世田谷散策記 ~せたがや百景~

せたがや百景 No.72

岡本民家園とその一帯

瀬田から移築復元された茅葺きの古民家を中心に、農家のありさまが再現されている。鶏の遊ぶ庭先、野菜や草花の植えられた畑など当時そのままの姿を見ることができる。民家園の隣には岡本の鎮守様八幡神社が深い木立の中に鎮まっている。また民家園のある岡本公園の一角ではホタルを養殖しているが、これは崖線から湧き出る清冽な水が利用できるからだ。夏の夕辺にはホタルの飛びかう姿を見に多くの人が岡本公園を訪れる。(せたがや百景公式紹介文の引用)

・場所 :岡本2-19-1
・備考 :開園時間は午前9時30分~午後4時30分、休園日は毎週月曜日、入場料は無料。季節などに合わせて日本の古文化を中心とした様々な行事が行われています。

***  このページの内容  ***

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* 岡本公園について *

岡本公園 水と緑豊かな岡本公園の写真
水と緑豊かな岡本公園

区内で水が豊かな公園の一つです。

丸子川は大蔵三丁目公園やその付近にある湧水が水源となっていて、岡本三丁目の坂近く、仙川に架かる水神橋付近から流れが現れます。

水神橋付近の丸子川は親水公園となっていて、水はきれいだし、川の周りには植物が植えられているし、昔はこんなきれいな流れがあったんだろうなと想像をかき立てられるような美しい景観となっています。

この小川のような流れを道沿いに下っていくと、左手に森のような公園があります。これが岡本公園で、丸子川の親水公園と崖線から流れる湧水を使った水辺の公園といったような世界観で造られています。

岡本公園 公園内のせせらぎの写真
公園内のせせらぎ

休日はザリガニつりをしている親子が沢山います。

公園内には湧水を利用したせせらぎがあり、休日には子供達が虫取りの網を持って池に入り、ザリガニなどを捕まえていたりします。

家の周りをコンクリートとアスファルトで囲まれている子供達にとっては天国のような世界に違いありません。

こういった光景は昔の農村を中心とした世田谷では日常的な光景だったのでしょうが、都市化が進んだ現在では珍しい光景となってしまいました。

岡本公園 秋の岡本公園の写真
秋の岡本公園

木々が色付き、水辺はどんどん寂しくなっていきます。

きっと私のように子供時代を田舎で育ち、大人になって東京で暮らす事になった人にとっては、懐かしく感じる場所であり、また自分の子供などがこのような場所でのびのびと遊ぶ姿を見るとうれしく感じる場所ではないでしょうか。

でも蚊などの悪い虫も多そうなので、都会育ちであまり虫に対して免疫のない子は気をつけた方がいいかもしれません。

岡本公園 以前あったほたる園の看板の写真
ほたる園の看板(現在は閉園)

現在でもフェンスに覆われているエリアです。

この公園内にも崖線から湧き出す水源があり、そのきれいな清水を利用してかつてホタル園が設置されていました。

ホタル園の入り口にはゲンジボタルとヘイケボタルの絵が描かれていて、中に入れないので詳しくはわかりませんでしたが、柵の中には二つの池があり、それぞれの池で2種類のホタルが育てられ、また幼虫の餌となるカワニナの飼育もされていたようです。

ホタルの季節になると、柵から飛び出して公園内や丸子川を飛び回っていたのでしょうか。

昔、訪れた時にはホタルの盗難があったような旨が書かれた張り紙がしてありました。なんとも寂しい話です。そういった影響があったのか、他の理由で維持ができなくなったのか分かりませんが、今ではホタル園はなくなってしまいました。

以前はホタル物知り館といった展示室が公園管理事務所の一画に設けられていて、ホタルの生態だけではなく多摩川流域にいる生物の生態系についても学ぶ事ができましたが、こちらも閉鎖されて物置になっています。

