世田谷散策記 ~せたがや地域風景資産~

せたがや地域風景資産 No.2-16

長島大榎公園界隈の緑

経堂五丁目の長島大榎公園と経堂五丁目特別保護区、個人宅の緑が一体となっており、まるで住宅地の中にこんもりと森があるようです。地域の住民にとって原風景として愛し続けられている緑豊かな風景です。(公式紹介文の引用)

・場所 :経堂5丁目
・関連団体:長島風景の会、かがやく目
・備考 :特別保護区は春と秋に4回公開日があります。

***  このページの内容  ***

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* 長島大榎公園について *

経堂 長島大榎公園 公園の様子を写した写真
長島大榎公園

公園内には色々と石碑が並んでいます。

世田谷区の地図を見ていて興味深く感じるのが、同じ駅でも駅を挟んで片方だけは区画が整理されていたり、同じ町域でも2丁目と3丁目で区画の様子が全く違ったりすることです。

区画整理には土地の持ち主の損得が関わってくる上に、膨大な費用がかかります。

玉川村のように村をあげて大規模に行うところもあれば、地主が中心となって小規模に行うところ、とりあえず水路だけは真っ直ぐにしたところなど地域によってその方法や規模は様々です。

総じてお金をかけて行ったところほど区画がきれいな四角形になっていて、区画内の道の幅も広くなっています。

このタイトルの長島大榎公園がある経堂5丁目付近は、昭和37年と比較的近年に経堂区画整理事業によって区画整理が行われました。

だいぶん土地が住宅で埋まってからの耕地整理なので、さすがにきれいな碁盤の目状にという訳にはいかず、それなりに整っているといった感じです。

この事業はこの付近の地主であった長島氏が中心となって行われ、その際に昭和28年から6年間世田谷区長を務めた長島壮行氏の提供で長島大榎公園が開園されることとなりました。

経堂 長島大榎公園 大榎がある風景の写真
大榎がある風景

上部がありませんが、とても存在感があります。

長島大榎公園の名の由来は、土地の提供者である長島氏と、この場所にあった榎の巨木にちなんでいます。

近年では命名権で公園などにスポンサーの名前がつけられたりもしますが、昭和の時代に一般の人の名前を区立公園に使っているのは、ちょっと珍しく感じます。

最近では相続等で区に公園用地として寄付した場合に土地提供者の名前が付けられることもあるので、そういった公園の先駆け的な存在となるでしょうか。

経堂 長島大榎公園 大榎を下から写した写真
大榎を下から眺める

触ってみるまでレプリカだと気がつきませんでした。

榎の巨木はその当時で樹齢400年以上、幹周りは五抱えほどもあったと言われています。

しかしながら昭和44年の台風で真ん中から裂けてしまい、その後徐々に腐って枯れてしまったそうです。

現在、園内に上部がない中途半端な状態である木がその名残り・・・、なのですが、実はこれレプリカ(複製品)です。

根元部分をレプリカとして残し、公園に大きな木があったという雰囲気を再現しているのですが、なかなか良くできていて最初は気が付きませんでした。

触ってみると・・・異常に硬かったです。笑

経堂 長島大榎公園 石橋供養塔などの石碑の写真
石橋供養塔などの石碑

道標や供養塔が並んでいます。

この公園内には耕地整理の記念碑を中心に多くの石碑や石仏が置かれています。

これらの碑は恐らく耕地整理の際などに行き場がなくなったものがここに置かれたのだと思いますが、中でも石橋供養塔はいい感じで風化していて、公園にあるのにはもったいないほど趣きのある存在となっています。

道標はかつての経堂村からどこへ道が通じていたとか、どこへの道が重要だったとか、昔の様子を伺うことができる貴重な存在です。

経堂 長島大榎公園 長島風景の会の今年のテーマを写した写真
長島風景の会の今年のテーマ

長島風景フェスティバルで掲示されていました。

この界隈は緑が多く、地域の人々にとってはかつて子どもの頃にチャンバラなどをして遊んだ思い出の森になるそうです。

今の子ども達にとっても同じように大人になっても心に残る大切な場所になってほしいという思いから結成されたのが「長島風景の会」で、「自然の中で子どもの喚声」「子供と大人の交流」をテーマとして活動を行っています。

経堂 長島大榎公園 長島風景フェスティバルの様子を写した写真
長島風景フェスティバルの様子

終了間際だったのでほとんど人がいませんでした・・・。

長島風景の会は花壇など手入れなどの公園の手入れだけではなく、小規模ながらイベントが定期的に行われています。

子供たちに昔の遊びを知ってもらおうといったような感じの小規模なイベントが中心ですが、年に2回行われる長島風景フェスティバルでは地域の団体が協力し、公園に出店や遊びのブースが並びます。

