世田谷散策記 タイトル
せたがや地域風景資産 #1-24

喜多見5-21遊び場の竹山緑地
(旧称・喜多見五丁目竹山市民緑地の竹林と垣根)

喜多見5丁目21

個人所有の土地であるが、平成14年より市民緑地として開放されている竹林である。ボランティアの参加した管理・運営がなされている。 (紹介文の引用)
*2022年に世田谷区に寄付され、喜多見5-21遊び場(竹山緑地)になりました。
*4、5月は竹林保護のため、休園しています。

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1、竹山市民緑地と竹垣について

喜多見の地図(国土地理院)

国土地理院地図を書き込んで使用

喜多見は古墳が多く残っていたり、歴史ある神社があったり、喜多見藩の名残があったりと、古き時代の面影が随所に残っている地域です。

その喜多見を「いかだ道」が突っ切っています。いかだ道ってことは、いかだが通れる水路?そう考えてしまう人もいるかもしれませんが、そうではありません。

かつて多摩川上流で伐採した材木を筏に組んで下流に流し、江戸に運んでいました。その筏に乗った船頭が、再び上流に戻っていくために使った道のことです。

多摩川に沿って、なるべく最短距離、かつ、増水で通行止めにならないコースが選ばれ、その道中には筏師を対象とした宿屋、休憩所、食事処がありました。

喜多見 立派な樹木と竹の垣根の写真
立派な樹木と竹の垣根(2011年)

敷地内の木々も立派で、竹垣を引き立てています。

そのいかだ道は、知行院前で水道道路と交差し、その先で直角にカクカクと2度曲がっています。その場所から次太夫掘公園方面に向かう狭い道沿いには、竹の垣根、いわゆる竹垣が設けられていて、とても素敵な景観をつくっていました。

喜多見に暮らす人には、この道は玉堤通りや世田谷通りに抜けるのに便利な道となっているようで、狭いながらもそこそこ車などの通行量がある道です。

そういった生活道の雰囲気と、緩やかなカーブを描いている様子、何より道沿いの大木と美しい竹垣が相まった様子は、とても素敵でした。

喜多見 竹の垣根の続く道の写真
竹の垣根の続く道

とても趣きがある道です。現在では公園の入り口ができたので、様子が異なります。

更には、竹垣は古くなったら新しく換えていたので、新しい時のみずみずしい感じの時と、時間が経ち、朽ちてきたときの様子は異なり、時間の経過とともに趣きを楽しめる点もよかったです。これぞ喜多見というか、世田谷の中でも美しい道の一つとなるのではないでしょうか。

ただ、2022年に公園化が行われ、こちら側にも入り口ができ、竹垣の長さが短くなってしまいました。その為、以前のような圧巻の光景ではなくなってしまいました。

喜多見5-21 子どもの遊び場の写真
喜多見5-21 子どもの遊び場

奥の竹垣のある場所が市民緑地の入り口になっていました。

この竹垣の中は、以前は個人のお宅になっていましたが、税金が免除になる市民緑地制度を利用し、敷地の一部を「竹山市民緑地」として公開していました。

個人的な話になりますが、竹垣のある道沿いには、個人のお宅の玄関と竹垣が続くだけで、案内板などは設置されていなかったので、この竹垣の中が市民緑地になっていることをずっと知りませんでした。

風景資産の存在を知ってからも、市民緑地の入り口が見当たらないので、個人の事情などで閉鎖してしまったのだろう・・・と思っていたのですが、いつ閉鎖したんだろうと調べていたら、隣にある「喜多見5-21 子どもの遊び場」の中、しかも奥の方に入り口があることを知り、ようやく中に入ることができました。

喜多見5-21遊び場(竹山緑地) 竹林と遊び場の写真
竹林と遊び場

5月の様子です。4、5月は竹林内へは入ることができません。

付近に案内板が全くなかったので、その事実を知らないと、入り口を見つけることのできないといった訪問難易度の高い市民緑地だったのです。

何を大袈裟な・・・と言うかもしれませんが、この公園は子供の遊び場と名が付いているのも状況を複雑にしていました。

普通の公園だったのなら、竹林の周囲を周りがてら公園の中をウロチョロしたかもしれませんが、子供が遊んでいる広場に大人がキョロキョロしながら入っていくと、不審者になりそう・・・といった迷いもあったからです。

とまあ、訪問までとても苦労しました。その分、訪れたときの感動も大きくなりましたが・・・。今思えば懐かしい思い出です。

喜多見 竹山市民緑地の入り口の写真
竹山市民緑地の入り口(2011年)

以前は竹垣に囲まれていましたが、今は取り除かれています。

竹山市民緑地は、2002年6月にオープンしました。「竹山」という名前は、竹山さんの土地というわけではなく、昔、竹林が平地にあっても竹山と呼ばれていたことから名付けられました。これは喜多見というよりも、世田谷全体的な話になるようです。

市民緑地として開園してからは、ずっとボランティアなどの協力で維持してきました。そして、20年経った2022年に転機が訪れ、土地所有者が市民緑地として登録していた部分を世田谷区に寄付してくれました。

