#65 市場の子猫とツバメの巣
マレーシア サラワク州シブ 2000年7月Sibu, Malaysia / Jul.2000
サラワク州の中央より少し西側、ラジャン川沿いにシブ(Sibu)という町がある。川の水運で栄えている町で、川沿いの桟橋では頻繁に船が発着し、川では旅客船、貨物船、木材運搬船が頻繁に行き来し、とても活気を感じる。
私は新しい町を訪れると、必ず寄る場所がある。それは市場。何が売られているのか、活気はあるのか、清潔か、などなど、得られる情報が多いからだ。
で、ブラブラと写真を撮りながらシブの市場を歩いていると、地元の人に呼び止められた。日本人か。ここに子猫がいるぞ。ちょっと前に生まれたばかりで、可愛いだろ。写真を撮っていきなよ。
今の人の感覚では、よくわからない展開で、特殊なケースと思ってしまうかもしれないが、外国人観光客、そしてカメラが珍しかった時代なので、こういうやり取りはしょっちゅうあった。
特に多いのが、「うちの子の写真を撮ってよ。」と声をかけられるパターン。他の人の子供の写真を撮ってもフィルムの撮影枚数が減ってしまうし、撮った写真の使いようがあまりない。とはいえ、断るのも気まずい。けっこう対応に困る。
フィルム時代に日本を旅していても、まずこういう場面に遭遇しない。写真自体珍しくもないし、他人に自分の写真を撮ってと頼む図々しさも持ち合わせていないからだ。
海外では写真に撮って広く世間の目に触れさせたいほど我が子が可愛いということだろう。よく言えば明るいとか、気さくとなるのだが、悪く言えば、図々しい。ケースバイケースで対応していた。
シブ(Sibu)、Malaysia Jul.2000
今回の場面でも、フィルムがもったいないし、野良猫はあちこちにいるので、いちいち撮っていては切りがない。ネコよりも犬派なので、猫の写真は余程の理由や印象的でない限り撮るのはやめよう・・・と、旅の途中から方針を変えていたので、断るつもりだったけど、いちおう猫だけでも褒めておくか・・・と猫のところまで行ったのだが、地元の人のあまりにも屈託のない笑顔に負けてしまった。
ここで写真を撮らなければ、日本とマレーシアの友好関係にひびが入ってしまうかもしれない。子猫もまあ可愛いし・・・。しょうがない写真を撮ることにしよう。と、シブでしぶしぶ子猫の写真を撮ってしまった。・・・。
ここシブの町で驚いたのは、町の至る所にツバメの巣があったこと。まあシブに限らず、ボルネオ島に来てからというもの、町中の高い建物にツバメの巣が沢山引っ付いているのが気になっていたが、ここの数は尋常ではなかった。
頭上を見上げると、ツバメが飛び交っているし、建物の窓枠やの木の部分にはツバメの巣がびっしりと付いている。
聞くところによると、ツバメの巣があると幸運が舞い込むとか、縁起がいいと言われているとか。これだけ多いと縁起もたくさん舞い込んできそうではあるが・・・。ちょっとグロテスクに感じる。
ツバメの巣といえば、高級食材。ちゃんとしたものは食べる機会がないけど、中華料理の「フカひれ」、「ツバメの巣」、「乾燥アワビ」は高級珍味として知られ、そのスープはよくその名を聞く。
同じサラワク州にある洞窟で有名なニア国立公園を訪れたときには、ツバメの巣を採取するためのはしごとか、足組が組まれているのを見た。このツバメの巣も高級素材になるのだろうか。海ツバメの巣がどういうものかわからなかったので、単純にそう思ってしまった。
もし高級食材となるのなら悪くないかも。今日はツバメの巣のスープにするかと、窓に引っ付いている使っていない巣を取り外して食材にしたりして・・・。などと、よだれをたらしながら思ってしまうのだが、後で調べてみると、鳥の種類が全然違っていた。
要は、海ツバメと呼ばれているのはアナツバメという種類で、唾液のみで巣をつくる。ここのように草とか、藁とかを混ぜて巣をつくらない。その巣は白く寒天のよう。だからこそ高級食材となっている。
(*イラスト:よーよーさん 【イラストAC】)
縁起を担ぐといえば、華僑が多いこの地では、ほくろの上に生えた体毛を伸ばすのが縁起がいいとされている。ほくろの上に生えた毛は他の毛よりも太く、長くなる傾向があり、特別感がある。
とはいえ、服で隠れている部分だと別に気になることもないのだが、よく目につく場所だと、どうにも気になってしまうがない。他の文化のことなので、観光客が口出しするのはおこがましいが、あまり賛同できないかな・・・と思ってしまうのだった。
#65 市場の子猫とツバメの巣