世田谷散策記 タイトル
せたがや百景 No.51

成城学園前のいちょう並木

成城6丁目(成城学園前駅入り口交差点から成城学園まで)

大正末期.から昭和の初期にかけて計画的に造成された住宅地である成城のまちには、まちの人々が大事にしてきた景観がそこかしこに見出される。学園前に伸びるイチョウ並木もその一つで、四季それぞれにまちに表情を与えてくれる。(せたがや百景公式紹介文の引用)

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1、成城学園前のいちょう並木について

成城学園前のいちょう並木 百景の切り絵
百景の切り絵

せたがや百景の成城七部作の第一弾といった感じで登場するのが、成城学園前のいちょう並木です。せたがや百景の全項目を見ると、成城は昭和になって新しく形成された町だというのに、成城に関する項目が多いような気がします。

メディアなどの露出度が高く、知名度もあり、世田谷区を象徴するような高級住宅地だからなのでしょうか。区内に住む人々でも成城への関心や憧れが高いということの表れなのでしょうか。

いやいや、選定時はバブル前の景気のいい時代。成城に住むお金持ちたちが結託し、成城のブランドを更なる高みに上げるために、また、更なる地価の上昇を狙い、あり余る財力を投入し、組織的な買収を行ったのではないだろうか。きっとそうに違いない・・・。などと、庶民の僻みを書いてみるものの、やはり虚しいだけですね。

成城学園前のいちょう並木 成城学園から見たイチョウ並木
成城学園から見たイチョウ並木

昔の切り絵と変らない感じで存在しています。

本題のイチョウ並木ですが、タイトルにあるように成城学園の正門から真っ直ぐ伸びた道の両脇にイチョウが植えられています。

長さにすると、成城学園正門前から駅入り口の交差点までの2ブロック間、約120mの区間で、街路樹としてのイチョウ並木としてはちょっと短かいかな・・・といった印象です。

でも、この並木は長さでの評価ではなく、百景の文章にあるように、成城の町の形成と深く関わっている事が選定の重要なポイントとなっています。

成城学園前のいちょう並木 紅葉の時期のイチョウ並木
紅葉の時期のイチョウ並木

中程の交差点からの様子です。

成城の項目では何度となく同じ文面を目にする事となりますが、成城の町は大正14年(1925年)、この地に引っ越ししてきた成城学園によって形成されていきました。

えっ、天下に名が轟く高級住宅地の成城が、成城学園、いわゆる学校法人によって造られたってこと?えっ、どういうこと?と、事情を知らないと思うことでしょう。

実は、大正以前の成城は、北多摩郡砧村大字喜多見字東之原という地名で、農家が7軒ほどしかない閑散とした村だったのです。

閑散とした場所でしたが、小田急線の敷設計画がすでに具体化されていたので、成城学園は学校用の土地とともに、成城一帯の多くの土地を購入し、区画整理を行い、住宅地として分譲しました。この利益を学校の移転費用に充てる為です。

成城学園前のいちょう並木 成城学園駅前駅入り口交差点からの図
成城学園駅前駅入り口交差点からの図

成城学園正門前からこの交差点で並木は終わります。
何年かに一度、枝をせん定するので、並木の様子も年によって違います。

この頃には、既に田園調布を筆頭に新町(桜新町)、上北沢といった高級住宅地が郊外に出現していたので、それを手本に武蔵野にふさわしい学園都市をイメージして町づくりを進めていきました。

住宅地を整備していく際に、当時の流行していた桜並木と共に植えられたのが、このイチョウ並木です。きっと、一足先に完成していた田園調布住宅地のイチョウ並木を参考にしたのでしょう。

あるいは、大正元年に植えられた園芸高校(深沢)のイチョウ並木や、大正12年に完成した神宮外苑の立派なイチョウ並木の影響を受けたのかもしれません。

植えたのは、当時の成城学園の学生達だそうです。植えられた当時は小さな苗だったそうですが、今ではすっかり立派な大木となりました。

植えた生徒達も今では立派に・・・と言いたいところですが、百景選定時ならまだしも、さすがに月日が経ち過ぎましたね・・・。

成城学園前のいちょう並木 イチョウ並木の中
イチョウ並木の中

道幅が狭いので圧迫感があります。

並木に関しては、田園調布のイチョウ並木とよく似ていて、ぎりぎり二車線の道路にイチョウの木がちょっと窮屈そうに並んでいます。昔の規格の道路なので、しょうがないところです。

ただ、その分、紅葉時などは密集した黄色のトンネルとなるので、並木を歩くと気分がいいです。

それに、交通量が少なく、バス通りになっていないのもいい部分です。田園調布の並木では、木の枝がバスの屋根を掃除するホウキとなっていましたから・・・。

とよしまクリニックにあるイチョウの木
立派なイチョウの木

並木のある通り沿いに立派なイチョウの木があります。

とはいえ、やはり田園調布と比べると規模というか、長さが短いので、散策していて少々物足りなさを感じてしまいます。

しかし、並木部分以外にも、同じ通り沿いに保存樹木に指定されている大きなイチョウの大木が何本もあります。

特にスポーツウェア店(以前はとよしまクリニック)にある木は一際立派で、住宅地として整備される以前からこの土地にあったものではないでしょうか。結構な幹の太さがあります。

イチョウ並木もいいけど、こういったイチョウの大木が町の風景に溶け込んでいる様子も、成城の町の雰囲気の良さの一端になっているのではないでしょうか。

成城学園 イチョウ並木のある通り
イチョウ並木のある通り

ガス灯のような街路灯がおしゃれで、さりげなくアクセントになっています。
ただ、この道は信号が多いです・・・

後は、自治会が中心となり、周辺住民による落ち葉掃きの清掃活動が行われているのもここの特徴で、桜並木とともに世田谷地域風景資産に選ばれています。

そういった地元の人の努力や愛情が木に伝わり、雰囲気がよく、美しい並木が出来上がっているのかもしれませんね。

2、感想など

成城学園前のイチョウ並木 通学の風景
通学の風景

この時期の通学は少し楽しいのでは

成城にあるイチョウ並木は、圧巻というほどの規模ではありませんが、町並みや周辺にある保存樹となっているイチョウの大木や、おしゃれな街路灯が風景に加わり、雰囲気のいいイチョウ並木になっています。

高級住宅地のイチョウ並木ということならば、同じく高級住宅地の代名詞となっている田園調布の並木と比較されることもありますが、田園調布のイチョウ並木は駅から放射状に道が造られ、その道沿いがイチョウ並木となっているので、その規模は成城のイチョウ並木の比ではありません。

ただ、成城は田園調布のように高級住宅地を目指して開発されたのではなく、雰囲気の良い学園都市を目指して造成されました。

結果として高級住宅地として有名になってしまいましたが、紅葉したイチョウ並木の下を朝夕に学生がぞろぞろと歩いている様子は、雰囲気の良い学園都市そのもの。イチョウの紅葉時は成城が本来の学園都市に戻れる時期なのかもしれません。

せたがや百景 No.51
成城学園前のいちょう並木
2025年5月改訂 - 風の旅人
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・地図・アクセス等

・住所成城6丁目(成城学園前駅入口交差点から成城大学の間)
・アクセス最寄り駅は小田急線成城学園前駅。
・関連リンクーーー
・備考ーーー
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