世田谷散策記 タイトル
せたがや地域風景資産 #1-21

国分寺崖線を眺められる多摩川堤

上野毛2丁目28付近の多摩川堤

堤の上からは、下流に向かって左手に国分寺崖線の樹木、右側に多摩川が眺められる。天気が良い時には、多摩川越しに富士山も見える。堤は歩行者道となっており快適な散歩道となっている。(紹介文の引用)
*選定当時と風景が大きく変わりました。

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1、上野毛付近の多摩川堤

上野毛付近の多摩川堤 対岸、川崎からの風景の写真
対岸、川崎からの風景

ライズビルの存在感がすごいです。崖線の比ではありません。

二子玉川は、近年行われた再開発によって高層ビルが何棟も建ち、ショッピングセンターができ、二子玉川公園ができと、大きく町の風景が変わりました。

特に150mと世田谷一の高さを誇るライズビルの存在感は半端なく、周辺の地域から二子玉川方面への眺望も大きく変わりました。

再開発地域と隣接している上野毛ではその影響が大きく、崖線上にある五島美術館や関東富士見100景に選ばれている富士見橋などでは、眺望が大きく変わり、残念な感じになってしまいました。

1960年代の二子玉川公園付近の航空地図<(国土地理院)
1960年代の二子玉川公園付近の航空地図

国土地理院地図を書き込んで使用

1990年頃の二子玉川公園付近の航空地図<(国土地理院)
1990年頃の二子玉川公園付近の航空地図

国土地理院地図を書き込んで使用

このライズビルが建っている土地は、古くは読売遊園や二子玉川園といった遊園地があったり、近年ではナムコワンダーエッグがあったり、「いぬたま・ねこたま」があったりと、なかなか凄い歴史を持った土地だったりします。

二子玉川公園ができた土地の方は、東急自動車学校があった場所で、それ以前は玉川プールがありました。

この玉川プールは、大正14年に玉川電鉄が巨費を投じて建設した屋外プールで、長さ50メートル、幅25メートルあり、10メートルの飛込台や子供用のプールもありました。

現代の感覚では、へぇ~二子玉川にプールがあったんだ・・・と、反応も薄いでしょう。しかしながら、この当時としては凄いプールで、世界水連が公認する日本唯一のプールだったのです。

全日本選手権などといった大きな大会が開催され、輝かしい世界記録が続々と生まれるなど、日本水泳界の栄光の場所ってな感じになります。

上野毛付近 東急自動車学校と崖線の写真
東急自動車学校と崖線(2008年)

現在は二子玉川公園になりました。

後に、経営権が玉川電鉄から明治大学に移った事で「明大プール」となり、その後は取り壊され、東急自動車学校に替わり、この度の再開発で大規模な二子玉川公園として整備されました。

東急自動車学校はというと、2009年12月に多摩市へと移転していきました。周辺に大学が多いとはいえ、東急沿線ではなくなってしまったのは、止むを得なかったのでしょうか。

自動車学校の北側には都立玉川高校もあったのですが、昔は進学校だったのが、どんどんと偏差値が下がっていき、人気も右肩下がり。2008年には砧工業高校と統合して都立世田谷総合高等学校となり、岡本に移転していきました。

上野毛付近 再開発前の多摩川堤の写真
再開発初期の多摩川堤(2008年)

再開発、堤防工事前の土手の風景です。

二子玉川の再開発について書いてきましたが、この項目は「国分寺崖線を眺められる多摩川堤」といったタイトルになっています。

多摩川堤が素晴らしいということなのか、緑豊かな崖線を眺められるから素晴らしいのか、その両方なのか、その一番の意図するところがよく分かりませんが、土手の場合、大規模な堤防工事や二子玉川公園ができた事で、選定時点とは随分と様子が変ってしまいました。

二子玉川付近の川沿いは、せたがや百景に登場する松林があったり、土手に桜の木が植わっていたりと、特徴のあるいい風景だったのですが、堤防工事によって多くが伐採されたり、移植されてしまいました。

上野毛付近 多摩川の土手に咲く桜の写真
多摩川の土手に咲く桜

現在のテラス部分には立派な桜がありました。

この地域風景資産の対象となっている松林から第三京浜までの間は、もともと何もないというか、広々とした感じのする場所で、土手の上の道も非常にシンプルな土の道で、いかにも土手ってな感じがしてよかったように思います。