これによって恒久的な公園地となり、隣接する喜多見5-21の遊び場と合体しました。竹林のある場所は今まで通りに柵で分けられていて、喜多見5-21遊び場(竹山緑地)といった呼び方をされています。それに伴い、地域風景資産のタイトルも変更になりました。

喜多見5-21遊び場(竹山緑地) 竹山市民緑地内の写真
竹山市民緑地内

竹林内は竹で仕切られた遊歩道が整備されています。

竹林内部には散策できるように遊歩道が設置されています。私が訪れたのは市民緑地時代なので、現在とは少し状況が違うかもしれませんが、実際に竹林内を歩いてみると、意外と歩ける場所が多いのに驚きました。というより、竹林が想像していたよりも広大で驚きました。

おそらく、始めて訪れたなら、こんな辺鄙な場所・・・、いやいや、こんなさりげない場所に、これほど立派な竹林が存在していることに驚くことでしょう。期待していなかった分、感動も大きくなるという典型かもしれません。

喜多見5-21遊び場(竹山緑地) 竹山市民緑地 竹林内の交差点の写真
竹林内の交差点

油断していると迷子になりそうな雰囲気です。

喜多見5-21遊び場(竹山緑地) 竹山市民緑地 竹林の様子の写真
竹林の様子

結構深い竹林です。

敷地内に植えられているのは一般的な孟宗竹で、管理は世田谷トラストの協力の下、竹山市民緑地ボランティアワークショップが行っています。活動は、園路整備、下草刈り、竹の間引きなどを定期的に行い、筍掘りや竹細工教室などといった季節のイベントも行っています。

それから竹林という特性から、竹林保護のため、4、5月は閉園していて、中には入ることができません。竹といえば筍。竹の旬は新緑の季節だよね。竹林に行ってみよう。といった発想になる人も多いかと思いますが、残念ながらこの期間は閉鎖されていて中に入ることができません。塀越しに竹林をのぞくことはできますが・・・。

喜多見5-21遊び場(竹山緑地) 竹山市民緑地 竹林の土蔵の写真
竹林の土蔵

補修がかなりされていますが、雰囲気のある蔵です。

喜多見5-21遊び場(竹山緑地) 竹山市民緑地 竹林内の祠の写真
竹林内の祠

竹の神様がいそうですね。

奥のほうは個人のお宅になるようで、土地の所有者の古めかしい土蔵や、さりげなく竹林内に祠などがあり、竹林散策の雰囲気を盛り上げてくれました。

竹取物語でも思い出しながら、仲良く並んでいる祠は老夫婦がかぐや姫のために作ったものかも・・・。いや、かぐや姫が戻ってきて老夫婦を弔うために・・・などと勝手に想像を膨らませると、竹林散策が一層楽しくなるかもしれません。

とまあ、竹林の中を実際に歩けて、どっぷりと竹林の雰囲気を味わえるのがここのいいところです。

次大夫掘公園民家園 竹垣と竹林と古民家の写真
次大夫掘公園民家園の竹垣と竹林と古民家

昔の喜多見の風景といった感じです。歩いて数分の距離です。

世田谷で竹林といえば、せたがや百景に選定されている芦花公園を含めた粕谷地域がよく知られていますが、基本的に竹林というのは農村によくあるもので、かつて区内全域が農村だった世田谷では、あちこちに竹林があり、それが当り前の風景となっていました。

そして、比較的湧水の多かった世田谷区内では、良質のタケノコが取れ、ちょっとしたタケノコの産地として知られていました。何より農家にとって春先の貴重な現金収入となっていたようです。

ただ、良質なタケノコを生産するには、かなり手間をかけなければならないし、土地の価格が上がった大正期頃には、畑よりも割の合わない農業となっていき、今では力を入れて生産する農家はいなくなってしまいました。

畑が多かった喜多見では、他の地域よりは遅くまで農家が竹林を持っていましたが、今では小さな竹林を所々で見かける程度です。古民家のある次大夫掘公園民家園にも竹林があり、ここではかつての農村風景を感じることもできます。

2、感想など

喜多見 念仏行列と竹垣の写真
念仏行列と竹垣

うまく切り取れば時代劇っぽい雰囲気になりそうです。

喜多見にある竹山の市民緑地と竹垣のある道。農村っぽい雰囲気がまだ残る喜多見らしい風景の一つです。

特に竹垣の道は、周辺の樹木と相成ってとても雰囲気がよく、うまく光の通る時間帯や季節を合わせたらとても素晴らしい風景になりそうな感じです。

そういった道の持つ一瞬の輝きを求め、足しげく通ってみるのも散策として面白いかもしれません。

せたがや地域風景資産 #1-24
喜多見五丁目竹山市民緑地の竹林と垣根
2025年5月改訂 - 風の旅人
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・地図・アクセス等

・住所喜多見5丁目20
・アクセス最寄り駅は小田急線喜多見駅。駅から離れています。
・関連リンク喜多見5-21遊び場(竹山緑地)世田谷トラストまちづくり喜多見ポンポコ会議
・備考4、5月は竹林保護のため閉園
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