世田谷散策記 タイトル
せたがや百景 No.49

武家屋敷風の安穏寺

上祖師谷2-3-6

寛永年間(1624-44)に建てられたといわれるが、一時荒れはてていたため詳しいことは不明。古い墓石には名字を持つものが多く、謎が深まる。車の往来の激しい坂道に沿って、山門や白壁の塀が黙然と存在している。(せたがや百景公式紹介文の引用)

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1、武家屋敷風の安穏寺について

2009年の安穏寺の航空写真(国土地理院)
2009年の安穏寺

国土地理院地図を書き込んで使用

環八の千歳台の交差点から芦花公園、ガスタンクと西へ向かう道は、滝坂道といい、古くからの街道になります。榎の交差点までは、広く真っすぐの二車線道路なのですが、その先は昔の旧道のままで、道が曲がりくねり、しかも車がすれ違うのがやっとの道幅です。

車の通行量が多いうえにバス通りにもなっているので、通勤時間帯を中心に、しばしば渋滞が起こります。歩道は設置されていないので、自転車や歩行者にとっては悪夢のような道となり、通行する際にはそれなりの覚悟が必要になります。というのは大袈裟ですが、あまり通りたくない道であることは確かです。

安穏寺の山門
安穏寺の山門

白壁と重厚な屋根が目を引きます。

その滝坂街道の中でも難所といえるのが、安穏寺前の安穏寺坂です。坂になっているうえに大きく曲がっていて、見通しが悪く、車がすれ違うのも大変です。そのカーブの途中に安穏寺の入り口があるので、訪れる方としてはたまったものではありません。

滝坂街道 地蔵堂と庚申塔
門前近くにある地蔵堂と庚申塔など

交通量の多い街道を見守っています。

安穏寺前から坂を下ると、道の脇に地蔵堂があります。地蔵堂の中には岩船地蔵尊が安置され、庚申等や馬頭観音が通り沿いに並んでいます。とても旧街道にふさわしい存在です。

昔は、隣の駐車場に昭和の雰囲気満点のオート三輪が置いてあったので、更に郷愁を帯びた雰囲気を感じました。

この地蔵堂から入っていく路地にもお寺の入り口があるので、こちらから入る方が安全かと思います。

安穏寺の本堂
安穏寺の本堂

本堂は普通のお寺といった建物です。

安穏寺ですが、正式には舜栄山行王院安穏寺と号し、新義真言宗智山派に属し、川崎市小杉の西明寺の末寺になります。

明治維新前後の18年間は、住職が不在となってしまい、近くの東覚院によって管理される事になったのですが、その時に寺は荒れ果て、博徒が入り浸り、博打場として使われていたそうです。

明治18年には風禍によって本堂が倒壊し、大正14年までは再建されず、荒廃した状態で放置されていました。このときに寺に関する資料などは失われてしまったそうです。

安穏寺の境内
安穏寺の境内

植木の手入れが行き届いていて、整然とした印象を受ける境内です。

とはいえ、江戸初期に書かれた新編武蔵国風土記稿に、開山、開基の年歴は伝えずとなっていたので、もの凄い由緒のあるお寺ということはなさそうです。

一応、墓碑や奉納された石灯籠から、元禄年間(1688~1703年)に吉岡九郎左衛門によって開基されたのではと推測されています。また、過去帳などから、等々力の満願寺の権大僧都元光が、寛政年間(1789~1800年)に中興したとも言われています。

安穏寺 桜の時期の境内
桜の時期の境内

大きな桜の木と水桶がきれいに並んでいたのが印象的でした。

現在の安穏寺は、煩雑な門前の滝坂街道とは打って変わって静かな雰囲気に包まれています。

境内の植木はきちんと手入れが行き届き、墓地参拝用の桶などもきちんと並んでいて、過去に荒廃していたとは思えないほど、整然としています。

安穏寺の武家屋敷風山門
安穏寺の武家屋敷風山門

新しさと古さが融合したような均整の取れた門です。

百景のタイトルにある「武家屋敷風」というのが、この項目の大事な部分になるのでしょう。

通りから少し奥まった場所にある門は白壁が美しく、寺院の門としては均整が取れたセンスを感じる門です。使っている木材は古いものではないので、戦後に境内を整備した際に、新築したものと思われます。

重厚な感じの屋根と、低くドシッとした全体の雰囲気からは、確かに武家屋敷に置かれていても違和感を感じないでしょう。とはいえ、武家屋敷の門にしては少々屋根が大き過ぎ、やはり寺院の門かなといった印象も受けます。そのへんが武家屋敷風といった表現となっているのでしょうか。

それ以外は武家屋敷っぽさはなく、境内も武家屋敷っぽい門以外は・・・、正直、普通のお寺ってな感じです。ちょうど桜の時期に訪れたのですが、境内に咲く花がとてもいい感じでした。

2、感想など

安穏寺の六地蔵様
墓地を守る六地蔵様

色や大きさなどがそろっていませんが、屋根付きで丁寧に祀られています。

狭いうえに交通量のある滝坂街道。その難所にあるのが安穏寺です。西側の路地から入れるのを知らなく、しかも自転車での訪問だったので、なかなかタイミングよく入ることができませんでした。おかげで、なんともスリリングなお寺訪問となり、「世田谷で一番入るのが大変な寺」というのが、私の中での一番の印象となっています。

お寺自体は特にこれといったものはなく、過去に荒れていた様子も感じられないほど整然とした境内でした。

ただ、一つだけ見つけました。六地蔵さまです。色や大きさ、顔の様子がどうもちぐはぐです。荒廃していた時の保存状態が悪かったのか、足りない分を新しく作ったのかわかりませんが、これも寺の歴史の一つなのでしょう。

せたがや百景 No.49
武家屋敷風の安穏寺
2025年5月改訂 - 風の旅人
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・地図・アクセス等

・住所上祖師谷2丁目3
・アクセス最寄り駅は京王線千歳烏山駅。あるいは小田急線祖師ヶ谷大蔵駅。駅から少し離れています。
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・備考ーーー
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