世田谷散策記 タイトル
せたがや百景 No.13

下北沢北口の市場

*取り壊されました(北沢2-24)

暮らしに密着した食料や衣料などが所狭しと並び、活気に満ちている。通路が買い物客で身動きできないほど賑わう。戦後間もないころのことがふと思い出される。買い物客が引け、店が閉まった後の風情も捨てがたい。暮らしのエネルギーが残してきた風景といえよう。(せたがや百景公式紹介文の引用)

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1、下北沢北口の市場について

下北沢北口の駅前食品市場 入り口
北口前の通り(2008年 再開発前)
下北沢北口の駅前食品市場 入り口
市場の入り口

正式には駅前食品市場となるようです。

下北沢の北口にちょっと変わった市場、正式には下北沢北口駅前食品市場がありました。過去形になってしまっている通り、今ではありません。小田急線の地下化に伴う再開発時に取り壊されました。跡地は駅前広場になるようです。

1940年代後半(終戦後)の下北沢駅周辺の航空写真(国土地理院)
1940年代後半(終戦後)の下北沢駅周辺

国土地理院地図を書き込んで使用

1980年代の下北沢駅周辺の航空写真(国土地理院)
1980年代前半の下北沢駅周辺

国土地理院地図を書き込んで使用

2009年の下北沢駅周辺の航空写真(国土地理院)
2009年の下北沢駅周辺

国土地理院地図を書き込んで使用

この市場には、戦後のバラック商店が寄せ集まってできた商店街といった雰囲気がありました。高いところから見下ろした写真を見るとよくわかり、寄せ集めの店が密集して市場を形成しているのがよく分かります。

いったいなぜ一等地である下北沢駅前に、こんな非効率な市場があったの?といった疑問がもたげてくるのですが、古い下北沢の記述を読むと、市場が先にあり、そのすぐ横に下北沢の駅を造ってしまったようです。

とはいえ、戦後から現在まで旧形態の市場が駅前に残り続けたことに驚きます。よくわかりませんが、再開発やら、所有権やら、何かいろいろな権利がごたごたし、なあなあな状態で生きながらえたといった感じでしょうか。

下北沢北口の駅前食品市場 市場内の通路
市場内の通路

バラックといった感じでちょっと怪しい感じのする通路でした。

下北沢北口の駅前食品市場 衣料品関係の店が並ぶ通路
衣料品関係の店が並ぶ通路

そんな北口市場を訪れたのは2008年のこと。市場を歩いてみると、メイン通りというか、道幅の広い通路は比較的きれいにしてあり、ちょっとした駅の地下街といった雰囲気でした。

しかし細い通路に入ると、そこはごちゃごちゃとしていて、なんとなく東南アジアの市場を思い出すような雰囲気でした。

とはいえ、百景の文章では戦後の・・・とありますが、そんなに古くない時期に大掛かりな補修を行ったような感じで、さすがにそこまで昔の様子を想像してしてしまう人はいなかったと思います。

下北沢北口の駅前食品市場 食品店が並ぶ通路
食品店が並ぶ通路

奥に行くと食品市場らしい雰囲気の区画もありました。

最初に市場を訪れたのは、日曜日でした。日曜日の下北沢の賑わいはなかなかのもの。どういう市場かよくわからないけど、きっとここも賑わっているだろう。そう期待して訪れたのですが、閉まっている店は多いし、歩いている人のほとんどは駅への通り抜けに利用しているだけ。

百景の文章にあるようなごった返すような活気がなければ、アメ横並みの賑わいもなく、閑散とした状態でした。ただただ呆然。期待はあっけなく裏切られてしまいました。

そして後日、今度は土曜日の夕方に訪れてみると、日曜日にはやっていなかった食料品店が営業していて、ちょっとだけいい雰囲気になっていました。

しかしながら、相変わらず活気が・・・。多くの若者がショッピングを楽しみながら町中を歩いているのを見た後でここに来ると、ここだけ時代に取り残されているような錯覚に陥ります。

下北沢北口の駅前食品市場 メイン通路
広く歩きやすいメイン通路

飲食店が並んでいました。

ただ、少し怪しい雰囲気が漂う場所が本領を発揮するのは、暗くなってから。メイン通りには立ち食い飲み屋や、カウンター席だけの飲み屋が多く並んでいて、夜になるとちょっとした賑わいがあったようです。

市場内には昭和的な雰囲気が漂い、それ相当の年代の人には懐かしく、若い人にはレトロな刺激を感じながら飲食を楽しんでいたようです。

2、感想など

下北沢北口市場 せわしなく行き来する人
せわしなく行き来する人

近道として利用している人が多いようでした。

その土地を知りたければ市場に行け。旅の格言の一つです。その格言に従い、私がユーラシア大陸を横断したときは、町を訪れると必ず市場に足を運んだものです。

市場というものは、人と物が溢れ、物の売買による強烈なパワーを感じられる場所です。そして市場を歩くことで、ここでは何が特産なのか、何が安いのかを考察することが出来たり、売買の様子から人々の性格や気性を推測したりできます。

また、調味料等の強烈な匂いや、乾物のなんとも言えない匂い、肉や魚を扱っていると、むせかえるような生臭い匂いもしてきます。五感で色々なことを感じることができるのが市場になります。

しかしながら、取り壊し間近といったこともあり、この北口市場ではそういったことを感じることはできませんでした。

下北沢北口市場 薄暗い通路
薄暗い通路

が、それも過去の話。取り壊されてしまった後では、あまり活気がないな・・・。百景が選定されたときはどんな雰囲気だったのだろうか。この店は昔からあるのかな。そんなことを思いながら散策することもできなくなりました。

人も町も代替わりするもの。今後はどういった町に変わるのでしょうか。新しくなった町で、また新たな風景や文化、人との出会いができることを期待したいです。

せたがや百景 No.13
下北沢北口の市場
2025年5月改訂 - 風の旅人
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・地図・アクセス等

・住所下北沢駅の北側(*現在は駅前広場になっています。)
・アクセスーーー
・関連リンクーーー
・備考再開発で取り壊されました。
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