世田谷散策記 せたがや百景のバーナー
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せたがや百景 No.72

岡本民家園とその一帯

瀬田から移築復元された茅葺きの古民家を中心に、農家のありさまが再現されている。鶏の遊ぶ庭先、野菜や草花の植えられた畑など当時そのままの姿を見ることができる。民家園の隣には岡本の鎮守様八幡神社が深い木立の中に鎮まっている。また民家園のある岡本公園の一角ではホタルを養殖しているが、これは崖線から湧き出る清冽な水が利用できるからだ。夏の夕辺にはホタルの飛びかう姿を見に多くの人が岡本公園を訪れる。(せたがや百景公式紹介文の引用)

・場所 : 岡本2-19-1
・備考 : 開園時間は午前9時30分~午後4時30分、休園日は毎週月曜日、入場料は無料。季節などに合わせて日本の古文化を中心とした様々な行事が行われています。

*** 岡本民家園とその一帯の写真 ***

岡本民家園の写真
旧長崎家の住宅主屋

民家園の母屋です。

岡本民家園の写真
雨の日の軒下

くつろげる場所が随所にあります。

岡本民家園の写真
軒下に置かれた農機具

古い脱穀機や千歯こぎなどが置かれていました。

岡本民家園の写真
玄関の上に飾られた八咫烏

特に深い関係はないとか。

岡本民家園の写真
土間の様子

草鞋や農具が飾ってありました。

岡本民家園の写真
土間の釜戸

行事の時には使用されます。

岡本民家園の写真
内部の様子

二部屋と囲炉裏といった感じです。

岡本民家園の写真
囲炉裏

周りに座ると落ち着く人もいるのでは。

岡本民家園の写真
旧浦野家住宅土蔵

江戸時代末期の建物です。

岡本民家園の写真
旧横尾家住宅椀木門

大正13年に建てられたものです。

* 民家園の四季とイベント *

岡本民家園の四季の写真
正月飾り

鏡餅にしめ縄、凧などが飾ってありました。

岡本民家園の四季の写真
元旦の獅子舞上演

岡本八幡から降りてきます。

岡本民家園の四季の写真
民家園の雛祭り

大きな記念写真用のパネルが置いてありました。

岡本民家園の四季の写真
お雛様の展示

古民家に雛人形はよく似合います。

岡本民家園の四季の写真
三椏と古民家
岡本民家園の四季の写真
古民家と鯉のぼり
岡本民家園の四季の写真
あじさいの季節
岡本民家園の四季の写真
畑の緑と古民家
岡本民家園の四季の写真
七夕まつり

民家園で一番大きなイベントです。

岡本民家園の四季の写真
七夕まつりの折り紙教室

多くの人が楽しんでいました。

岡本民家園の四季の写真
十五夜飾り
岡本民家園の四季の写真
月見団子の製作
岡本民家園の四季の写真
民家園と岡本八幡の神輿

10月第一日曜日に八幡様から降りてきます。

岡本民家園の四季の写真
半纏を着た担ぎ手で溢れる園内

ここで小休止。焼き芋が振る舞われます。

岡本民家園の四季の写真
すすきと古民家

都会では少なくなった風景です。

岡本民家園の四季の写真
干し柿

田舎の秋といった感じです。

岡本民家園の四季の写真
菊花展
岡本民家園の四季の写真
民家園の紅葉
岡本民家園の四季の写真
草鞋つくり

定期的に行われています。

岡本民家園の四季の写真
屋根の葺き替え

平成23年に行われました。

* 岡本公園と丸子川親水公園など *

岡本公園の写真
水と緑豊かな岡本公園

区内で水が豊かな公園の一つです。

岡本公園の写真
秋の岡本公園

春まで水辺が少し寂しくなります。

岡本公園の写真
公園内のせせらぎ

休日はザリガニつりをしている親子が沢山います。

岡本公園の写真
以前あったほたる園

先日訪れたら看板がなくなっていました。

* 岡本八幡神社 *

岡本八幡神社の写真
岡本八幡の鳥居と参道の階段

急な階段を登らなければなりません。

岡本八幡神社の写真
岡本八幡神社の社殿

落ち着いた感じの境内です。

* 岡本民家園とその一帯について *

岡本三丁目の坂を下ると仙川に行き当ります。その近くにある水神橋付近から丸子川が現れます。この付近の丸子川流域は(下山橋までの約900mの区間)、昔はこんなきれいな流れがあったんだろうなと想像をかき立てるような丸子川親水公園となっています。流れている水も澄んでいて、この付近の湧水と大蔵三丁目公園の湧水が水源となっているようです。

