#31 ホーチミンと市場のワンコ
ベトナム ホーチミン 2001年9月Ho Chi Minh,Vietnam / Sep.2001
ベトナム南部の大都市ホーチミン・シティは、かつてはサイゴンと呼ばれた街だ。ベトナム戦争時にはアメリカ軍が駐留し、南ベトナムの首都として機能していた。
しかし、サイゴン陥落によって北ベトナムの勝利でベトナム戦争が終結すると、南北統一を果たしたベトナムは、首都を北のハノイとし、旧南ベトナムの首都としてイメージの良くなかったサイゴンは、偉大な指導者ホー・チ・ミン主席の名に付け替えられた。
ホー・チ・ミン氏(Ho Chi Minh)は、第二次世界大戦後、ベトナム民主共和国の独立宣言を行い、初代大統領に就任した人物で、その後フランスとのインドシナ戦争、アメリカとのベトナム戦争を戦い、結果、勝利した。いわゆるベトナム建国の父と呼べる人物である。ちなみに、ベトナムの紙幣の表側には、すべてホー・チ・ミン氏の肖像が描かれている。
ホーチミン・シティは、ベトナム経済の中心地。近年の経済成長が著しいベトナムを象徴しているように、近代的な高層ビルがどんどんと建ち、道路や地下鉄が次々と整備され、目まぐるしく発展している。世界的にみても、ここ20年で最も発展した都市の一つと言っても過言ではない。
とはいえ、私が訪れた2000年、2001年ころは、工事の真っ盛りだった。あちこちで道路を掘り返していて、ホーチミンというと、泥だらけの街といった印象が強い。
未舗装の道も多く、スコールが降ろうものなら足元がぬかるんで、足を汚さないように歩くのが大変だった。
ベトナムの女学生の制服は、ベトナムの民族衣装であるアオザイ。しかも真っ白。清楚感が半端なく素敵だ……と、見惚れてしまうのだが、その清涼感と引き換えに大きな問題も抱えている。
アオザイは足元まで白いので、泥跳ねすると非常に目立ってしまうのだ。汚さないように苦労していたり、上品に歩いている様子もまた素敵で、とても印象に残っている。
ベトナムを訪れて驚いたのが、バイクが異様に多いこと。しかも車がほとんど走っていないのだ。なので、道路では無数のバイクが押し寄せてくることになる。その様子は「バイクの洪水」と評されるほど凄まじい光景だった。
特に人口が多く、経済的に発展しているホーチミンのバイクの洪水は凄かった。例えるなら、渋谷のスクランブル交差点を行き交う人々がすべて、バイクに置き換わったような光景だ。通勤時間帯に大通りを歩いていた時には、「何なんだ!この光景は……」と心底度肝を抜かされた。
驚いたのはバイクが多いだけではなかった。走り方が荒く、他のバイクをよけながら蛇行しているし、3人乗りや荷物の過積載は当たり前。おまけに後方を確認するミラーは、隣のバイクにぶつかって危ないということで、取り外している人が多い。
中にはミラーを左右逆につけ、自分の顔の前にミラーがくるようにし、信号待ちで化粧を直している女性もいたりする。ほんと、危ないったらありゃしない……。慣れないうちは怖くて道をうまく渡れなかったほどだ。
ちなみに、写真ではヘルメットを被っている人が全くいないが、2007年からヘルメットの着用が義務付けられたそうだ。今となっては、貴重な光景と言えるかもしれない。
ホーチミン(Ho Chi Minh / Hồ Chí Minh)、Vietnam Sep.2001
無数のバイクが洪水のように押し寄せてくるホーチミンでは、野良犬が暮らすのは厳しい。ワンコとの出会いはないだろうなと思っていたのだが、市場の路地でワンコに遭遇。
私を見つけると、「遊んでもらえるのかな……」と思ったのか、尻尾を振りながらそばまでやって来た。品のある様子から市場のどこかの店で飼われているように思えた。飼い犬なら安心かな……そう思うものの、周囲はゴミだらけ。ワンコには悪いが、この状況ではどうしても触るのを躊躇(ちゅうちょ)してしまう。
ベトナム人は、家の中とかでは熱心に掃除をし、きれい好きな印象があるが、どうも外ではそうではない。「もっと街をきれいにしようよ」旅行中に何度思ったことやら……。
#31 ホーチミンと市場のワンコ