旅人が歩けばわんにゃんに出会う タイトル
旅人が歩けばわんにゃんに出会う ~ ユーラシア大陸横断編 ~

#33 水先案内ワンコ

カンボジア スバイリエン 2001年9月
Svay Rieng,Cambodia / Sep.2001
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カンボジア 独立記念塔の写真
独立記念塔

日本は四季のある国だ。桜が咲き、新緑が芽吹く春、生命力あふれる夏、葉が色付く秋、葉のない寂しい冬というように、近所の公園を訪れたとしても、季節によって趣が違い、気温や日差しを含め四季の変化を楽しむことができる。

カンボジアの場合は、まるで夏のような気温が一年中続く。そのため気温の変化はほとんどなく、日本のような四季の移り変わりはない。

カンボジア 道路脇の木の下で雨宿りする写真
雨宿り

ただ、雨季と乾季という明確な区分があり、雨季に入ると当然ながら雨が多くなり、湿度も高くなる。とはいえ、日本の梅雨のように、毎日朝から晩まで雨が降り続くというわけではない。

東南アジア全般に言えるが、こちらの雨季は、夕方近くになると雲が多くなり、空が暗くなったと思ったら、滝のようなスコールが降るといったもの。昼間は雲が多いものの、晴れていることが多い。

日本でいう夕立ちのような降り方をするので、観光で訪れる分には雨季でもそこまで影響がない。ただ、スコールが降ってきたら何もできなくなるし、朝日や夕日を見られる確率は低い。また、水溜まりなども多くできるので、遺跡などを訪れた場合、足元がぬかるんでいるといったことは覚悟しておいた方がいい。

カンボジア 雨季に水没した木々の写真
水没した木々

「結局、スコールが降るだけで、雨季も乾季も大して変わらないんじゃないか」と思うかもしれない。実際、観光客が撮った写真を見ても、晴れている場面なら雨季なのか、乾季なのか区別が付かないだろう。

でも、しっかりと比べると、けっこう景色が変わるのが分かる。例えば、カンボジアで最大の湖はトンレサップ湖になるが、雨季には乾季の3倍にまで面積が広がる。

その他にもカンボジアには湿地帯が多く、雨季になるとそういった場所が水没し、湖のようになるので、雨季と乾季とで印象が結構違ってくる。

カンボジア 高床式の家の写真
高床式の家

私は2度カンボジアを横断した。最初は乾季で、バスで移動しながら、ここでは高床式の住宅が多いんだなとぼんやりと眺めていた。

2度目は雨季だったのだが、あちこちが水没し、風景が違うことに驚いた。そして、「なるほど、ここでは高床式の家でないとダメなんだな」と納得できた。

カンボジア 水が残る道路の写真
水が残る道路

スバイリエン(Svay Rieng / ក្រុងស្វាយរៀង)、Cambodia Sep.2001

雨季だった2度目のカンボジア横断中、バスの休憩でベトナムとの国境からほど近い町、スバイリエンに立ち寄った。

昨日大雨が降ったようで、あちこちが水浸しになっていた。しかし、現地の人にとっては当たり前の出来事のようで、気にしている様子はまったくない。

カンボジア 小舟とワンコの写真
小舟とワンコ

バスの出発の時間まで少しあったので、水の溢れている路地に入って行ってみると、いきなり道はなくなり、その先は沼のようになっていた。乾季には道路だった場所が、雨季には水路に様変わりするというのも、よくある話なのかもしれない。

ちょうど舟に乗り込む女性がいた。食料品などの入った袋を持っていたので、町に買い物に来ていたのだろう。乾季はバイクや自転車が、水が多い時は舟が足代わりになっているというのも面白い。

その横にワンコがいて、女性と一緒に行きたそうにしている。荷物を載せたので、次は犬を舟に乗せるのかな。舳先にワンコが座り、尻尾を振りながら哨戒役をするようなほのぼのとした光景を頭に思い浮かべていた。

しかし、女性は自分が乗り込むとそのまま舟を出そうとしている。あらら、ワンコは置き去りか……と思ったら、ワンコはそのまま水の中へじゃぶじゃぶと入っていくではないか。

カンボジア 小舟の水先案内をするワンコの写真
ワンコの水先案内

スバイリエン(Svay Rieng / ក្រុងស្វាយរៀង)、Cambodia Sep.2001

「ええ〜っ!」と唖然としながら眺めていると、ワンコは水を掻きわけるように進んで行き、舟の前へ出た。そしてまるで水先案内人のようにエスコートしていくではないか。

このワンコが馴染みの野良犬なのか飼い犬なのかは分からなかったが、もし私が飼い主だったら、うれしいような、泥水に浸からないで欲しいような、複雑な心境になっていそう……。

それよりも、さすがにワニはいないよね……。ここ。目の前でワニの餌になってしまったらたまらない。あるいは、水から上がってみるとヒルが沢山引っ付いていたりしたら、卒倒してしまいそうだ。

このワンコの泳ぎの結末が気になるところだったが、バスの出発時間が迫ってきたため、名残惜しくも停留所へと戻ることにした。

カンボジア 柄杓型の小舟の写真
柄杓型の小舟

最後に、木をくりぬいた杓子(しゃくし)型の珍しい手製の舟があったので、写真に撮ってみた。こうした生活の知恵で作られた道具を目にすると、内戦の影響がまだ残り、豊かなとは言えない状態のカンボジアで、人々が自然をうまく利用しながら逞しく生きている様子が伝わり、素朴な感動を覚える。

カンボジアの旅では、道が恐ろしく悪かったり、胸が締め付けられるような貧しさに直面したり、博物館で目を覆いたくなるような残虐行為の展示に触れたりと、心が痛む場面も多かった。

でも、人々が素朴な環境の中で逞しく生きている様子は、人間として美しく思えたし、こちらが見習わなければならないと感じることも多かったように思う。

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#33 水先案内ワンコ
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