元気でやさしい松陰神社通り
世田谷線松陰神社駅周辺松陰神社通り商店街では、人にやさしい商店街として、バリアフリー型の道路整備や、各店舗のソフト面で取り組みを通して、誰もが楽しめる賑わいのある商店街の風景が生み出されています。(紹介文の引用)
1、松陰神社通り商店街について

吉田松陰を祀った神社です。
世田谷区役所のすぐ近くに松陰神社があります。安政の大獄で処刑された幕末の長州藩維新志士、吉田松陰を祀った神社で、境内には松陰の墓や松下村塾のレプリカがあります。
歴史上の人物であり、また学問の神様として知られているので、昔から区外からも多くの人が参拝に訪れていました。
近年では歴史ブームだったり、NHKの大河ドラマに吉田松陰が登場したりと、一気に知名度が上がり、比較的近くにある安政の大獄を行った大老井伊直弼の墓所がある豪徳寺とともに、区外から一段と多く観光客が訪れています。すっかり世田谷を代表する観光地になったといった感じでしょうか。

区役所への最寄り駅でもあります。
この松陰神社の鳥居前から世田谷線の松陰神社前駅を通り、世田谷通りまで続いている道は、松陰神社通りです。
この通りの両脇には商店が続き、松陰神社通り商店街を形成していると同時に、松陰神社への参道になっているので、門前町的雰囲気も少し感じます。
また、この付近の若林町域は、大規模な開発が行われていなく、昔ながらの路地が入り組み、建物が密集しているといった下町っぽい雰囲気のする地域です。路面電車のような世田谷線が走っている風景がとても馴染んでいたりします。
そういった周辺事情も合わさって、松陰神社通りは門前町のような、下町っぽいような、でもきれいに整備されているので今時の商店街っぽいようなといった様々な雰囲気を感じてしまいます。

昭和を感じる雰囲気です。
松陰神社通りのある若林3丁目、4丁目はかつての農道の名残から細く曲がりくねった道や袋小路が多く、ごみ収集車が入れない場所では軽トラックにゴミを載せて運んだり、救急車が入らない場所では徒歩で患者のいる場所に向かわなければならなかったりと不便極まりない地域です。
また住宅が密集している事で、火事が起きたら消防車が入りにくいのもあって、延焼が起こり、大規模火災につながる可能性が高い地域です。
しかも区役所のお膝元という土地柄、万が一大規模な災害が起きたときに区役所周辺に避難してきた人達が大規模な火災や輻射熱の影響によって二次被害を受けたり、区役所の機能がマヒしてしまう可能性もあります。
今後の町造りの方針として、新しい建築基準として「若林3・4丁目地区防災街区整備地区計画」の指定を区から受けていたり、地域の環境を良くするために「若林街づくり協議会」が住民によって結成されているのもこの地域の独特の事情です。

しっかりと良さをアピールをしています。
そういった中、松陰神社通り商店街を中心とした地域では、「元気でやさしい町」、「ふれあいの生まれる町」、「だれもが安心して歩ける町」にすることを目的とした「元気でやさしい松陰神社通りまちづくりの会」という協議会が結成されました。
誰もがということで、お年寄り、障害を持った人、子供、おなかに赤ちゃんがいるお母さんなどが歩きやすく、そして買い物がしやすいといったことを念頭に、商店街を中心にバリアフリーの街づくりを目指しました。
まずは商店街が率先して住みやすい街づくりを実践していこうではないか、といった感じだったのでしょう。

緩やかなカーブが旧道っぽい雰囲気をだしています。

道路の真ん中に排水溝があります。
その例として一番目に付くのが、排水を道路中央に設けていることです。雪の多い地帯では除雪のために真ん中に大きな溝を設けているところがありますが、区内では珍しい方法です。
真ん中に設けるメリットは、店舗前敷地と道路の段差がほぼなくなることで、車いすだけでなく、ベビーカー、高齢の方、松葉杖の方にもスムーズに店舗への出入りができることです。
また店舗敷地と道路が一体となり、店のワゴン、看板も敷地内に収まるようになり、歩行者の空間が広がりました。
そして目の不自由な方の点字ブロックも商店街の道路幅に合わせ、通常より幅の狭いリーディングラインを設置しています。
デメリットは・・・、よくわかりませんが、排水溝が左右2つから真ん中の一つになったことで、大雨の時に対処できるのでしょうか。後は電信柱の存在がより煩わしく感じてしまいます。