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* 岡本公園民家園について *

岡本古民家園の入り口と鯉のぼりの写真
古民家園の入り口と鯉のぼり

5月前になると民家園内に鯉のぼりが泳ぎます。

この岡本公園の一角には、かつてこの付近にあった農家の様子を復元した岡本公園民家園が設置されています。

民家園は茅葺きの大きな古民家である旧長崎家の住宅主屋、白壁の土蔵である旧浦野家住宅土蔵、古い門(旧横尾家住宅椀木門)で構成されています。

これらの建物はここにあったものではなく、他の地域から移築してきたものです。

岡本民家園 畑と古民家の写真
畑の緑と古民家

緑に囲まれた農村の一コマといった感じです。

ここは単に建物があるだけではなく、古民家の周りに雰囲気のいい竹林があったり、季節の草木や野菜などが植えられている小さな畑が設けられていたりと四季の彩りを添えています。

さらには鶏小屋があったり、薪が積まれていたりとただ単に古い民家を展示しているだけではなく、昔の農村の生活環境を再現しているといったら大袈裟ですが、そういった方向で環境が整えられているので敷地全体の雰囲気が素晴らしく感じます。

岡本民家園 旧長崎家の住宅主屋の写真
旧長崎家の住宅主屋

民家園の母屋です。紅葉時は背景が彩り豊かになります。

展示してある古民家を詳しく書くと、まず一番中心となっている大きな古民家は瀬田2丁目の長崎孫好家で使われていた住宅主屋で、昭和52年に世田谷区の有形文化財第1号に指定された名誉ある?建物です。

建築様式としては寄棟造りで、茅葺きの屋根を持ち、桁行6間半×梁間4間、床面積は約30坪です。

間取りは少し独特なようで、正面右手の入り口側に土間の台所、正面側に座敷とデイの2室を並べた喰い違い四ッ間取りの形式を持っています。

岡本民家園 旧長崎家の住宅主屋の軒下の様子
旧長崎家の住宅主屋の玄関や軒下

玄関上には八咫烏、軒下にはベンチや古い農機具などが置いてあります。

かなり立派な家という事になりますが、持ち主だった瀬田の長崎家といえば、元々は北条家の家臣であり、瀬田に瀬田城を築いていた名家です。

北条氏が滅亡した後は帰農して百姓代になり、村の民政を行っていた村方三役の一つ、百姓代を勤めていました。瀬田にある瀬田玉川神社などは長崎氏の勧請だと伝えられています。

現在は軒先から田園風景を眺めていたんだろうなと想像してしまいますが、瀬田といえば高台です。軒先から富士山を眺め、多摩川や低地にある田畑を見下ろしていたのかもしれません。

岡本民家園 正月の古民家室内の写真
正月の古民家室内

内部は2部屋と囲炉裏といった感じです。正月ということで鏡餅にしめ縄、凧などが飾ってありました。

玄関の上には熊野信仰の象徴である八咫烏の絵が飾ってあります。悪霊退散というような護符代わりといった感じで、当時の熊野信仰の一端を見る事が・・・、といいたいのですが、この家と八咫烏は全く関係ないそうです。

室内には古い神棚が幾つもあり、昔の人の信仰の深さを思い伺えます。現在でも日常的にきちんと祀られているのですが、季節行事などでは特にきちんと祀られ、神棚の存在感が増します。

岡本民家園 囲炉裏の写真
囲炉裏

周りに座ると落ち着く人もいるのでは。

岡本民家園 土間の釜戸の写真
土間の釜戸

行事の時には使用されます。

民家園では「生きている古民家」をテーマに、囲炉裏では毎日のように火がたかれ、誰でも囲炉裏でくつろぐことができるようになっています。火をたくことで虫が屋根に付くのを防ぐ効果がありますし、冬は暖房にもなります。

家の中には民具が置かれ、軒下にも古来の農機具が置いてあるので、昔の人は懐かしく、今どきの人は田舎のおじいちゃんおばあちゃんの家に遊びに行った感覚になるのではないでしょうか。

岡本民家園 茅葺屋根の葺き替えの写真
茅葺屋根の葺き替え

平成23年に行われました。

古民家と言えば響きがいいのですが、要は古い家なので、メンテナスも大変です。新しくリフォームすれば古民家ではなくなるし、古いもので修繕するにも材料が・・・、専門の職人が・・・というジレンマとの戦いです。

茅葺屋根もそのいい例で、茅葺ができる職人も少ないし、大量に必要となる材料の茅もなかなか手に入らなくなってきました。

それでも修繕しないわけにはいかないので、平成23年に大規模に葺き替え工事が行われました。白川郷などで葺き替えが行われると大勢の観光客やカメラマンで賑わいますが、さすがに世田谷の小さな古民家では・・・・といった感じでした。

