#26 田園地帯のワンコ
ベトナム ゾーリン 2000年2月Gio Linh,Vietnam / Feb.2000
DMZツアーに参加している最中、移動中のツアーバスの車窓から見えた田園風景が、私の思い描いていたベトナム的な風景だった。
どうしても行ってみたい。頑張ってローカルバスに乗ってみるか……。ローカルバスは料金などトラブルが多いから、外国人は絶対に乗るなとガイドブックには書いてあるので(2000年当時)、なるべくなら乗りたくはない。そもそも降りる場所を説明できないよな。そんな状態で乗ればカモられるのは目に見えている。どうしたものか。
そうだ。せっかくならバイクを借りて気ままに訪れてみようではないか。そう思い立ち、その翌日、宿の人の紹介でバイクをレンタルした。
フエから北へ向けて国道1号線をバイクで進んでいった。ベトナムを南北に結ぶ大動脈が国道1号線。日本では東海道とか、山陽道的な存在になるのだが、この頃はなんとか舗装されているといった、とても貧相な状態だった。他に高速道路もなかったので、バスの長距離移動はとても時間がかかっていた。
とはいえ、この頃のベトナムでは道路を走っているのは、バイクとバスや輸送用の大型車両ばかりで、自家用車があまり走っていなかった。交通量自体は少なかったので、貧弱な交通網でもひどく渋滞するということはなかったのかもしれない。
国道よりもひどいのが、鉄道。南北を結ぶ鉄道の大動脈が単線というから驚く。更には踏切も手動。鉄道が通過するときには係の人が柵を引っ張ってきて、道路を封鎖していた。
小さな踏切には遮断機がなく、列車が警笛を威勢よく鳴らして、通過することを知らせていた。こんな状態では列車もスピードを上げて走れるわけがない。
現在の状況は知らないが、この時代のベトナムでは、北部の一部の地域を除いて鉄道で移動するのはあまり現実的ではなかった。
1号線を走り続け、お目当ての田園地帯に到着。一面に田んぼが広がる風景は、とても素敵だ。季節は二月の終わり。この地域では田植が終わったばかりだった。
田んぼにはシラサギと思われるサギの大群がいた。これだけのサギがいるということは、餌となる虫が豊富なのだろう。凄まじい数のサギが羽ばたいていく様子は圧巻だった。やはり白い鳥は美しい。
一方に美しいシラサギがいれば、もう一方には厄介な「サギ」がベトナムにはいる。そのサギは鳥ではなく、人間。そう、ベトナムでは詐欺師(サギシ)が観光地にあふれていた。
ガイドブックにもたくさんの被害例が載っていて、バイクタクシーのトラブルが一番多かったが、ロマンスサギのようなことも少なくなかった。国の状態がまだ安定していなかった時期なので、しょうがない部分もあるが、本当に多かった。
ただ、お国柄なのか、本当にひどい事件はなく、「いい勉強になった」と笑える範囲内だったように思う。でも、サギに遭う人は何度も被害に遭っていて、数百円程度の少額ながら精神的なダメージが大きく、当時、旅人の間ではベトナムの印象はあまりよくなかった。
ちなみに、2000年当時一番有名だったのは、サイゴン大教会前にいるアイスクリームおじさん。
日本人観光客に人懐っこく声をかけてきて、「日本人は友達だ。よく来たな、ベトナムに。まあアイスクリームを食べろ」などと言い、売り物のアイスクリームを渡してくる。無料かと食べると、ちゃっかり料金を請求してくる。しかも高い。笑ってしまうが、なぜか次から次へと面白いように引っかかる。それが日本人……。
話を田園地帯に戻し、バイクを止め、歩きながら写真を撮っていると、水牛に乗った少年が川からやって来た。なかなかワイルドで、子供の頃に憧れた「トムソーヤやハックルベリー・フィン」が頭に浮かんでくる。
橋の下には洗濯物が干してあるのが見えるが、ここに暮らしているのだろうか。洗濯物の量からすると、一家で身を寄せ合っているのかもしれない。その境遇が気になってしまうが、英語が通じなかったので分からず仕舞い。
でも、一緒に写真を撮ったりしていると、とても明るく、笑顔が素敵だった。きっと楽しく暮らしているのだろう。そう思いたい。
ジオ・リン(Gio Linh )、Vietnam Feb.2000
田んぼのあぜ道では、黒いワンコと遭遇。私の姿を見つけると、そばまでやって来た。しかし、周囲に民家がなく、誰もいない状況で犬が近づいて来ると、さすがに犬好きな私でもちょっと怖い。しかも色が黒いと目が見えにくいので、表情がよく分からない。
黒ワンコも近づいてはみたものの、いつもとは違った雰囲気の人間だ……。近づいて大丈夫だろうか……といった感じで、5mくらいの距離で歩みが止まってしまった。尻尾が微妙に下がり、戸惑っているようにも見える。お互い恐る恐るといった微妙な距離感での触れ合いとなった。
#26 田園地帯のワンコ