* 岡本玉川幼稚園と高橋是清について *

ここにある路地を入ったところに幼稚園があります。
坂を下っているときに小さい子が飛び出して来たら大変です。
岡本三丁目の坂道は昔から抜け道として通っていたので、この付近はそれなりに知っていました。ただ坂の下にあった「幼稚園注意」というのがこの百景に登場する幼稚園だというのは知りませんでした。
今回細い路地を入って岡本幼稚園を訪れてみると、幼稚園はあるにはあったのですが、名前は玉川幼稚園となり、建物も近代的になっていました。
残念ながら百景の文章にある「岡本幼稚園の建物は二・二六事件で暗殺された蔵相高橋是清氏の別邸だったもので、山荘風の構えがよく幼稚園にマッチしている。」というのは昔の話となっていました。
昔の写真を見ると、三角屋根がなかなか似合っている木造の山荘風の建物なのですが、現在ではそういった面影は全くなく、コンクリート製の建物に作り変えられています。

建物の壁にも絵が描かれていてとても楽しそうな雰囲気です。
現在の玉川幼稚園は敷地も建物も大きく、なかなか立派な幼稚園のようです。どうしても目がいってしまう建物は、色合いはカラフルで、壁にも絵が描かれていたりと、とても楽しそうな雰囲気を醸し出していました。
敷地内にある数々の遊具もなんか普通の幼稚園よりも凝っているような・・・気がするのですが、どうなのでしょう。
それと建物の2階から1階へ降りることができる大きな滑り台がとても気になります。これは非常用なのか、それとも普段から遊具として使われているのでしょうか。
色々と想像してしまうのですが、生憎と訪れたのが休日だったので想像を膨らませるだけ。でもこれだけ楽しそうな幼稚園なら、いつも元気に園児が走り回っているのではないでしょうか。

2階からの大きな滑り台が気になります。
現在の世の中ではさすがに園児の安全性などを考えると古い木造建造物ではどうしても限界があります。日本中の木造校舎がどんどん鉄筋に変わっていってる状況から考えれば、これもまたしょうがないことのように思います。
建物のみを別の場所で保存する方法もあったのではとも考えられますが、幼稚園として使われ、改造されたことで建物がどのような程度だったのかもわかりませんし、それだけの価値のある建物だったのかもよくわかりません。
ちなみに同じ崖線でいうなら瀬田四丁目旧小坂緑地にある旧小坂邸は昭和初期に衆議院議員を歴任した小坂順造氏の別宅として建てられた建物です。当時この付近には政財界人などが週末を過ごすための別邸が多く建てられましたが、現在こういった別邸で現存し、公開されているのは小坂邸だけとなってしまい、移築されたものでは二子玉川公園に旧清水邸書院があります。

青山の高橋是清翁記念公園に建てられています。
高橋是清(1854~1936)について少し書くと、明治時代の後期には日本の金融界の重鎮であり、大正から昭和初期にかけては首相、蔵相をつとめる政治家だった人物です。
歴史的人物であることから、本邸のあった赤坂(7丁目、青山通りのカナダ大使館ビルの隣)の敷地は、現在高橋是清翁記念公園となっていて、公園内は庭園風に整備されています。
そしてそこに建てられていた邸宅は都立小金井公園内の「江戸東京たてもの園」に移築され、公開されています。そう考えると岡本の別邸も一緒に・・・と考えてしまうのもしょうがないことですね。
このほか世田谷区内には同じくせたがや百景に選ばれている弦巻の実相院に「高橋是清翁之鬚墓」というものがあります。これは翁の愛顧を受けた永井如雲画伯が生前にもらい受けた鬚を保存していて、それを埋葬したものです。翁の正式な墓の方は多摩霊園にあります。