大ケヤキのある円泉ヶ丘公園
太子堂3丁目国立小児病院跡地につくられた新しい公園です。だれもが使いやすいユニバーサルデザインに配慮され、かまどベンチなどの設備も備わっている、まさに地域の防災の要となっている公園です。(紹介文の引用)
1、円泉ヶ丘公園について

*国土地理院地図を書き込んで使用
三軒茶屋と下北沢を結んでいるのが、茶沢通り。その茶沢通りと淡島通りとが交差するのが、代沢十字路。その東側に太子堂中学校があり、更にその東に日本で最初の小児専門病院だった国立小児病院がありました。
この病院の歴史は古く、1899年に東京第二衛戍病院として創設したのが始まりで、戦後は国立世田谷病院となり、1965年に国立小児病院として診察を開始しています。

*国土地理院地図を書き込んで使用
国立小児病院と聞いて、英国王室のダイアナ妃を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
訪問したのは、1995年。3度目の来日の時でした。1986年の最初の来日ほどではないにしても、ダイアナ妃の存在は大きく、ファッション、振舞い、果ては些細なしぐさなど一挙手一投足が報じられ、テレビの画面を独占していたといっても過言ではありませんでした(離婚調停中という理由もあった。翌年離婚成立)。
この時は英国赤十字社副会長としての来日で、国立小児病院へ慰問訪問をしました。その時の様子が何度もテレビに流れたので、世田谷区民なら記憶に残っている人が多いでしょう。
この国立小児病院がある場所は、三軒茶屋からだと太子堂円泉寺のすぐ上の丘になります。丘の上なので太子堂や三軒茶屋から病院がよく見え、長い間ラウンドマークとしてこの地域の一つの顔となっていました。
しかし、2002年3月には国立大蔵病院と統合する事となり、名称は国立成育医療センターと変り、場所も国立大蔵病院のある世田谷通り沿いの大蔵2丁目に移転しました。現在では独立行政法人へ移行し、国立成育医療研究センターに改称されています。

お寺の背後の丘にそびえるように建っています。
その跡地は売却され、建てられたのはグランドヒルズ三軒茶屋という大きなマンションです。見た感じからして高そうだなと思ったのですが、調べてみると、住友不動産の最上級グレードマンションになるようです。
丘の上という絶好のロケーションを利用した眺め。駅からは遠いものの、そこそこ利便性の高い立地。そして贅を尽くした外観や内装、セキュリティーなどといったものが売りで、ちょうど分譲中だったので値段を見てみると、庶民には手が出せない金額の億ションでした・・・。

斜面の下側の入り口になります。
そのグランドヒルズ三軒茶屋と太子堂円泉寺の間の斜面や丘の上に造られたのが、世田谷区立円泉ヶ丘公園です。平成17年10月から工事が始まり、平成18年4月に完成したので、出来立て・・・とはもう言えませんが、まだまだ新しい感じの公園です。
区立となっていますが、丘の地形や眺望を活かした「みどりのオープンスペース」として都市再生機構が整備したもので、現在は世田谷区立公園として供用されている街区公園となるようです。
(*街区公園とは、主として街区内に居住する者の利用に供することを目的とする公園で、1箇所当たり面積0.25haを標準として配置。)
施工にあたっては「近隣住民とともにつくる公園づくり」を基本方針とし、話し合いにより様々な創意工夫を行ったそうです。
そういった経緯やバリアフリーや災害時の利用に配慮されているなどといった点が評価され、社団法人日本公園緑地協会が主催する「第23回都市公園コンクール」において、造園施工(小規模)部門で国土交通大臣賞を受賞しています。

急な坂にならないように長い坂となっています。
円泉ヶ丘公園は、二つの違った種類の部分に分かれています。一つは、太子堂円泉寺の裏手から続く斜面を利用した斜面緑地です。斜面には程よく木が植えられていて、階段とバリアフリーに対応した緩やかなスロープが設置されています。
南側に向かっての斜面なので、日当たりがとてもよく、明るい雰囲気の斜面緑地となっていますが、通路以外の斜面に入ることはできないので、実質的には緑道といった感じでしょうか。

