世田谷散策記 ~せたがや地域風景資産~

せたがや地域風景資産 No.2-21

祖師谷公園

かつては教育大学の実験農場だったという都立祖師谷公園は、昭和50年に開園しました。 広々とした空間の中、仙川の流れや豊かな緑が楽しめる地域の人々の憩いの場所です。(公式紹介文の引用)

・場所 :上祖師谷3、4丁目
・関連団体:祖師ヶ谷公園友愛会
・備考 :ーーー

***  このページの内容  ***

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* 都立祖師谷公園について *

都立祖師谷公園 公園の入り口の写真
公園の入り口

成城側の入り口になります。

世田谷区は他の区に比べて都立公園が多く、大きな都立公園が4つもあります。東京オリンピックの際に使用された駒沢オリンピック公園、そして広い芝生と多くの桜が植わっていることで知られる砧公園、環八沿いにある文豪徳富蘆花にちなんだ芦花公園(蘆花恒春園)と、後一つは・・・・。住んでいる地域にも拠りますが、最後の祖師谷公園が出てこない人が多いです。

都立祖師谷公園は滝坂街道の南側、仙川の両岸に立地しています。ちょうどせたがや百景にでてくる上祖師谷神明社の南側付近です。他の都立公園のように大きな通りに面していないし、駅からも遠いし、開園も昭和50年と比較的最近だし、強烈な個性がないし、せたがや百景にも選ばれていないし(これは関係ないかも・・・)と、世田谷区に住んでいてもその存在を知らない人や名前を聞いたことがあるけどどういった公園か知らないといった人が多いように感じます。ただ近年では未解決事件の世田谷一家殺人事件の舞台となってしまったので、ワイドショウに登場する回数も多く、知名度だけは全国的に上がってしまった感じです。 

都立祖師谷公園 仙川と祖師谷公園(鞍橋から)の写真
仙川と祖師谷公園(鞍橋から)

祖師谷公園は仙川の左右に細長くあります。

都立祖師谷公園は仙川の両岸に立地している公園と言うべきか、仙川が公園を分断していると言うべきか、公園内を仙川が流れているといった珍しい公園です。もともとこの付近は仙川(仙川用水)の水や釣鐘池から湧き出す水などが流れ、水田や畑の多い地域でした。昭和初期頃の世田谷を写した空撮写真は幾つか現存していますが、私的にはこの地域の写真を見たときの驚きが一番でした。上祖師谷神明社ぐらいしか建物がなく、辺り一面全て田畑だったからです。本当にこの付近は畑しかない地域でした。

そんな畑しかないような何もない地域に変化が現れたのは昭和11年ごろで、旧東京教育大学がこの付近の土地を農家から坪10円ぐらいで購入して、ここで農業実習を行うようになりました。ってやはり風景的には同じ畑ですね。この農場では昭和40年代半ばまで鶏を飼ったり、梨などの果物を栽培していたようですが、その後は規模が縮小されていき、平成の始め頃まで敷地だけはあったそうです。

都立祖師谷公園 鞍橋通りの入り口の写真
鞍橋通りの入り口

とても桜の多い公園です。

話は戻って、昭和18年になると砧公園などと同じく防空緑地として「祖師ケ谷緑地」が計画されました。これが祖師谷公園の由来となるようです。しかしながらすぐに終戦を迎え、戦後になると防空緑地は必要なくなり、都市計画の「祖師谷公園」として変更されました。

実際に祖師谷公園が開園したのは祖師谷緑地が計画されてから32年後の昭和50年のこと。しかもまだ公園の造成は半分も完了していなかったりします。なんとも悠長な計画で、世田谷のサグラダファミリア(ガウディの建築)ってところでしょうか。

