* 烏山寺町の高源院について *
高源院の入り口
寺町通りの一番奥(北側)にあります。
烏山寺町の一番北に位置するのが高源院です。正式には臨済宗瑞泉山高源院といい、久留米藩4代目藩主有馬頼元が品川に創建したのが始まりで、高源院の名の由来は頼元夫人の法号から名付けられたとされています。
寺町にやってきたのは公式の資料によると大正15年となっていますが、昭和11年・・・昭和14年?・・・と他にも記述があってよくわかりません。
本堂前の様子
松の新緑が美しかったです。
移転理由は震災に遭った為のようですが、そもそも震災前から廃寺になっていたとかいなかったとか・・・。この辺も曖昧ですが、震災後にボロボロの廃寺状態になっていたのを有馬一族の援助によって再建される事になり、その際に烏山が選ばれたようです。
この地を移転先として選んだのは、元々この寺は品川の目黒川沿いに位置していたようで、移転にあたって同じく目黒川の源泉の一つとなっているこの地が選ばれたとか。目黒川繋がりでやってきた感じのようです。
ちなみに開祖の怡渓和尚は戦国時代に越前小谷の大名だった浅井長政の末裔だとか。また茶道の達人でもあり、石州候に学んだ茶道は石州流怡渓派として現在も継承されています。
初夏の弁天社
弁天池の中に弁天社が建てられています。
この高源院には、鴨池と呼ばれている弁天池があります。弁天池はおよそ1800㎡ほどの広さがありますが、元々この広さがあったわけではありません。寺が移転してきたときに湧水の地点を掘り下げて大きな池を造り、宝生弁財天をまつる浮御堂を中央に建てました。
弁天池に浮かぶ浮御堂の写真が烏山寺町の象徴として紹介される事も多いのでご存じの方も多いはずです。烏山寺町で一番風流というか、情緒を感じる場所かもしれません。
秋の弁天社
季節ごとに違う趣があるので、季節ごとに訪れたくなります。
弁天池は目黒川(烏山川)の源泉となっていること、湧水によって水が蓄えられているといった環境から烏山弁天池特別保護区に指定されています。
都市伝説なのかもしれませんが、湧水の出る地下水脈は北にある井の頭公園とつながっているとか。そのため水脈が少ないときは両方の池の水位が下がるといった感じで、水位が同じように上下するのだとか言われていますが、結構離れているのでこれはどうなのでしょう。もしそうなら面白いですね。
* 高源院の鴨池について *
高源院 小鴨飛来名勝地の碑
開かずの古い山門の横に建てられています。
高源院の弁天池は住民の人々から親しみを込めて鴨池と呼ばれています。昭和35年頃から冬になるとたくさんの鴨が飛来してくるようになった事から自然と住民がそう呼ぶようになったそうです。
そしてこの池で冬を越し、春になると子供を産み、夏前には一家揃って再び北国へ戻っていったようです。さらに翌年には・・・とまあその繰り返しが続き、鴨池としての愛称が定着しました。
かる鴨
鴨池のアイドルです。撫でたくなるような愛くるしさがあります。
かつては多い年には200羽もの鴨がやってきていたそうです。その種類も小鴨(コガモ)、真鴨(マガモ)、軽鴨(カルガモ)といった感じだったようです。
しかしながら現在では・・・、留鳥のカルガモは見かけますが、マガモやコガモに関しては見かけることはなく、「小鴨飛来名勝地」の碑は建っているものの・・・といった状態のようです。
とはいえ、自然の理なので環境さえ整っていれば来年、再来年には再びカモの楽園復活!といった可能性もあるカモしれません。
水辺の鳥たち
タイミングよく訪れると多くの鳥がいたりします。逆の場合、全くいないときも。
ゴイサギ?
とても眼光が鋭い鳥です。
カルガモ以外のカモは来なくなってしまいましたが、鷺類、カワセミなどといった水辺を好む鳥が時々やって来ているので、運がよければ会えるかもしれません。
といっても私のようにカルガモぐらいしか知らないと、「あれ、なんの鳥?」と後で調べるのに苦労します。
そういう場合は鳥の写真を撮っている人がいたら尋ねてみるのも一手です。さすがに鳥が好きなだけあって詳しく、撮影に夢中になっていない時は親切に教えてくれます。
夏の鴨池
夏には一面蓮の葉などが覆い、ジャングル状態です。
冬の鴨池
ビックリするぐらい何もなくなってしまいます。
鳥以外でも水の中を覗くとメダカなどの小さな魚や、鯉、そしてカメがたくさんいます。恐らく餌となる昆虫なども沢山いるはずで、多種多様の生物が暮らす池となっています。
それは植物を含めうまく生態系が維持されていて、自然に近い環境となっているからです。それは自然の摂理に従った弱肉強食の世界でもあります。
昔、塀に囲まれた職場の池にカルガモが来たとき、一匹排水溝に引っかかって死んでしまいました。運が悪かったね。可哀そうに・・・とその時は思っていたのですが、ここでは9匹生まれて大人になったのは3匹だけだったようです。毎朝のように通っているおばさんがおっしゃっていました。
カラスや肉食系の鳥、猫などといった天敵も多いので生まれた雛の全てが大人になれるとは限りません。それが自然というものです。
池に浮かぶ睡蓮の花
7月中旬頃から見頃になります。
また、鴨以外では睡蓮が有名です。夏になると池の大部分を睡蓮の花と葉が埋め尽くし、なかなかのものです。
睡蓮の花は午前中にしか開かないので、頑張って朝早く訪れるといいです。運が良ければ睡蓮の花や葉の間を砕氷艦のように泳ぐ愛らしいカルガモの姿も見ることができるかもしれません。
* 感想など *
カルガモとスイレン
やはりこの時期が一番訪れる楽しみがあります。
区内には「せせらぎ」や公園の池など人工の水辺が多くあります。それはそれできれいで季節によってはとても絵になるのですが、少し物足りなさがあります。
その点、ここの鴨池はわざわざ足を運びたくなるようなとても魅力的な池です。人工の水辺との違いは自然の環境が残っている部分だと思います。自然の魅力。それは天気のような不確実さであり、今日は何がいるだろう。今年はどんな風景になるだろうといった部分だと思います。その偶然が重なった時、あ、来てよかったといったような満足感が得られます。
現在の鴨池は朝は地元の人の散歩コースとなり、昼はウォーキングの方々の訪問コースとなり、それなりに多くの人が訪れている感じです。このような池が家の近くにあれば散歩も楽しそうですね。朝早くから門を開けて下さっているお寺の方の好意にも感謝したいところです。
せたがや百景No.43 烏山の鴨池
ー 風の旅人 ー
2018年3月改訂