世田谷散策記 タイトル
せたがや百景 No.80

はなみずき並木の二子玉川界わい

玉川3丁目玉川通り周辺

まちのシンボルとなっている並木道。地元の熱意がつくりだした景観だ。桜の花の終わるころ、ハナミズキの赤い花が咲き始める。五月に花みず木フェスティバルも行われ、まちに初夏の到来を告げる。(せたがや百景公式紹介文の引用)

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1、花みず木の町、二子玉川

二子玉川 花みず木の町の看板の写真
花みず木の町の看板

遊歩道と多摩堤通りの合流地点やハナミズキ広場に設置されています。

とっても恥ずかしい話ですが、若かりし頃の私は「花水木」という言葉は知っていましたが、それが木の種類だとは知りませんでした。なんていうか、花鳥風月といった類の言葉だと思っていました。

玉川高島屋内のある店舗で働いた時、ゴールデンウィークの期間中に花水木セールってものをやっていて、なんでゴールデンウィークセールではないの?なにか特別にめでたいセールなのかな?って、胸に付けさせられたバッジを見つつ思っていたのですが、今更ながら色々と納得できました。

二子玉川 花水木の花の写真
花水木の花

近くで見るとあまりきれいではないかも

その花水木なのですが、和風っぽい名前とは裏腹に、北アメリカ原産のミズキ(水木)科の落葉小高木です。樹高は3~8メートルほど。地域に拠りますが、4月中旬~5月中旬に花を付けます。

ミズキ科の中でも花が目立つ種類なので、日本では花水木(ハナミズキ)という名前になったそうです。その他では、日本の近縁種のヤマボウシに似ていることから、アメリカヤマボウシと呼ばれる事もあります。

特に珍しい品種ではなく、区内でも多く見かけますし、都内でも、いや、全国的にありふれた植物となっていて、日本各地の公園や街路樹で見かけます。

古い時代のワシントンの桜の写真(アメリカ合衆国議会図書館(Library of Congress))
古い時代のワシントンの桜

アメリカ合衆国議会図書館(Library of Congress)の写真を使用(PB LOT 12355-5)

ハナミズキで有名な話を紹介すると、1912年(明治45年/大正元年)に東京市長だった尾崎行雄氏が、友好の証として約3000本桜をアメリカに贈りました。ワシントンのポトマック河畔に植えられているやつです。

その返礼として贈られらたのが、ハナミズキでした。そういった経緯から日米友好の象徴という意味合いを持つ樹木となっています。

なぜハナミズキが贈られたのか。ちょっと調べてみましたが、よくわかりません。アメリカではハナミズキは珍しくない植物ですが、山岳部や西海岸ではみられないとか。ノースカロライナ州、バージニア州、ミズーリ州では、州の花や木になっています。

桜をワシントンに植える計画を最初に立てたのは、紀行作家のエリザ・シドモア女史。彼女はアイオワ州の出身。この計画を推進したのが、当時ファーストレディーだったヘレン・タフト。出身地はオハイオ州。大統領のウィリアム・タフトも出身地はオハイオ州。なかなか接点が見つかりません。

二子玉川 はなみずき広場の写真
はなみずき広場

国道246号の高架下にある広場です。

二子玉川では、町づくりの一環としてハナミズキを町の花(シンボルツリー)に指定し、昭和53年から玉川高島屋、建設省、東京都、世田谷区などの協力を得て、着々と植え続け、今ではその数は500本以上になります。

ハナミズキの町二子玉川としてアピールしているわけですが、二子玉川とハナミズキって一体どうつながるのでしょう。尾崎氏と二子玉川は接点がないし、アメリカと二子玉川の接点も見つかりません。色々と調べてみましたが、これもよくわかりませんでした。

世田谷区内では、深沢の園芸高校に一番最初に贈られた原木が1本、今でも残っています。都立祖師谷公園には里帰りの桜といわれるワシントンで育った苗木が植えられています。それ以外は関係するような接点は見つかりませんでした。