岡本民家園 旧浦野家住宅土蔵の写真
旧浦野家住宅土蔵

江戸時代末期の建物です。

浦野家住宅土蔵は庭先にある土蔵といった感じで畑の横に設置されています。こちらは区指定有形民俗文化財に指定されていて、江戸時代末期に建てられたようです。

外壁は漆喰、屋根は瓦で仕上げられた土蔵で、世田谷区内喜多見より移築、復元されました。この土蔵は当初穀倉として、その後油蔵や店舗として使用されていたという経緯を持ちます。

現在ではビデオルームとなっていて、蔵のつもりで中に入ると床はタイル張りだし、内装は近代的だしとビックリします。係の人に頼めば文化財や古民家などに関する記録映画を放映してもらえるようです。

岡本民家園 旧横尾家住宅椀木門の写真
旧横尾家住宅椀木門

大正13年に建てられたものです。

旧横尾家住宅椀木(うでき)門は、大正13年に建てられた数寄屋風の門で、世田谷区桜より移築・復元されました。

この門は民家や土蔵よりも時代が新しく、建築様式や趣旨が異なるため、正面ではなく岡本八幡神社の参道に面した側の裏門として配置されたようです。

素人には民家と違和感なく見えてしまうので、せっかく立派な門があるならもっと目立つところへ配置すればいいのに・・・と思ってしまうのですが、そのへんはやはり民家園としてこだわりがあるようです。

* 民家園の四季とイベント *

岡本民家園 元旦の獅子舞上演の写真
元旦の獅子舞上演

岡本八幡から降りてきます。

岡本民家園では、昔ながらの季節感のある行事や昔の生活体験等も行われていて、昔ながらの生活や風習を体験することができます。

季節の行事として、「元日の正月遊び」「ひな祭りの雛飾り」「こどもの日の鯉のぼり」「七夕祭り」「十五夜の月見団子作り」などが行われます。

元旦の正月遊びは、元旦の行事で昔ながらの羽子板や駒などで遊ぶことができ、岡本八幡神社のお囃子や獅子舞の演奏も行われます。いかにも正月らしい風景ですし、元旦に獅子舞にかんでもらうと今年一年の運気もアップしそうです。

岡本民家園 お雛様の展示の写真
お雛様の展示

古民家に雛人形はよく似合います。

「ひな祭りの雛飾り」では外に顔出しパネルが設置され、室内にお雛様が飾られます。やっぱり古民家にはお雛様がよく似合います。自宅に飾らなくても、ここに見に来ればいいかもって思ってしまいます。

「こどもの日の鯉のぼり」では外に鯉のぼりが飾られます。ポールで縦に鯉のぼりが並ぶのではなく、よく川などで見られるようにロープで吊り下げられるように飾られます。

岡本民家園 七夕まつりの写真
七夕まつり

民家園で一番大きなイベントです。多くの子供が短冊に願い事を書いていました。

岡本民家園 七夕まつりの折り紙教室の写真
七夕まつりの折り紙教室

民家園の中では折り紙教室が行われ、多くの子供が参加していました。

「七夕祭り」は民家園で一番大きなイベントになります。

七夕祭りなのでメインイベントは大きな笹の木に短冊を付けることです。小さな子供たちが嬉しそうに願い事を書き、笹に取りつけていく様子は微笑ましいものです。

室内では折り紙教室が行われ、こちらも小さな子供たちが多く参加していて盛況でした。

岡本公園には地元岡本自治会のヨーヨーすくいなどの出店が出て、駐車場では消防のはしご車の体験や白バイの乗車体験などもできます。

岡本民家園 十五夜飾りの写真
十五夜飾り

「十五夜の月見団子作り」では名前の通り実際に団子を作ります。土間にある大釜で材料を蒸し、杵臼で付いて、そして参加者で丸めていきます。

この時期の民家園の軒先には十五夜飾りが置かれ、軒には干し柿がつるされ、強烈に秋を感じます。また庭では菊花展も行われています。

岡本民家園 草鞋つくりの写真
草履つくり

定期的に行われています。昔のままの農作業といった感じです。

この他に岡本公園民家園での催し物を抜粋すると、「わらじ細工実演」「わら草履教室」「紙すき教室」「春の茶会」「俳句作り」「折り紙教室」「和紙造形教室」「手打ちうどん教室」などが行われています。

