八朔の朝の尾道にゃんこ 前編
(2023年9月)八朔の朝の尾道の散策と、出会ったニャンコたちのスケッチです。(*全2ページ)
§1、イントロダクション ~八朔とハッサク~
八朔(はっさく)という言葉から何を思い浮かべるでしょうか。「そんなん決まってるでしょ。ミカンの大きなやつ」と、多くの人は柑橘類のハッサクを頭に想い浮かべることでしょう。
ハッサクの原産地は尾道の少し南に浮かんでいる因島。現在でも生産が盛んで、因島のゆるキャラにもなっている。
ハッサクの実は皮が厚く、粒がしっかりとしていて、味の方は酸味があり、少し苦みもあり、でも甘みもありと、なかなか複雑。個人的に柑橘類の中で一番好きで、尾道に立ち寄った時、向島にある問屋で安いB級品をまとめて買ったりしている。
ハッサクの収穫時期は12月から2月頃。収穫してもすぐには問屋に卸さなく、1カ月ぐらい保存し、苦み(酸味)をとってから出荷されるので、店に並ぶのは1月中旬以降となり、冬から春先が旬の果物になる。
(*イラスト:波音さん 無料イラスト【イラストAC】)
柑橘類の印象が強い八朔という言葉だが、本来、旧暦の8月1日(八月朔日)をさす言葉になる。なぜ特別に旧暦の8月1日を八朔と呼ぶのか。それは、この頃、早稲の穂が実るので、農民の間で初穂を恩人などに贈る風習が古くからあったから。このことから、「田の実節句」とも言われている。
また、徳川家康が初めて公式に江戸城に入城した日が旧暦の8月1日だったことから、江戸幕府がこの日を正月に次ぐ祝日としていたという事も、八朔の日の重要性を上げていたはずだ。
(*イラスト:poosanさん 無料イラスト【イラストAC】)
で、なぜ旧暦の8月1日(八朔)と、春先の果物の「ハッサク」が同じ名称なのか?ってことになる。
調べると、どうやら1886年(明治19年)に、小江恵徳上人という方が「この果物は八月朔日(八朔)の頃から食べられる」と話したことから、ハッサクという名が付いてしまったとされているようだ。
この時期のハッサクは、木の枝になっているものはまだ未熟で食べられないし、冬に収穫したものは、蔵で寝かすにしても、半年は少し長すぎるような・・・。しかも痛みやすい夏だし・・・。いまいちよくわからない。
小江恵徳上人、夏ミカンと間違えちゃったのでは・・・。と思ってしまうのだが、どうなのだろう。とまあ、いまいち納得がいかないが、これが冬から春先が旬の柑橘類に夏の終わりの名称が付けられている理由のようだ。
少しうんちくを書いてしまったが、果物のハッサクではなく、本来の八朔に話を移そう。この特別な日、全国的に色々と行事が行われている。
広島界隈で八朔にちなんだ行事は、鞆の浦の「八朔の馬出し」、柳井の「八朔の船流し」、浜田の「長浜八朔花祭り」などがある。こういった行事は、今では厳密に旧暦の8月1日に行われていなく、新暦の9月1日に近い日曜日などに行われている。
以前、柳井の船流しを訪れたので、9月第一日曜日に行われる鞆の浦での馬出しを訪れてみることにした。せっかく鞆の浦まで行くなら、尾道の猫たちにも会いに行こう。
行事が始まるのは10時から。残暑が厳しく、昼間は暑くて観光どころではないし、猫も日陰でお昼寝しているだろう。訪れるのなら、深夜に出発し、早朝の尾道を散策するのがいい。
と、前回のゴールデンウィークぶり・・・。といっても、その時はあまりの酷い渋滞に尻尾を巻いて退散したので、実質、桜の時期以来の尾道散策を行うことにした。
§2、鳴滝山展望台での朝日
*国土地理院地図を書き込んで使用
尾道市街の西側に鳴滝山がある。ここの展望台からは、瀬戸内の島々だけではなく、尾道や尾道水道の様子も眺められる。うれしいことに車で展望台近くまで行くことができるので、知る人は知る展望スポット、或いは夜景スポットとしても知られている。
この展望台から尾道や尾道水道を背景に朝日が昇ってくる様子も素敵なようだ。日の出の角度を調べてみると、春分や秋分の日あたりがよさそうな感じだが、この時期でも悪くなさそうだ。
ということで、朝日を見るために午前3時、超早朝に広島市内を出発した。しかし、空には雲が多い。天気予報では、今日の昼間は快晴で、猛暑との予報。尾道に近づけば雲も晴れてくれるだろう。
そう期待して車を走らせ続けるものの、尾道の手前、三原にある道の駅神明の里に到着しても、雲が多いまま。一向に晴れる気配がない。こりゃ、作戦失敗というやつでは。きれいな朝日が見られそうにない・・・。
