* 世田谷ふるさと区民まつりについて *
区民まつり実行委員会のブース
ご当地Tシャツや手ぬぐいなどのグッズを販売していました。
世田谷で大きなイベントといえば何でしょう。って考えるまでもなく、玉川花火大会です。そのほか、ボロ市も広く世間に知られ、区外から多くの人が訪れています。
そしてこの「ふるさと区民まつり」も負けていないほどの来場者数を誇っているイベントなのです。とはいえ、天候次第では来場者数が半分以下になったり、イベント内容によっては不調だったりと結構年によって波のあるイベントのようです。
一応公式の観覧者数が発表されていて、2009年(平成21年)の「ふるさと区民まつり」は34万人(2日間)、2009年のたまがわ花火大会は世田谷岸29万5千、川崎岸7万8千の合わせて37万3千人、平成20年度のボロ市は77万人(4日間)です。
自転車置き場
まるで東南アジアの市場の駐輪場みたいでした。
毎年8月の第1週目の週末にJRA馬事公苑で「ふるさと区民まつり」が行われます。(*2022年までは改修工事のため馬事公苑が使えなく、区役所、若林公園などで行われています。2023年以降は不明です。)
天候不順などの要因で年によって上下しますが、だいたい平均すると毎年40万人前後の人が訪れている感じなので、とても大きなイベントだといえます。
訪れたときに駐輪場の自転車の数にはビックリしました。万単位で自転車が並んでいるといった感じで、まるで東南アジアの市場にずらっとならんだ自転車みたいでした。ある意味圧巻で、区民まつりのハイライトの一つ・・・と感じたのは私だけかもしれませんが、見ごたえのある光景でした。
区民まつりの様子
ボランティアスタッフはおそろいのシャツを着ています。
この区民まつりは昭和53年に第1回目が開催され、2017年時点で第40回と着実に回数を重ね続け、今ではすっかり世田谷の夏の風物詩として定着しました。
特筆すべきことは開催して以来ずっと「世田谷区民まつり実行委員会」を中心に区民の手づくりイベントとして行われてきた事です。
訪れると若い学生達が一生懸命頑張っている姿を目にします。こういったボランティアの人々の努力で区民まつりが毎年行われ、その積み重ねで今に至っています。
世田谷区制施行75周年の際には、永年にわたり区民の連帯感と愛着心の向上に多大なる貢献をされてきたということで、「世田谷区民まつり実行委員会」が世田谷区から永年の功労を表彰されています。
* 会場の様子とイベントの内容 *
メインステージの様子
グラスアリーナに設置され、毎年背景のデザインが変わります。
訪問したことのある人には説明の必要はないと思いますが、行ったことのない人、初めてその存在を知った人は、一体ふるさと区民まつりって何を行っているの?面白いことやっているの?と興味がわいてくるでしょう。
それと同時に「ふるさと」って・・・世田谷にふるさとっぽいものってあるの?といった疑問もわいてくるかもしれません。
実際のところ、世田谷は知名度があってもそれはトレンドでの話題で、世田谷の深い部分、歴史や伝統での認知度はほとんどありません。伝統のある事・・・・、故郷として他の地域の人に誇れること・・・、比較的世間に知られているのはボロ市ぐらいでしょうか。
けやき広場の物産展
アンケートではぶっちぎりで人気第一位でした。
ケヤキ広場の並木ステージ
物産展に参加している自治体などの演目が行われます。
*現在は馬事公苑が改修工事等で2022年まで使用できないので、区役所と若林公園周辺で少しイベントの形式を変更して行われています。ここでは馬事公苑で行われた時の様子を記しているので、訪れたら違うぞってことになるかと思います。
せたがや区民まつりは馬事公苑前のケヤキ広場と馬事公苑の大部分を会場として行われます。
ケヤキ広場には世田谷と関わりのある地方の物産展がずらっと並びます。色んな地域からやってくるふるさと物産展は毎年人気で、区民まつり30周年の際のアンケートでも断トツで一番でした。
物産展が目当てで、物産展を物色するついでに区民まつりを覗いていくという人も多くいるそうです。すぐ真ん前の農大でも秋には収穫祭が行われ、地方からの野菜や農大生製作の加工品が人気なので、この付近に暮らしている人はなかなか幸せな環境かもしれません。
ここには並木ステージが設けられていて、物産展を開いている地方からの伝統芸能なども演じられます。日曜日には神輿パレード用の神輿が集結し、園内へパレードしていきます。その時はケヤキ広場が大変にぎやかになります。
