多摩川土手の桜
玉川1丁目~野毛2丁目の多摩堤通り沿い東京で最も早く咲く桜として知られる。ありあまる春の光を全身に浴びるからだろうか。風に散る満開の桜が川辺に広がるタンポポのじゅうたんと一緒に多摩川堤ののどかな春の風景をかたちづくる。(せたがや百景公式紹介文の引用)
1、多摩川土手の桜、二子玉川駅近く
*国土地理院地図を書き込んで使用
二子玉川駅前を通っているのは、バイパスができる前の国道246号。二子橋で多摩川を越え、高津へ続いています。
この道は二子橋の手前で多摩堤通りと交差しています。多摩堤通りは多摩川に沿って整備されている道。現在版の筏道といった感じで、信号が少なく、距離的にも短く、抜け道としての利用価値が高いです。
その多摩堤通りの二子玉川駅付近では、道路は多摩川から少し離れているのに、川側が土手になっています。そしてこの土手がとっても面白い構造をしています。
何が面白いかというと、土手が川から少し離れた場所にあるために、土手の外側(川側)にも家が建っているのです。実際、土手の上に立ってみると、町中に忽然と土手があるといった感じになります。
他に写真が見当たらなかったので落書き付きで申し訳ありません。
落書きは絶対にやめましょう。
でもこれって・・・土手の外側(川側)に住んでいる人って大丈夫なのだろうか。人ごとながらちょっと心配になってしまいます。
それに、車が通れる切れ目があっては、堤防として意味がないような・・・。って、よく見ると、切れた場所には落書きが・・・、じゃなくて縦の溝が入っていました。帰ってから調べてみると、これは閘門というもので、氾濫の恐れがある場合には板で塞ぐようになっているようです。
今までそういった事態になったことがあるのか、どの程度使用されたのかは分かりませんが、川側に住んでいる人はそういう事態になったら怖いですね。
そもそも、なんでこんなところに土手を造ったの?ってことになりますが、詳しくは前章の「78 多摩川沿いの松林」に記していますので、省略します。
この付近は今のところ昔と似たような状態で土手と桜並木が残っています。
近年、二子玉川駅の南側では大規模な再開発が行われ、大きなビル群が建ち、大きな二子玉川公園もできました。それと共に、河川敷では大規模な護岸工事が行われ、大きな堤防ができました。
町中の風景が変わっただけではなく、川辺の風景もがらりと変わりました。川辺にあった松林や桜など、残して欲しいと思うような風景もあったのですが、これでこの地域に暮らしている人は大雨が降る日の不安感が減少したのではないでしょうか。
川沿いに堤防ができたことで、このちょっと風変わりな土手の必要性もなくなってしまいました。駅近くの一等地。平坦にして歩道を造るなり、宅地開発するなり、有意義に使えそうな気もします。
しかしながら、取り壊してしまうにはちょっともったいない土手です。なぜなら土手に咲く桜が見事だからです。
土の土手と近代的なビルとの対比が面白いです。
二子玉川の駅から南、下流に向かって多摩堤通り沿いの土手を進んでいくと、二か所車が通れる閘門があり、それを過ぎたところから桜並木になっています。
土手の桜というと、土手の上や斜面に植えられている事が多いのですが、ここの桜は土手下の車道沿いに植えられています。その枝が土手を覆っているといった感じです。
車道横に生えていて、枝が土手を覆っています。
この付近の多摩堤通りは、片側2車線の広い道路ですが、かつては片側一車線でよく渋滞していました。更にはバス通りでもあり、川沿いには土建屋が多いのもあって、トラックやダンプカーの通行も多かったです。
土手の上に植えられていればよかったのですが、車道のすぐ横に植えられている桜にとっては、排気ガスやら車の震動やらと過酷な環境になり、枝も車道の方へ伸ばせなかったので、多くの木が土手の方に傾いたような格好で生えています。
*国土地理院地図を書き込んで使用
間隔が開いている部分があるのは、その部分に生えていた桜が枯れてしまったからです。古い航空写真を見てみると、戦後間もなくの写真では桜は植えられていなく、1960年代の写真を見ると、きれいな並木となっています。東急系列の遊園地、二子玉川園ができたのが、1957年。その頃に植えられたのかもしれません。
この度の二子玉川の再開発で多摩堤通りがトンネルとなっている区間は伐採されてしまいましたが、道が広げられたので、桜にとっては今までよりは負担が少なくなったように感じます。
