旅人が歩けばわんにゃんに出会う タイトル
旅人が歩けばわんにゃんに出会う ~ ユーラシア大陸横断編 ~

#52 パガンダランの動物たち

インドネシア パガンダラン 2000年6月
Pangandaran, Indonesia / Jun.2000
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ジャワ島の地図
パガンダランの地図

ジャワ島の南部の海岸沿いにパガンダラン(パンガンダラン)の町がある。ここの地形は特徴的で、小さなキノコ型の半島が海に突き出ていて、半島の先端部、キノコのカサにあたる部分は手つかずの自然が残り、国立公園に指定されている。

キノコの柄の部分から半島の根元に市街地が広がり、その左右の海岸は対照的なビーチになっている。西海岸は穏やかな波と長く広い砂浜が続いていて、サーフィンやジェットスキーなどのマリンスポーツを楽しむことができる。

東海岸は西海岸ほど砂浜は広くなく、漁船や養殖のいけすを多く目にする。ローカルな漁村の雰囲気が強く残り、魚市場やシーフードレストランが並んでいる。

パガンダランは、もともとはのどかな漁村で、朝夕には地元の漁師たちが網を引いている光景がとてもよく似合っていた。現在では美しい海岸線と豊かな大自然に恵まれ、またインド洋のいい波があることから、国内外から多くの観光客やサーファーが訪れる人気ビーチリゾート地に変わりつつある。

インドネシア パガンダラン西ビーチの夕日の写真
西ビーチの夕日

ただ、町の発展は順風満帆というわけではなかった。2004年のスマトラ島沖地震では直接的な町への被害はほとんどなかったが、悲劇はその2年後の2006年に起きた。

ジャワ島沖地震による津波で、この地は甚大な被害を受けた。家屋等の被害はもちろんのこと、500人を超える死者・行方不明者が出てしまった。しかし、そこから見事に復興し、ようやく元の賑わいが戻ってきた。

ちなみに、私が訪れた2000年もちょっとした谷間の時期だった。それは1997年にタイから始まったアジア通貨危機により、1998年5月、ジャカルタを中心に各地で暴動が発生した。この時には、日本人も約9000人が国外へ退避した。

それまでは多くの日本人サーファーがパガンダランを訪れていたが、一気に来なくなってしまった。日本でのサーフィンブームが一段落したのも影響したことだろう。特に女性客の姿がぱったりと途絶えてしまい、地元の男性の嘆きは大きく、私が歩いているとそのボヤキばかり聞かされた。せっかく日本語を勉強したのにと……。

インドネシア パガンダラン 西ビーチの子供サーファーの写真
西ビーチの子供サーファー

パガンダランのメインビーチである西海岸では、気軽にサーフィンを楽しめる。ここは波が比較的穏やかなため、地元のローカルサーファーや、街中に滞在して海を満喫する人たちで賑わっている。

もっと本格的にやりたい人は、パガンダランから西へ20kmほど離れた所にある聖地と言われる「バトゥ・カラス(Batu Karas)」を訪れている。こちらの方が波の質がいいようだ。静かな環境も相まって、本格的に打ち込みたい長期滞在に人気となっている。

インドネシア パガンダラン 西日のあたる小道のワンコたちの写真
西日のあたる小道のワンコたち

西日のあたる西海岸沿いの道をワンコが3匹歩いているのを発見し、慌ててシャッターを切った。飼い犬で飼い主とともにビーチを訪れていたのか、野良犬なのかはわからないが、インドネシアでは珍しい光景である。

同じくビーチリゾート地として有名なバリ島はヒンドゥー教の島なので、比較的野良犬が多いが、イスラム教徒の多いジャワ島ではあまり野良犬を見ないからだ。

ビーチの開放感や外国人観光客が多いことから、ここではワンコにも寛容になっているのだろうか。そんな印象を受ける。とはいえ、かなり目立っているのは確かで、何事かと多くの人が振り向いていた。