このせせらぎのような流れを道沿いに下っていくと、左手に森のような岡本公園があります。この公園内にも崖線から湧き出す水源があり、そのきれいな清水を利用してホタル園が設置されていました。ホタル園の入り口にはゲンジボタルとヘイケボタルの絵が描かれていて、中に入れないので詳しくはわかりませんでしたが、柵の中には二つの池があり、それぞれの池で2種類のホタルが育てられ、また幼虫の餌となるカワニナの飼育もされていたようです。ホタルの季節になると、柵から飛び出して公園内や丸子川を飛び回っていたのでしょうか。

以前訪れた時にはホタルの盗難があったような旨が書かれた張り紙がしてありました。なんとも寂しい話です。そういった影響があったのか、他の理由で維持ができなくなったのか分かりませんが、今でも源流付近はフェンスで囲いはされているものの、ホタル園の看板はなくなっています。また以前はホタル物知り館といった展示室が公園管理事務所の一画に設けられていて、ホタルの生態だけではなく多摩川流域にいる生物の生態系についても学ぶ事ができましたが、こちらも閉鎖されて物置になっています。

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この岡本公園は丸子川の親水公園と崖線から流れる湧水を使った水辺の公園といったような世界観で造られています。本来はよろしくないのでしょうが、休日には子供達が虫取りの網を持って池に入り、ザリガニなどを捕まえていたりします。こういった光景は昔の農村を中心とした世田谷では日常的な光景だったのでしょうが、都市化が進んだ現在では珍しい光景となってしまいました。

家の周りをコンクリートとアスファルトで囲まれている子供達にとっては天国のような世界かもしれません。田舎で育った私もこういった行為は日常の当たり前の行為でした。きっと私のように子供時代を田舎で育ち、大人になって東京で暮らす事になった人にとっては、懐かしく感じる場所であり、また自分の子供などがこのような場所でのびのびと遊ぶ姿を見るとうれしく感じる場所ではないでしょうか。でも蚊などの悪い虫も多そうなので、都会育ちであまり虫に対して免疫のない子は気をつけた方がいいかもしれません。

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この岡本公園の一角には、かつてこの付近にあった農家の様子を復元した岡本公園民家園が設置されています。民家園には茅葺きの大きな古民家である旧長崎家の住宅主屋、白壁の土蔵である旧浦野家住宅土蔵、古い門(旧横尾家住宅椀木門)があり、これらはこの付近に残されていた建物を移築してきたものです。その他には季節の草木や野菜などが植えられている小さな畑が設けられていて、古民家園に四季の彩りを添えています。

また岡本公園側からだとうっそうとした竹林の中へ入っていく雰囲気もいい感じだし、古民家の裏手も竹林で覆われています。その中に鶏小屋があったり、薪が積まれていたりとただ単に古い民家を展示しているだけではなく、昔の農村の生活環境を再現しているといったら大袈裟ですが、そういった方向で環境が整えられているので敷地全体の雰囲気がよく、素晴らしく感じます。

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展示してある古民家を詳しく書くと、まず一番中心となっている大きな古民家は瀬田2丁目の長崎孫好家で使われていた住宅主屋で、昭和52年に世田谷区の有形文化財第1号に指定された名誉ある?建物です。建築様式としては寄棟造りで、茅葺きの屋根を持ち、桁行6間半×梁間4間、床面積は約30坪です。間取りは少し独特なようで、正面右手の入り口側に土間の台所、正面側に座敷とデイの2室を並べた喰い違い四ッ間取りの形式を持っています。

かなり立派な家という事になりますが、持ち主だった瀬田の長崎家といえば、北条家の家臣であり、瀬田に瀬田城を築いていた名家。北条氏が滅亡した後は帰農して百姓代になりました。そして村の民政を行っていた村方三役の一つ、百姓代を勤めていました。瀬田にある瀬田玉川神社などは長崎氏の勧請だと伝えられています。

現在は軒先から田園風景を眺めていたんだろうなと想像してしまいますが、瀬田といえば高台です。軒先から富士山を眺め、多摩川や低地にある田畑を見下ろしていたのかもしれません。また玄関の上には熊野信仰の象徴である八咫烏の絵が飾ってあります。悪霊退散というような護符代わりといった感じで、当時の熊野信仰の一端を見る事が・・・、といいたいのですが、この家と八咫烏は全く関係ないそうです。

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浦野家住宅土蔵は庭先にある土蔵といった感じで畑の横に設置されています。こちらは区指定有形民俗文化財に指定されていて、江戸時代末期に建てられたようです。外壁は漆喰、屋根は瓦で仕上げられた土蔵で、世田谷区内喜多見より移築、復元されました。この土蔵は当初穀倉として、その後油蔵や店舗として使用されていたという経緯を持ちます。

