世田谷散策記 ~せたがや地域風景資産~

せたがや地域風景資産 No.2-27

仙川・川面に映る桜並木道

東宝大工センター脇の桜並木は、並木自体の美しさだけでなく、仙川の川面に映り込んだ景色も見所です。いこいの遊歩道として地域にも愛されている桜並木の風景は、四季折々の魅力にあふれています。(公式紹介文の引用)

・場所 :砧7丁目 (打越橋~石井戸橋)
・関連団体:仙川・緑と水の会
・備考 :桜の開花時期にライトアップされます。東宝大工センターは一般のホームセンターに変りました。

***  このページの内容  ***

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* 東宝撮影所と仙川の桜並木道について *

東宝スタジオの入り口の写真
東宝スタジオの入り口

撮影所の他にも住宅展示場とホームセンターがあります。

世田谷通り方面から成城の駅に向かう途中の仙川沿いに東宝の撮影所があります。高台にある成城からみると崖下の土地、成城の外れということになるのでしょうか。ここに撮影所が建てられたのは昭和6年のことで、最初は映画録音会社のP.C.L(写真科学研究所)でした。昭和11年になると関連の三社が合併して東宝となり、この撮影所も東洋一を誇る規模に発展していきます。

一方、成城の町は昭和2年に小田急線成城駅が開通し、本格的に町の形成が始まっていくことになります。そして周知の通り高級住宅地として発展していきます。成城が人気のある高級住宅地になった要因は幾つかあげられますが、その一つにこの東宝の撮影所の存在があげられます。それは映画俳優が撮影所に近いという事もあって成城に暮らすようになり、また撮影所から近いので成城を含めたこの地域がロケ地として使われる事も度々ありました。映画俳優が暮らす町、映画のロケ地の町といった憧れから人気となり、人気のある町=地価高騰=高級住宅地という一面があります。そういった事情もあり古くからの高級住宅街に住む人からすると成城はミーハーな町、チャラい町、同じ高級住宅地の土俵に上げてくれるなといった思いを強く持っていたりするようです。

東宝スタジオ 7人の侍の壁画の写真
7人の侍の壁画

東宝、そして黒澤明監督の代表作です。この近辺でも撮影が行われました。

東宝スタジオ ゴジラの像の写真
ゴジラの像

撮影スポットになっています。

少し古い話をすると、この付近の成城一丁目は戦前までは皇室の御料林が中心だった地域で、戦時中には駐屯地が設けられたりと、本当に何もなかった地域のようです。例えば東宝といえば昭和29年に公開された七人の侍が有名ですが、その一部は少し仙川沿いの下流にある大蔵団地内にある公園でロケが行われたそうです。もちろん本セットは別のところに設置されたようですが、少々の場面では問題なく山村の雰囲気が出せてしまうぐらい何もない自然豊かな地域でした。その後仙川沿いの開発や大蔵団地の建設が行われるのが昭和35年以降のことになります。

現在でも仙川沿いに撮影所は健在で、設備の古くなった撮影所は2003年ごろから2011年にかけて順次ステージや施設の建替えや改造を行い、足かけ8年、総額100億円を投じた大改造計画が行われました。この大改造計画により、スタジオの実に90%以上の施設が建て替えられ、ステージは8棟、付帯施設は11棟が新築され、さらに光ファイバー網の敷設等といったデジタルやハイテク技術に合わせたインフラ等の機能更新も推進されました。そのことにより、ここで企画開発のプリプロダクションから仕上げのポストプロダクションまでの一貫した生産ラインを提供できるようになり、再び東洋随一と胸を張れるような近代スタジオに生まれ変わったようです。

といっても内部の見学は基本的にできないので、部外者にはへぇ~そうなんだ~といったぐらいで実感がわきませんが、メインゲートの建物や見える範囲内の建物が新しくなったり、建物の壁に7人の侍の絵が描かれたり、受付の建物の前にゴジラの像が設置されたりしたのはこの時期のことです。

東宝スタジオ 仙川沿いの遊歩道の写真
仙川沿いの遊歩道

東宝の撮影所らくしゴジラがあしらわれています。
この他、映画用のカメラの図柄もあります。
桜の時期以外も気持ちのいい川辺の道となっています。

ゴジラの像があるメインゲート前の道を進むと、昔は関連会社の東宝大工センターというホームセンターがありました。大道具係の人が材料を調達しやすくするためにホームセンターまで造ってしまったようで、その品揃えの豊富さは日曜大工を行うときには重宝したものです。しかしながら大改造計画の一環なのか、2010年1月で閉店してしまい、今では一般の企業が経営する「くろがねや成城店」というホームセンターに替わってしまいました。

東宝の話が長くなってしまいましたが、東宝スタジオや東宝大工センターがあった仙川沿いは遊歩道として整備されていて、とてもいい散歩道となっています。遊歩道沿いには桜が植えられていて、桜の時期にはとても美しい桜並木となり、それ以外の時期にも緑の美しい並木となっています。遊歩道沿いのフェンスの所々にゴジラや撮影用のカメラの絵が入っているのもここならではです。

仙川・川面に映る桜並木道 地域風景資産のプレートの写真
地域風景資産のプレート

所々に設置されています。
地元出身のアーティストがデザインしたものだそうです。

川にせり出すようにして枝が伸びているので、川面に桜が映ってきれいで、特に幾つか架けられている橋の上から眺めると、実際の桜と川面の桜が合わさって重厚な感じとなります。そういった美し風景から地域風景資産に選定されています。