出店が並ぶメイン通り
一番混み合う場所です。時間帯によっては身動きができなくなります。
馬事公苑内のメインストリートには各種団体のブースや露店が並びます。
せたがや区民まつり実行委員会のブースが一番目立つところにあり、Tシャツや手ぬぐいなどの世田谷ご当地グッズを販売していましたが、どのくらい売れるものなのでしょうか。ちょっと気になってしまいました。
ご当地といえば玉電Tシャツや羊羹も売られていました。世田谷関係のグッズが多く売られているとやはりうれしくなります。こういったグッズで世田谷が盛り上がっていけばいいですね。
また、朝のオープニングの時間に訪れたら何気に行列ができている店もありました。限定品とかもあるようなので、そういった情報を事前に入手しておくといい物が手に入るかもしれません。
メインステージ09’
オープニングの演奏の様子です。
華やかで人気のあるステージイベントは大小3カ所のステージで行われます。
芝生のあるグラスアリーナにメインステージが設けられ、ここでオープニングからフィナーレのコンサートまで主な行事と様々なイベントが行われます。
土曜日の夜の阿波踊りやサンバが熱く踊るせたがや踊りざん舞、日曜日の夜の一流のアーティストによるフィナーレコンサートは人気のステージで、毎年とても混雑しているようです。
他のステージはメインアリーナの奥にあるメインスクエアのスクエアステージ、ケヤキ広場にある並木ステージです。
メインステージを含めて、ステージでは区内の学生や団体によって演奏や踊り、地方の伝統芸能、子供用の戦隊ショウやポニー演技など多種多様なステージが行われます。
おみこしの連合行進
区内の神輿の団体(睦会)が集まります。見物人も多いので張り切って担いでいました。
大きなイベントとしては土曜日の夕方から行われる盆踊り、阿波踊り、ねぶた、サンバなどが踊るせたがや踊りざん舞に、日曜日の昼過ぎに行われる区内の団体によるおみこしの連合行進、そしてフィナーレのコンサートです。
この時はステージなどが混むのは当然ですが、会場内では規制が行われたりするので、通路などでも身動きが取れないほど混雑する場合があります。
稲荷森稲荷神社の大太鼓
大きな太鼓なのでひと際目立っていました。
おみこしの連合行進と太鼓の饗演は区内の御自慢の山車や太鼓を持つ団体や馬事公苑周辺の町会や神輿団体が参加し、ケヤキ広場から馬事公苑内をパレードします。
区民まつりの昔から変わらないイベントの一つで、多くの神輿と太鼓が列をなしてパレードする様子はこれぞ夏祭りといった感じで、見ていて楽しいです。
圧巻は桜丘の稲荷森稲荷神社の大太鼓です。このクラスの大きさの太鼓はなかなかありません。観客から「わぁ~大きいね」と聞こえてきます。10月の秋祭りでは千歳船橋の駅周辺の商店街などを練り歩きます。その様子はとても迫力があり、祭り好きの間では人気があります。
とはいえ神輿の人気も下降気味。阿波踊りとともに昭和が最盛期だったでしょうか。
子供コーナーの様子
工作を楽しめるエリアです。
馬事公苑の芝生やダートコースの中には子供が遊んだり、体験したり、工作したりするエリアがあります。
まず子供コーナーと名付けられているエリアでは色々な手作り工作が体験できます。製作できるのはキラキラバッジ、竹細工、紙染め、パラシュート、プラバンや革のキーホルダーなどです。
アクセサリーになるようなかわいらしいものが多かったので、男の子よりも女の子の方が多く、アクセサリーなどかわいらしいものの製作に夢中になっていました。
昔遊びコーナー
昔ながらの遊びを楽しめるエリアです。
みんなで「昔あそび」をしよう!といった昔遊びコーナーでは、お手玉、けん玉、ベーゴマ、めんこ、草笛、水鉄砲、縄跳びなど昭和時代に流行った遊びを年配の人の指導で遊ぶことができます。
時々子供と一緒になって熱くなっているお父さんがいたりするのは、まあある意味自然な光景なのかもしれません。
その他、子供コーナーにはフェイスペインティング、バルーンアート、世田谷の昔話の紙芝居などもあり、幼児から楽しめる内容となっています。
この他にも馬の試乗、囲碁・将棋コーナー、大道芸、落語や小芝居が行われる演芸コーナーなど様々な遊ぶエリアが設けられています。こういった子供達に楽しんでもらおう、色んな事を体験してもらおうというイベントや体験コーナーの充実ぶりにはさすが世田谷といった感じです。
ミニミニゴルフ
馬場の芝生でゴルフできるのはここぐらいではないでしょうか。