インドネシア パガンダラン国立公園の入り口の写真
パガンダラン国立公園の入り口

半島部分の先端、キノコのカサにあたる部分は、全体が広大なパガンダラン国立公園(保護区)として整備されている。ここは手つかずの熱帯雨林のジャングルが広がっていて、ガイド付きになるが、ハイキングすることができる。せっかくなので、訪れてみることにした。

インドネシア パガンダラン カニクイザルの写真
カニクイザル

歩き始めて最初に出会ったのは、サル。入り口付近に待機し、何かもらえないかといった様子で、随分と人に慣れている。種類はカニクイザル。東南アジアでは一般的な種類だ。ここは海にも近いので、名前の通りカニを食べているのだろうか。

この他にもジャワルトンという珍しい黒いサルもいるようだが、この日は出会うことはなかった。

インドネシア パガンダラン ジャワヤマアラシの写真
ジャワヤマアラシ

次に会ったのが、ヤマアラシ。種類はジャワヤマアラシになるだろうか。夜行性で、植物の塊茎や根などを食べて生きている。昼間は岩陰や地中に掘った巣穴に潜んでいる。その巣穴にお邪魔させてもらった。

目を引くのはやはり背中の針。攻撃されたり、捕食されそうになった時などに背中の針を逆立てる。またペアで暮らす生態も興味深く、実際にペアでいる様子を見ると親しみがわいてくる。ヤマアラシのほうは「早く向こうに行け!」と思っているだろうが……。

インドネシア パガンダラン 洞窟の写真
洞窟
インドネシア パガンダラン コウモリの写真
コウモリ

半島部には鍾乳洞が点在していて、かつて旧日本軍が占領時代に拠点として使用していた「日本軍の洞窟」と呼ばれるものもある。

洞窟に入ってみると、天井には黒いものがうごめいていた。コウモリだ。どこにでもいる普通の種類だが、強いて感想を言うなら、上からフンなどが降ってきそうで、その下を歩くのはあまり心地いいものではなかった、ということくらいだろうか。

インドネシア パガンダラン 蛇の写真

普通の蛇がいたので、なんとなく写真に収めてしまった。これがコブラだったら……などと思ってしまうが、それはそれで怖いので、普通の蛇でも全くかまわない。

ガイドによると、ここにはサソリもいるらしい。サソリやでかい毒蜘蛛が出てくれば話のネタにはなりそうだが、気持ち悪いので写真を撮る気にならない……。

あとはバッファローの群れや鹿などの大型の動物もいるとのことだが、こちらも残念ながらこの日は出会うことができなかった。こればかりは運次第だ。

ガイドは、「明日歩けばきっと会えるぞ。もっと早い時間帯に行こう」と誘ってきたが、そんなに暇ではない。最近観光客が減っていて、ガイドの仕事も順調ではないようだ。

インドネシア パガンダラン ラフレシアのつぼみの写真
ラフレシアのつぼみ

この保護区には世界最大の花と言われるラフレシアが自生している。ここに見られるのは、「ラフレシア・パトマ(Rafflesia patma)」という固有の絶滅危惧種。直径30〜60cmほどで、少し小ぶりな品種になるようだ。

せっかくなら開花しているところを見たいと思うもの。ラフレシアは一年中咲く可能性があるものの、一般的には雨の多い時期に蕾が成長するので、7月~10月頃によく開花が見られるそうだ。ただし、開花期間はわずか3〜5日程度と非常に短いため、実際に見られるかは運次第となる。

残念ながら私が訪れた6月はまだ蕾だった。ガイドは、「あと1か月もすれば咲くかもしれない。また1か月後に来い。ガイドしてやる」と言ってきたが、サーフィンをやるために長期滞在していたり、インドネシアに駐在しているのならともかく、さすがにそれは無理だ。

ラフレシアの開花(ボルネオ島、マレーシア)の写真
ラフレシア(ボルネオ島、マレーシア)

せっかくなので、開花したものを紹介しておこう。こちらの写真はボルネオ島のクチン付近の国立公園で撮った写真。少し枯れかけているが、ちょうど開花していた。

ラフレシアは非常に変わった植物で、どこでも咲くわけではない。根や茎、葉を持たず、ブドウ科のツル植物(Tetrastigma)に寄生して大輪の花を咲かせるという、特殊な生態を持っている。

