世田谷散策記 タイトル
せたがや百景 No.100

奥沢駅前の広場

奥沢3-47 奥沢駅前

目蒲線奥沢駅は区内で最も整備された駅前広場を持つ。緑と噴水は乗降客を慰めるばかりではなく、まちの人々の憩いの場ともなる。区内には多数の私鉄駅があるが駅前はその町の玄関、ゆとりを作る工夫がほしい。(せたがや百景公式紹介文の引用)

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1、奥沢駅前の広場について

ビル群イメージ(*イラスト:あ こさん)

(*イラスト:あ こさん 【イラストAC】

高度成長期、それは高性能、効率化を合言葉に行われていきました。電化製品、車、建物などはいかに高性能であるかを強調し、無駄なものは非効率で前時代的と排除されました。

都市の再開発においても、駅や駅前の一等地は土地の無駄のないよう最大限、効率よく建物を建てていきました。その為、区内の駅前の多くは窮屈で息の詰まるような景観となっていきました。

世田谷区内を走っている鉄道は、東急電鉄、小田急電鉄、京王電鉄と、すべて私鉄。営利主義の私鉄沿線といったことを考えれば、これも仕方ないことです。

その結果というか、家やマンションを買うにも土地が高いし、買えても狭い土地だし、都会のごちゃごちゃしたところに住むよりも、少し郊外の方がいいんじゃない。

空間的な開放感があるし、土地も安いし、空気もいいし、少々の通勤時間が長くなるけど我慢しようかな・・・と、マイホーム族はどんどんと郊外へ移住していきました。

もの凄く大袈裟に言うなら、そんな流れに待ったをかけたのが、世田谷区ではこの奥沢駅という感じになるのでしょうか。

奥沢駅前の広場 奥沢駅とふんすい広場の写真
奥沢駅とふんすい広場

小さいながらも噴水のある広場です。

近年では鉄道会社の独断の商業主義の開発ではなく、自治体と企業、そして住民の話し合いにより、再開発が進められるようになりました。住民が要求する「バリアフリーは?」「歩きやすさは?」「緑の景観は?」といったことを、自治体や企業が無視できない世の中になったといってもいいでしょう。

それと同時に、企業としても魅力的な空間を作ることで、人が集まり、テナントなどの価格が上がり、また企業アピールにもなるといったように、うまくやれば経済的に付加価値があるとわかってきたので、魅力ある景観に力を入れるようになってきました。

奥沢駅前の広場 ふんすい広場の様子の写真
ふんすい広場の様子

木も植えられていて、小さな憩いの場となっています。

奥沢駅前の広場の ふんすい広場の様子写真
ふんすい広場の様子2

広場に面した建物もおしゃれな外観になっています。

実際に奥沢駅前のふんすい広場を訪れてみると、そんなに大きな広場ではなく、これが・・・といった感じでした。近年では大きな駅前広場が増えているので、そういう意味ではちょっと期待はずれでした。

やはり当時としては、これが限界だったのでしょうか。でも小さいながらにも噴水があり、今時のコジャレた感じの憩いの場所になっているのは確かで、夕方訪れると多く設置されているベンチではくつろいでいる人が多くいました。

駅前ということで人通りも多く、人間を観察をするのが好きな人には、普通の公園よりもボーと時間を過ごすにはいい公園かもしれません。

1940年代後半の奥沢駅の航空写真(国土地理院)
1940年代後半の奥沢駅

国土地理院地図を使用

ちょっと深読みしていくと、この項目も羽根木神社の参道の項目と同じで、法的にどうにもならない住民の町つくりの提言を、行政側が意図的にふくらませた百景になるような気もします。

古い写真を見ると、戦後の1940年代後半は、駅前にはもう既に多くの建物が立っています。というより、昭和初期の奥沢の繁栄ぶりに少し驚きます。昭和初期は三軒茶屋に負けないぐらいの賑わいがあったのではないでしょうか。