問題は、今後どうなるかということ。この土手の存在意義が薄くなった現状では、土手自体が消えてしまうかもしれません。いや、逆に今こそ土手に植樹して、新たな二子玉川の名所にした方が・・・などと思ってしまいます。
2、多摩川土手の桜、第三京浜より南
下から見上げると迫力があります。
多摩川に張り出した二子玉川公園の富士見テラスより下流では、旧堤防と、新堤防が合流し、多摩堤通りが川沿いを走ることになります。そして第三京浜の赤い高架橋があり、この橋より下流では多摩堤道路は土手の上を走るようになります。
ここから下流の土手には、断続的に土手の斜面に桜が植えられているので、多摩堤通りを通行すると、断続的に桜並木を走っているような感じになります。
ただ、土手の分の高さがあるので、見上げる感じではなく、目線の横に桜の花があるといった感じになり、ちょっと違和感を感じるかもしれません。
斜面に生えているので複雑な枝をしている木もあります。
土手の斜面に植えられている桜は、根を車に踏まれることはないし、通行の邪魔になるからと、元気な枝をバサバサと切られることもないので、とてもいい枝振りをしていて、砧公園の桜のように幹の太い桜もあります。
ただ斜面に生えている木も多く、斜面の高い方の枝が窮屈な感じで伸びていたり、地面を這っていたりします。
木のそばまで寄ると、老木だし、ちょっと痛々しく感じる部分もありますが、遠くから見ると本当に美しい桜です。
本当に美しいと感じるのは、河川敷から見たときで、特に西日が当たる夕方は何とも言えぬ風景になります。広々とした河川敷に咲く桜。砧公園の桜も壮大な感じがして素晴らしいけど、こちらもまた負けていないと感じます。特に開放感を感じながら桜を楽しめるという部分では、世田谷一と言えるのではないでしょうか。
この辺りでは桜が並木のようになっています。
この付近の河川敷は、多摩川遊園といった広場や運動グランドなっていて、普段から犬の散歩や遊びに来た親子連れなど、河川敷を歩いている人の姿が多いです。
桜の時期になると、更に増え。休日の昼間などには大きな桜の木の下で花見をする人も多く見受けられます。
ソメイヨシノよりも少し早く咲きます。
野毛の辺りでは、早咲きの河津桜も少し混じっていて、ソメイヨシノよりも半月から1ヶ月ぐらい早く桜を楽しむこともできます。
2月ころは空気が冷たく、早朝などはとても空気が澄んでいます。河川敷から富士山がくっきりとよく見える日もあります。運が良ければ桜と一緒に楽しむこともできますが、いかんせん富士山までは距離があるので、一緒に写真に収めるのは難しいです。
まだ若そうなので最近植えたものでしょうか。
河川敷というのは日当たりがいいので、冬でも風のない日は比較的ポカポカして気持ちのいい場所です。
砧公園でも日当たりのいい場所にある桜から開花していくように、桜というのは日当たりのいい場所の方が早く咲きます。太陽の光を遮る障害物のない川沿いの桜は、街路樹よりも健康的だし、早く咲く条件を満たしていると言えます。
百景の紹介文では、都内で最も早く咲く桜として知られているとの事ですが、実際のところはどの程度認知されているのでしょうか。ニュースなどでも取り上げられているのでしょうか。それとも過去の話となったのでしょうか。この部分の詳細はよくわかりません。
それに暖かい日が続くと真っ先に咲きそうな桜ですが、寒の戻りと重なると、川辺に吹く風は内陸以上に冷たく、むしろ土手の方が寒くなります。そういう気象条件と重なった場合はこちらの桜の方が遅く咲くといった事もあるかもしれません。
夕日にあたると結構いい風景になります。
桜の紅葉というのはあまり聞かないかもしれませんが、うまく光が当たるときれいです。その点、ここの桜は河川敷なので均一によく光が当たり、紅葉の時もいい感じになります。特に強烈な西日のあたる夕方は素敵です。
大きな水門があります。
土手にある大きな水門は谷沢川の水門です。谷沢川は等々力渓谷を流れてくる川で、この水門から渓谷まではそんなに離れていません。
等々力渓谷を散策して河川敷まで足を延ばすというのも一つの散策ルートになります。もちろん二子玉川から二子玉川公園や河川敷を歩き、等々力渓谷を抜けるというのもいいです。
子供の遊び場もいくつかあります。
とまあ、冬は富士山が眺められ、春先に河津桜、そしてソメイヨシノが咲き、夏は水辺の涼や夕涼みなど、そして秋には紅葉と、多摩川の河川敷は散策ネタに困りません。
