* ハートフル農大通りについて *
小田急線の経堂駅の南口から城山通りに向けて伸びている通りは農大通りと名付けられています。城山通りからは少しずれますが和光小学校のある通りに進んでいき、最終的には世田谷通りまで農大通りは続いています。
世田谷通りにあるのは東京農業大学で、その横には農大一高、中学と農大関連の学校が建ち並んでいます。とまあ書くまでもないのでしょうが、古くから農大に関わってきた道という事で農大通りとなっています。
その農大通りの経堂駅から城山通りまでの区間はなかなか活気のある商店街となっています。正式には経堂農大通り商店街と言うようですが、愛称としてハートフル農大通りと呼ばれているようです。
なぜハートフルとなったのかは詳しくはわかりませんが、農大通りにはハートを形取った像が置かれていて、商店街のマスコット的な存在となっています。
色んな形のハートの像がありますが、これはホームページを見ると農大一家を表しているようです。お父さんとか、自分とか、お祖父さんとかいった感じです。しかもなんと四世代家族といった家族構成のキャラクター設定となっています。ん!ってことは・・・、桜新町の三世帯で有名なサザエさん一家を越えた?存在になるのかも。
* 経堂まつりについて *
このハートフル農大通りでは7月中旬頃、商店街が中心となって経堂まつりが開催されます。2013年時点で第40回という事なので、それなりに歴史を積み重ねているイベントと言えます。
その経堂まつりでは阿波踊りの練り歩きが行われます。これが百景にある阿波踊りです。狭い商店街を威勢良く、また力強く、そして女らしくと踊り歩く様子は見ている方も楽しくなってきます。
ただ、かつて祭りのハイライトだった万燈神輿は現在では行われていません。百景の説明文にあるように、「夜のまちに神輿の胴の武者絵が浮かびあがり、提灯の灯が揺らぐ。」といった神輿はあまり特徴的な神輿がない世田谷において貴重な存在であったに違いありません。
現在区内で万燈神輿が担がれているのは代田八幡神社秋祭りでの下代田東町会(代沢1丁目)だけです。
近年の傾向では土曜日の夜は阿波踊りの練り歩き、日曜日の夜はサンバのパレードといった感じで祭りが進行しています。ここ数年の祭りのプログラムは農大通り商店街のホームページで確認できるのでそちらをご覧になってもらうとして、万燈みこしが最後に行われたと思われる2001年の第28回経堂まつりのプログラムを書くと、
7月20日(金) 午後7時~9時まで
・阿波踊り 経堂むらさき連 ・万燈みこし 2基
7月21日(土) 午後4時~9時まで
・農大応援団パレード (チア・ガール 吹奏楽団 バトントワラーズ) ・阿波踊り 午後6時半より(経堂むらさき連、東林間連、下北沢連、宝船連、三軒茶屋連) ・サンバ大パレード 午後7時より
といった感じです。
なぜ万燈神輿が行われなくなってしまったのか。一説によると、担ぎ手不足のためだとか。当時の説明文では関東一円から神輿好きな担ぎ手が数百人訪れていたとありますが、そういった文化は時代遅れとなってしまったようです。
実際、経堂の鎮守である経堂天祖神社の秋祭りでも神輿を担ぐ人が少なくなってきていますし、区内でも見ても全体的に担ぎ手が足りなくて苦労している神社が多くなっています。
でもその分阿波踊りやサンバの踊り手が増えているので、これも時代の流れというやつなのでしょう。人々の趣向や楽しみが変るのはしょうがないことです。一番大切なのは経堂まつり自体がずっと人々に愛されながら続いている事です。
* 経堂阿波踊り、紫連 *
なぜ経堂で阿波踊りが盛んなのか。それは経堂を基点に活動している経堂むらさき連の存在が大きいと思います。地元に有名な阿波踊りの連(チーム)があるからこそ阿波踊りの文化が根付き、ずっと盛り上がり続けるというものです。
商店街を各阿波踊りの連が練り歩くときでも、やはり経堂むらさき連が来ると一際歓声が大きくなります。高架下の舞台で行われる演舞でも拍手喝采です。