ローラーコースター
障害物の坂路を使用した面白い試みです。
また会場である馬事公苑をうまく利用したイベントもあります。
馬場となっている芝生を利用してのミニミニゴルフ、同じく馬場の障害物用の坂道を利用したローラーコースターも面白い趣向です。広いスペースがあるというのはいいもので子供たちが元気に走り回っていました。
そして一番面白く感じたのが武蔵野の林が残るエリアを利用したお化け屋敷ならぬ肝試しです。薄暗くなってからのイベントで、両日350人限定で整理券を配布しているほど非常に人気の高いイベントとなっています。
こういったイベントは馬事公苑でイベントを積み重ね、子供たちの反応などをみて試行錯誤しながら生まれたのでしょう。
青森のねぶた
一時期祭りの顔となっていました。桜新町の町を9月に練り歩きます。
古い記録を見ると金曜日に前夜祭を行っていた時期もありましたし、クラシックカーによるパレードを行ったり、代官屋敷から世田谷通りをミス世田谷や神輿などがパレードしていた時期もありました。
って、世田谷にもミス世田谷というものが存在していたとは・・・、古き良き時代といった感じです。
平成の初め頃は有名サッカー選手を招いて少年サッカーフェスティバルを行っていたり、富永一郎氏による漫画コーナー、流行に合わせてカラオケ大会を行っていた時期もありました。ジャンボ迷路や熱気球、レーシングカーが登場するような年もあったようです。
目玉となっているイベントが地方のお祭りのものだった時期もありました。ふるさと区民まつりとしては方向感がなく、ちょっと微妙な時期だったのかもしれません。
せたがや百景でいうなら昭和59年の第七回区民まつりでは百景の候補地の写真パネルと投票箱が設置され、百景の選定に一役かっています。
大蔵てんぐ太鼓
地元大蔵の太鼓団体の演奏です。
イベントというものは面白かったり、訪問者に何かしらメリットがないと人は集まらないものなので、毎年40万人もの人が集まっている事を考えればそれなりに誰でも楽しめるようなイベントだと思いますし、それを継続しているのは素晴らしい事だと思います。
世田谷が故郷だと感じられるイベントかと考えると、微妙に感じる部分はありますが、世田谷にふるさとと誇れるような芸能、しかも集客率を確保できるようなものがあるかといわれると、これまた難しい問題かと思います。
古くからの文化は廃れていく傾向です。過疎化が進む地方ならともかく、人の多い都会では単に人々が関心を示さなくなったから廃れるのであって、そういったものを今更行っても盛り上がりません。新しいことをどんどんやっていくほうが世田谷らしいような気がします。
ちなみに目黒の区民祭はあの秋刀魚を1万5千匹焼くという目黒秋刀魚祭りです。落語の目黒の秋刀魚に因んだアイデアや区の内外への話題性もあっていいのですね。これだといった特徴があると実行委員の人もやりやすいかもしれません。
また隣の川崎市高津区の区民祭は大山街道を利用したもので、大山詣でを再現したり、パレードを行ったりしています。世田谷では阿波踊りやサンバ、盆踊りが盛んなので「せたがや踊りざん舞!」といったようなイベントは今後の世田谷の顔となるといいかなと感じたりもします。
* 感想など *
宇山昭和会の太鼓車
子供たちが笑顔で観客に向かって手を振っていました。
せたがや区民まつりは、どうやったら訪れる人が楽しめるのかを試行錯誤し、時代や人々の趣向に合わせながら毎年40万人もの集客を誇っています。
40万人もの人を満足させることは想像以上に大変なことですし、40万の来客をおもてなしするのも大変です。そしてそれを持続しているのも凄いことです。永年の功労を表彰されているのもわかる気がします。
実際のところ、せたがや区民まつりは特に何が凄いといったイベントではありません。ボランティアの手を借りていろんなことをやっている手作りのイベントです。
区民まつりと難しく考えるよりも、規模を大きくした夏祭りといった感じで訪れるのがいいのではないでしょうか。露店あり、遊んだり、体験する場所があり、神輿や阿波踊りなどと夏祭りの要素はなんでもありです。おまけに物産展など親も楽しめる要素もあります。
手軽に一日楽しめる夏祭りのテーマパーク。それがせたがや区民まつりでしょうか。次どこのブースへ行きたいと目を輝かせながら一生懸命親の手を引く子供を見て思いました。
せたがや百景No.86 サマー世田谷ふるさと区民まつり
ー 風の旅人 ー
2018年5月改訂