#35 物売りたちとワンコ
ラオス南部 2000年11月Laos / Nov.2000
旅は移動の連続。移動するための交通手段はいくつかあるが、土地土地をじっくりと回っていくような旅をしようと思うと、細かいところまで路線網が張り巡らされていて、便数も多い乗合バスでの移動が多くなる。
バスなんてどこの国でも同じようなもの。バスはバスの形をしていて、メーカーの違い、会社ごとのラッピングの違い程度の差しかない。バスの移動は鉄道に比べると面白味がない。そう思う人が多いかもしれない。
が、そんなことはない。「所変われば品変わる」という諺があるように、国が変わればバスも変わる。国ごとにバスにも特徴があり、その違いを楽しむのも旅の醍醐味のうちの一つになる。
特に面白いのが、インフラがあまり発達していなく、経済的に裕福ではない国。こういった国では、安全基準などあってないようなもの。バスのオーナーの趣向によって、様々な改造が施され、唯一無二の個性的なデザインになっていたりする。
ラオスの場合、経済的に裕福ではないので、バスがあっても中古のものばかり。日本で昭和の時代に走っていたようなバスが、盛大に煙を吐きながら走っているというのも、よくある光景(2000年のこと)。
それとともに、道路の舗装状態が悪いのもあって、地方ではトラックバスも多く走っていた。トラックバスというのは、トラックの荷台に屋根や囲いを装着して、簡易的な座席を取り付けたバス。車高が高いので、少々の悪路でも走ることができる。
問題なのは、閉められる窓がないこと。乗っていると、風に交じって埃や排気ガスが入ってくるので、埃っぽくてたまらない。もちろん冷暖もない。たまに小さな扇風機が付いているバスもあったが、気休めにしかなっていなかった。乗り心地も悪く、乗客も荷台に載せられた荷物の延長といった扱い。まさに貨客混載バスだった。
ラオス南部(Southern Laos)、Laos Nov.2000
ラオス南部に向かうために、パクセーからトラックバスに乗った時のこと。休憩所なのか、停留所になるのかわからないが、途中で道路の隅に停まった。
バスが停車すると、取り囲むように物売りたちがやって来た。その中に交じって、ワンコもいた。きっと物売りの誰かと懇意にしているのだろう。
物売りとわんこ。飼い主の物品がよく売れるように手助けをし、助け合いながら生きているのだろうか。今日も頑張って生活費を稼ごうとするものの、稼ぎはパン一個買えるだけ。今日もこれで我慢しようね。と、わんことパンを半分にして食べる・・・。
(*イラスト:jwさん 無料イラスト【イラストAC】)
なんて名作劇場的なことを考えてしまったが、わんこはあわよくば乗客からおこぼれをもらえるかも・・・という期待をこめて、バスの周りをウロウロしているだけだった。
そんな妄想はいいとして、問題はここがバス通りということ。バスが道路の隅に停車しているぐらいなので、交通量は多くないが、そのうち車に引かれてしまうことにならないだろうか。それがちょっと心配・・・。
ちなみに、ここの売り子たちが売っていたものが、衝撃的だった。串焼きみたいなものを売っていたのだが、刺さっているのは黒っぽいもの。
日本的に考えると、焼き鳥のレバー・・・だけど、ここだったらヤギとか、羊肉になるのかな・・・と思ったのだが、売り子が近くにやって来てビックリ、なんと刺さっていたのは、コオロギ。
一串に8匹ぐらい刺さっているだろうか。なかなか焼き加減が絶妙で、これはおいしそう・・・なんて思えるわけがない。絶叫しそうになった。
(*イラスト:名古屋の片隅から始まるさん 無料イラスト【イラストAC】)
今では昆虫食が少し知られるようになり、日本でもコオロギを食べようといった機運が高まっているが、この時代はそんな概念は微塵もない。
売っている女の子は、「コオロギ買ってよ。おいしいよ。」とばかりに、手に持っているコオロギが刺さった大量の串を、私に突き出してくる。
「それ、日本じゃ食べ物じゃないから。」「頼む、グロテスクだからこっちに向けないでくれ。」と、日本語で言っても通じるわけがない。その嫌がる様子が面白いのか、更に「どうよ」とばかりに向けてくる。物売りの女の子が悪魔のように思えてしまった・・・。
旅人なので、少々のものは口にするが、きれいな場所で飼育したものならまだしも、さすがにその辺で捕った昆虫を食べようとはならない。
#35 物売りたちとワンコ