下北沢の阿波おどり
下北沢一番街商店街周辺8月、地元の諸連が総出で踊りまくる。下北沢のまちには阿波踊りが不思議なくらいよく似合う。今では、下北沢の夏には欠くことのできない一大イベントとなっている。工夫をこらしたそれぞれの踊りを見ていると、いつまでも飽きない。(せたがや百景公式紹介文の引用)
1、下北沢阿波踊りの歴史

一番街商店街を中心に行われます。
毎年8月、下北沢駅北側にある一番街商店街を中心に阿波踊り大会が行われます。
開催日は、年によって8月上旬であったり、中旬であったり、下旬であったりとまちまちです。曜日は金曜日と土曜日の19時から21時までと固定されていましたが、近年では土日に開催されることもあり、毎年きちんと公式サイトなどで確認したほうがよさそうです。
スケジュールは2日間とも19時から20時半にかけて商店街を踊り歩き、最後の30分間、20時半から21時の間は、路上の決められた場所で組踊りを行います。
地元の連を含め、だいたい毎年12程度の連が踊りを競い合い、大会を盛り上げていましたが、現在ではもうちょっと増え、2024年だと21の団体が参加しているようです。どんどんと賑やかになっているようです。

この付近が一番人が多く、にぎやかです。
下北沢の阿波踊りは、「下北沢名物阿波踊り」と公言しているだけあって、歴史が古く、昭和41年に始まりました。私が訪れた2009年は、第44回大会となっていました。
ちなみに同じ2009年時点だと、関東で一番有名な高円寺の阿波踊り大会は53回目、都内で人気のある神楽坂は38回目、比較的近所で大きな大会である中目黒が44回目(途中中断あり)、区内の経堂が36回目となります。他と比べても、まずまず古い歴史を持っていることになります。
44回も開催されていれば下北沢名物として地元に定着するだけではなく、下北沢に阿波踊りありと広く知れ渡るわけで、関東の阿波踊り大会としてはそこそこの認知度があります。
2009年に関して言えば、本場徳島から「佐那河内すだち連」がやってくるなど、もはや全国的に名が知れた阿波踊り大会・・・なのかもしれません。

地元だけあって一番沿道からの声援が多かったです。
現在の下北沢駅周辺は、飲食店やファッション関係の店を中心に、多くの小売店がひしめき合っています。狭い路地にも多くの個性的な店が並び、若者を中心に駅周辺の通りや商店街は賑わっています。
そんな下北沢の歴史を紐解いてみると、昭和2年4月に小田急線が開通し、昭和8年8月には京王井の頭線が開通し、下北沢の発展が始まります。
駅の北口に駅前食品市場が近年まであったように、もともとこの地には市場があり、商業が盛んでしたが、商店街が大きく発展したのは戦後です。
交通の便がよく、しかも空襲の影響が少なかったこの地では、急速に周辺の住宅地が整備され、人口が爆発的に増加します。それとともに多くの小売店が駅周辺に集まってきました。
昭和39年には小売店を束ねた下北沢商店街振興組合が結成され、翌40年に下北沢一番街と商店街の名称が付けられました。

こちらのお膝元の中目黒阿波踊りも下北沢と同じぐらい歴史があります。
商店街が結成された翌年から活性化や親睦のために阿波踊りが始まりました。
この頃は、ようやく高円寺の阿波踊りが軌道に乗り、マスコミに取り上げられるなどして、広く名が知られるようになった時期です。といっても、踊りに関しては、ようやく阿波踊りもどき(高円寺ばか踊り)から、本場の阿波踊りらしくなったといった状態だったようです。
高円寺ですらそんな状態だったので、新しく始めた下北沢での様子は、恐らく商店街を結成した勢いと高度経済成長期の勢いにまかせて踊っていたような光景が思い浮かぶのですが・・・、どうだったのでしょう。
2、下北沢の阿波踊り連

楽しそうに踊っている姿がいいですね。
阿波踊りでは、踊り手の団体のことを連といい、〇〇連と名付けられています。下北沢阿波踊りには、地元や区内を中心に毎年12組ほどの連が技を競い合います。
年配の観客の関心は、今年は高円寺から幾つ来ている?といったところでしょうか。そういった会話が人混みから聞こえてくると、高円寺商店街に続けとばかりに阿波踊りを始め、高円寺を手本に歴史が積み重ねられたことを感じます。

伝統的に下北沢の阿波踊りといえばひふみ連でしょうか。

大勢の子どもたちが頑張っていました。
阿波踊りが始まった当時にきちんとした地元の連があったかはよくわかりませんが、現在ある「下北沢ひふみ連」は昭和48年の設立という事です。
ひふみは漢字で書くと「一二三」。一番街商店街の1区、2区、3区の青年部員が立ち上げた事から、この名前になったそうです。
また、ひふみ連には平成六年に創設された弟分のひふみっ子連があります。これは小学校1年生から4年生までの子供達が中心の連で、大人達に混じって元気よく踊る様子は愛らしく、下北沢阿波踊りの人気者です。ただ、コロナ禍の影響でしょうか。現在では出演していないようです。