もう一つ気になるのが、二子玉川ではハナミズキを「花みず木」と表記しています。水をひらがなにしたこだわりは何でしょう。とても気になります。

二子玉川 第2の花みず木の元木の写真
第2のハナミズキの元木

二子玉川小学校にあります。

「友好の木~ハナミズキ・イニシアチブ」は1912年に行われたものですが、第二回目も行われています。

二回目はミレミアムで話題となった2000年。その時に贈られた紅白の原木、いわゆる第二の原木が二子玉川小学校に植えられています。

二子玉川公園のハナミズキの写真
二子玉川公園のハナミズキ

第3の原木も混ざっています。

最初の交流から100周年を迎えた2013年。日米両国の「永続的な友好の象徴」として、3000本のハナミズキがアメリカから贈られました。

この木は2011年に発生した東日本大震災からの復興に取り組む地域を含む日本全国各地に配られ、世田谷区にも53本割り当てられました。その木は2014年4月に新しくできた二子玉川公園に園芸高校の生徒によって植樹されました。これが第三の原木となります。

二子玉川とハナミズキの接点や始まりはどうであれ、町中に日米友好の象徴となるハナミズキが溢れ、第二、第三の原木が植えられ、ハナミズキに関するイベントがずっと行われるなど、ハナミズキの町としての歴史が積み重ねられ、今では二子玉川といえばハナミズキといったイメージが広く知られるようになったのではないでしょうか。

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2、二子玉川のハナミズキ並木

二子玉川 駅前通りの花みず木並木とつつじの写真
駅前通りの花みず木並木とつつじ

広い通りに花水木が植えられています。ちょっとおしゃれな感じです。

二子玉川の町は、玉川高島屋や駅の前を通り、二子橋へ続いている旧246号を中心に町が栄えています。この通り沿いには街路樹として花水木が植えられていますが、普段はこれといった特徴のない木なのであまり印象に残らないと思います。

しかしながら4月の中旬頃からの開花時期にはその印象が一転します。白い花の木が大半ですが、ところどころ赤い花の木も混じり、下草のツツジとともに通りが彩り鮮やかな感じとなります。

二子玉川 花みず木通りの石碑の写真
花みず木通りの石碑

高島屋の前にあります。

高島屋の前に花みずき通りという石碑が設置されているので、この通りが花水木並木のメインストレートとなるのでしょうか。

といってもこの名称はこの石碑以外で見たことや聞いたことがないので、あまり一般的な呼び方ではないと思います。

でも通り沿いには高島屋をはじめ結構おしゃれなお店が多いので、おしゃれな二子玉川のハナミズキ通りとしてそのうち広く名が知られていくかもしれません。

二子玉川 砧線軌道跡の碑とハナミズキ並木の写真
砧線軌道跡の碑とハナミズキ並木

この遊歩道にはかつて玉電が走っていました。

世田谷区内にはおそらく桜並木以上に多くの花水木並木があります。そのほとんどが2車線道路の並木道です。この木の大きさを考えると、二車線道路ぐらいの場所にその方がふさわしいかなと思えます。

実際のところ日本中にハナミズキ並木があり、イチョウに次ぐ多さだとか。あまり根を張らないので道路を傷めなく、背の高さもほどほどなので、管理がしやすく、各地で積極的に取り入れられているそうです。

二子玉川でも駅の東側、玉川税務署の前や後ろを通っている道路が花水木の並木となっていて、結構な本数が植えられているので美しい並木となっています。

二子玉川 砧線跡歩道に並ぶハナミズキの写真
砧線跡歩道に並ぶハナミズキ

開花時期は美しい散歩道となります。

駅の北側、高島屋の少し北側に花水木が並木となっている遊歩道があります。区内には川を暗渠にした緑道が多くあり、ここもそういった緑道に似た感じですが、実はこの遊歩道は玉電砧線の線路跡で、廃線となった後に砧線跡歩道として整備されたものです。

旧246号付近から多摩堤通りまで線路跡らしく真っ直ぐの遊歩道で、ここだと2車線道路よりも更に花水木の存在感が増し、開花の時期は歩いていて気持ちいいです。

多摩堤通りのところにある広場には「花みず木のまち 二子玉川」なんていう看板が建てられていて、花水木の町としてさりげなくアピールしていたりします。

二子玉川 ハナミズキの並ぶ道の写真
ハナミズキの並ぶ道

ここは水路跡なのでしょうか。

玉電跡の遊歩道以外にもこの付近の住宅街を歩くと、再開発で余った道路脇とか、恐らく水路跡と思われる道などに花水木が植えられていて、所々に小さな並木を見かけます。

とはいえ、開花時期以外はありきたりな木なので開花していないと花水木の木はなかなか気がつかないものです。

あっ、ここにもハナミズキがある。といった感じで、さりげない風景を探すのも楽しく、ハナミズキの開花時は二子玉川の散策が楽しいです。

二子玉川 ハナミズキの紅葉の写真
ハナミズキの紅葉

光を選びますが、モミジのように美しく見えることもあります。

ハナミズキの見ごろは春の開花時期になりますが、実は秋の紅葉の時も少しいい風景になることもあります。

ハナミズキは秋になると葉が赤くなり、赤い木のみを付けます。葉が厚いので普通に見るなら紅葉が美しい木ではありません。でも逆光に透かしてみたり、強烈な西日を浴びたりすると、葉がとても赤くなり、まるでモミジのように見えることもあります。

