大蔵の五尺藤
大蔵1-9-3(個人宅)大蔵の和田さん宅にある藤は、その名どおり房の長さは1メートルを越え、房の数は6千以上にもなる。5月の初旬、紫の花が満開になるころは見物に訪れる人も多く、まちの名所の一つになっている。(せたがや百景公式紹介文の引用)
1、大蔵の五尺藤について

歩いていたら見つけてしまいました・・・。
砧公園には昔からよく訪れているのですが、近くにある五尺藤については全く知りませんでした。せめて公園の周回道路沿いにあれば、「あっ、きれいな藤が咲いてる!」といった感じで気がつくのですが、ちょっと奥まった場所の、しかも個人の庭だったりするので、古くから地元に暮らしている人ぐらいしか知らないのではないでしょうか。
そういった認知されにくい状況からなのか、大蔵の町を歩いていたら電信柱にせたがや百景「五尺藤」の案内板が取り付けられているのを発見しました(2014年)。
昔はこのように電信柱に百景の案内板を取り付けてその存在をアピールしていたのでしょうか。それともここだけが特別で、五尺藤は大蔵の自慢です。ぜひ見に来てください・・・といったことなのでしょうか。広告料は区が払っているのでしょうか。
色々と気になってしまう看板でしたが、今では世田谷美術館の案内板に付け替えられてしまいました。実は担当者がこのサイトを見て気が付き、慌てて付け替えたとか・・・。などと妄想してみたりして・・・。

外から見るとこんな感じです。
住所を調べて訪れてると、表札も見えなくなるぐらい緑の垣根が生い茂っているお宅が五尺藤の和田さん宅でした。これでは中が見えない。門からは緑のトンネルの奥に藤がちょっと見えるだけでした。
さて、どうしよう。勝手に入ったら不法侵入だよな。せたがや百景に選ばれているぐらいだから、少しの時間なら見学ぐらいはさせてもらえるだろう。と、チャイムを探すものの見つかりませんでした。
中に進み、玄関まで行かないと呼び鈴がないパターンか。これは結構難易度が高いな。ちょっと悩んだものの、ちょこっとだけでも見えたからいいか。近くから見ても大して変わるまい。小心者なので外からズームで撮ってその場を後にしました。
せたがや百景の中でも一個人の所有物は、この五尺藤と阿川家の門。門の場合は外からでも見えるからいいのですが、ここのように庭にある場合は困ってしまいます。

(*イラスト:ちょこぴよさん 【イラストAC】)
その2年後、制作していた他のせたがや百景の項目が埋まり、未完成の中途半端な状態になっているのはこの項目だけとなりました。
完全に入れなかったり、消滅していれば諦めもつくけど、手に届きそうな感じで存在していると、中途半端な状態のページにモヤモヤしたものを感じてしまうというもの。今年の藤の季節には、意を決して訪れてみるか・・・。
とまあ、使命感に後押しされつつも、不安なものは不安。どう訪れたらいいのだろう・・・と、他の人のホームページなどで情報収集をしてみました。
で、とても気さくな方でどうやら藤の開花時期には庭を一般に開放しているとかなんとか。気軽にとまではいかないまでも、「失礼します」とそのまま中に入っていけばよかったようです。(*2010年の話です。現在の状況は分かりません。)

とてもきれいな感じの玄関です。
ということで、再び訪れてみました。残念ながら家主は不在でお話は聞けませんでしたが、玄関前には鉄製の頑丈な藤棚が設置してあり、素敵な空間が出来上がっていました。
満開少し手前でしたが、藤棚から垂れている花は長いものもあり、接木してから80年も経つようですが、まだまだ五尺藤は健在といったところでした。ただ、花の蜜を吸いに来ているアブが沢山いて、ちょっと危険。無断で長居するのも気が引けるし、写真だけ撮らせてもらい早々に立ち去ることにしました。
この家の家主、和田さんは園芸家だとか。それで立派な藤が育っているようです。それから敷地内にはツツジ科のカルミアも植えられています。これは日本で一番古いカルミアだとか。なんでも岩崎弥太郎氏が自社船で個人的に運んだものの一本になるそうです。気が付かなかった・・・。

チリリン広場にあります。
ちなみに、すぐそばの砧公園にも立派な藤があります。藤があるのは、管理棟(サービスセンター)横のチリリン広場。
ここはかつてサイクリングコース用のレンタル自転車を貸し出していた場所で、地面がしっかりと舗装されている広場です。チリリン広場という名にふさわしく、広場内ではたまに小さな子供が親と一緒に自転車の練習をしていたりします。
2、感想など

銘木百選の標も設置されています。
砧公園の北側、今では大蔵になってしまいましたが、ここはかつて世田谷最小の村だった横根です。横根では今でも独自のお祭りを行っていて、その様子を見学すると、古くからこの地に暮らしている人が多く、この地域は農村みたいにまとまっているな・・・と感じました。
ここ和田さんのお宅もそういった一軒で、門を開けっぱなしにしている様子などは、地域が一体となっている農村そのもの。そういったギスギスしていない雰囲気はとても心地よく、また藤のある空間は素晴らしく、色々と都会のオアシスみたいに感じた場所でした。
とはいえ、せたがや百景が選ばれたのは昭和の時代。その当時は色々とおおらかで、近所の人が気軽な感じで他所の家に訪問することは当たり前でしたが、今ではそういった風潮は少なくなりました。近年なら勝手にウロチョロしていると、闇バイトと勘違いされるかもしれません。
それに当時はせたがや百景に選ばれたことに誇りを感じていても、今では代替わりし、負担に感じているかもしれません。また、近年ではSNSで爆発的に情報が広まり、観光公害になることもあります。訪れる際には最大限の配慮が必要かと思います。
せたがや百景 No.64大蔵の五尺藤 2025年5月改訂 - 風の旅人
・地図・アクセス等
・住所 | 大蔵1丁目9−3 |
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・アクセス | 最寄り駅は田園都市線用賀駅。駅から少し離れています。 |
・関連リンク | ーーー |
・備考 | ゴールデンウィークごろが見頃。一般のお宅なので見学には配慮が必要。 |