都立祖師谷公園 飛び地のみんなの森の写真
飛び地のみんなの森

部分的に買収された飛び地も多くあります。

祖師谷公園の開園は昭和50年6月1日で、旧東京教育大学農場跡地を中心に公園が整備されました。開園にあたってはひとまず10haの公園として事業化をはかり、徐々に買収と整備を進め、順次追加開園していきました。現在では仙川沿いを中心に9.2ha(平成28年現在)が開園しています。その他、成城側にはみんなの森という比較的広いスペースがあったり、買収済みなのか小さな空き地もいくつかあります。

今後もこの周辺民有地の買収を進め、最終的には計画面積53.33haの公園となる予定ですが、現在でも買収がうまくいっていない部分や反対運動もあります。しかも世間を騒がせた世田谷一家殺害事件が立ち退き区画に含まれていて、事件が未解決であることもあり取り壊しのめどが立っていないそうです。

具体的にどの部分がいつ増えるのか、どんな施設ができるのかなどは分かりませんが、現在よりも5倍も広くなるというのには正直驚いてしまいます。あの広々とした砧公園が39haなので、とんでもなく大きな公園となるに違いありませんが、一体それは何時のことでしょう。それに交通の便とかを考えるといくら広くても・・・と思ってしまいます。

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* 公園内の様子と里帰りの桜 *

都立祖師谷公園 原っぱと時計塔の写真
原っぱと時計塔

おもちゃのような時計塔があります。

祖師谷公園の一番の特徴は、仙川沿いに立地していることです。現在でもまだ整備が完全に終わっていませんが、仙川を挟んで左右でちょっと趣の違うエリアに分かれています。

西岸はなだらかな傾斜地になっていて、おしゃれな時計塔のある原っぱや湧水地、樹木が多いふれあいの森といった緑のエリアがひろがっています。東岸は平らになっていて4面のテニスコートやゲートボール場などの運動施設や運動広場、そして児童公園と花に囲まれた花壇や湿生植物園などがあります。

都立祖師谷公園 親水テラスの写真
親水テラス

祖師谷公園の象徴的な部分です。秋も雰囲気がいいです。

そして真ん中にあるせきれい橋で両岸が結ばれていて、その付近の仙川沿いには水に親しんでもらうために親水テラスがあります。実際に川には下りることができませんが、川のすぐそばまで行けるテラスとなっていて、このテラス部分はちょっとした円形劇場っぽい感じのスペースとなっています。桜の時期や秋にはここでコンサートなどのイベントが行われ、水辺の円形劇場といった感じになります。

都立祖師谷公園 仙川西側の桜並木の写真
仙川西側の桜並木

里帰りの桜が並んでいます。

都立祖師谷公園 親水テラスから見る桜並木の写真
親水テラスから見る桜並木

下から見上げるというのもいいいものです。

都立祖師谷公園 せきれい橋の上流の写真
せきれい橋の上流

川沿いにずっと桜並木が続くといった感じです。

祖師谷公園には仙川沿いを中心に多くの桜が植えられています。ちょうど仙川沿いには遊歩道が設けられているので、桜の時期は気持ちのいい水辺の道となります。

桜に関してはこの祖師谷公園には自慢があります。それは「里帰りの桜」と呼ばれている桜があることです。明治45年に友好親善のために東京市長よりワシントン市に桜が贈られたのは有名な話ですが、その桜はポトマック公園で年々成長し、今や世界的な桜の名所となっています。そのポトマック公園の桜(ソメイヨシノ)の実生より苗木に育てられ、寄贈されたのが「里帰りの桜」で、仙川の西に並んでいる桜がそうです。

品種としては一般的なソメイヨシノなので、アメリカ帰りとはいえ全く見分けが付きません。全てのソメイヨシノの遺伝子が同一なので当たり前といえば当たり前なのですが、そういったエピソードのある桜として考えるなら他の公園にある桜とは違うといった楽しみがあるかと思います。

ちなみに桜の返礼として贈られたのがハナミズキで、その原木が区内の園芸高校にあります。なんでも贈った桜の苗木の手入れをしていたのが当時の校長だった縁で寄贈されたようです。

