#30 ミシンとニャンコ
ベトナム ムイネ 2000年3月Mui Ne,Vietnam / Mar.2000
旅行中、ちょっとした縁があってベトナム南部のムイネで1か月ほど居候生活を送った。居候先の家主は仕立て屋(テイラー)を家業にしていたが、実際のところはカメラマンの方を本業にしていて、写真を撮ったりビデオカメラを回したりしていることが多かった。もっぱら奥さんが(ミシンで)服などを仕立てる仕事をこなしていた。
私はカメラが扱えたので、居候させてもらっているお礼に、時々撮影の手伝いをした。撮影といえば結婚式と葬式が定番。おかげでベトナム人の暮らしぶりを観察しながらベトナム生活を満喫することができ、これはとても好都合だった。
ムイネ(Mui Ne / Mũi Né)、Vietnam Mar.2000
居候している最中、ビザの延長手続きをする必要があり、1週間ほど南部の大都市ホーチミンへ行ってきたのだが、ムイネに戻ってみると、子供が猫を拾ってきたようで、家の中ににゃんこが増えていた。この家族は日本人やら猫やらよく拾ってくる……。
そのにゃんこは「ミィー」と名前をもらい、私と同じように、緩い感じで居候していた。時々どこか出かけては戻ってくるのだが、この地はネズミが多いので、狩りに出かけたりしているのだろう。
ミィーちゃんは、居心地がいいのかよくミシン台の上で寝ていた。その様子が可愛らしかったので、写真に収めてみた。
猫とミシン。何か物語の題材になりそうな気もする。が、いくら知恵を振り絞っても、「人が寝静まった夜中に猫がミシンで素敵な服を仕立てる……」という、ありきたりな「猫の恩返し」ぐらいしか思いつかなかった。想像力があまりにもなさすぎる……。
ミシンとにゃんこではいまいち話が広がらなかったので、時々お邪魔していた親戚の家にいたワンコなどに話を広げていこう。
親戚と一言で言っても、こっちの人は兄弟の数が半端なく多い。日本の昭和初期と同じ感覚で、3~5人は当たり前、場合によっては7人、10人というのも珍しくない。
困るのは居候している私。一度紹介されたぐらいでは、親戚だけあって、みんな顔も雰囲気も似ているように見えて覚えられない。
向こうは珍しい日本人なので、一発で覚えられ、「ほら、この前会ったでしょ」みたいな感じで話しかけてくるけど、「あれ~、どの人だったっけな?」と、誰が誰だかわからない。そういったことは度々あり、滞在中、本当に苦労した。
また、よく家主に姪っ子を紹介された。「結婚してこっちで暮らせ」という事らしいが、姪の数もまた多い。幸せ……ではなく、これまた覚えられず、あたふたすることも多かった。
それはさておき、こちらは数多くいる親戚の家の一軒を訪れたときに撮った写真。そこの子供とワンコが仲良く水場にいたので、カメラを向けてみるのだが、シャッターを押す直前にワンコが下を向いてしまった。
この頃のベトナムの辺境の地では、井戸水を生活水に使っている家庭が多かった。居候先でも定期的に共同の井戸からホースで水を引っ張ってきて、家の水瓶に溜めて使っていた。不便だし、衛生的にも問題がある。
これが当たり前として育つと、そういうものだと気にならないのだろうが、水道の便利さを知って育った身としては、こういった生活が続くと最初はやっぱりストレスを感じてしまう。
ただ、水が合う、合わないというのは、体の慣れの問題である。急に変わると調子が悪くなったりもするが、徐々に慣らしていけば何とかなるもの。人間の構造というのは、日本人だろうが、ベトナム人だろうがそう大差ない。なので、最初はかなり気を使っていたが、慣れたら現地の人と同じ食生活をしていた。
それよりも厄介に感じたのが、水場が外にあること。夜になると虫が多く、就寝前の歯磨きすら非常に億劫に思えた。もちろんトイレでは、頻繁に目にしたくないゴキブリに遭遇する羽目になる。
最初は黒いやつがそばにいるだけで嫌だったものの、日常的に見ているとそこまで嫌悪感を抱かなくなった。それ以上に、血を吸われて痒くなるだけでなく、場合によってはデング熱などを媒介する蚊の存在の方が、よほど厄介に感じられた。
こちらも親戚の家で撮った写真。豚の餌やりについていったら、みんなで仲良く餌をねだっている様子が可愛らしかった。「ちょっと待って~」と、豚には悪いが急いで部屋にカメラを取りに戻り、すかさず写真に残した。
普段、豚と接する機会がなかったので知らなかったが、意外と豚も可愛い。特に子豚の時は耳が大きく、チワワやパピヨンみたい……というのはちょっと大袈裟だが、近年小さい品種の豚を飼う人がいるというのも分かる気がする。
#30 ミシンとニャンコ