昭和35年以降のことになります。

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現在でも仙川沿いに撮影所は健在です。設備の古くなった撮影所は2003年ごろから2011年にかけて順次ステージや施設の建替えや改造を行い、足かけ8年、総額100億円を投じた大改造計画が行われました。この大改造計画により、スタジオの実に90%以上の施設が建て替えられ、ステージは8棟、付帯施設は11棟が新築され、さらに光ファイバー網の敷設等といったデジタルやハイテク技術に合わせたインフラ等の機能更新も推進されました。そのことにより、ここで企画開発のプリプロダクションから仕上げのポストプロダクションまでの一貫した生産ラインを提供できるようになり、再び東洋随一と胸をはれるような近代スタジオに生まれ変わったようです。

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といっても内部の見学は基本的にできないので、部外者にはへぇ~そうなんだ~といったぐらいで実感がわきませんが、メインゲートの建物や見える範囲内の建物が新しくなったり、建物の壁に7人の侍の絵が描かれたり、受付の建物の前にゴジラの像が設置されたりしたのは通りがかったときに気がついていました。

ゴジラの像があるメインゲート前の道を進むと、昔は関連会社の東宝大工センターというホームセンターがありました。大道具係の人が材料を調達しやすくするためにホームセンターまで造ってしまったようで、その品揃えの豊富さは日曜大工を行うときには重宝したものです。しかしながら大改造計画の一環なのか、2010年1月31日に閉店してしまい、今では別の企業が経営する「くろがねや成城店」というありふれたホームセンターに替わってしまいました。

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東宝の話が長くなってしまいましたが、この東宝スタジオのある仙川沿いの遊歩道には桜が植えられていて、とても美しい桜並木を形成しています。これが地域風景資産に選定されている桜並木です。川にせり出すようにして枝が伸びているので、川面に桜が映ってきれいで、特に幾つか架けられている橋の上から眺めると、実際の桜と川面の桜が合わさって重厚な感じとなります。

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また遊歩道沿いのフェンスの所々にゴジラや撮影用のカメラの絵が入っているのもここならではといった特徴となるでしょうか。そしてそれに混ざるようにしてさりげなくせたがや地域風景資産のプレートが設置されています。これは仙川・緑と水の会の方が選定されたことを多くの人に知ってほしいという願いから、許可をもらって取り付けたものです。

桜の花びらを模ったなかなかおしゃれなプレートですが、これはメンバーの知り合いの地元出身のアーティストがデザインしたものだそうです。こういった風景資産を広める努力は結果として風景を守り育てていくことであり、みんなで風景資産のこの風景を大事にしようといった共通認識が芽生えれば、この風景も安泰でしょうか。

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ここの桜並木の魅力は、桜の時期になると東宝の裏方さんたちが実際の撮影で使用している照明機材使ってライトアップしてくれることです。地域の方々との交流を深めるために始められた企画ですが、今ではすっかりこの地域の春の風物詩となっていて、今年はいつから行うのだろうと地元の人の楽しみとなっています。

ライトアップの期間は予め決められた期間、だいたい5日ぐらいで、年によっては開花が遅れて寂しい状態だったりしますが、例年地元の人を中心に多くの人が訪れています。ただ5日間という期間があるし、そこまで有名なライトアップでないし、規模としてもそこまで大きくないので、あまり混雑しないのが嬉しいところです。

撮影用の照明を使った桜のライトアップといえば野川のライトアップが有名ですが、あの歩けないような混雑さに比べるとここは天国に感じます。不満をあげるとしたら川がコンクリートだらけで味気ないところでしょうか。でも夜歩けば闇がそれを紛らわしてくれるし、遊歩道自体は雰囲気はいいので、個人的には好きなライトアップの一つとなっています。

<せたがや地域風景資産 No.2-27、仙川・川面に映る桜並木道 2011年7月初稿 - 2015年10月改訂>