これが全てではありませんが、区の広報誌を見る限りボランティアの方々により頻繁に行事が行われているようなので、そういったものに興味ある方は是非参加してみて、貴重な体験をしてみてください。

* 岡本八幡神社 *

岡本八幡神社 鳥居と参道の階段の写真
岡本八幡の鳥居と参道の階段

急な階段を登らなければなりません。

最後に岡本民家園とその一帯という事で、説明文に岡本八幡神社が載っているので簡単に触れておきます。

民家園の裏門側、駐車場の横の道は岡本八幡神社の参道になります。といっても小さな神社なので、ひっそりとした小道といった感じです。

神社は崖線の上にあるので少し登らなくてはならなく、一応男坂と女坂とあります。男坂の階段の前には鳥居があり、それをくぐると灯籠が一対あります。特にどうって事のない石灯籠なのですが、さりげなく岡本八幡神社の名物だったりします。

それは灯籠の裏側に秘密があり、寄贈者の名前がなんと松任谷夫妻・・・、そうあのユーミンなのです。こういった小さな神社にさりげなく寄贈しているところがいいですね。

岡本八幡神社 社殿の写真
岡本八幡神社の社殿

落ち着いた感じの境内です。

神社の方は、特に何もない静かな境内です。周りが緑に囲まれているので、本当にのどかというか、森の中といった感じです。よくウルトラマンシリーズの撮影で田舎の神社の設定で登場するだけはあります。

崖線の自然と付近の民家園や静嘉堂緑地など、この付近はのどかな森の散歩道といった趣きがあるのがいいかもしれません。歩いていると道で猫が日向ぼっこしていたりと、のんびりした気持ちになれる場所です。

民家園と岡本八幡の神輿の写真
民家園と岡本八幡の神輿

10月第一日曜日に八幡様から降りてきます。

岡本八幡では10月の第1週には秋祭りが行われ、その時は一年で唯一賑やかになります。といっても夜店が沢山出てといった縁日的な秋祭りといった感じではなく、神輿の渡御や夜の奉納芸能で楽しむような正統派的なお祭りとなります。

ここの見所はやはり神輿の宮出と宮入の時にあの急な階段を通る事です。これが岡本八幡の伝統であり、こだわりであるようです。

傾斜がきつくて大変そうなのは見ていてすぐわかるのですが、見ている方もいつの間にか力が入っていたりします。宮出しの時は下り終えると見物人から拍手が起こり、そのまま民家園に向かいます。

民家園と御神輿という組み合わせもなかなかのものではないでしょうか。ここでは休憩場となっていて、担ぎ手に焼き芋などが振る舞われます。余っていると見物人にもまわってくるのがうれしいところ。そういったほのぼの感というか、田舎のお祭りっぽいところがやはり岡本民家園なんだなと思えてしまいます。

* 感想など *

岡本民家園 アジサイと古民家の写真
あじさいの季節

この時期が一番好きです。

近代的な住宅に埋め尽くされてしまった世田谷。その中にあって岡本公園は古民家があり、水辺の風景があり、四季の風景があり、そして季節の行事がありと、とても貴重な存在となっています。

百景選定後の昭和63年11月にはそんなに離れていない喜多見に次大夫堀公園民家園が造られました。ここには名主屋敷(主屋1棟、土蔵2棟)、民家2棟、消防小屋などが復元されていて、更には次大夫堀や水田までもあるのでちょっとした集落ぽくなっています。

農家一軒の落ち着いたイメージの岡本民家園と大きな集落っぽい次大夫堀公園民家園。それぞれの良さがあっていいように思えます。次大夫堀公園でも民家園同様に様々な行事が行われているので、是非両方とも訪れてみてください。

ー 風の旅人 ー

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* 地図、アクセス *

・住所岡本2丁目19−1
・アクセス最寄り駅は東急田園都市線二子玉川駅、あるいは用賀駅。駅から結構離れています。
・関連リンク岡本公園民家園(世田谷区)

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<せたがや百景 No.72 岡本民家園とその一帯 2009年6月初稿 - 2018年4月改訂>