再開発後には、土手にせり出すような感じで二子玉川公園の展望テラスができ、大きく印象が変わりました。

モダンな感じで整備され、以前よりも多摩川の眺望はよくなり、くつろげるスペースもできたので、都市の風景らしい土手になったということができます。多くの人は以前よりもよくなったと感じているはずです。ただ、ちょうどこの場所に咲く桜が好きだった私としては、ちょっと複雑な気持ちもあったりします・・・。

二子玉川公園から見る崖線の写真
二子玉川公園から見る崖線

テラスができて見やすくなっています。

崖線の方は、五島美術館、上野毛稲荷神社、上野毛自然公園とつながっている部分の緑と、第三京浜付近にまとまって見られる緑が特徴です。

昔は自動車学校があってその奥に見ることができました。公園ができるという事で、目の前に出来る公園の緑の方が印象的になり、崖線の緑が目立たなくなるのでは・・・と思っていたのですが、川沿いに富士山がよく見える高台のテラスが設置されたので、以前よりも崖線の緑がよく見えるようになりました。

上野毛付近 対岸と富士山の眺めの写真
対岸と富士山の眺め

冬の晴れた日などには富士山を眺めることができます。

このテラスはそこそこ高く、以前の堤防付近まで張り出しているので、天気のいい日には多摩川の向こう側に富士山を眺める事もできます。

カフェも設置されているので、くつろぐにはなかなか気持ちのいい場所です。この項目も、「国分寺崖線や富士山を眺められる二子玉川公園」とする方がいいかもしれません。

上野毛付近 工事中の土手と崖線の緑の写真
工事中の土手と崖線の緑

五島美術館、上野毛稲荷神社、上野毛自然公園のあたりで、緑が多いです。

用事があったついでに対岸からこの付近を眺めてみると、新しくできたライズビルの存在感がすごいこと。対岸から見てもその高さは圧倒的です。

あまりにもビルの印象が強くなり、崖線の特徴ある緑の風景の存在感が一気に薄まってしまったように感じます。

それから崖線を眺めていて気になったのですが、五島美術館、上野毛稲荷神社、上野毛自然公園がある部分に緑が多いのは分かるのですが、第三京浜の手前付近にも緑が多いのです。

丸子川沿いの道を走っていても、第三京浜の橋付近の崖沿いには緑が多く、今までちょっと気になっていたのですが、離れた対岸から見ると、その部分の存在感は公園などに負けていません。

第三京浜近くの丸子川の桜の写真
第三京浜近くの丸子川の桜

春には丸子川が桜並木となります。

この謎の区間、丸子川沿いには桜の木が多く、春にはピンクの屏風のようになります。なかなかの景色で、隠れた穴場ですが、道が狭いので観賞するのは細心の注意が必要です。

いったいこの土地は何ぞや。地図で見ても何も記されていない地域なので、地主さんの土地となるのでしょうか。いずれ市民緑地などで公開されるとうれしいですね。

2、感想など

春の玉堤土手の写真
春の玉堤土手

再開発前はいかにも土手といった感じがよかったです。

上野毛付近の多摩川沿いの土手。今では二子玉川公園ができ、多摩川の堤防工事も行われたので、すっかりと選定当時と風景が変わってしまいました。

以前の方が良かったと感じる人もいれば、新しくなったテラスの方が好きという人もいることでしょう。どちらの風景が好みかは人ぞれぞれだと思います。

ただ、はっきりしているのは、テラスができたことで、以前よりも多摩川や富士山、そして崖線の眺めがよくなりました。

暇な夕方、テラスの階段に腰掛け、少し高い位置から夕暮れの多摩川や富士山を眺めてみてはどうでしょう。雄大な景色なので、とても気持いいですよ。落ち込んでいたり、イライラしているときは、きっと気持ちが落ち着くことでしょう。

せたがや地域風景資産 #1-21
国分寺崖線を眺められる多摩川堤
2025年5月改訂 - 風の旅人
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・地図・アクセス等

・住所上野毛2丁目28付近の多摩川堤
・アクセス最寄り駅は田園都市線二子玉川駅、大井町線上野毛駅。
・関連リンク二子玉川公園(世田谷区)、二子玉川公園ビジターセンター
・備考選定当時と風景が大きく変わっています。
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