河川敷は広々としているので、ジョギングにもいいですし、遊具も置いてあるので、子供を遊ばせるのにも最適です。桜の時期以外もお弁当を持参してのんびりとくつろいでみてはどうでしょう。
3、再開発中の桜並木
桜の時期ではありませんが、まだビルは建っていませんでした。
夕暮れのクレーンは味があっていいです。
再開発前ではなく、再開発中とタイトルが中途半端ですが、ちょうどここの桜並木がいいなと写真を撮り始めたのが、2009年。ちょうど再開発が始まった時でした。
翌年の2010年には、桜並木の幾つかは消滅したり、河川敷への立ち入りができなくなったりと、ちゃんと写真に収めることができたのは2009年だけでした。
ビルとクレーン、そして桜が絵になっていました。
空に向かって聳える感じが素敵です。
ライズビルの建設は、三棟同時に工事が進んでいき、大きな赤いクレーンが沢山伸びている様子が印象的でした。
神社の赤い鳥居や社殿が桜とよく似合うように、赤いクレーンと桜も結構似合っていました。
建設中のビルといういのは勢いとか、進化を感じます。
二子玉川公園のテラスができた部分です。
上の写真を反対から見た図です。今はなくなってしまった風景です。
今でも多摩堤通りのトンネルの手前付近の桜並木は残っているので、桜並木としての景観は残っていますが、その先の部分、今では二子玉川公園のテラスがある辺りの景観はとても素晴らしかったです。
短いけど桜のトンネル・・・、いや、桜のゲートと呼ぶべきかもしれませんが、奥には武蔵小杉のビル群が見えていて、面白い光景でした。
河川敷に降りる部分にも大きな桜があり、ここの風景がとても開放感あって私のお気に入りでした。
ビルは完成しました。今度は堤防や二子玉川公園の工事が始まりました。
2010年になると、河川敷が封鎖され、堤防工事が本格的に始まりました。お気に入りの桜は柵には割いていましたが、写真を撮れる状態ではありませんでした。
来年にでも撮ろう。などとのんきに考えていたら、そのまま伐採されてしまいました。
二子玉川公園の開園直前です。
2013年の桜の時期に訪れてみると、すっかり風景が変わっていました。私的に予定外だったのが、二子玉川公園のテラス部分が河川敷にせり出すようにできてしまったこと。
この部分に桜や松が多く植えられていたので、その風景がバッサリとなくなってしまいました。4月中旬にはその二子玉川公園が開園となります。今は違和感や不満を感じていても、そのうちこの風景にも慣れてくることでしょう。
4、感想など
二子玉川公園のテラスになっている部分です。とても好きな桜でしたが今はありません。
多摩川の土手に咲いている桜。砧公園もそうですが、広々と開放感がある場所に咲いている桜は、桜らしくどっしりと枝を伸ばしている姿が素敵です。やっぱりこれが本来の桜の姿であって、見ていて落ち着きます。
ただ、現在の河川法では、堤防の上や斜面に新たに植樹することが禁止されています。あれ、堤防に木があると、木の根っこが堤防の強度を高めてくれるんじゃない。そう思う人もいるでしょう。実際、山の斜面に植樹すると、斜面が崩れにくくなります。
だったらなんで?となりますが、堤防の場合はちょっと特殊で、確かに強度が増すというのは間違いないのですが、川が増水したときには、逆に木が水流の抵抗となってしまい、その部分から決壊しやすくなってしまいます。諸刃の剣という感じでしょうか。
同じ理由で堤防の上にある玉堤通りにはガードレールが設置されていません(歩行者保護や下に民家や施設がある場合などを除く)。ハンドル操作を誤ると、土手下に転落となってしまい、危ないのですが、治水の方が優先されます。
なので、今後は枯れたら伐採されるだけで、河川敷に新たに桜の木が植えられることはありません。多摩川土手に咲く桜という風景は徐々に消えていきます。今のうちに桜のある風景を楽しみましょう。
せたがや百景 No.79多摩川土手の桜 2025年7月改訂 - 風の旅人
・地図・アクセス等
| ・住所 | 玉川1丁目~野毛2丁目の多摩堤通り沿い |
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| ・アクセス | 最寄り駅は田園都市線二子玉川駅、大井町線上野毛駅。 |
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