その分布は非常に限られていて、東南アジアの熱帯(インドネシア、マレーシア、タイ南部、フィリピン)にだけ生育している。全部で15種に分類され、花弁の形や大きさ、斑紋の色や形がそれぞれ微妙に違っている。

大きさもさることながら、腐った肉のような強烈な臭いを放つことでも有名だ。この悪臭でハエを引き寄せ、受粉を行う。

この匂いで虫を呼び寄せて食べたり、場合によっては小動物をも飲み込んだり、人間が手を入れると手が抜けなくなる……などと、妖怪アニメや特撮ものの影響で「おどろおどろしい人喰い花」のイメージを持っている人も多いかもしれないが、実際には食虫植物ですらないため、そのようなことは起きない。

インドネシア パガンダラン 地元の祭りの演者(ホモサピエンス)の写真
ホモサピエンス

最後に遭遇したのが、入り口付近で集まっていたホモサピエンス――。あえてそう書きたくなるような恰好をしている人達だが、ちょうどこの日はお祭りで、その出し物の演者が伝統的な衣装に身をまとい準備をしていた。

インドネシアの祭りは日本のものと似ていて、神楽とか歌舞伎みたいな感じでラーマーヤナ物語の舞踏劇などが行われる。その男性演者の人たちだ。

インドネシア パガンダラン グリーン・キャニオンの写真
グリーン・キャニオン

パガンダランからツアーで訪れることができるのが、グリーン・キャニオン(Cukang Taneuh)と呼ばれる景勝地。

ここはエメラルドグリーンの川面と、そびえ立つ美しい石灰岩の絶壁が素晴らしく、まさにグリーン・キャニオンの名がふさわしい場所だった。とてもおすすめできるスポットだったので、紹介しておこう。

インドネシア パガンダラン 部屋のヤモリの写真
部屋のヤモリ

最後に紹介するのは、宿の部屋に現れたヤモリ。グリーン・キャニオンや国立公園から戻った後も、まさか部屋の中で動物との交流が続くとは思わなかった。

安宿に泊まっていると、蚊やハエ、アリやゴキブリにクモ、ヤモリやトカゲ、ネズミ、そして怪しい人と、様々な生き物に遭遇する。

「一人旅は孤独との戦い」という面もあり、部屋にやって来るこういった生き物を愛おしく感じる事もある。基本的には、あまりこういったものはいない方がいいが、旅が長くなると段々とこういった状況に慣れてくるものである。

部屋にやって来る生き物の中で、比較的害が少ないのがヤモリ。この宿ではお湯を自由に使っていいということで、久しぶりに紅茶を飲みたくなり、紅茶を購入し、ミルクは手軽なコンデンスミルクで代用した。

インドネシア パガンダラン 部屋のヤモリ お皿を覗き込む様子の写真
お皿を覗き込む様子

アリが来ないように高い場所に置いていたのだが、気が付いたらお皿のふちから身を乗り出し、こぼれたコンデンスミルクを美味しそうに舐めていた。最初は遠慮がちにしていたものの、こちらに危害を加える気がないと分かると、だんだん図々しくなっていく様子がなんとも可愛らしい。

所変われどヤモリはどこでも一緒だな。犬と同じように、見慣れた生き物には安心感がある。この時はそう思っていたのだが、後で調べてみると、姿はニホンヤモリとよく似ているが、「チッチッ」「ケッケッ」とよく鳴くホオグロヤモリとなるようだ。現地では「チチャ(Cicak)」と呼ばれているらしい。

このチチャとは2晩だけの交流だったが、なかなか可愛いやつで、「もう一泊しようかな……」と出発するのをためらってしまったほどだ。

名残り惜しい気持ちで部屋をチェックアウトするのだが、そんなこと知ったこっちゃないのだろう。そもそも夜行性の生き物なので、出発の見送りはしてくれなかった。

旅人が歩けばわんにゃんに出会う
#52 パガンダランの動物たち
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