世田谷散策記 ~せたがや百景~

せたがや百景 No.63

大蔵団地と桜

今を盛りと咲き誇る桜。いちばん盛んな樹齢に達した桜が団地と世田谷通りを飾る。シックな団地の壁面と見事なコントラストを作りあげる。住民の皆さんの自慢の春の眺め。(せたがや百景公式紹介文の引用)

・場所 :大蔵3丁目の世田谷通り沿いと大蔵三丁目公園
・備考 :週末に自治会によって花見会が開かれます。(例年は4月上旬)

***  このページの内容  ***

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* 大蔵団地付近の桜並木 *

世田谷通り 大蔵団地の坂
世田谷通り 大蔵団地の坂

切り通しを造って設置された人工的な坂道です。

世田谷通りは三軒茶屋から国道246号(玉川通り)と枝分かれして、世田谷、桜、上用賀、大蔵、成城、喜多見と世田谷の中心を横切り、狛江市に抜けていきます。

車をスムーズに移動させる為の幹線通りである玉川通りと違い、世田谷通り沿いには病院やら大学やらスーパーが多くあり、また区役所の近くも通っていたりと、どちらかと言うと生活に密着した道路となります。

また、近年では有名なラーメン屋が多くでき、ラーメン激戦区としてテレビによく登場するので、世田谷通りと聞くとラーメンを連想する食いしん坊な人もいるかもしれません。

その世田谷通りの大蔵から成城にかけて、ちょうど大蔵団地のある付近に緩やかで長い坂道があります。ひたすらまっすぐの長い坂なので気分的にしんどいといった感じの坂です。

世田谷通り 大蔵団地の坂
切り通しになっている世田谷通り

坂の上部で切り通しが見られます。

この坂は世田谷通りが整備されたときに設置されたもので、急な坂にならないように切り通しが造られ、比較的緩やかな坂となっています。なんとか普通の自転車でも座ったまま坂を登れるかなといった勾配です。

それまでの旧道、登戸道は日大商学部の正門前を通る道で、水道道路を越え、昔はウルトラマンの円谷プロがあり、そこで曲がって仙川を越えてサミットストアーの横を通り、砧小学校交差点へ向かう細い道でした。

環八の砧交差点付近からNHK技研までの旧道に引き続き、ここもケヤキ並木が素敵でなかなかいい雰囲気の旧道となっていますが、サミットストアができてから車の通行量が一段と増えてしまったので、散策する際にはご注意を。

世田谷通り 大蔵団地の坂 弥生橋から見下ろす
弥生橋から見下ろす

切り通しの部分に弥生橋が架けられていて、絶好の桜スポットになっています。

この切り通しの坂道には道路の両脇に桜が植えられていて・・・、といっても歩道にある街路樹ではなく、歩道の更に外側に植えられています。

坂の上の方は大蔵団地があり、敷地を平らにしている都合上、道路から見ると切通の上、かなり高い位置に桜があります。これがここの特徴の一つとなっていて、桜が咲いている時期にはよりスケールの大きな桜のトンネルができあがります。

世田谷通り 大蔵団地の坂 桜の花びらが積もる歩道
桜の花びらが積もる歩道

歩道がピンクの絨毯のようになり、風が強い日は車道にも多くの桜が舞い落ちます。

更には崖の上には大蔵団地の建物があることで、全体的な切り通しの規模を大きくしています。その結果、世田谷通りがちょうど風の通り道になります。ですから桜吹雪が凄いこと。

おまけに交通量が多い通りなので、道路に落ちた花びらが車が通ると再び舞い上がります。バスなどの後ろを走ると、目の前で桜が渦を巻いていることもあります。

車だったら「わぁー、きれい」で終わることも、バイクだと「わぁ~、前が見えない!」と危険を感じることも・・・。目的地に到着してバイクから降りると、襟元などに桜の花びらが数枚挟まっていることはよくある話です。

世田谷通り 大蔵団地の坂 秋の様子
秋の様子

秋は光の通り道となり、秋らしい澄んだ感じの雰囲気になります。

交通量が多い世田谷通りで桜並木。道路から少し離れて植えられているので街路樹に向かないとされる桜でも問題なく育っているのでしょうが、これだけ交通量が多い道での立派な桜並木も全国的に少ないのではないでしょうか。

桜の咲く時期以外は普通の並木道になってしまいますが、秋には紅葉し、少し雰囲気がよくなります。坂道なので太陽の光がよく降り注ぐといった感じで、桜の紅葉でもきれいに見えます。桜の時期とは違った趣があっていいものです。

世田谷通り 大蔵団地の坂 弥生橋
弥生橋

大蔵団地の切り通しにかけられている橋です。撮影スポットになっています。

個人的には世田谷区の中でも好きな桜並木の一つです。バイクなどで車道を通るのも楽しいですし、坂の歩道を歩きながら眺めるのも雰囲気がいいですし、もちろん切り通しに設置された弥生橋の上から眺めても素晴らしいです。桜の開花時期は多くの人が橋の上で写真を撮っています。

このように色々な楽しみ方ができところが好きです。でもあまり上にばかり気をとられていると前方不注意でぶつかったり、自転車が下り坂を勢いよく下ってくることがあるのでご注意を。

世田谷通り 大蔵団地の坂
遠近法の妙

さてこの道は上っているでしょうか、下っているでしょうか、平坦でしょうか。
遠近法の妙ってやつです。

この坂を下ると仙川があり、そこには近代的な回転大仏という変わったものが置いてある妙法寺があります。これはこれで面白いような・・・やっぱり味気ないようなといったものです。その境内にある枝垂れ桜もなかなかのもので、期間中にはライトアップされています。

