経堂の阿波おどりと万燈みこし(経堂まつり)
経堂駅前、農大通り商店街周辺ハイライトは万燈神輿。夜のまちに神輿の胴の武者絵が浮かびあがり、提灯の灯が揺らぐ。これを、かつぐために、威勢のよい若者が関東近県から500人も集まるという。阿波踊り参加者も毎年増えている。(せたがや百景公式紹介文の引用)
1、ハートフル農大通りと経堂まつり

城山通り側の入り口です。
小田急線の経堂駅の南口から城山通りに向けて伸びている通りは、農大通りと名付けられています。城山通りのところで路地が少しずれますが、和光小学校のある通りに進んでいき、最終的には世田谷通りまで農大通りは続いています。
世田谷通り付近にあるのは東京農業大学で、その横には農大一高、中学と、農大関連の学校が建ち並んでいます。書くまでもないのでしょうが、古くから農大の学生に関わってきた通りという事で、農大通りと名付けられています。

両親と子供といった設定でしょうか
その農大通りの経堂駅から城山通りまでの区間は、なかなか活気のある商店街になっています。正式には経堂農大通り商店街と言うようですが、愛称として「ハートフル農大通り商店街」と呼ばれているようです。
なぜハートフルとなったのかはわかりませんが、農大通りにはハートを形取った像が置かれていて、商店街のマスコット的な存在となっています。
色んな形のハートの像がありますが、商店街のホームページを見ると、農大一家を表しているようです。お父さんとか、自分とか、お祖父さんとかいった感じです。驚くのが、なんと四世代家族といった家族構成といった設定になっていること。桜新町の三世帯で有名なサザエさん一家を越えた?存在になるのでしょうか。

農大通りとくればやはりこの方々。頭上に電線などが多くて大変そうでした。
このハートフル農大通りでは、7月中旬~後半の終末、商店街が中心となって経堂まつりが開催されます。2019年時点で第46回目、その後、コロナで3年間中断していたので、2025年は49回目になるでしょうか。それなりに歴史を積み重ねているイベントと言えます。
経堂まつりでは、駅の高架下にステージが設けられ、地元の学校や団体などによる演奏やパフォーマンスが土日に渡って行われます。商店街通りでは農大の応援団や太鼓やエイサーの団体などによるパレードも行われます。
夜になると一段と盛り上がり、土曜日には阿波踊り団体が次々と練り歩き、日曜日にはサンバのパレードが商店街を進んでいきます。かつては百景のタイトルにあるように、祭りのハイライトとして万燈みこしが練り歩いていましたが、かなり昔に廃止になっています。

小さなステージなのですぐに見物人で一杯になります。
ここ数年の祭りのプログラムは、農大通り商店街のホームページで確認できるのでそちらをご覧になってもらうとして、万燈みこしが最後に行われたと思われる2001年の第28回経堂まつりのプログラムを書くと、
7月20日(金) 午後7時~9時まで
・阿波踊り 経堂むらさき連 ・万燈みこし 2基
7月21日(土) 午後4時~9時まで
・農大応援団パレード (チア・ガール 吹奏楽団 バトントワラーズ) ・阿波踊り 午後6時半より(経堂むらさき連、東林間連、下北沢連、宝船連、三軒茶屋連) ・サンバ大パレード 午後7時より
といった感じです。以前は、金曜、土曜と行われていたのですね。阿波踊りとサンバが同時に行われていた事にも驚きます。で、万燈みこしは、金曜日に阿波踊り連とともに2基練り歩いていたようです。

現在の世田谷で万燈神輿が運行されているのはここだけです。
なぜ万燈神輿は担がれなくなったのか。百景の紹介文では、関東一円から神輿好きな担ぎ手が数百人訪れていたとあり、祭りのハイライト的な存在になっていて、とても盛り上がっていた様子が想像できます。
しかし、時代は流れ、娯楽が多く、また、スポコンのような文化が敬遠される世の中になると、神輿文化は少々時代遅れとなってしまいました。一説によると、担ぎ手不足のためだとか。若い人などから魅力のあるコンテンツとして認識されなくなってしまったようです。
実際、経堂の鎮守である経堂天祖神社の秋祭りでも、神輿を担ぐ人が少なくなってきていますし、区内の各地で行われている秋祭りでも、全体的に担ぎ手が足りなく、神輿を台車などに載せて移動している地域も多くなりました。
万燈みこしは担がれなくなってしまいましたが、阿波踊りもサンバも盛り上がっていて、多くの人が訪れています。祭り自体が廃れたわけではないので、単純に時代の流れになるのでしょう。
ちなみに、現在、区内で万燈神輿が担がれているのは、代田八幡神社の秋季大祭での下代田東町会(代沢1丁目)だけです。
万燈神輿とは、世田谷でよく見かける神輿、いわゆる胴体部分が複雑な木細工が施されている江戸神輿とは違い、胴体部分が行燈のようになっていて、絵が描かれています。そして夜になると、行燈のように灯され、絵が浮かび上がるといった趣向になっています。
2、経堂阿波踊りと紫連