どうしたものか。トイレ休憩などをしながら今後のプランを考えた。この状態で山に登っても、朝日は見られないだろう。わざわざ山に上がっていくのも面倒だし、時間の無駄になる。鳴滝山での朝日はまたの機会にして、このまま尾道へ向かうのが最善の選択だろう。
それなら慌てて出発する必要はないな。明るくなってから出発しよう。と、ゆっくりとくつろいでいたのだが、東の空の雲が少し晴れてきて、きれいな朝焼けとなってきた。これはもしかして、凄く素敵な朝日になるやつじゃないか・・・。慌てて車に乗り込み、鳴滝山に向かった。
朝日に間に合うだろうか。楽をしようと考えるんじゃなかった・・・。少し焦りながら鳴滝山に向かうものの、道がよく分からない。というよりも、思っていたよりも道が暗いし、狭い。少し明るくなっているからまだいいものの、真っ暗だったら迷子になっていただろう。
くねくねとした山道を不安になりながら登っていき、なんとか駐車場に到着。朝日に間に合いそう。よかった。と、安堵するのも束の間。展望台がない・・・。
案内地図を探すと、どうやら展望台までは少し歩かなくてはならないようだ。ここまで来て朝日に間に合わないと、絶対に後悔する。山道を小走りで登っていった。
当然、これがしんどい。これだから朝日は嫌いなんだ・・・。朝日を見に出かける場合、初めての場所は行く道が暗くてわからないし、勝手もわからない。
これが夕日の場合だと、明るい時間に行動できるし、雲の動きもつかみやすいし、時間の余裕もできやすい。帰り道が暗くなるという欠点はあるが、来た道を戻るだけ。方向感はいいので、少々暗くなっていても迷うことはない。
頑張ったかいがあり、なんとか日の出と時を同じくして展望台に到着。一日が始まる日の出だというのに、もう身体中から汗が噴き出している・・・。
でも、そんな汗のことなど全く気にならなかった。目の前に鳥肌が立つほど素晴らしいい景色が広がっていたからだ。
これぞ絶景。瀬戸内の島々が見渡せ、朝日がそれを印象的にしてくれている。英語風に言うなら、魂が震える風景となるだろうか。
尾道と尾道水道に関しては少し距離があり、角度的にもう少し海側にこの山があれば最高となるのだけど、まあそれは細かいこと。100点満点のいい風景には変わりがない。
今日もチワワを連れてきた。駐車場から展望台まですぐだと思ったので、チワワも車から降ろしたのだが、先に書いたように山道を少し歩かなければならなく、犬を抱っこしてダッシュする羽目になってしまった。
でも、そのかいはあったかな。チワワも満足そう。たぶん・・・。記念撮影をして、展望台を後にした。
§3、尾道水道
下の尾道水道でも素敵な朝日の光景が見られるのでは・・・。そう思い、急いで山を下り、尾道市街へ向かった。
そして、到着すると市役所の駐車場に入れて、すぐに尾道水道沿いに出てみるものの、太陽が雲に隠れてしまっていて微妙な感じ。まあ上でいい風景が見られたからいいか・・・。それに強烈な日差しがないので、暑くなくていい。
せっかくだから少し海岸沿いを歩こう。そうだ物流会社の三毛猫はいるかな。と、よく姿を見かける倉庫前に行ってみると、ちょうど三毛にゃんこは散歩中のワンコと対面していた。
この猫はあまりワンコが好きではない。でも、この距離感でいることは顔見知りなのかな。「よぅワンコ。今日の調子はどうだい」といった感じかな。いや、犬を連れたおじさんに近づきたいけど、犬が邪魔といった感じにも見える。
この猫は長くここで暮らしているので、朝夕に散歩する地元の人の顔は覚え、誰が餌をくれるのか、誰が優しくしてくれるのか、きちんと分かっていることだろう。
犬をやり過ごした三毛にゃんこは、桟橋にあるデッキにやってきて、ここで懇意にしているおじさんから食べ物をもらっていた。
デッキにいる猫はなかなか絵になっている。日差しがあると暑くてかなわないけど、今は日差しがあればいい雰囲気になるんだけどな・・・と、わがままに思ってしまう。
食べ終わるのを待って、声をかけると、三毛にゃんこはこっちに寄ってきた。あなたは何をくれるの?ってな感じだろうか。
何もないとわかると、にゃんだ。あなたには用はない。といった様子で、キビを返してしまった。
そして、そのまま潮風が気持ちいのか。にゃんこはデッキの上でまったりモード。まだ朝早いし、日差しがないので、気持ちがいいのだろう。今日は猛暑の予報。今のうちに涼んでおくんだよ。
さて、あまり時間がない。他のにゃんこたちにも会いに行こう。と、三毛にゃんこに別れを告げ、商店街の方へ向かうことにした。