そして再び坂を上ると、成城に別れる交差点があります。それを左に入ると砧小学校があり、ここもまたせたがや百景に選ばれている立派な桜があります。

さらには成城方面に曲がると東宝スタジオがあり、そこにはゴジラの像が建っています。東宝映画のシンボルといったところでしょうか。そのゴジラの像を過ぎると仙川沿いに桜並木が現れます。ここも有名な桜スポットで、期間限定で東宝の道具係さんが桜のライトアップを行ってくれます。

駅から遠いついでに砧公園とか、成城の桜並木にまで足を延ばしてもいいかもしれません。とても桜の多い地域なので春の散策は楽しいです。

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* 大蔵団地と大蔵三丁目公園 *

大蔵団地と桜の木
大蔵団地と桜の木

団地らしい団地ですが、比較的空間にゆとりがあります。建物の老朽化により近々建て替えられます。

大蔵団地について少し書くと、現在は東京都住宅供給公社が所有する大蔵住宅となります。

昭和35年に建設が始まり、現在では11haに30号棟、住宅戸数は1264戸もあるといったとても大きな団地となっています。

すでに建設後50年が経っているので、建て替えの計画があり、それに伴い新しい団地づくりの話し合いが行われています。今後どのような団地に生まれ変わるのか、崖の風景を含めて大蔵団地の景観がどのように変わるのか、とても楽しみです。

大蔵団地 大蔵遺跡の解説板
大蔵遺跡の解説板

解説板が立っているだけで遺構は残っていません。

かつてこの場所には縄文人が住んでいました。昭和34年の調査で竪穴住居11,配石址1の遺構が発掘され、多くの縄文土器も出土されたようです。

一応坂の上のところに大蔵遺跡の案内板が建てられていますが、遺構は残っていなく、出土品などは郷土資料館に保管されています。

素人的には小さな遺跡があったんだろうなといった感じなのですが、研究者目線だと世田谷区内の遺跡でも有名なもののようです。

坂の下には湧水の出る大蔵三丁目公園もあり、高台だし、水の便も悪くないことからそれなりの規模で人の営みがあったと推測されています。

大蔵団地 石井神社の跡地
石井神社の跡地

旧登戸道付近にあります。

その他、団地内に石井神社の跡地の碑といったものもあります。湧水を守るための神様だったのでしょうか。由緒などに関してよくわかりませんが、この場所で人の営みがあったというのだけは確かです。

それにしても縄文人も遙か未来にこんな大掛かりな集合住宅が出来上がるとは思ってもみなかったでしょうね。というか、この場所は縄文集落から始まり、近代的集落へ順調に進化したという事になるでしょうか。そう考えると妙に納得できてしまったりします。

大蔵三丁目公園
団地の中にある大蔵三丁目公園

丸子川の源泉となっている湧水のある公園です。

また東宝の撮影所が近い関係で映画やドラマのロケに使われることもあります。団地風景が使われることもありますが、とりわけ驚いたのが黒澤明監督の七人の侍(1954年)が大蔵三丁目公園付近で撮影されたことです。

当時は大蔵団地はなく、この付近は田んぼと森だったようで、ここに村のセットをつくり、そして撮影したとか。実際に昭和23年の航空写真を見てみると白黒なので田んぼなのか畑なのかわかりませんが、見事に田畑だらけでした。

といってもこの映画は何カ所かに同じセットを造って撮影したという話で、撮影所に近いからちょっとした取り直しの場面などに使われたようです。何にしても今では想像できません。

大蔵三丁目公園 湧水のある風景
湧水のある風景

ザリガニとか沢山いそうな雰囲気です。

団地の中に湧水を使ったこんな素敵な大蔵三丁目公園があるとは知りませんでした。この湧水は丸子川の源泉となっていて、仙川に沿うようにして、途中自動車教習所付近では暗渠となっていますが、水神橋まで流れていき、そこで丸子川に流れます。

かつては大蔵遺跡の住民も使っていただろうと推測される湧水を使った公園は素晴らしく、四季それぞれの良さがあります。訪れた際にはこちらの方にも立ち寄ってみてください。

* 感想など *

世田谷通り 大蔵団地の坂
桜を見上げる

上を見上げる子供は頑張ってと応援したくなります。

ここの桜並木は切り通しの坂道に立地しているので、高さというか、奥行きのある桜の景色になります。また桜が散るころには、切り通しを吹き抜ける風のいたずらによって起こる桜吹雪も味があります。もの凄く素晴らしい桜の風景というわけではありませんが、好きな風景の一つです。桜と坂が織りなす景観というのは不思議な魅力があるのかもしれません。

桜の時期は、坂を登るのが辛くても下や後ろを向く必要がなく、疲れ知らずの坂になっているのではないでしょうか。自然と頭上の桜を見上げながら歩いていて、気が付いたら坂を登り終えていたということになっていそうです。

それから、くれぐれも坂を下ってくる自転車には気を付けてください。自転車は急には止まれません。特に私のように写真を撮っている人、あと一歩後ろかなと画面等を見ながら無意識に下がると自転車の急ブレーキの音が・・・ってことになりますので、本当に気を付けてください。

せたがや百景No.63 大蔵団地と桜
ー 風の旅人 ー
2017年10月改訂

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* 地図、アクセス *

・住所大蔵3丁目の世田谷通り沿いと大蔵三丁目公園
・アクセス最寄り駅は小田急線祖師ヶ谷大蔵駅、成城学園前駅。駅から少し離れています。
・関連リンクーーー

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