* 大ケヤキのある散歩道について *
世田谷区の南端に奥沢があります。奥沢2丁目にあるケヤキのある風景が地域風景資産に選ばれています。
世の中には色々といい風景というのがありますが、感じ方は人それぞれです。
例えば写真の話ですが、自分で撮った写真を自分が見て、なんていい写真と判断するのは何の問題もないのですが、自分がいいと思った写真でも見せられる人がいい写真と感じるとは限りません。
むしろ得意気に写真を見せても、見せられた人がいいと感じなければ単なる迷惑行為でしかありません。
風景でもそこに暮らす人にとってはいい景色や思い出の詰まった風景でも他から訪れた人にはなんだ~って感じることもありますし、その逆のこともあります。
この「大ケヤキのある散歩道-けやき道」もそうで、ケヤキ道というからにはどんだけ凄いケヤキの木があるのだろうか?と訪れたなら、・・・どこ?もしかしてこのこと・・・といった失望を感じることでしょう。
ただ、後日風景づくり通信を読むと、選定後すぐに所有者が土地を売却してしまい、新しい所有者に事情を説明してなんとかケヤキの木だけはお願いして残してもらったと書かれていました。
その際にケヤキの木の位置も変わってしまい、現在のようなありふれた住宅地といった感じの風景となってしまったようです。
これで納得しました。さすがにこれでは散歩道の象徴にするにはどうかなといった感じでしたから。
今後も土地の所有者が変わったり、大きな敷地が分譲される度にこのような大きな木の扱いに困り、伐採されるということが増えていきそうです。
ケヤキの風景はいまいちでもそれは表面的な部分に過ぎず、地域風景資産の対象となっているのはもっと目に見えにくい部分にもありました。
それはボランティアによる街の落ち葉掃きプロジェクトを始めとする地域をあげての緑の保全です。
この大ケヤキがある周辺は奥沢海軍ゆかりの村があったりと古くからの住宅街であり、各お宅に立派な垣根や樹木がある地域でもあります。
そういった緑豊かな環境も住民の高齢化や相続等で手放す人が増えると、敷地を分譲したり、再開発されたりすることも多くなり、徐々に緑が少なくなってきました。
そこで町全体で各個人の家にある木を守ったり、緑を増やそうといった活動をはじめる事となりました。
具体的には日本の木は落葉樹が多く、お年寄りだけで守っている家では道路に散らばる落ち葉の掃除は大変です。土地所有者の負担を軽減しようと区の「地域の絆再生支援事業」の助成を受けて、地元の有志などで落ち葉掃きを行っています。
桜並木など公道の樹木の落ち葉掃きを地域で行っている事は多くても、個人の土地を含めて町全体の落ち葉掃きを行っているのはとても珍しいことではないでしょうか。
こういうのは一人でやろうと思うと苦痛に感じますが、みんなでやれば意外と楽しかったり、地域の絆が強まったりするものです。とてもいい試みだと思います。
また、街角に掲示板を設置したり、花の苗の交換を行ったり、奥沢グリーンマップを作成したりといった活動も行っているようです。