小雨の中でしたが多くの人が集まっていました。

元気よく踊るので、見ているほうも楽しくなってきます。
その他には「下北沢一番街やっとこ連」があります。こちらは比較的新しく結成されたようで、メンバーも踊りも若さがあふれている感じです。
踊りに関してはなかなか表現豊かで、勢いというか、元気良さというのを強く感じました。
やっとこ連は川崎の阿波踊りに参加したり、遠くは伊東の温泉街に遠征したりと、区外の阿波踊り大会にも遠征し、下北沢にやっとこ連ありといった感じで精力的に活動を行っているようです。このまま活動を続けていれば経堂のむらさき連のいいライバルになるのではないでしょうか。
ただ、ひふみ連とやっとこ連は全く別々というわけではなく、時々共同で下北沢連として他の地域で行われる阿波踊りに参加していたりします。

一日目は下を向いて踊っていると思ったら、二日目は網笠が天蓋笠みたいになっていました・・・
もう一つ地元連というか地元企業連の「昭和信用金庫連」があります。時々踊りながら営業用の挨拶をしているのがミソでしょうか。
昭和信用金庫は、下北沢やその周辺のお祭りや縁日でよく見かけます。いくら地域密着を目指すといってもここまでやる企業はなかなかなく、きっと経営者や幹部がこういったお祭りに参加する事が好きなのでしょうね。
しかしながら女性の踊り手の多くはひたすら下を向いて踊っていたのが残念なところです。なんだか嫌々参加させられているようで、見ていて複雑・・・。せっかく参加するなら、もっと自信を持って踊ってもらいたいものです。
3、下北沢阿波踊りの様子

関東でも迫力のある太鼓で有名なしのぶ連。
世田谷によく来るので比較的馴染みのある連となるのでしょうか。
下北沢の阿波踊りは、比較的道幅のある一番街本通りが一番の中心となります。司会進行を行う大会本部もこの通りの真ん中付近にあり、一番街栄通りとの交差点付近から本部ぐらいまでの間が、一番混み合っている感じでした。
歩道がある道ではないので、阿波踊りがやってくると、「白線まで下がって下さい」といったスタイルで大会が進行されます。これは経堂の阿波踊りと同じなのですが、経堂に比べると、付近一帯に細々とした路地が多いので、一般通行人が迂回しやすく、比較的息苦しさは感じませんでした。
もっとも、音楽祭や天狗祭りなどでも同じ場所をパレードが通行するので、町の人が慣れているといった部分もあるかもしれません。

とても狭い路地で踊るのも下北沢阿波踊りの特徴です。
落ち着いて見るには、本通りの大会本部よりも駅から離れた場所か、栄通りの駅に近い付近が空いていていいようです。
また、かなり細い仲通りの路地にも阿波踊りが入ってきます。ここまで細い路地で阿波踊りをやるのは、下北沢だけではないでしょうか。ここは人が少なく、穴場的な場所かもしれません。
とはいえ、ここでは観客と接触する可能性があるので、少し遠慮がちの踊りや太鼓のパフォーマンスになってしまうようです。

これも下北沢名物でした。阿波踊りが始まる頃はちょうど列車のラッシュ時。
連は人数が多いので一度に渡り切らなかったり、長く踏切で待たされる事も
最後に、世田谷区での阿波踊りは7月中旬の経堂まつりから始まって、8月頭のせたがや区民祭、8月中の下北沢阿波踊り、8月終わりの三軒茶屋の阿波踊りと続きます。
区民祭の入場者数は断トツですが、阿波踊り大会ではないので除外するとして、下北沢の阿波踊りが間違いなく世田谷の阿波踊りの中では一番大きな大会となります。
ただ、近年ではよさこいやサンバが人気となり、昔ほど阿波踊りの人気はありません。楽隊、踊り手と、本格的な構成で行われる阿波踊りは、なかなか気軽にといかないのが実際のところでしょうか。
でも、ここ下北沢では他の地域で行われる阿波踊りに比べ、子供たちが阿波踊りに参加している数が多いので、下北沢名物阿波踊りの前途は明るいのではないでしょうか。
4、感想など

踊っているときの表情がとても素晴らしいかったです。
「踊らにゃソンソン♪」ってな阿波踊り。あの独特の音楽を聴くと、見ているだけでも心がウキウキ、体が妙にテンポよくなり、歩みも変な感じに・・・。っていうのは大袈裟ですが、なかなか楽しいものです。
特にここ下北沢の阿波踊りはおすすめです。狭い商店街で行われるので、踊り手との距離が近いし、太鼓などの音も響くし、また多くの団体が参加するので、とても華やかです。
町並みが醸し出す雰囲気もよく、踊らなくてもその場にいるだけで楽しいのが下北沢名物阿波踊りです。ぜひ一度ご覧あれ。
せたがや百景 No.15下北沢の阿波おどり 2025年5月改訂 - 風の旅人
・地図・アクセス等
・住所 | 下北沢一番街商店街など |
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・アクセス | 最寄り駅は下北沢駅。 |
・関連リンク | 下北沢一番街、下北沢 やっとこ連 |
・備考 | 8月開催。開催日やスケジュールは商店街サイトを参照。 |