高級感が漂っているマンションです。テラスからの眺めがよさそうです。

丘の上部分はちょっとした広場になっています。
二つ目は丘の上の部分で、眺望を利用したプラザ空間となっています。マンションと斜面の間のスペースを利用しているので、そんなに広い空間ではありませんが、芝生が植えられていたり、パーゴラやベンチが設置されていたり、子供の遊具も少しですが置いてあり、日当たりもいい事から気持ちのいいオープンスペースとなっています。
また、LED埋込み式誘導灯、ソーラー時計台、井戸手押しポンプ、かまどベンチ、簡易防災トイレ(マンホール)などといったものがさりげなく設置されていて、都市公園らしく防災活動拠点の機能が備わっています。
とはいえ、住宅や集合住宅がひしめき合き、凄まじい人口を擁している三軒茶屋周辺なので、実際に大きな災害が起きてしまったら、こんな程度では賄いきれないとは思いますが・・・。

丘の上なので眺めはそれなりにいいです。木が育つと壁になりそうですが・・・。
テラス部分からはキャロットタワーなど三軒茶屋駅方面を眺められますが、そこまで高い丘ではないので、眺めはまあまあといった感じでしょうか。ただ、背後のマンションの高層階から見たら絶景だろうな・・・と、心の中で思ってしまうのが微妙なところです。
といった感じで、この円泉ヶ丘公園はきれいで、眺めがまあよくて、防災設備がそろっていて、バリアフリーなどといった配慮もされていてと、小さいスペースを利用しての公園としては完璧と言えるのではないでしょうか。

斜面にもケヤキが植えられています。
タイトルにある大ケヤキですが、円泉寺の東側を通って階段を登っていくと、見上げるような大ケヤキがあります。円泉寺境内にあるのか、公園に生えているのかちゃんと確認していませんが・・・。
かつて円泉寺の周囲を囲むようにケヤキが植えられていて、この丘の上には区役所辺りからも見える程の大きなケヤキがあったとか言われています。
また、円泉寺門前にも樹齢700年ほどの大ケヤキがあり、都の天然記念物に指定されていました。しかし、この木は倒木の危険があるということで、今では上部が伐採され、根元部分に庚申塔が安置されています。
円泉ヶ丘公園の斜面部分にも古いケヤキが残されていたり、新しく植えられたりしていますが、現状ではそんなに印象に残るほどではないかな・・・といった感じです。10年後、20年後になると、また違った印象になるかもしれませんが・・・。

子供の遊具も少し置いてあります。奥にある木が大ケヤキです。
公園内に防災拠点とか、バリアフリー的なものがあったり、立派なケヤキの木があるのは素晴らしいことですが、それよりも、せたがや地域風景資産のガイドブックにある「新住民が増える中、コミュニティの拠点としても期待が高まっています。」という部分に惹かれます。
公園の施工に際して、「近隣住民とともにつくる公園づくり」をしようということで、両者の話し合いが行われました。
話し合いの中で、防災訓練や清掃活動、夏に行われるふれあいまつりなどを通じて、新しい住民と近隣住民がコミュニケーションを取り合い、地域社会の絆をつくっていくことを目指すという事でしたが、完成した後も当初の予定通りの結果になっているのでしょうか。もしそうなら、とても素晴らしいことだと思います。
2、感想など

高級マンションのすぐ下に公衆トイレがあるというのは珍しいかもしれません。
元々その土地に住んでいた住民と、新しくできた高級マンションの住民との間で、考え方の違いなどで隔たりが生じてしまうというのは、よくある話です。特に戸数の多い建物がいくつもできた場合は顕著です。
その理由は、敷地内をセキュリティー厳重の壁に囲まれた建物に住んでいるし、ゴミ捨てなどで顔を合わせることもなく、どんな人が住んでいるのかわからないといったことが挙げられます。
例えばタワマン街となった武蔵小杉では、タワマンの住民で町内会に入る人がほとんどいなく、町内会が解散してしまいました。町への意識とか、町内行事や清掃活動などといったことに対する温度差があり過ぎるのでしょう。
法律のこととか、行政の取り決めなど難しいことはわかりませんが、民間の集合住宅と行政が協力して防災拠点や開かれたスペースを設置するというのは、何か新しい可能性を感じます。建物が密集していて空き地の少ない世田谷。こういった試みが広がっていく世の中になっていけばいいですね。
せたがや地域風景資産 #2-5大ケヤキのある円泉ヶ丘公園 2025年5月改訂 - 風の旅人
・地図・アクセス等
・住所 | 太子堂3丁目30−20 |
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・アクセス | 最寄り駅は田園都市線三軒茶屋駅 |
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