世田谷散策記 タイトル
せたがや百景 No.83

玉川台自然観察の森
(玉川台二丁目五郎様の森緑地)

玉川台2-30

環八沿いのビルの裏手にこんもりと緑の盛り上がった森がある。ここは密生した植物とともに昆虫や小鳥が共生している自然空間となっている。過密な都市の中に生きているこうした自然のスペースを大切にしたいものだ。(せたがや百景公式紹介文の引用)
*現在は五郎様の森緑地として公開されています。公開時間:9:30~16:00(冬)17:00(夏)

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1、玉川台自然観察林(玉川台二丁目五郎様の森緑地)について

玉川台二丁目五郎様の森緑地 住宅街にある自然観察林の写真
住宅街にある自然観察林

かなり違和感のある光景です。

こんなところに雑木林が残ってる。環八の東名下交差点を自転車で通るのが怖く、一時期この横を通って通勤していたので、この自然観察林(現・五郎様の森緑地)はよく知っていました。

敷地内の木々はぼうぼうだし、敷地横の道路にタクシーなどの車が停まり、中で運転手が仮眠していたり、フェンスには立ち小便禁止の看板が貼ってあったり、誰の持ち物か知らないけど少しは手入れをしたらいいのに・・・、無粋な地主だな・・・と思いつつ、日々その横を通過していました。

しかし、自然観察林なら手入れしたらその意味がなくなってしまいますね。なんだ、そうだったのか。今までの疑問が晴れ、ようやく納得がいきました。

玉川台二丁目五郎様の森緑地 の写真
用賀ビジネススクエアと自然観察林

二車線道路だけどこの先は行き止まりなので交通量が少ないです。

玉川台二丁目五郎様の森緑地 敷地内に山盛りの木々の写真
敷地内に山盛りの木々

間近で見ると、高さがあるので迫力があります。

さて住宅街の一画に不自然に残っている自然観察林ですが、なんでこんな所にあるの?というのが正直な感想だと思います。

古い記述に、少しこの森について書いてありました。用賀駅前の通りは、江戸時代の旧大山道になります。谷沢川の頭上に首都高の高架が設置されたので、現在では首都高の高架下で谷沢川を渡ることになります。

ここに架けられているのは田中橋。といっても、この辺りは川の上に蓋がされ、自転車置き場や広場になっているので、橋を渡っている事に気が付かないと思います。でも一応、交差点名は田中橋となっています。

1940年代後半の用賀駅周辺の航空写真(国土地理院)
1940年代後半の用賀駅周辺

国土地理院地図を書き込んで使用

この道は用賀駅から瀬田の交差点へ向かい、二子玉川へ向かっています。かつては路面電車の軌道となっていて、田中橋の上には線路が敷かれていました。しかし、大雨が降ったりすると谷沢川があふれて辺りが水浸しになり、電車が運行できなくなったとか。

田中橋というのも、田んぼの真ん中にあるから田中橋と名づけられたというので、今では考えられませんね。その田中橋より北西を望むと「五郎様の森」と呼ばれるたいそう立派で、大きな森を見る事ができた。という記述がありました。

その森の持ち主は高橋五郎衛門という方で、その名残が現在の自然観察林という事になるようです。用賀は早い時期に区画整理が行われたので、森が真四角になっていますが、森がつながる隣の土地や、周辺の畑なども高橋家の土地だったのではないでしょうか。

2009年の用賀駅周辺の航空写真(国土地理院)
2009年の用賀駅周辺

国土地理院地図を書き込んで使用

時を進めて、2009年の写真を見ると、この区画だけ不自然に緑の土地になっていて、面白く感じます。ほんと、ここだけ時の流れが止まったとか、時の流れに残されたという表現がぴったりです。

玉川台二丁目五郎様の森緑地 自然観察林の看板の写真
自然観察林の看板

カブトムシを飼っているようで、看板にはカブトムシが描かれていました。

現在では、玉川台二丁目五郎様の森緑地になっていますが、それ以前は、昭和57年から世田谷区がこの土地を借受け、玉川台自然観察林として、樹林地を保全するとともに、自然に親しむ場所として活用していました。

敷地内は一般には非公開となっていて、小学生などが授業等でカブトムシの成長観察を行ったり、腐葉土をつくっていたそうです。

入り口から内部を覗くと、木々が生い茂って薄暗く、奥の方に管理小屋やカブトムシ飼育小屋がひっそりと建っていました。本当に木々に囲まれた空間といった感じでした。

玉川台二丁目五郎様の森緑地 自然観察林の内部の写真
自然観察林の内部

かつては外からしか見ることができませんでした。小屋の中ではカブトムシが飼育されています。

2017年に市民緑地として契約し、玉川台二丁目五郎様の森緑地として整備されました。

残念ながら訪れたことがありませんが、敷地はきれいに整備され、内部には遊歩道が設置され、かつての屋敷林の面影が残る園内を散策できるようになっています。

私的には、敷地の外、あの汚かった柵がきれいになった写真を見て驚きました。近隣住民にとっては、これで風通しがよくなったと感じているのではないでしょうか・・・。本当にひどかったですから・・・。

それと、カブトムシの飼育に関しても継続して行われていて、夏になるとカブトムシを見ることができるようです。ぜひ訪れてみてください。

2、感想など

玉川台自然観察林 ゴミ捨て禁止の看板の写真
玉川台自然観察林 ゴミ捨て禁止の看板の写真
ゴミ捨て禁止の看板

かつてはゴミ捨て禁止の看板がたくさん並んでいました。

土地は一回荒れだすと止まりません。木々や雑草が生い茂り、不法投棄が不法投棄を呼び、あっという間にひどい状態になります。

最初にここを見たときは、この自然観察林もそういった類の土地かと思いましたが、自然観察林でした。とはいえ、周囲のフェンスにに張られていたゴミ捨て注意の看板の数は異常でした。

現在では市民緑地として、一般にも公開されるようになりました。園内はきれいに整備され、周辺の柵も新しくなり、住宅地にある景観としてはよくなったのではないでしょうか。観察林で暮らす鳥や昆虫たちはどう思っているか知りませんが・・・。

このように人が多く入ることで、色々と風通しがよくなる半面、少し心配な部分もあります。かつて岡本公園にホタル園があり、ホタルが飼育されていました。そのホタル園ではホタルの盗難があり、結局廃園となりました。ここではそういった悲しい事が起きないよう切に願っています。

せたがや百景 No.83
玉川台自然観察の森
2025年5月改訂 - 風の旅人
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・地図・アクセス等

・住所玉川台2-30
・アクセス最寄り駅は田園都市線用賀駅。
・関連リンク玉川台二丁目五郎様の森緑地(世田谷区)世田谷トラストまちづくり 市民緑地
・備考現在は五郎様の森緑地として公開されています。公開時間:9:30~16:00(冬)17:00(夏)
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