それとともに、この時代は各家庭の敷地が広く、それぞれの家に緑が多いのが見てとれます。駅前に緑がなくても、気にする人はほとんどいなかったかもしれません。

1970年代の奥沢駅の航空写真(国土地理院)
1970年代の奥沢駅

国土地理院地図を使用

1970年代には、駅前に今ある大きなビル群が建ち並びます。その時に噴水広場も出来上がったようです。この時代にどういった法律があったのかは分かりませんが、おそらく駅前に広場を設置しなければならない義務や法律といったものはなかったのではないでしょうか。

鉄道会社にしてみれば、土地の無駄という事になるけど、そういったスペースがあれば、住民にとってはうれしいし、そういった心意気はこういった百景などで評価されますよ。といったところでしょうか。

区民が選んだ百景に、こういった企業の努力によって生まれたさりげない広場が評価されたこと、そのこと自体がとても意義のあることかなと思えます。

奥沢周辺の地図(国土地理院)

国土地理院地図を書き込んで使用

ちなみにいうと、奥沢という場所は、環七と環八、そして目黒通りと中原街道という大きな道路に囲まれた地域です。

目黒通りと環八は比較的近く、奥沢駅前を通る自由通りは、地図で見ると直線的に目黒通りと環八を結んでいるので、抜け道としては最適です。

しかし、実際に通行しようとすると、東横線、大井町線、目黒線と、三つの踏切というトラップをこなさなければなりません。これを通過するのが結構大変で、タイミングが悪いとかなり時間がかかってしまいます。

ということで、奥沢駅周辺は踏切が多く、抜け道として利用する人が少なく、比較的交通量が少なかったりします。奥沢駅周辺で暮らすと、踏切で不便するけど、踏切によって生活環境が守られているとも言えるようです。ちょっと不思議なエリアです。

奥沢駅前で踏切待ちする厄除の大蛇の写真
踏切待ちする厄除の大蛇

藁で作った大蛇が奥沢の町を練り歩き、最後奥沢神社に帰っていきます。

普段は静かな感じの奥沢駅前ですが、年に一度とても活気づくと気があります。それは奥沢神社の例大祭の時です。

奥沢神社には、大蛇のお練りという変わった風習が古くから続けられています。行われるのは秋祭りの土曜日で、藁で作られた大蛇が奥沢の町を練り歩いていきます。

秋祭りの日曜日には、この奥沢駅前から各町会神輿が奥沢神社に向かって連合で渡御していきます。その時にこの駅前広場の前を神輿が次々と通って行くので、普段は静かで落ち着いた雰囲気の広場が大いに賑わいます。

色々と興味深い祭りで、もし私がせたがや百景を選ぶなら、奥沢神社は必ず選びます。

2、感想など

奥沢駅前の広場 秋祭りで賑わうふんすい広場の写真
秋祭りで賑わうふんすい広場

賑わっているときの様子が一番好きです。

駅前に落ち着ける広場があるというのは、とてもいいものです。初めて奥沢にやってきた人が駅から降り、目の前に素敵な広場があったなら、奥沢に対する印象がよくなるというものですし、一呼吸おけるので、気分的にもちょっと落ち着くことができます。

これが道路やビルだらけだったら、先を急がなければといった気持ちになるし、印象に残ることもないでしょう。やっぱり町の玄関となる駅前にちょっとした広場があると、町全体の雰囲気や印象がよくなるように感じます。

ここ奥沢駅前の広場は小さな広場ですが、噴水もあり、こじゃれた雰囲気もあり、大きさ以上に印象に残る広場になっているのではないでしょうか。

せたがや百景 No.100
奥沢駅前の広場
2025年5月改訂 - 風の旅人
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・地図・アクセス等

・住所奥沢3丁目47
・アクセス最寄り駅は東急目黒線奥沢駅。
・関連リンクーーー
・備考ーーー
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