* 円泉ヶ丘公園について *
淡島通りと茶沢通りが交差する代沢十字路の東側に太子堂中学校があり、その東には日本で最初の小児専門病院だった国立小児病院がありました。
この病院の歴史は古く、1899年に東京第二衛戍病院として創設したのが始まりで、戦後は国立世田谷病院となり、1965年に国立小児病院として診察を開始しています。
1995年にはダイアナ妃が訪れて脚光を浴びた事を記憶している方もいるのではないでしょうか。
2002年3月には国立大蔵病院と統合する事となり、名称は国立成育医療センターと変り、場所も国立大蔵病院のある世田谷通り沿いの大蔵2丁目に移転しました。
現在では独立行政法人へ移行し、国立成育医療研究センターに改称されています。
この国立小児病院があった場所は三軒茶屋から見ると太子堂円泉寺のすぐ上の丘になります。
丘の上なので太子堂や三軒茶屋から病院がよく見え、長い間ラウンドマークとしてこの地域の一つの顔となっていました。
その跡地は売却され、建てられたのはグランドヒルズ三軒茶屋という大きなマンションです。
見た感じからして高そうだなと思ったのですが、調べてみると住友不動産の最上級グレードマンションだとか。
絶好のロケーションを利用した眺めや利便性の高い立地、そして贅を尽くした外観や内装、セキュリティーなどといったものが売りで、ちょうど分譲中だったので値段を見てみると、予想通り億単位のいわゆる億ションでした・・・。
そのグランドヒルズ三軒茶屋と太子堂円泉寺の間の斜面や丘の上に造られたのが世田谷区立円泉ヶ丘公園です。平成17年10月から工事が始まり、平成18年4月に完成したので、出来立ての・・・とはもう言えませんが、まだまだ新しい感じの公園です。
区立となっていますが、丘の地形や眺望を活かした「みどりのオープンスペース」として都市再生機構が整備したもので、現在は世田谷区立公園として供用されている街区公園となるようです。
施工にあたっては「近隣住民とともにつくる公園づくり」を基本方針とし、話し合いにより様々な創意工夫を行ったそうです。
そういった経緯やバリアフリーや災害時の利用に配慮されているなどといった点が評価され、社団法人日本公園緑地協会が主催する「第23回都市公園コンクール」において、造園施工(小規模)部門で国土交通大臣賞を受賞しています。
円泉ヶ丘公園は二つの違った種類の部分に分かれています。
一つは太子堂円泉寺の裏手から続く斜面を利用した斜面緑地です。斜面には程よく木が植えられていて、階段とバリアフリーに対応した緩やかなスロープが設置されています。
南側に向かっての斜面なので日当たりがとてもよく、明るい雰囲気の斜面緑地となっていますが、通路以外の斜面に入ることはできないので、実質的には緑道といった感じでしょうか。
二つ目が丘の上の部分、眺望を利用したプラザ空間です。
マンションと斜面の間のスペースを利用しているので、そんなに広い空間ではありませんが、芝生が植えられていたり、パーゴラやベンチが設置されていたり、子供の遊具も少しですが置いてあり、日当たりもいい事から気持ちのいいオープンスペースとなっています。
LED埋込み式誘導灯、ソーラー時計台、井戸手押しポンプ、かまどベンチ、簡易防災トイレ(マンホール)などといったものがさりげなく設置されていて、都市公園らしく防災活動拠点の機能が備わっています。
ここから数百メートル離れたところに同じように防災設備の整った三宿の森緑地もあるので、住宅や集合住宅がひしめき合っている事で有名な三軒茶屋周辺ですが、近くにこういった施設が幾つかあるといざというときには安心です。
テラス部分からはキャロットタワーなど三軒茶屋駅方面を眺められますが、そこまで高い丘ではないので、まあまあといった感じでしょうか。ただ、背後のマンションから見たら絶景だろうな・・・と必ず心の中で思ってしまうのが微妙なところです。
といった感じで、この円泉ヶ丘公園はきれいで、眺めがまあよくて、防災設備がそろっていて、バリアフリーなどといった配慮もされていてと、小さいスペースを利用しての公園としては完璧と言えるのではないでしょうか。
タイトルにある大ケヤキですが・・・、あまり印象に残らず見落としていました。円泉寺の東側を通って、ケヤキを見上げるようにしながら階段を上っていくとその存在感に驚くことでしょう。
かつては区役所辺りからも見える程の大ケヤキがここにあったとか言われています。
円泉寺の門前にもこの界隈で一番の大ケヤキがありました。この木は残念ながら倒木の危険があるということで今では上部を伐採され、根元部分に庚申塔が安置されています。
歴史のある円泉寺の周りには今でもケヤキの木が多く残っていて、この付近一帯はケヤキが印象に残る地域となっています。
この公園の素晴らしいところは防災拠点とか、バリアフリー的なものよりも、せたがや地域風景資産のガイドブックにある、「新住民が増える中、コミュニティの拠点としても期待が高まっています。」ということでしょうか。
元々暮らしている住民と新しくできた集合住宅の住民との対立というか、交流や接点がないというのはよくある話です。
施工にあたっては「近隣住民とともにつくる公園づくり」ということで両者の話し合いが行われたようですが、完成した後も当初の予定通り防災訓練、清掃活動や夏に行われるふれあいまつりなどを通じてコミュニケーションを取り合い、つながり合えているのならいいことだと思います。