現在ではビデオルームとなっていて、蔵のつもりで中に入るとビックリしてしまいます。近年では蔵を利用した喫茶店なども観光地で人気があるようなので、蔵の使い方もちょっと考えれば面白いかもしれません。係の人に頼めば文化財や古民家などに関する記録映画を放映してもらえます。

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旧横尾家住宅椀木(うでき)門は、大正13年に建てられた数寄屋風の門で、世田谷区桜より移築・復元されました。この門は民家や土蔵よりも時代が新しく、建築様式や趣旨が異なるため、正面ではなく岡本八幡神社の参道に面した側の裏門として配置されたようです。素人には民家と違和感なく見えてしまうので、せっかく立派な門があるならもっと目立つところへ配置すればいいのに・・・と思ってしまうのですが、そのへんはやはり民家園としてこだわりがあるようです。

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民家園では「生きている古民家」をテーマに、囲炉裏には毎日火がたかれ、家の中には民具が置かれ、軒下にも古来の農機具が置いてあります。建物の中にも自由に入ることができ、囲炉裏でくつろいだり、民具などに触れることができます。

また、農村に伝わる季節感のある行事等も行われていて、昔ながらの生活や風習を体験するとができます。主な岡本公園民家園での催し物を抜粋すると、「わらじ細工実演」 「わら草履教室」 「紙すき教室」 「春の茶会」 「俳句作り」 「こどもの日の鯉のぼり」 「七夕祭り」 「折り紙教室」 「和紙造形教室」 「十五夜の月見団子作り」 「手打ちうどん教室」 「元日の正月遊び」 「ひな祭りの雛飾り」などがあります。

これが全てではありませんが、区の広報誌を見る限りボランティアの方々により頻繁に行事が行われているようなので、そういったものに興味ある方は是非参加してみてはどうでしょう。気さくなボランティアの方が丁寧に指導してくれます。

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百景選定後の昭和63年11月にはそんなに離れていない喜多見に次大夫堀公園民家園が造られました。ここには名主屋敷(主屋1棟、土蔵2棟)、民家2棟、消防小屋などが復元されていて、更には次大夫堀や水田までもあるのでちょっとした集落ぽくなっています。

農家一軒の落ち着いたイメージの岡本民家園と大きな集落っぽい次大夫堀公園民家園とそれぞれの良さがあっていいように思えます。次大夫堀公園でも民家園同様に様々な行事が行われているので、是非両方とも訪れてみてください。

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最後に岡本民家園とその一帯という事なのでもう一つ付け加えると、民家園の裏門側、駐車場の横の道は岡本八幡神社の参道になります。といっても小さな神社なので、ひっそりとした小道といった感じです。崖線の上にあるので少し登らなくてはならなく、一応男坂と女坂とあります。男坂の階段の前には鳥居があり、それをくぐると灯籠が一対あります。

特にどうって事のない石灯籠なのですが、さりげなく岡本八幡神社の名物だったりします。それは灯籠の裏側に秘密があり、寄贈者の名前がなんと松任谷夫妻・・・、そうあのユーミンなのです。こういった小さな神社にさりげなく寄贈しているところがいいですね。人を感動させる歌を歌っているだけの事はあるのかな・・・(勝手な思い込み)。

で、神社の方は、特に何もない静かな境内です。そのぶん崖線の自然と合わさってのどかな森の散歩道といった趣きがあるのがいいかもしれません。歩いていると道で猫が日向ぼっこしていたりと、民家園などと合わせてのんびりした気持ちになれてしまいます。

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岡本八幡では10月の第1週には秋祭りが行われ、その時は一年で唯一賑やかになります。といっても夜店が沢山出てといった縁日的な秋祭りといった感じではなく、神輿の渡御や夜の奉納芸能で楽しむような正統派的なお祭りとなります。

ここの見所はやはり神輿の宮出と宮入の時にあの急な階段を通る事です。これが岡本八幡の伝統であり、こだわりであるようです。傾斜がきつくて大変そうなのは見ていてすぐわかるのですが、見ている方もいつの間にか力が入っていたりします。宮出しの時は下り終えると見物人から拍手が起こり、そのまま民家園に向かいます。

民家園と御神輿という組み合わせもなかなかのものではないでしょうか。ここでは休憩場となっていて、担ぎ手に焼き芋などが振る舞われます。余っていると見物人にもまわってくるのがうれしいところ。そういったほのぼの感というか、田舎のお祭りっぽいところがやはり岡本民家園なんだなと思えてしまいます。

<せたがや百景 No.72 岡本民家園とその一帯 2009年6月初稿 - 2015年10月改訂>