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せたがや地域風景資産 No.1-20

大ケヤキのある散歩道-けやき道

奥沢には大きなケヤキの木がそびえる散歩道がある。今ではその姿は変わってしまったけど、ケヤキの木に見守られながら緑を保全しようとする地元の人々の活動は今も変わらない。

・場所 : 奥沢2丁目23ー21
・登録団体など : 特定非営利活動法人 土とみどりを守る会
・備考 : 選定当時と状況が違います。

*** 大ケヤキのある散歩道-けやき道の写真 ***

けやき道の写真
大ケヤキの木がある道

あまりケヤキの木は目立ちません。

けやき道の写真
反対側から

やっぱり目立ちません。

けやき道の写真
紅葉の頃
土とみどりを守る会の掲示板の写真
土とみどりを守る会の掲示板

* 大ケヤキのある散歩道-けやき道について *

世田谷区の南端に奥沢があります。奥沢といえば世田谷の偏狭の地といった感じもしますが、世田谷城に残る鷺草伝説の舞台になった土地であり、古くから世田谷に密接に関わってきた土地でもあります。現在の奥沢は8丁目まであり、かなり大きな地域といえます。

すぐ隣が高級住宅地の田園調布だったり、おしゃれな自由が丘でありながら、奥沢神社の祭礼では昔ながらの藁で作った大蛇が練り歩いたり、九品仏浄真寺では三年に一度お面かぶりという古風な仏教行事が行われたりと今尚古くからの独特な文化も行われているといった、新旧混在というか、トレンドと伝統の混在というか、なかなか興味深い地域でもあります。

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さて、地域風景資産のほうですが、他の人に自慢できる風景、他人がうらやむような風景、他の人に見せて恥ずかしくない風景、自分たちが暮らすのに気持ちいい風景、自分たちが好きな風景、同じいい風景でもその感じ方は人それぞれです。

例えば写真の話ですが、自分がいいと思った写真を自分で見ていい写真と判断するのは何の問題もないのですが、自分がいいと思った写真でも見せられる人がいい写真と感じるとは限りません。むしろ得意げに写真を見せても、見せられた人がいいと感じなければ単なる迷惑行為でしかありません。同じことはカラオケなどでも言えるでしょうか。

そういったように風景でもそこに暮らす人にとってはいい景色でも他から訪れた人にはなんだ~って感じることもあります。この「大ケヤキのある散歩道-けやき道」もそうで、ケヤキ道というからにはどんだけ凄いケヤキの木があるのかと訪れてみれば、・・・どこ?もしかしてこのこと・・・といった失望を感じることでしょう。

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ただ、後日風景づくり通信を読むと、選定後すぐに所有者が土地を売却してしまい、新しい所有者に事情を説明してなんとかケヤキの木だけはお願いして残してもらったと書かれていました。その際にケヤキの木の位置も変わってしまいなんとも味気ない状態となってしまったようです。

なるほど、納得しました。さすがにこれでは散歩道の象徴にするにはどうかなといった感じでしたから。でもこの大ケヤキは表面的な部分に過ぎず、地域風景資産の対象となっているのはもっと目に見えにくい部分にもありました。それはボランティアによる街の落ち葉掃きプロジェクトを始めとする地域をあげての緑の保全です。

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この大ケヤキがある周辺は奥沢海軍ゆかりの村があったりと古くからの住宅街であり、各お宅に立派な垣根や樹木がある地域でもあります。そういった緑豊かな環境も住民の高齢化や相続等で手放し、再開発されたりすることも多くなり、徐々に失われつつありました。

そこで町全体で各個人の家にある木を守ったり、緑を増やそうといった活動をはじめる事となりました。具体的には日本の木は落葉樹が多く、お年寄りだけで守っている家では道路に散らばる落ち葉の掃除は大変です。土地所有者の負担を軽減しようと区の「地域の絆再生支援事業」の助成を受けて、地元の有志などで落ち葉掃きを行っています。

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桜並木など公道の樹木の落ち葉掃きを地域で行っている事は多くても、個人の土地を含めて町全体の落ち葉掃きを行っているのはとても珍しいことではないでしょうか。こういうのは一人でやろうと思うと苦痛に感じますが、みんなでやれば意外と楽しかったり、地域の絆が強まったりするものです。とてもいい試みだと思います。

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また、花の苗の交換を行ったり、奥沢グリーンマップを作成したりといった活動もおこなっているようです。街を歩いていると、街角に土とみどりを守る会の掲示板が設置されていて、地域でまとまろうといった意気込みが感じられました。といったわけで、この大ケヤキは訪れる側、散策目線では少し残念な姿になってしまいましたが、でもそれはそこで暮らしている人には表面的な問題でしかなく、むしろ緑を守ろうといった住民活動の象徴になっているのではないでしょうか。

<せたがや地域風景資産 No.1-20、大ケヤキのある散歩道-けやき道 2011年5月初稿 - 2015年10月改訂>