* 下の谷商店会の概要 *
下の谷商店街入り口
細い路地といった感じです。
三軒茶屋の駅前交差点から下北沢方向へ茶沢通りを進んでいくと、右手に太子堂中央街の看板があります。
この太子堂中央街商店街を進んで行くと、左手に下の谷商店街があるのですが・・・、想像以上に細い路地なので、気を付けていなければ見落としてしまいます。
下の谷商店街の通り
あまり活気がありません。
この下の谷商店街ですが、今でも下町の情緒が強く残る谷中商店街(上野の北の方)の幾つかの店舗が大戦中に疎開してきた事に始まるようです。
だから百景の文章にも下町という表現が強調して使われていたり、訪れた人によっては本場の下町に似た雰囲気を感じたりするようです。
百景の文章を読んで、谷中や千駄木ばりの下町風情あふれる商店街を!とまではいかないにしても雰囲気のある商店街を期待して訪れたのですが、残念ながら今ではすっかりと過去の話となってしまったようです。
下の谷商店街の看板
よく見ると下の谷商店街ではなく商店会なんですね
現在の下の谷商店街は開いている店は数軒ほどで、完全に消滅しかかっている商店街でした。
通りを歩く人はほとんどいなく、頭上の看板の「下の谷商店会」の文字は消えかかり、なんだか寂れた温泉街のような雰囲気です。どことなく哀愁が漂っていました。
調べてみると、一時期は通り沿いに77軒もの商店があったそうです。それが今では17軒ほどになってしまい、百景の切り絵で活気のある様子が描かれている朝市も開かれなくなってしまいました。
下の谷商店街の外れ
奥のほうはこんな感じです。
下ノ谷橋の碑
昔は烏山川に下ノ谷橋がかかっていたようです。
三軒茶屋自体は駅前の再開発で世田谷で一番の高層ビルキャロットタワーが建てられ(現在では2番目)、地下を含めた駅前が以前よりも活性化しました。
大学や病院が移転していったりといったこともありましたが、昔と比べても町自体の活気は衰えていなく、今でも比較的小売店も元気に営業している感じです。それは日曜日に茶沢通りを歩行者天国にするぐらい人が集まっている事から分かると思います。
大きなショッピングセンターができたら町のパワーバランスが崩れるのは都会でも地方でも同じです。再開発によって人の流れが変わり、駅前商店街に人が来なくなったり、バイパスができれば旧道の方に活気がなくなるというのもよくある話です。
そう考えると、周辺に暮らす住民の年齢層や家族構成といった変化や、消費者の趣向や消費スタイルなどといった時代の移り変わりによって、活気のある場所がちょっとずれてしまっただけと考えるのが個人的には一番しっくりするような気がします。
* 下の谷界隈 *
日曜日の中央街商店街
日曜日は通りを歩く人はまばらな感じです。
茶沢通りからこの下の谷商店街まで続いている太子堂中央街は日曜日、あるいは平日の夕方には歩行者天国となり、それなりに多くの人が歩いていました。
こちらは八百屋さんや魚屋から威勢のいい掛け声が聞こえてきて、商店街らしい雰囲気を幾分感じるものの、通り全体としてみると散発的な感じでした。
歩いている人は多いんだけど、あまり活気がある商店街ではないかなといった感じでした。八百屋や魚屋よりもコンビニへ入る客が多いかったのが端的にここの現状を表しているような気がします。
下の谷の外れ
下町っぽさや昭和って感じな風景が所々にあります。
この商店街から一歩路地に入ってみると、細い道の両脇にはアパートがぎっしりといった光景が続います。新しいものから、昭和を感じさせるような建物まで色々。多くの人が歩いているのは単に周辺の人口が多いからのようです。
そして一人暮らしの不精な人が多かったり、共働きでちゃんと料理を作れなかったり、週末にスーパーでまとめ買いをしたりと今どきの生活スタイルで暮らす人が多いのではないかと想像できます。
やっぱり時代の移り変わりなんだろうな・・・などと思いながらも、何でこの地域はこんなに道が狭くてごちゃごちゃしているんだといった事の方に興味が湧いてきました。ここまでごちゃごちゃした地域もある意味珍しいのでは・・・。ってか、これはちょっとひどすぎるのでは・・・。
調べてみると震災後の急激な人口移入によって道をきちんと区画しないままに宅地化された為にこうなってしまったようです。無計画な開発を行うとこうなるんだといったような典型でしょうか。この地域の配達や引越しをする業者はさぞ大変に違いありません。
* イベントなど *
秋祭りの時の商店街
神酒所ができ、少し賑やかになります。
秋祭りでの下の谷神輿
とても元気のいい神輿です。
下の谷商店街、あるいはほかの商店街と共同でセール以外のイベントをやっているのか、わかりませんが、下町風情の商店街とくれば・・・、やっぱり秋祭りですね。この地域は太子堂八幡の氏子地域となり、大祭期間中には下ノ谷町会から町会神輿や子供の太鼓車が出ます。
祭りの日に立ち寄ってみると、この時ばかりは普段静かな通りも賑やかになっていて、祭りの準備に活気付いていました。神輿に付いて様子を眺めていると担ぎ手の威勢がよく、担ぎ方に下町らしさ感じました。現在では祭礼日が一年で唯一下の谷っぽさというか、下町っぽさを感じる日となっているようです。
* 感想など *
下の谷町会の拍子木
なんとなく絵になっていたので。
三軒茶屋の片隅に下の谷商店会があると知る人は少ないはずです。残念ながら昔のような活況は今ではありません。時の流れと同じだけ寂れてしまいました。
でも時が流れただけの歴史を感じさせてくれる場所であるのは確かで、歩いてみるとちょっと懐かしさを感じたりします。
せたがや百景No.5 太子堂下の谷界わい
ー 風の旅人 ー
2018年3月改訂