季節の野草に出会う小径
船橋3丁目(地区会館前から始まる千歳丘高校横の道)土のままの区道である。昔ながらの土の道には野草が多く、春には桜が舞う。土とみどりのまちづくりが近隣住民によって展開され、野草の写生会なども行われる。(紹介分の引用)
1、千歳丘高校と小道

校門前の道路に桜の木がありました・・・
船橋三丁目、烏山川緑道のすぐそばに都立千歳丘高校があります。その敷地の西と北側、ちょうど校庭に沿う形で、風景資産に選ばれている「季節の野草に出会う小径」があります。
千歳丘高校を目指せばいいんだろ。楽勝だな。出発前に地図を確認し、自転車に乗って出発。ちょっと迷うかもしれないけど、高校が目標物なら問題なく行けると思ったのですが、予想以上に道が入り組んでいて、なかなかたどり着くことができませんでした。この界隈の道は本当に分かりにくい・・・。
何とか千歳丘高校に到着してみると、なんと道路の真ん中に桜の木が生えているではないか。しかも、きれいに花を咲かせているし・・・。いきなりの珍光景にビックリ。しかしまあ、よくこんな状態で桜を残したものだ・・・。世田谷珍百景とか、珍風景資産があれば、選ばれそうな光景です。
あまりにも衝撃的な風景との出会いで、千歳丘高校といえば、「門前の道路に咲く桜」といったイメージが強いです。でも、残念ながら今では取り除かれてしまっています。
ちなみに、千歳丘高校の校章は桜の花びらをかたどっています。昔はこの界隈に桜の木がたくさんあったのでしょうか。

*国土地理院地図を書き込んで使用
千歳丘高校は、2016年から2019年まで校舎の建て替え工事が行われ、きれいな校舎に生まれ変わりました。
2019年の航空写真では、校舎の建て替えはほぼ終わっているようですが、まだ仮校舎が校庭に残っているので、完成間近といったところでしょうか。
それよりも、学校の周囲に巨大なマンションだらけなのに驚きました。校庭の南側は高校の校舎で、残りの三方はマンション群に囲まれています。なかなかこんな立地の高校はないのではないでしょうか。
千歳丘高校の校庭に立ったらどんな景色が見られるのだろう。壮観な感じなのか、煩雑な感じなのか。また、マンション群に威圧感を感じるのか、視線が気になるのか・・・、全く気にならないのか・・・。とても興味があります。

*国土地理院地図を書き込んで使用
この千歳丘高校は、昭和17年に東京府立第19高等女学校として青山の地に創立しました。昭和23年に、東京都立千歳女子新制高等学校と改称し、この地に移ってきました。そして、昭和25年に東京都立千歳丘高等学校に改称しています。
千歳丘高校が移ってくる前は、上智大学のグラウンドがあったという話を聞いたことがありますが、造ったものの、ほとんど活用されず、千歳丘高校に譲ってしまったのでしょうか。
それとも簡易的なグラウンド、土の広場みたいなものがあったのでしょうか。或いは、間違った情報だったのでしょうか。よくわかりません。

*国土地理院地図を書き込んで使用
いずれにせよ、この地に学校が整備された時に、この場所にあった烏山川に流れる小さな川というか、水路の流れが、グラウンドに沿うような形に変えられました。これが風景資産に選ばれている小道の原型になります。
昭和40年代後半になると、烏山川が暗渠化され、烏山川緑道となります。時を同じくして、生活排水で悪臭を放っていた高校脇の水路も、下水として地下へ埋められました。
この空間を何か有意義に利用できないだろうか。地域で相談した結果、植物を植えて、昔の船橋で当たり前にあったような自然環境と風景にしようではないかとなり、「船橋小径の会」が結成されました。
2、季節の野草に出会う小径について

高校の改築前は、プールが横にありました。

入り口には、自作の新聞や活動内容等が張り出されていました。
千歳丘高校敷地の西と北の2辺に接している全長300mほどのL字型の土の小道は、「船橋小径の会」が維持、管理することになり、「季節の野草に出会う小径」と名付けられました。
この小道へは、途中の集合住宅からも入れるようになっていますが、分かりやすい入り口は、池田児童遊園と船橋地区会館がある前と、烏山川緑道沿いです。
だったら千歳丘高校や地区会館を目指して訪ればいいんだね。簡単じゃない。ということになるのですが、散策大好きな私が迷子になったように、これが意外と難しかったりします。
スマホをもって地図を確認しながら歩くのなら大丈夫かもしれませんが、そうでないと、大きな通りに面しているわけではないし、この地域は区画整理をバラバラにやったのか、路地があみだくじのようにずれているので、かなり迷います。遠回りでも烏山川緑道を歩いて訪れる方が確実かもしれません。

ちょうど入り口のところに桜があり、春を感じることができます。

この付近は敷地外の木々で並木っぽくなっています。
実際に小道を歩いてみると、地面は土のままで、道の真ん中や脇に設置された花壇などには、野草や季節の花などが植えられていて、頭上には太陽をさえぎってくれる木があり、散歩するには最適な小道といった感じでした。
場所によっては緑が多く、木のトンネルのようになっていたりしますが、木は道よりも道の外、マンションや個人宅、高校の敷地に多いです。千歳丘高校の校門前の桜を見た後では、植物が生き生きとして見え、心が落ち着きます。
春には入り口部分にある桜の木、秋には途中にあるイチョウの木が季節感を出してくれますが、それ以外は全般的に緑色が多く、さりげなく咲いている季節の花を愛でるといった感じでしょうか。
ただ、片方は高校の敷地、片方は崖とマンション。土の道で木々が多いから、歩いていて落ち着くと言いたいのですが、周辺環境を含めると、そうでもないかなといった感じ。校庭を使っているときなどは特に。学校の周りをウロウロし辛いおじさんとしては、学校からの視線が気になってしょうがありません。