3、二子玉川花みず木フェスティバル

二子玉川花みず木フェスティバル 兵庫島の写真
兵庫島の花みず木フェスティバル

兵庫橋が入り口となります。

二子玉川花みず木フェスティバル 新二子橋の上から見た会場の写真
新二子橋の上から見た会場

フリーマーケットと飲食店の店が並びます。

花水木の町と言うことで、毎年4月29日に兵庫島や河川敷で「花みず木フェスティバル」が開催されています。

以前訪れた時は、河川敷に多くのフリーマーケットと食べ物の屋台の店が並び、河川敷でピクニックついでに人が訪れているといった感じでした。

これでは大フリーマーケット市といった感じで、花水木フェスティバルという名前でなくてもいいのでは・・・といった期待外れな感想でした。

二子玉川花みず木フェスティバル ステージイベントの写真
ステージイベント

メイン会場でのステージイベントでは演奏やダンス、大道芸などが行われます。

二子玉川花みず木フェスティバル 地元団体の出店の写真
地元団体の出店

演奏だけではなく、出店もしていました。お値段も手ごろで子供たちに人気でした。

2014年に久しぶりに訪問してみると、商店街や高島屋だけではなく再開発で入ってきた多くの団体が実行委員メンバーとして参加するようになったようで、イベント会場が増え、イベント内容も充実し、イベントの規模も大きくなっていました。

メイン会場は兵庫島公園では花みず木フェスティバルらしくハナミズキの苗木の配布(要募金)が行われます。ステージでは大道芸、吹奏楽などの演奏やダンスなどが行われ、防犯・消防ふれあいコーナー、河川環境PRコーナーなど楽しめるブースもあります。

会場内には各種団体の出店やフリーマーケットが多く並びます。地元団体のお店などはお手ごろな値段で販売しているので子供たちには人気となっていました。

二子玉川花みず木フェスティバル 商店街のステージイベントの写真
商店街のステージイベント

世田谷のご当地アイドルが歌っていました。手製のボードがいかにも商店街のイベントって感じです。

二子玉川商店街でもイベントが行われます。イベント内容は年によって違いますが、昔遊びや落書きコーナーがあったりと商店街が子供にとって楽しい場所となっています。

私が訪れたときは商店街で世田谷御当地アイドルのステージが行われていましたが、手書きのボードを掲げながらのステージにはほのぼのとさせられました。

年によっては二子玉川公園も会場となっているようで、花水木の町としてまさに町を挙げてのイベントとなっています。

4、感想など

二子玉川 花水木が並ぶ遊歩道の写真
花水木が並ぶ遊歩道

雰囲気のいい遊歩道で、周りの家もおしゃれですね。

アメリカから渡ってきたハナミズキですが、街路樹として管理しやすいのもあって今では日本各地にハナミズキ通りなんて言うものがあります。そういった中、最初の原木の一本が園芸高校に、第二、第三回目の原木が二子玉川にあるといったように、世田谷と深い縁がある木です。

再開発が行われた二子玉川は人気スポットとなり、世間への露出度が増え、今まで以上に多くの人が訪れる地域となりました。

二子玉川がハナミズキの町として世間にどれだけ認知されているのかわかりませんが、二子玉川を訪れた人がハナミズキ並木の良さや、花みず木フェスティバルを見て、今後はハナミズキが二子玉川の魅力の一つとして多くの人に知られるようになるのではないでしょうか。

せたがや百景 No.80
はなみずき並木の二子玉川界わい
2025年5月改訂 - 風の旅人
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・地図・アクセス等

・住所玉川3丁目や二子玉川駅周辺
・アクセス最寄り駅は田園都市線二子玉川駅。
・関連リンク二子玉川商店街振興組合
・備考ーーー
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