川沿いのフェンスにはさりげなくせたがや地域風景資産のプレートが設置されています。これは仙川・緑と水の会の方が選定されたことを多くの人に知ってほしいという願いから、許可をもらって取り付けたものです。桜の花びらを模ったなかなかおしゃれなプレートですが、メンバーの知り合いの地元出身のアーティストがデザインしたものだそうです。こういった風景資産を広める努力は結果として風景を守り育てていくことであり、みんなでこの風景を大事にしようといった共通認識が芽生えれば、この風景も安泰でしょうか。

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* 仙川沿いの桜並木 *

成城東宝スタジオ脇の仙川沿いの桜並木 下流部の桜並木の写真
下流部の桜並木

サミットの裏手、旧登戸道の橋から遊歩道が始まります。

成城東宝スタジオ脇の仙川沿いの桜並木 ゴジラと桜並木の写真
ゴジラと桜並木

東宝スタジオ間を移動する橋の手前です。

成城東宝スタジオ脇の仙川沿いの桜並木 橋の上からの写真
東宝スタジオの橋の上から

川の左右に遊歩道が設置されています。

仙川の遊歩道は世田谷道の旧道、登戸道の沿いの橋、ちょうどサミットストアーの駐車場から日大商学部へ抜ける細い道に架かる橋のところから始まっています。遊歩道を進むと、左手が東宝スタジオになったあたりから桜並木が始まります。

最初の橋は渡れませんが、二つ目の橋は川の左右にあるスタジオを車が行き来できる橋で、警備の人がいて一般の人でも渡ることができます。この橋の上からいい感じで写真が撮れるのでこの付近が一つの見どころです。

成城東宝スタジオ脇の仙川沿いの桜並木 東宝スタジオの橋より少し上流の写真
東宝スタジオの橋より少し上流

堰の手前では水面が鏡面のようになります。

成城東宝スタジオ脇の仙川沿いの桜並木 ホームセンターの手前の写真
ホームセンターの手前

現在は右側に塀ができているようです。

成城東宝スタジオ脇の仙川沿いの桜並木 ホームセンター付近の写真
ホームセンター付近

ホームセンターのところに架かる橋から見た上流の様子です。

スタジオ間を結んでいる橋のところからは左右の両方に遊歩道があり、どちらでも歩くことができます。この付近は比較的真っすぐですが、途中に堰があり、水面に映る桜並木が美しいです。

ホームセンターのところにも橋があり、駐車場や住宅展示場を訪れる車が通る車道となっています。ここからは上流、下流ともに真っすぐな桜並木が見えるので多くの人が写真を撮っています。

また、この界隈には桜の名所が多いです。世田谷通り沿い、ちょうど大蔵団地のところが桜のトンネルとなっています。仙川をさらに下って世田谷通りのところに架かる橋から見えるのが大蔵大仏です。何と回転するので回転大仏と呼ばれています。この大仏のあるお寺が妙法寺で、境内には立派な枝垂れ桜があり、見ごろにはライトアップされます。ソメイヨシノより早く咲くことが多いですが、気候次第では同時に楽しむこともできます。もちろん成城といえば住宅地にある桜並木も有名です。

* 花見ライトアップの様子 *

成城東宝スタジオ 花見ライトアップの写真
東宝スタジオの花見ライトアップ

入り口にある橋に何時ライトアップするのかといった案内板が立てられます。

ここの桜並木の魅力は、桜の時期になると東宝の裏方さんたちが実際の撮影で使用している照明機材使ってライトアップしてくれることです。地域の方々との交流を深めるために始められた企画ですが、今ではすっかりこの地域の春の風物詩となっていて、今年はいつから行うのだろうと地元の人の楽しみとなっています。

ライトアップの期間は予め決められた期間、だいたい5日ぐらいで、年によっては開花が遅れて寂しい状態だったりしますが、例年地元の人を中心に多くの人が訪れています。ただ5日間という期間があるし、そこまで有名なライトアップでないし、規模としてもそこまで大きくないので、あまり混雑しないのが嬉しいところです。

成城東宝スタジオ 花見ライトアップ スタジオを結ぶ橋の上から<の写真
スタジオを結ぶ橋の上から

枝が川に伸び、川面にはその様子が映るのできれいです。

成城東宝スタジオ 花見ライトアップ ホームセンター付近の橋の写真
ホームセンター付近の橋

ここは広いので多くの人が橋の上で花見を楽しんでいました。

成城東宝スタジオ 花見ライトアップ ライトアップの時の遊歩道の写真
ライトアップの時の遊歩道

あんまり混雑しているといった感じではないので、
思い思いに記念写真を撮っていました。

成城東宝スタジオ 花見ライトアップ ライトアップの思い出の写真
ライトアップの思い出

デート等、いい思い出になりそうです。

訪れたのは2009年~2013年の間なので、現在とは状況が少し変わっているかもしれません。

ここの特徴は水面に桜並木が映っているところです。頭上だけではなく川面にも気にかけて散策してみてください。

* 感想など *

成城東宝スタジオ 花見ライトアップ 川面に映る桜並木の写真
川面に映る桜並木

川面に桜並木が映る様子はとても美しいです。

この付近の仙川はコンクリートに固められたありふれた川ですが、川沿いには桜並木があり、そして東宝撮影所があることで周囲がガチャガチャしていなく、とても雰囲気がいい川沿いの遊歩道になっています。

川に堰が設けられているのもいいところで、堰の場所では水面が鏡面の様に反射し、その様子を楽しみながら散策することができます。更にはライトアップもされるということで、文句なしにおすすめの桜並木の一つです。

ー 風の旅人 ー

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* 地図、アクセス *

・住所東宝スタジオやくろがねや成城店横の仙川
・アクセス最寄り駅は小田急線成城学園駅から徒歩10分程度
・関連リンク東宝スタジオ

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<せたがや地域風景資産 No.2-27 仙川・川面に映る桜並木道 2011年7月初稿 - 2019年3月改訂>