やさしい道路完成の横断幕が誇らしげに掲げられていました。
また、視覚障害者の方も楽しく買い物できるように手持ちのAMラジオから店主の声で店の案内が聞こえてくる「音のウインドウショッピング」という試みも一部の店で行っています。
もちろん基本の道路にはみ出した商品や看板をなくす運動も行っています。
こういった試みや工事は東京都の「ユニバーサルデザイン福祉のまちづくり推進モデル事業」として平成16年から平成19年にかけて行われました。
どの商店街がいいとか悪いとか、歩きやすさ、店の充実度などといったものを細分化して点数方式とした評価は専門家のすることで、旅人(散策人)の範疇ではありませんが、そういったものに真剣に取り組んでいる町は雰囲気はいいもので、散策していても自然と肌で感じるものです。

さりげなく道路脇に紹介プレートが取り付けられています。
その他、吉田松陰をモデルにした「しょーいん君」をはじめ「しんさくくん」「げんずいくん」というマスコットがいたり、街灯の柱に長州藩士の紹介文が取り付けられていたりするのも面白い趣向です。
実際のところ、萩や吉田松陰というのは世田谷とはあまり関係なく、たまたまこの地にあっただけのことです。
でも全国的に有名な吉田松陰や松陰神社を活かした話題作りで、他の地域との交流が活発になったり、歴史や他地域の文化に興味を持つ人が増えることも期待でき、地域の活性化にもつながりそうです。

商店街の渡御はかなり盛り上がります。
松陰神社通りで忘れてはならないのが、毎年10月27日の吉田松陰の命日に近い第四週末に行われる「萩・世田谷幕末維新祭り」です。世田谷区内で行われる商店街のイベント中でも大規模な部類に入り、多くの人が訪れます。
目玉となっているのは幕末の志士と奇兵隊パレードで、世田谷区役所から始まり、そして松陰神社通りを練り歩いて松陰神社に向かいます。
その他、松陰神社で幕末の活劇が行われたり、地元の団体による演奏や演技が行われたりと多くのイベントが行われ、また萩物産展、会津物産展といったものも大盛況です。
2年ごとになりますが、神社の神輿が若林の町を練り歩きます。夕方松陰神社通りを通って宮入りする様子はとっても賑やかで、商店街が門前町といった雰囲気になります。担ぐ人、声援を送る沿道の商店街の人と、通り全体が一体となり、まさに元気な松陰神社通りとなります。

出店が並び、いろんな格好の人がいて、商店街が楽しい雰囲気となります。
平成22年に行われた第6回東京都商店街グランプリではこの「萩・世田谷幕末維新祭り」で優秀賞として表彰されています。また第3回のグランプリでも「元気でやさしい商店街づくり ユニバーサルデザインの商店街づくり」でも優秀賞に選ばれています。
これは東京都が都内の商店街が取組む優れた活性化事業を審査し表彰するもので、世田谷区内では祖師谷のウルトラマン商店街が2回、下北沢商店街連合と梅が丘商店街が一回受賞しています。今のところグランプリ(大賞)を取った商店街はないので、ぜひ今後に期待したいところです。
2、感想など

オリジナル同様に過激な性格をしているようです・・・。

境内で新選組に捕縛されていました。(笑)処刑されないことを祈ります・・・。
世田谷は住宅地ばかりで個性がないと思われがちですが、サザエさん商店街やウルトラマン商店街など、多くの魅力的な商店街があります。
商店街はそれぞれの土地の文化的背景を表していることが多く、地域ごとにそういった様子を感じながら散策すると楽しかったりします。
ここ松陰神社商店街も、長州萩藩や吉田松陰所縁の場所としての個性を存分に生かしていて、他の商店街とは違った面白味を発揮しています。
歩きやすい商店街話題やイベントによって、散策で訪れても楽しい商店街となっています。
せたがや地域風景資産 #2-8元気でやさしい松陰神社通り 2025年5月改訂 - 風の旅人
・地図・アクセス等
・住所 | 若林4丁目 |
---|---|
・アクセス | 最寄り駅は世田谷線松陰神社前駅 |
・関連リンク | 松陰神社通り商店街 |
・備考 | ーーー |