#64 猫の町・クチン
マレーシア クチン 2000年7月Kuching, Malaysia / Jul.2000
「猫の町」と聞いて、どの町を思い浮かべるだろうか。グーグルで猫の町と検索してみると、日本だと尾道とか長崎がヒットする。猫が多くいる猫島は多くあるが、外飼いが問題になりやすい都市部では総じて少ない。
海外だとトルコのイスタンブールやマルタ島、クロアチアのドブロブニクなどがヒットする。イスラム教の影響が強い国々では猫を大切にする傾向が強いので、イスラム地域の都市が多いように感じる。
(*イラスト:ナロンエースさん 【イラストAC】)
世界は広く、驚くようなことが多いが、なんと町の名がそのまんま「猫」という町もあったりする。その町はマレーシアにある。
マレーシアというと、タイとシンガポールに挟まれた細長い国といったイメージを持っている人が多いと思うが、マレー半島から東に800キロほどのところに位置しているボルネオ島にもそれなりの広さの領土を持っていたりする。
(*イラスト:まりんさん 【イラストAC】)
そのボルネオ島の左側はサラワク州となり、その州都はクチン。この「クチン」というのは、マレーシア語で猫を意味する。
ちなみに、ボルネオ島の北側(3分の1程度)がマレーシアとブルネイの国土となっていて、南側はインドネシア領。インドネシアではこの島をカリマンタン島と表記しているので、国際的にこの島には、ボルネオ島とカリマンタン島と二つの呼び方がある。
「クチン」とは、マレー語で猫のこと。なぜ町の名前が猫なのか。その由来は諸説あって、かつてサラワク川沿いに「マタ・クチン(別名ロンガン)=猫の目」という果物の木が多く自生していたことに由来する説。
この地に古い井戸があり、中国語読み「Ku Jin グーチン」に由来するという説。最初に入植したインド人が使っていたヒンディー語の「コーチン(Cochin、港)」に由来する説などがあるが、動物の猫に由来した説はない。
実際のところ、サラワク州の現地語では、猫のことは「ブサッ」と読んでいるとか。そう聞くと、なんだ・・・と、少しがっかりした気持ちになってしまう。
名の由来はどうあれ、マレーシア語で猫を意味することには変わりがない。現在ではすっかり猫の町としてのキャラクターが定着し、街のいたるところに猫のオブジェがあり、市庁舎内には猫の博物館もある。また、毎年8月にはネコ祭りも行われ、ネコの仮装パレードで盛り上がるそうだ。
クチンにはキャットミュージアムがある。せっかくなので訪れてみることにした。
内部は撮影禁止となっていたので、入り口に写真しか載せることができないが、館内には猫に関する様々な展示があった。どちらかと言うと学術的な展示より、猫グッズの展示の方が多い感じだった(2000年時)。
(*イラスト:こそあどさん 無料イラスト【イラストAC】)
なかでも印象的だったのが、なめ猫。今の若い人たちには何それ?ってなるのだろうけど、なめ猫は1980年代に日本で爆発的に流行した。学生服を着て、暴走族風の身なりをした猫といえば、見たことがあるという人も多いのではないだろうか。
そのなめ猫が沢山展示してあり、こっちでの人気や関心の高さを伺うことができた。ネットニュースで、マレーシアやインドネシアで猫が立っているような服が流行っていると聞くと、それはなめ猫の影響が根底にあるんじゃない・・・などと思ってしまう。
モニュメントや博物館もいいが、せっかく猫の町に来たんだ。本物の猫を探して写真を撮ろう。
ここを訪れた時は、まだフィルムカメラの時代。野良猫のために貴重なフィルムを使うのはもったいない。というより、猫の写真を撮っていたらフィルムがあっという間になくなってしまう。フィルムも数が多いとかさばるし、金銭的にも負担が増えるので、あまり猫の写真は撮らないようにしていた。
でも、ここは猫の町。猫の写真を撮る価値や理由がある。ってな感じで、張り切って猫を探しながら町を歩き回るのだが、なかなか猫に出会えなかった。猫の町と言いながら、この町はそこまで本物の猫は多くないようだ。
クチン(Kuching)、Malaysia Jul.2000
そもそもとして、猫は探しながら歩くと、なかなか見つからないものである。当てもなく散策しているときの方が見つかる可能性が高いような気がする。猫とはそういった気まぐれな存在なのではなかろうか。改めて実感した猫の町での散策だった。
#64 猫の町・クチン