もちろんそれは団員が商店街の人々からなっているのが大きいのでしょうが、やはり地元のお祭りで地元の名前が入ったチームがなければ盛り上がりませんし、地元のチームに一際大きな声援を送りたくなるのは人情というものです。
しかしながら地元に愛され続けるにはそれなりに演技のうまさも要求されます。訪れる他の団体には関東の本場高円寺からの団体もいますし、あまりにも地元の団体が見劣りすると観客も毎年毎年成長がないなといった感じで飽きてしまいます。
でもここでは心配ご無用。紫連はなかなかの技巧派です。楽しそうに踊っている様子は見ている方も楽しい気分になってくるほどです。地元の人々の応援する様子からも地元で愛されているんだなと感じました。
商店街のページを読むと、経堂むらさき連は1973年に農大通り商店街の人々が商店街の活性化の為に結成した阿波踊りのグループだそうです。
ちょうど経堂まつりの開始と重なるので、経堂むらさき連は経堂まつりの歴史そのものという事になるようです。連員は幼稚園の子供から60代まで総勢170名程ということなので、かなりの大所帯です。
経堂まつり以外では下北沢や三軒茶屋の阿波踊り大会に区民祭、そして関東で一番大きな大会である東京高円寺阿波おどり大会にも出場しています。
演技のうまさとかは解説するほど知識はないのですが、2005年の第49回東京高円寺阿波踊り大会では北塩原村友好賞を受賞した事もあるようです。大袈裟に言うなら「世田谷には経堂むらさき連あり」といったところでしょうか。
* サンバパレード *
また、近年ではサンバのパレードというのも経堂まつりの顔としてすっかり定着しました。2009年に訪れたときには4つのチームが商店街をパレードしていました。
日本各地で行われる阿波踊りに比べて多くのチームが参加するサンバのパレードはあまり多く行われていません。そういった事情からサンバ通の間では経堂まつりは少し知られているようです。
日曜日のサンバパレードの日にも経堂紫連が少し練り歩くので、阿波踊りとサンバを同時に見ることができます。なかなかサンバと阿波踊りの共演というのは見ることができないのではないでしょうか。
とはいえ、やっぱり阿波踊りと比べてしまうとサンバは派手ですね。阿波踊りはジャパニーズ・サンバと言われるぐらいテンポよく、賑やかな踊りですが、やはりサンバと同時に見比べてしまうと地味に感じてしまいます。
ちなみに関東で一番賑わう阿波踊りは高円寺の阿波踊りで、サンバは浅草サンバカーニバルとなります。どちらも演技者にはあこがれの大会となり、レベルの高い演技は観客を魅了し、とんでもない観客数で賑わいます。
経堂まつりをきっかけに興味を持ったなら訪れてみるといいでしょう。両方とも八月の終わりの週末に行われます。ただ両方とも凄まじく混雑し、場所取りに苦労します。
最後に経堂まつりの今後ですが、年々訪れる人が増えているようで都内での経堂まつりの認知度も上がっている感じです。こういったイベントで世田谷の商店街が活気づくのはとてもいい事です。
ただ多くの人が訪れることで、会場自体が飽和しかけている感じです。特に駅近くの通りが大混雑してしまいます。平行して抜け道でもあればいいのですが、この辺りは路地がごちゃごちゃしていて見学者に混じって通行人が多いのが混雑する原因となっています。今後その辺の問題がうまく解消すればいいのですが。
* 感想など *
夏に経堂ハートフル商店街で行われる経堂まつりには、祭りの主役を務める経堂紫連がいます。そしてそれを応援する地元の観客がいます。祭りの会場には一体感があり、とてもいい雰囲気になります。
阿波踊り以外でもサンバパレードにステージなど楽しいイベント盛りだくさんの2日間となっているので、夏の始まりにサンバや阿波踊りの熱気を受け、暑い夏への免疫を付けてはどうでしょう。
せたがや百景No.29 経堂の阿波おどりと万燈みこし
ー 風の旅人 ー
2018年3月改訂