訪れた時はもう終了間際で片付けがぼちぼち始まっている状態だったので、人がいませんでしたが、昼間は多くの子供たちで賑わうそうです。

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* 経堂五丁目特別保護区について *

経堂五丁目特別保護区の様子を写した写真
経堂五丁目特別保護区

にごった池といった感じでした。

長島大榎公園とは道路を挟んだ目の前に、フェンスで囲まれた経堂五丁目特別保護区があります。

こちらも地主の長島家によって貴重な自然が大切に守られてきた樹林地と湧水の池からなる個人の所有地で、平成4年に保護区に指定されました。

区内にはこの他に烏山弁天池、成城にある神明の森みつ池、深沢八丁目無原罪といった保護区が指定されていて、いずれもここと同じで湧水と池があります。

普段でも外から中の様子を伺うことはできますが、春に4回、秋に4回の年に8回ほど世田谷トラストの協力により一般開放日があり、池の周囲を一周できるようになっています。

経堂五丁目特別保護区の池を写した写真
経堂五丁目特別保護区の池

落ち葉がたくさん浮かんでいました。

区内にある多くの湧水が国分寺崖線付近にあるのですが、ここは崖ではないところからコンコンと湧き出ているのが特徴です。

比較的浅い層から水が湧き出ていて、雨量や季節によって池の水量がかなり変化するそうです。

訪れたときは水の流れが感じられず、ちょっとよどんだ感じがしていました。

かつては旧経堂在家村の真ん中を通っていた烏山川の水源となっていたほど水量があったようですが、今では水量が少なくなっているのを感じます。

都市化の進んだ現代では雨水や生活用水がそのまま下水管に流れていくので、地下に浸み込む水が少なく、この水源を含めて区内の地下水や湧き水の量が減少しています。

世田谷区でも湧き水の涵養や治水を目的として雨水の地下浸透を推進していますが、そう簡単に対処できることではないのでなかなか難しい問題です。

経堂五丁目特別保護区 保護区にある社を写した写真
保護区にある社

屋敷社、或いは水の神様を祀ったものでしょうか。

私が訪れたのは秋の方で、そのときは紅葉の様子も良かったのですが、地元の人が言うには春先にはコブシやモクレン、そしてエドヒガンザクラの花が池の水面を美しく染めるので春は一年でもっとも美しいとの事です。

また、この池は湧き出し口がどこにあるのかがはっきりしていなかったり、昔々大男のだいだらぼっちが歩いた足跡が池になったという伝説が残っているといった不思議な池でもあります。

そういったことを考えながら散策すると一層楽しいかと思います。

経堂五丁目特別保護区 公開日の入り口の様子を写した写真
公開日の入り口

ボランティアや賛助会員の募集を行っていました。

長島大榎公園と同じようにこの保護区でも地域のボランティアの方々が活躍しています。

保護区の自然環境の素晴らしさを次の世代へ伝えていこうと、毎月第3木曜日に下草刈り、落ち葉かきなどといった雑木林の手入れを行っていたり、保護区内の生物調査も行っていて、植物開花調査、植生調査、生物調査、標本づくり冬芽の観察、セミの抜け殻調査などを行なっています。

そして一般開放日には来場者に対し保護区の魅力を解説しています。

その他長島風景の会のほうでも子供たちのための自然観察会を行っていて、昆虫やザリガニの生態について学べるようです。

こういったことができるのはやはり自然の生態系がこの池にあるからで、それは人工的に造られたせせらぎなどではできない貴重なことです。

* 感想など *

長島大榎公園の様子を写した写真
大榎と長島風景フェスティバル

公園の周囲に緑が多く、とても素敵な場所です。

この長島大榎公園の隣には木々が生い茂るお宅があり、公園と連続した風景を造っています。

通りかかったときに表札を見てみると長島となっていました。

この界隈に長島という名が多かったのですが、家の大きさからしても地主、たぶん土地を提供した本家の長島さんでしょうか。

緑に囲まれた公園っていうのは変な表現ですが、経堂五丁目特別保護区など周囲に緑が多く、この界隈はとても素敵な空間となっています。

ー 風の旅人 ー

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* 地図、アクセス *

・住所経堂5丁目17−25
・アクセス最寄り駅は小田急線千歳船橋駅、経堂駅。約1km、徒歩10分ほど。
・関連リンクかがやく目世田谷トラストまちづくり

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<せたがや地域風景資産 No.2-16 長島大榎公園界隈の緑 2011年7月初稿 - 2018年12月改訂>