いかにも野草って感じの花が咲いていました。

船橋らしい花壇となるでしょうか。
ここでは、道の真ん中に花壇が設置されています。昔は車が入れなくするためだったとか。今では自転車で走って通り抜けできないようにといった感じでしょうか。花壇は地植えが中心ですが、舟形の本格的なものもあります。
こういったボランティアの人が管理している花壇などでは、例えば芦花公園の花の丘などでは、季節に合わせて色とりどりで華やかな園芸品種の花が植えられているのですが、ここでは昭和20~30年代の船橋の原風景を再現したいということで、かつてこの地に生えていた野草を中心に植えられています。
野草なので、園芸用の花と比べると、やっぱり地味です。なので、歩きながら、花壇に花が植えられているんだけど・・・、いまいち華やかさがないな・・・。なんか地味だな・・・。なんか普通の道だな・・・。などといった印象を持ってしまいました。
まあ、公園のような明るい場所なら華やかな花も映えるでしょうが、薄暗い感じの路地なら、この方が自然な感じがしていいのかもしれません。

マンションの壁を覆うように植物が生えています。

課外授業用でしょうか。小学校のプレートが設置されていました。が、雑草と区別が・・・。
こういった土の道は、意外と管理が大変です。雨の後など、ちょっと油断すると雑草の茂みが出来上がってしまいます。
花壇のように仕切られていると、まだ楽なのですが、長い道の全体を管理しなければならなく、かといって除草剤を撒くわけにもいかなく、地道に草抜きをしなければなりません。
そういった部分に目を向けながら歩いてみると、雑草が煩雑にならないようにうまい具合に管理されているなと感心します。それに、野草が植えてあることで、雑草が目立ちにくくなっていることにも気が付きました。なるほどな。といった感じです。
個人のお宅のお庭でもそうですが、雑草の具合でうまくいっている、いないかが、なんとなくわかるものです。植えてある草花は地味だけど、色々と考え、頑張っているんだなと、管理団体の凄さを感じます。

写真入りで分かりやすく説明しています。

新聞や活動内容が小道入り口に張ってあります。
実は、この「船橋小径の会」、結構有名で、区の環境の賞を受賞したり、NHKのクローズアップ現代でも取り上げられたり、国土交通省の景観街づくり事例集に紹介されていたりしています。
こういった活動を行っている自治体、あるいはこれから始めようとするボランティア団体などにはお手本のような存在になり、遠方からわざわざ見学に訪れる団体もあるそうです。芦花公園花の丘友の会とともに世田谷の誇るボランティア団体ということになるでしょうか。
実際の活動としては、個別の日常的な小径の手入れの他に、団体として年に数回こみち新聞を発行したり、月4回程度、町会、小学校、高校を含めた地域と区の協力を得て、小径の植物の手入れや草取りを行い、自然環境と風景の保全・育成を目的に活動しています。

道の真ん中で咲いていて、部分的にアジサイの小道となっていました。
散策しながら区内の色んな風景と現実を見続けていると、いい面、悪い面、色んな見方をしてしまいます。
現実な見方をしてしまうと、この道は高校やマンションが建ち並んでいる隙間の通路といった表現が適しています。周辺の人口も多く、道がごちゃごちゃした地域なので、一部のボランティアの趣味で草花を植えるよりも、きちんと道として機能させた方が地域の役に立つのかもしれません。

子供や女性は夜に通ると怖いと思います。
雨の日でも足元が悪くならないようにきれいに舗装し、自転車も通れるようにする。薄暗くならないように木々はある程度伐採し、代わりに夜も安心して通れるように街灯を多く設置する。花は所々に設置し、そこで管理してもらう。例えるなら、若林3丁目緑の小道のような感じの遊歩道にした方が・・・などとも思ってしまいます。
この地域に暮らしていなので、この道が持つ本当の利便性というのはよくわかりませんが、公園などならともかく、多くの人が通る道として考えるなら、道としての機能を優先した方が・・・。といった意見です。
人口が増え続ける世田谷。いろんな場所でのんびりとした風景が消え、現実的で機能的なものに置き換わっています。
単なる散策人としては、こういったのんびりした道があるからこそ散策の楽しみが増えるので、長く続いてほしいのですが、結局は地域のニーズや考え方次第になってしまいます。
3、感想など

作業時には入り口にプレートが置かれます。
各地域で行われる秋祭り。派手な神輿や目立つ半纏を着た地区もあれば、シックな感じでまとめている地区もあります。地域柄というやつです。
地域の花壇なども興味深く観察していくと、やっぱりその地域の色が出るものです。ここは万人向けというよりは、玄人好みの小道といった感じでしょうか。
でも、大事なのは、野草がいいとか、色とりどりの花壇がいいとかではなく、地域できちんと話し合って方針を決め、多くの人が関わって管理し、活動が継続していることです。秋祭りが地域の色を保ちながら長く続いているのと一緒です。
ここでは地域の方針と活動に関わる人たちの情熱とがうまく機能しているんだろうな。だから小道が適切に管理され、雰囲気のいいものとなっているんだな・・・と、歩いて感じました。
せたがや地域風景資産 #1-30季節の野草に出会う小径 2025年5月改訂 - 風の旅人
・地図・アクセス等
・住所 | 船橋3丁目20−1 |
---|---|
・アクセス | 最寄り駅は小田急線千歳船橋駅、経堂駅。都立千歳丘高等学校のすぐ横。 |
・関連リンク | 船橋小径の会 |
・備考 | ーーー |