校庭で子どもたちを見守る松の木
代沢2丁目42-9 (池之上小学校内)昭和15年に開校した池之上小学校の校庭には樹齢100年以上と言われる赤松の老木があり、その逞しい存在感でやさしく子供たちを見守り続けている。
1、池之上小学校と松の木

駅の反対側の入り口です。裏門になるのでしょうか。
京王井の頭線の池ノ上駅のすぐ目の前に、世田谷区立の池之上小学校があります。不動産情報で表現するなら、駅から徒歩0分、或いは1分以内といった絶好のロケーションです。東京の小学校でこの立地はなかなか凄いものがあります。
でも、公立小学校に電車通学する子供はほとんどいないでしょうから、あまり駅に近いメリットはなさそうです。むしろ、駅前特有の人や車の多い煩雑な環境であることや、踏切があることで、トラブルに巻き込まれる確率が高くなりそうです。と、単純に想像してしまうのですが、実際はどうなのでしょう。
とまあ、立地条件抜群の池之上小学校ですが、この辺りの地名が下北沢村の小字「池の上」だったことに由来して校名が付けられました。ただ、文字には少々こだわりがあって、初代の岸上校長が格調を高める意味で「の」を漢字の「之」に付け替えたそうです。
ついでに書くと、井の頭線の駅名は「池ノ上」です。ここには3種類の池の上の表記があるので厄介です。とはいえ、町名としての池の上は今では使われていないので、駅名の池ノ上という表記がほとんどです。

*国土地理院地図を書き込んで使用
話を戻すと、創設は昭和15年9月です。当時この地区にある小学校は代沢小学校だけだったそうです。しかし、昭和8年に井の頭線が開通してからというもの、この界隈の人口が急増していき、代沢小学校がマンモス化した為に池之上小学校が開校することとなりました。
その当時の話では、草ぼうぼうの牧草地に学校が建てられたようで、当時の生徒の一番の思い出は校庭の草とりだったとかなんとか。生徒が校庭を整備している時代だったようです。
実際、古い航空写真を見ると、代沢小学校にはちゃんとした校舎が建てられているのに、池之上小学校は簡易的な校舎があるだけのように見えます(校舎が建てられる前なのかもしれません・・・)。小学校の横には昭和30年代頃まで海外植民地学校もあったようです。

*国土地理院地図を書き込んで使用
池之上小学校の校庭には立派な松の木があり、それが地域風景資産に選定されています。
松の種類は赤松で、樹齢は100年以上、昭和15年の開校時からこの場所にあったそうです。学校のシンボル的存在になっていて、なんでも「まっぴー」という愛称があるとか。
実際に訪れてみると、ちょっと遠めですが敷地の外から見ることができました。日曜日だったので誰もいなく、子供たちを見守っているかは分かりませんでしたが、その佇まいは百景に出てくる砧小学校の百年桜といい勝負といった感じでしょうか。

外から見える範囲での松の木です。
実際、池之上小学校ではこの松の木はどういった存在なのでしょう。調べてみると、創立70周年記念式典での北村博校長の式辞にいい例えがありました。
在校生の代表として参列している5、6年生に向けた言葉で、
”今日は、この式典で、二つのことばを、君たちに贈ります。一つ目は、「根ばり」です。本校のシンボルであります赤松は、樹齢推定100年以上といわれています。松は、よく「枝ぶり」を評価されますが、地面の下に根を深く、広くはりめぐらす「根ばり」に私は思いを寄せます。この「根ばり」は、本校の教育目標「たくましくて 思いやりのある子」の「たくましくて」にあたります。松の木のように、「根ばり」をもって「たくましく」成長してください。・・・”とありました。
春になると華やかに花を咲かす桜の思い出は強く印象に残るけど、この校長先生の言葉のように、年中緑で地味な存在でも、地面に深く根張りし、さりげなく見守り続けてくれる力強い安心感が、この松にはあるのかもしれませんね。
そして、きっと子供たちはこの老松から逞しさというか、芯の強さといった事を自然と授かり、卒業していくのでしょう。
2、感想など

現状ではこんな感じで松を見ることができます。
校庭に古くからの立派な松が生えているというのは素晴らしいことです。しかしながら、通りのすぐそばに生えていて、学校の横を歩きながら池之上小学校の松は立派だなと感じるなら、町の風景といった感じもしますが、通りから離れた校舎脇に生えているので、一般的な風景というよりも、卒業生の思い出の風景でしかないような気がします。現在では昔のように一般の人が学校に入れる機会があるわけではないですし・・・。
でもまあ、近くで松の木を見れば、また違った印象になるかもしれません。そのうち機会があれば近くで見てみたいものです。とはいえ、「松を見せて下さい」と許可を取るのも気が引けるし・・・、何というか、砧小学校の桜のように桜が咲いているといったキッカケがあればいいのですが、松だとタイミングが難しいですね。気長に選挙などの機会を”まつ”としますか・・・。
せたがや地域風景資産 #1-7校庭で子どもたちを見守る松の木 2025年5月改訂 - 風の旅人
・地図・アクセス等
・住所 | 代沢2丁目42-9 (池之上小学校内) |
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・アクセス | 京王井の頭線池之上駅からすぐ。 |
・関連リンク | 世田谷区立池之上小学校 |
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