都立祖師谷公園 桜の時期の広場の写真
桜の時期の広場

そこまで多くの人が訪れる公園ではないので、比較的すいています。

都立祖師谷公園 広場での花見の写真
広場での花見

花見の時期には賑わいます。

花見に関しては、祖師谷公園は桜が多い割には比較的人が少ないです。砧公園のように駅から歩いてという感じではないし、駐車場も限られています。周辺の人が徒歩や自転車でやってきて楽しむといった感じです。

桜が川沿いの遊歩道に多くあるので、桜が多くある割には花見をする場所に困るかもしれません。近年では広場の方にも少し植樹が行われ、今後色々と整備が進めば花見で有名な公園になるかもしれません。

都立祖師谷公園 滝坂道沿いの花壇の写真
滝坂道沿いの花壇

滝坂道を通ると花壇の美しさが目に入ってきます。

都立祖師谷公園 湿生植物園の写真
湿生植物園

初夏にかけてが見ごろになるでしょうか。
それ以外は子供たちのいいあそび場になっています。

その他、色とりどりの花で飾られているのもこの公園のいいところでしょうか。私自身この祖師谷公園に来る事はめったにないのですが、昔から滝坂道を通るときに街道沿いの花壇がいつもきれいだなと感じていました。実際に公園を訪れたときも、多くの花壇があり、湿生植物園、藤棚などもあり、更には桜の花もありと園内が花できれいに飾られているのが目に付きました。

花壇の手入れは公園友の会の会員方々が手入れを行っているようです。芦花公園の花の丘などは花が沢山あり、風景的にもきれいだなと思いますが、ここはさりげなく花がたくさんあるところが私は好きです。手入れというか、花の選択のセンスがいいのでしょうか。また近年では、「ワンの会」などの団体によって、試行的に「犬の遊び場/ミニランド」が設置されたりもしているようです。

* イベントなど *

都立祖師谷公園 いこいのコンサートの写真
いこいのコンサート

水辺のテラスを利用してコンサートが行われます。

都立祖師谷公園 鯉のぼりの写真
鯉のぼり

5月の連休にかけて鯉のぼりが仙川の上を泳ぎます。

祖師谷公園には仙川沿いに素敵なテラスがあります。この素敵な親水テラスを利用し、春には「祖師谷公園さくらフェス」、秋には「いこいのコンサート」が行われます。この時は斜面が観客席となり、まさに水辺の円形劇場・・・、いや楕円形劇場になります。とても雰囲気の良いコンサートなのでお勧めです。

また5月連休頃にはテラスの上を鯉のぼりが泳ぎ、七夕には七夕飾りが飾られます。防災拠点としての認知を高めるために、3月には防災かまどベンチ体験焼きいも会も行われています。

* 感想など *

都立祖師谷公園 桜の時期のせきれい橋の写真
桜の時期のせきれい橋

水辺には菜の花、頭上には桜と美し時期です。

区内にある都立公園の中では忘れがちな存在というと失礼ですが、多くの方と話していると、この公園だけはなかなか名前が出てこなかったりします。存在感がない分、もちろん交通の不便な場所にあるというのもありますが、他の都立公園のように園内が混雑していなく、おまけに素敵な水辺のテラスもあり、桜の時期などはのんびりと散策することができます。駅からは遠いですが、あちこち散策しながら訪れ、ここでのんびりと弁当を広げてみるというのもいいかと思います。

ー 風の旅人 ー

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* 地図、アクセス *

・住所上祖師谷3丁目22−19
・アクセス最寄り駅は・・・どの駅からも離れています。
小田急線「成城学園前」駅、京王線千歳烏山駅からバスで「駒大グラウンド前」下車
・関連リンク都立祖師谷公園(東京都立公園協会) 都立祖師谷公園 (世田谷区)

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<せたがや地域風景資産 No.2-21 祖師谷公園 2011年7月初稿 - 2019年3月改訂>