この経堂まつりでは、阿波踊りの練り歩きが行われます。これが百景にある阿波踊りです。狭い商店街を威勢良く、また力強く、そして女らしく踊り歩いていく様子は、とても楽しげで、見ている方も楽しくなってきます。
なぜ経堂で阿波踊りが盛んなのか。それは経堂を基点に活動している経堂むらさき連の存在が大きいと思います。地元に有名な阿波踊りの連(チーム)があるからこそ阿波踊りの文化が根付き、ずっと盛り上がり続けるというものです。
商店街を各阿波踊りの連が練り歩くときでも、やはり経堂むらさき連が来ると一際歓声が大きくなります。高架下の舞台で行われる演舞でも拍手喝采です。
もちろんそれは団員が商店街の人々からなっているのが大きいのでしょうが、やはり地元のお祭りで地元の名前が入ったチームがなければ盛り上がりませんし、地元のチームに一際大きな声援を送りたくなるのは人情というものです。


しかしながら、地元に愛され続けるには、それなりに演技のうまさも要求されます。訪れる他の団体の中には、関東での本場、高円寺からの団体もいれば、同じ区内の団体もいます。あまりにも地元の団体が見劣りすると、観客も毎年毎年成長がないなといった感じで飽きてしまいます。
でも、ここでは心配ご無用。紫連はなかなかの技巧派です。楽しそうに踊っている様子は、見ている方も楽しい気分になってくるほどです。地元の人々の応援する様子からも地元で愛されているんだなと感じます。

組踊りはステージで行われます。
商店街のページを読むと、経堂むらさき連の発足は1973年。農大通り商店街の人々が商店街の活性化の為に結成したそうです。
経堂まつりが始まったのも同じ年。経堂むらさき連は経堂まつりの歴史そのものという事になるようです。現在の連員(メンバー)は、幼稚園の子供から60代まで総勢170名程。商店街の団体としては、かなりの大所帯です。
経堂祭りで楽しそうに踊っている様子を見て、自分もやってみようかとか、子供にやらせてみようかといったことを思う人が多いのでしょうか。

経堂まつり以外では、下北沢や三軒茶屋の阿波踊り大会に区民祭、そして関東で一番大きな大会である東京高円寺阿波おどり大会などにも出場しています。
演技のうまさとかは解説するほど知識はないのですが、2005年の第49回東京高円寺阿波踊り大会では北塩原村友好賞を受賞した事もあるようです。大袈裟に言うなら「世田谷には経堂むらさき連あり」といったところでしょうか。
3、サンバパレード

欧米人のチームも参加していました。
近年では、サンバのパレードも経堂まつりの顔としてすっかり定着しました。2009年に訪れたときには4つのチームが商店街をパレードしていました。
日本各地で行われる阿波踊りに比べ、複数のサンバチームが参加するパレードはあまり多く行われていません。そういった事情から、サンバ通の間では経堂まつりは少し知られているようです。

観客のノリがいいのが特徴でしょうか
日曜日のサンバパレードの日には、経堂の紫連も少し練り歩くので、阿波踊りとサンバを同時に見ることができます。なかなかサンバと阿波踊りの共演というのは見ることができないのではないでしょうか。
とはいえ、やっぱり阿波踊りと比べてしまうと、サンバは派手ですね。阿波踊りはジャパニーズ・サンバと言われるぐらいテンポよく、賑やかな踊りですが、サンバと同時に見比べてしまうと、とても地味に感じてしまいます。

本場の方か知りませんが、欧米人が躍ると華があるような・・・気がします。
ちなみに関東で一番賑わう阿波踊りは高円寺の阿波踊りで、サンバは浅草サンバカーニバルとなります。どちらも演技者にはあこがれの大会となり、レベルの高い演技は観客を魅了し、とんでもない観客数で賑わいます。
経堂まつりをきっかけに興味を持ったなら訪れてみるといいでしょう。両方とも八月の終わりの週末に行われます。ただ両方とも凄まじく混雑し、場所取りに苦労します。

こちらも盛り上がっていました。
最後に経堂まつりの今後ですが、年々訪れる人が増えているようで、都内での経堂まつりの認知度も上がっている感じです。こういったイベントで世田谷の商店街が活気づくのはとてもいい事です。
ただ、多くの人が訪れることで、会場自体が飽和しかけている感じです。特に駅近くの通りが大混雑してしまいます。平行して抜け道でもあればいいのですが、この辺りは路地がごちゃごちゃしていて見学者に混じって通行人が多いのが混雑する原因となっています。今後その辺の問題がうまく解消すればいいのですが・・・。
4、感想など

経堂と紫の文字を背負って踊っています。

人垣ができた中を進むのは気持ちよさそうです。
夏に経堂ハートフル商店街で行われる経堂まつりには、祭りの主役を務める経堂紫連がいます。そしてそれを応援する地元の観客がいます。祭りの会場には一体感があり、とても雰囲気がよかったです。
阿波踊り以外でも、農大応援団の行進やサンバパレードも人気で、ステージなど楽しいイベント盛りだくさんの2日間となっているので、夏の始まりにサンバや阿波踊りの熱気を受け、暑い夏への免疫を付けてはどうでしょう。
せたがや百景 No.29経堂の阿波おどりと万燈みこし 2025年5月改訂 - 風の旅人
・地図・アクセス等
・住所 | 経堂駅南口、ハートフル農大通り商店街 |
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・アクセス | 最寄り駅は小田急線経堂駅。 |
・関連リンク | 経堂農大通り商店街、経堂むらさき連 |
・備考 | 経堂まつりとして7月中旬の週末に開催(商店街のサイトで要確認) |